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聖女を救え!
陸海軍とナージャと俺たち
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「到着したばかりで疲れていることでしょう。もう遅い。まずはここで一泊し身体を休めてから王城へ向かいましょう」
というナージャの言葉に甘え、俺たちはまず港町でゆっくりしてから王城に向かうことになった。
宿は町で一番の高級宿だというところをナージャが貸し切りにしてくれていた。
「せっかくなので旅で親しくなった船長と、新たにお世話になる陸軍のみなさんにもこちらに泊まって頂きたいのですが……。今から皆さんの宿を探すのも大変でしょう?いかがですか?」
お兄様が少し大きめの声で提案する。
これは聞き耳を立てているだろう町の人へのアピールだ。
陸軍の皆さんも味方につけたいけど、話し合いの場を不自然でなく作らなきゃだからね。
「いや、我々は結構です。そのようなご迷惑をおかけするのは……」
一応遠慮して見せるリアム団長。でも俺たちの意図はしっかりと伝わっているようで、見えないところでこっそりウインクをよこす。きちんと空気を読める人みたいで良かったあ!
「いや、気にしないでほしい。王城に向かう前に、この国についてお話を伺えたらと思っていてね。どうだろうか?」
「そういうことであれば。ご恩情に感謝いたします」
よし、これできちんと「殿下の気遣いで、陸軍のみなさんも一緒の宿に」という体裁が整った!
無事「夜の作戦会議」開催けってーい!
そういうことだよね、お兄様?
ゲイルと俺、お兄様とミカミカはナージャと一緒の馬車に。そしてリオ、オルガ団長、キースは後続の馬車に乗りこんだ。
乗り込むと同時にゲイルが遮音の魔法を馬車内にかけた。外に音が漏れないように。
「遮音したからもう話をしても大丈夫だよ?」
お兄様の声で一気に緊張が抜ける。
「ナージャあ!遅くなってごめんね。待ったでしょ?お母様は大丈夫?」
とたん、ナージャの顔がくしゃりと歪んだ。
「約束はしたが……正直半信半疑だった。だって私はサフィにここまでしてもらうようなことをしていないから……」
ボロリと涙をこぼすナージャ。
「迷惑をかける。来てくれてありがとう」
「だってナージャ、俺となんか似てるんだもん。見捨てたら寝覚めが悪いでしょお?だからね、これは俺のためなの。俺が助けたいから助けるだけだから」
つん、とすましてやれば、ナージャが泣き笑い。
「ははは。それでも、ありがとう」
「お礼はお母様が助かってからでいいから。頑張って助けようね!」
「うん。君たちが来てくれて心強いよ。ところで……どうやってフィガロ団長を味方につけたんだ?」
「え?分かる?」
「団長がすれ違う際に『菅らず聖女様をお救い致しますので』と耳打ちしてくれたんだ。まさか、国内に私に味方してくれるものができるとは……。サフィのおかげだな」
ナージャってばめっちゃ素直!そこまでべた褒めされたらてれちゃうよお!
なあんて、いい感じにしんみりしてたらゲイルがサクッと割り込んできた。
「おい、いい感じのところすまんが、サクッとこれからの流れを説明しといくぞ。いいか?
あれから少し計画の変更があった。ナージャも気づいたろ?海軍が味方についたんだ。
彼らにはとりあえず、秘密だとしたうえで聖女様が病気であること、それを聖女様自身では治せないこと、王家はそのことを隠蔽していること、俺たちならそれを治せることを伝えた。
ナージャ殿下が聖女を救おうと必死で動いていること、聖女を救ってほしいと俺たちに依頼してきたこともな。
だけど、他国から嫁入りしたという側妃と側妃の派閥は、自分たちの勢力を伸ばすために聖女の力が邪魔だ。俺たちがS治療することをよくは思わないだろう。だから俺たちの邪魔をしてくるはず。
そこで、国民たちに聖女の窮状を知らせ、治療させざるを得ない状況にもっていく。
海軍たちに『城に出入りする荷運びから聞いた。聖女が病らしい。『聖女様はご病気らしい、たまたま外交に訪れる王国の一団に有名な医師がいた。きっと聖女様の治療をされるに違いない』という噂をばらまき、聖女を救おうと訴えてもらうんだ。海軍にはこのまま各地に散り、噂をばらまき『聖女を救え』と訴えてもらう。
俺たちは、聖女を治療しよう。あとは、このまま帝国民自身が自分たちの力で側妃を排除するんだ。
あるべき姿に戻せ」
当初の計画より聖女の救済、そしてさらには側妃の排除が現実味を帯びたものになった。
そのことにナージャはふるりと身を震わせた。
そうだよね。ナージャだってたったの10歳。俺と同じ、まだ大人じゃない。前世なら子供と言っていい年齢なんだ。自分がした行動が、国を巻き込んで大きな変化を生み出そうとしている。
それはこの国にとってはよいものだとは思うんだけど……。
その責任を背に負うことになるのは、ナージャだ。
ゲイルはそれを分かっていた。
「今なら聖女を救うだけにしてもいい。どうする?だが元凶をどうにかしなきゃ、また同じことになるぞ。こういっちゃなんだが、聖女には後ろ盾がねえんだろ?だから母国を後ろ盾に側妃が好き勝手してるんだ。いいか。聖女の後ろ盾は国民だ。聖獣だ。それを大々的に国に知らしめ、しっかりと側妃を抑え込め」
というナージャの言葉に甘え、俺たちはまず港町でゆっくりしてから王城に向かうことになった。
宿は町で一番の高級宿だというところをナージャが貸し切りにしてくれていた。
「せっかくなので旅で親しくなった船長と、新たにお世話になる陸軍のみなさんにもこちらに泊まって頂きたいのですが……。今から皆さんの宿を探すのも大変でしょう?いかがですか?」
お兄様が少し大きめの声で提案する。
これは聞き耳を立てているだろう町の人へのアピールだ。
陸軍の皆さんも味方につけたいけど、話し合いの場を不自然でなく作らなきゃだからね。
「いや、我々は結構です。そのようなご迷惑をおかけするのは……」
一応遠慮して見せるリアム団長。でも俺たちの意図はしっかりと伝わっているようで、見えないところでこっそりウインクをよこす。きちんと空気を読める人みたいで良かったあ!
「いや、気にしないでほしい。王城に向かう前に、この国についてお話を伺えたらと思っていてね。どうだろうか?」
「そういうことであれば。ご恩情に感謝いたします」
よし、これできちんと「殿下の気遣いで、陸軍のみなさんも一緒の宿に」という体裁が整った!
無事「夜の作戦会議」開催けってーい!
そういうことだよね、お兄様?
ゲイルと俺、お兄様とミカミカはナージャと一緒の馬車に。そしてリオ、オルガ団長、キースは後続の馬車に乗りこんだ。
乗り込むと同時にゲイルが遮音の魔法を馬車内にかけた。外に音が漏れないように。
「遮音したからもう話をしても大丈夫だよ?」
お兄様の声で一気に緊張が抜ける。
「ナージャあ!遅くなってごめんね。待ったでしょ?お母様は大丈夫?」
とたん、ナージャの顔がくしゃりと歪んだ。
「約束はしたが……正直半信半疑だった。だって私はサフィにここまでしてもらうようなことをしていないから……」
ボロリと涙をこぼすナージャ。
「迷惑をかける。来てくれてありがとう」
「だってナージャ、俺となんか似てるんだもん。見捨てたら寝覚めが悪いでしょお?だからね、これは俺のためなの。俺が助けたいから助けるだけだから」
つん、とすましてやれば、ナージャが泣き笑い。
「ははは。それでも、ありがとう」
「お礼はお母様が助かってからでいいから。頑張って助けようね!」
「うん。君たちが来てくれて心強いよ。ところで……どうやってフィガロ団長を味方につけたんだ?」
「え?分かる?」
「団長がすれ違う際に『菅らず聖女様をお救い致しますので』と耳打ちしてくれたんだ。まさか、国内に私に味方してくれるものができるとは……。サフィのおかげだな」
ナージャってばめっちゃ素直!そこまでべた褒めされたらてれちゃうよお!
なあんて、いい感じにしんみりしてたらゲイルがサクッと割り込んできた。
「おい、いい感じのところすまんが、サクッとこれからの流れを説明しといくぞ。いいか?
あれから少し計画の変更があった。ナージャも気づいたろ?海軍が味方についたんだ。
彼らにはとりあえず、秘密だとしたうえで聖女様が病気であること、それを聖女様自身では治せないこと、王家はそのことを隠蔽していること、俺たちならそれを治せることを伝えた。
ナージャ殿下が聖女を救おうと必死で動いていること、聖女を救ってほしいと俺たちに依頼してきたこともな。
だけど、他国から嫁入りしたという側妃と側妃の派閥は、自分たちの勢力を伸ばすために聖女の力が邪魔だ。俺たちがS治療することをよくは思わないだろう。だから俺たちの邪魔をしてくるはず。
そこで、国民たちに聖女の窮状を知らせ、治療させざるを得ない状況にもっていく。
海軍たちに『城に出入りする荷運びから聞いた。聖女が病らしい。『聖女様はご病気らしい、たまたま外交に訪れる王国の一団に有名な医師がいた。きっと聖女様の治療をされるに違いない』という噂をばらまき、聖女を救おうと訴えてもらうんだ。海軍にはこのまま各地に散り、噂をばらまき『聖女を救え』と訴えてもらう。
俺たちは、聖女を治療しよう。あとは、このまま帝国民自身が自分たちの力で側妃を排除するんだ。
あるべき姿に戻せ」
当初の計画より聖女の救済、そしてさらには側妃の排除が現実味を帯びたものになった。
そのことにナージャはふるりと身を震わせた。
そうだよね。ナージャだってたったの10歳。俺と同じ、まだ大人じゃない。前世なら子供と言っていい年齢なんだ。自分がした行動が、国を巻き込んで大きな変化を生み出そうとしている。
それはこの国にとってはよいものだとは思うんだけど……。
その責任を背に負うことになるのは、ナージャだ。
ゲイルはそれを分かっていた。
「今なら聖女を救うだけにしてもいい。どうする?だが元凶をどうにかしなきゃ、また同じことになるぞ。こういっちゃなんだが、聖女には後ろ盾がねえんだろ?だから母国を後ろ盾に側妃が好き勝手してるんだ。いいか。聖女の後ろ盾は国民だ。聖獣だ。それを大々的に国に知らしめ、しっかりと側妃を抑え込め」
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はじめまして。初めて書いてみたオリジナル異世界BL。可哀想な主人公が、それに負けずに力業で幸せになるのが好きです。ハピエン主義なので、完全無双のハピエンになります。誤字脱字など、ご容赦くださいませ(;・∀・)→ご指摘があれば修正いたしますので!ご都合主義の作者の自己満足小説です。作者豆腐メンタルのため、ご不満のある方は「そっ閉じ」でお願いいたします。。。お楽しみいただけましたら、ぜひぽちっとイイネをお願いいたします♡コメントもぜひ♡
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