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いざ帝国!
船長、吠える
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とりあえず、秘密だよってしたうえでナージャのお母様である聖女様が病気であること。聖女様自身の力では治せないから、ゲイルと俺なら治せると思うということを伝えた。
だけど、他国から嫁入りしたという側妃様と側妃様の派閥はそれをよく思わないだろう。だから俺たちの邪魔をしてくるはず。それを何とかしてほしいということをお願いする。
聖女様のご病気はごく一部以外には伏せられていたようで、話を聞いた船長は吠えた。
「なんだよそれ!なんで聖女様のご病気をここまで放っておくんだ?陛下は何を考えている?!」
だよねえ。
「聖女が病に倒れたことで勢力バランスが崩れたんだ。側妃は他国の王女なんだろ?側妃になにかあれば側妃の母国がうるせえんだろ。戦争になった場合、聖女の助けの無い中で戦うのはきついんじゃねえか?だから、王も静観するしかねえ。この情報を軍にも外にも出さず、内密に処理してきたんだろうぜ」
ゲイルが冷静に分析した。
「王が動かねえからナージャが動いたんだ。たった10歳の子供が、他国にまで来て必死で母を助けようとしたんだ。……お前はどうする?」
船長はきっぱりと断言した。
「聖女様をお助けするに決まっているだろう!これは国を助けることにもなるのだ。側妃などの好きにさせてたまるか!ぜひ海軍にも協力させてくれ!いや、そもそもこれは我が国の問題だ。そちらに頼まれるようなことではない。元より我々がすべきことだろう!」
力強く宣言する船長の背をゲイルがバンバンと叩く。
「お前ならそう言ってくれると思ったぜ!ヘタレ王の代わりにお前らが動け。聖女を救え」
「ああ!もちろんだ!…………王国はどうして協力してくれるんだ?わざわざ面倒を背負い込んで……王国のメリットはなんだ?」
そうだよねえ。当然の疑問だと思う。
だから俺は言った。
「あのね。ナージャと俺は似てるの。俺のお母様はダメだったけど、ナージャのお母様は助けらえる。まだ間に合うの。だから助ける。それだけだよ」
船長が痛ましそうに俺を見る。
でも俺はお母様については、ゲイルとかの話でしか知らないの。ナージャがお母様を失う辛さと、俺がお母様を失う辛さは同じじゃない。
「大丈夫。お母様はいなくても俺にはゲイルがいるし、みんながいるから!だけど、ナージャには信頼できる人がいないの。みんな側妃についちゃってるの。俺が助けたいのは、聖女じゃなくてナージャのお母様。友達のお母様」
そっとお兄様が俺を後ろから抱きしめてくれた。
心配してくれてるんだよね。ありがとうね。大丈夫だよ。
俺は船長さんに向き直り、お願いした。
「でも、船長さんたちは聖女様を助けて。みんなに聖女様を助けようと訴えてほしいの。『聖女様はご病気らしい、たまたま外交に訪れる王国の一団に有名な医師がいた。きっと聖女様の治療をされるに違いない』って噂を船員さんたちにあちこちでばらまいてくれる?」
「……側妃も無視できなくなるように、ってことか?」
「うん。でも、海軍にも守秘義務があるでしょ。だから、船に出入りした荷運びから聞いた噂だけど、って必ず一言付け加えてね」
まいったなあ、と船長は自嘲した。
「帝国はあんたたちにおんぶにだっこだな。何もかもおぜん立てしてもらわなきゃ聖女一人救えねえ。情けねえ!すまない。ありがとう」
深々と頭を下げられなんといっていいかわからずにいたら、ゲイルがフンと鼻を鳴らした。
「今更だな!……だけどさ、お前らだって見てるだけじゃねえだろ?行動してみせろよ!海軍のかっこいいとこ、見せてくれ!」
「ははは。確かにな!これまでおかしさを感じながらも目をつぶってきたツケを払うときが来たようだ。他国のものに助けられっぱなしじゃあ俺たちの名折れ!根回しは任せてくれ!帝国にいる間、あんたたちにはこっちからも護衛もつけよう。側妃なんかには手出しさせねえから、まかしとけ!」
だけど、他国から嫁入りしたという側妃様と側妃様の派閥はそれをよく思わないだろう。だから俺たちの邪魔をしてくるはず。それを何とかしてほしいということをお願いする。
聖女様のご病気はごく一部以外には伏せられていたようで、話を聞いた船長は吠えた。
「なんだよそれ!なんで聖女様のご病気をここまで放っておくんだ?陛下は何を考えている?!」
だよねえ。
「聖女が病に倒れたことで勢力バランスが崩れたんだ。側妃は他国の王女なんだろ?側妃になにかあれば側妃の母国がうるせえんだろ。戦争になった場合、聖女の助けの無い中で戦うのはきついんじゃねえか?だから、王も静観するしかねえ。この情報を軍にも外にも出さず、内密に処理してきたんだろうぜ」
ゲイルが冷静に分析した。
「王が動かねえからナージャが動いたんだ。たった10歳の子供が、他国にまで来て必死で母を助けようとしたんだ。……お前はどうする?」
船長はきっぱりと断言した。
「聖女様をお助けするに決まっているだろう!これは国を助けることにもなるのだ。側妃などの好きにさせてたまるか!ぜひ海軍にも協力させてくれ!いや、そもそもこれは我が国の問題だ。そちらに頼まれるようなことではない。元より我々がすべきことだろう!」
力強く宣言する船長の背をゲイルがバンバンと叩く。
「お前ならそう言ってくれると思ったぜ!ヘタレ王の代わりにお前らが動け。聖女を救え」
「ああ!もちろんだ!…………王国はどうして協力してくれるんだ?わざわざ面倒を背負い込んで……王国のメリットはなんだ?」
そうだよねえ。当然の疑問だと思う。
だから俺は言った。
「あのね。ナージャと俺は似てるの。俺のお母様はダメだったけど、ナージャのお母様は助けらえる。まだ間に合うの。だから助ける。それだけだよ」
船長が痛ましそうに俺を見る。
でも俺はお母様については、ゲイルとかの話でしか知らないの。ナージャがお母様を失う辛さと、俺がお母様を失う辛さは同じじゃない。
「大丈夫。お母様はいなくても俺にはゲイルがいるし、みんながいるから!だけど、ナージャには信頼できる人がいないの。みんな側妃についちゃってるの。俺が助けたいのは、聖女じゃなくてナージャのお母様。友達のお母様」
そっとお兄様が俺を後ろから抱きしめてくれた。
心配してくれてるんだよね。ありがとうね。大丈夫だよ。
俺は船長さんに向き直り、お願いした。
「でも、船長さんたちは聖女様を助けて。みんなに聖女様を助けようと訴えてほしいの。『聖女様はご病気らしい、たまたま外交に訪れる王国の一団に有名な医師がいた。きっと聖女様の治療をされるに違いない』って噂を船員さんたちにあちこちでばらまいてくれる?」
「……側妃も無視できなくなるように、ってことか?」
「うん。でも、海軍にも守秘義務があるでしょ。だから、船に出入りした荷運びから聞いた噂だけど、って必ず一言付け加えてね」
まいったなあ、と船長は自嘲した。
「帝国はあんたたちにおんぶにだっこだな。何もかもおぜん立てしてもらわなきゃ聖女一人救えねえ。情けねえ!すまない。ありがとう」
深々と頭を下げられなんといっていいかわからずにいたら、ゲイルがフンと鼻を鳴らした。
「今更だな!……だけどさ、お前らだって見てるだけじゃねえだろ?行動してみせろよ!海軍のかっこいいとこ、見せてくれ!」
「ははは。確かにな!これまでおかしさを感じながらも目をつぶってきたツケを払うときが来たようだ。他国のものに助けられっぱなしじゃあ俺たちの名折れ!根回しは任せてくれ!帝国にいる間、あんたたちにはこっちからも護衛もつけよう。側妃なんかには手出しさせねえから、まかしとけ!」
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