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第2部   サフィ10歳。伯爵家の息子です!

俺のバイキング

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午前中の座学を終え。
おひるだー!!待ってましたあ!

学院には高学院、大学院共通の大きな食堂が2箇所にある。
一つは、カフェテリア。普通に注文もできるしら持ち込んだお弁当を食べてもいい。テイクアウトできるから、テイクアウトして中庭で食べる人もいるんだって。
もうひとつは、好きなものを取って好きなだけ食べる方式のバイキング。


初日の今日は 

「もちろん、バイキングー!!
何があるのかなあ?
好きなものだけ食べれるの、最高すぎない⁈」

想像しただけで涎が出そう!
はああああん!!
悶えていたら、後ろからビシィ!
頭に手刀が落ちてきた。
ミルくん!

「落ちつきなさい!うろうろしないの!
ミンミン!サフィを確保!」

すかさずミンミンが左右から俺の腕を固める。
俺の前でリースが俺をのぞき込むようにして注意事項の説明。

「いいかい?
好きなだけ取っていいとはいえ、食べきれる量を取るんだよ?
好きだからとどんどん載せたら、食べきれないからね?
食べ物を無駄にしないよう、よく考えようね?」

俺は幼い子供か!
こうみえても前世でバイキング慣れしてるんだからね!
むしろバイキング王と言ってもいい。
気になるのを少しずつためして、厳選した上で2週目!
これが鉄則!
お残しなんて素人のすること!俺には当てはまりませんのじゃ!

あああああ!
確保されてる間にどんどん列ができちゃうううう!!
恨めしそうに見てたら、

「よし!」

ようやく放して貰えた。



前にリース、後ろにミルくん、その後ろにミンミン兄妹という布陣で、いざバイキング出陣!

トレーを持って


「ふ、ふわああああああ!!」

なんじゃこりゃあああああ!!
さすが貴族学校!俺の知ってるバイキングと違う!!
バイキングなのに、フレンチみたいな美しい装飾のお皿!
普通に「なんとかソースのうんたらかんたら」みたいなのがズラリと並んでる!
皿を出すと美しく盛り付けてくれるとこもある!
ライブキッチン?
なにこれなにこれーーーー!!!


ぽかーん。
なんていうか、これ、バイキングなんてもんじゃなくて、イメージ的にビュッフェ?
少なくとも庶民の味方ではないほうのやつ!

立ち尽くす俺のお口を、ミルくんがぱふんと閉じてくれた。
お、おお。すまん。

ちょっと俺の庶民の部分が気後れしてしまったが、ここは楽しい学院生活のため、勇気をもって一歩踏み出そうではないか!






俺の初めてのお貴族様バイキング。
結果を言おう。
惨敗でした!!!

だってさあ!どれもおいしそうが過ぎるんだもん!

「メインはチキンorビーフ?」
「ビーフorフィッシュ?」
ならいいよ?


「メインはチキンorビーフorフィッシュor……」
なうえに、
「調理はフライ?グリル?ポアレ?うんたらかんたらなんちゃらかんたら?」
なんだよ?
そのうえ
「ソースはどうなさいます?」
なんて10種類くらい並んでるの!馬鹿じゃないの?!
ここ、学生の学食だよね?
もう一度言おう。馬鹿じゃないの?!

そんなの日替わり定食でいいじゃない!
それに負替わりパスタ、うどんorそば でいいじゃないの!
選択の余地を与えすぎ!

選択肢が多すぎると迷うでしょ?当たり前だよね。
そこにきての、これ。
なんと何種類も選んでいいの!
メインなのに!フリーダム、
肉・肉・肉・肉・パンなんていう夢のメニューを爆誕させてもいいんだよ?!
自由が限度超えてきたー!

おまけに。

その後でデザートずらりさせるの、なに?罠なのかな?
肉無双したあとで、楽し気に歌い踊ってるデザートくんたちが現れるの。
無視できるひと、いる?




リースくんは俺の前でなんとかフィッシュのポワレを取り、野菜のグリル、キッシュを程よくお皿にのせ「こういう感じにね?」って俺を見て微笑んだ。

うん!がってんしょーちのすけ!

俺は男の子なら取らねばならないチキンフライを取り、出会ったからには乗せざるを得ない肉汁滴るステーキを載せ、ここはバランスを考えてお魚を焼いたのを…取ろうとしてミルくんに腕を押さえられた。

「サフィ?!」

笑顔の圧が凄い!!
ギリギリと見せない攻防を繰り広げ、仕方なく手を離す。

野菜のグリルは…必要ないかな。スルーで!
素通りしたら、ミルくんに首を掴んで戻された。
問答無用で人参グラッセ、ハーブのサラダを盛られる。

「あ!あああああ!!」
「野菜も食べようね?!」

笑顔の圧ー。バイキングなのにい…。
好きなものを取れるはずなのにい…。

キッシュ、フライドポテト、マッシュポテトを載せて(ここでまたミルくんに「ポテト多すぎ!」と叱られた)


遂に!
遂に魅惑のデザートゾーン!!!

リースくんがくるりと振り返り、言った。

「1つだけね?」

真剣な目をしていた。

「はあ?こんなにたくさんのケーキが俺に食べて貰うのを待ってるのに?
この中から1つ選べって、無理でしょ?!」

断固として抗議する!!

「サフィ?もうトレーもいっぱいだろう?
そんなに食べたらお腹がはじけちゃうよ?」
「はじけませんし!」
「最初にリースとお約束したでしょ!
好きなだけとはいえ、食べきれる量を取る!
食べ物を無駄にしないよう、よく考えようって!」
「だって、だって、こんなのだと思わなかったんだもん!
……残ったらお弁当にしてちゃんとお持ち帰りするから!」
「ちょっと!アンタ一応高位貴族でしょ?
バイキングで食べ残して持ち帰るとか、やめなさい!
残さないように取るの!!」

叱られてる俺の横を、後ろに並んでた人たちが申し訳なさそうに追い越していく。
ちらりと俺を見て「がんばれ」とか「ちゃんと言う事聞こうね?」とか言いながら…。

ううう…。

俺は仕方なく3つだけ選ぶことにした。
大好きなアップルパイは外せない。熊さんのとどっちが美味しいか比べたいし。
チーズケーキだって捨てがたい。
ケーキの基本、ショートケーキを外すわけにはいかないし…。

「はい!これね!」
「あああああ!!勝手に決めたああああ!」
「毎日選べるんだから、明日食べたらいいでしょ!
お昼の時間終わっちゃうよ!わがまま言わないの!」

イチゴゼリー、モンブラン、チョコケーキを前に俺はしょんぼ…いや、これも美味しそうじゃん!
ゼリーなら持ち帰れるかもだし!

俺は大人しくトレーを持って会計に向かったのだった。



そして今、俺は腹を抱えて残ったチキンとステーキを前に途方に暮れている。

「野菜から先に食べなさい!」

と言われ、野菜から食べてしまったためにメインが…!!
本末転倒じゃん!!
これ無理して食べたらデザート入らないっ!
くうううう!
涙目で皿を見つめていると。

「そんなにたくさん取るからだぞー。
なんかかこうなる気がしたんだよな…」

言いながらミンツがチキンをひょい、ぱく。
リーフも

「……なんだか少し食べ足りない気がするなあ…。
そのステーキ、貰ってもいいかな?」

とステーキを自分のお皿に取ってくれる。

「ミンツ!リーフ!!大好き!」

「もう!2人とも甘やかさないの!
サフィのためにならないでしょ?
これが毎日続いたら困るでしょ?」

ぷりぷりするミルくんの背中をミントが撫でた。

「まあまあ。サフィだってちゃんと学んだと思うわよ?
もうやらないわよねえ?」

俺は必死でこくこくと頷いた。
流石に我を忘れ過ぎた。反省している。
次はメインは諦めよう。デザートに賭けることにする!

「……ボクだって、ボクだってうるさいこと言いたくないんだよ?
だけど、放っておくわけにもいかないから…!!」
「うんうん。ミルくんはよくやってるわよ。
悪いのはサフィ。わかってるからね。ミルくんが優しい子だって」

ミントに慰められているミルくんを見てさすがに申し訳ないと思った俺は、断腸の思いで最後のお楽しみとしてとっておいたチョコレートケーキを半分差し出した。

「ごめんね、ミルくん。これあげる」
「これも多いの?だから1つにしなさいっていったでしょ!」

あーん!これは食べれるもん!
お礼のつもりだったのにい!




ちなみに翌日バイキングに行ったら、知らない生徒からも「お野菜も食べるんだよー」とか「食べすぎにきをつけてね」とか言われてしまった。
さらには「多いなら俺と半分こしようか?どれがいいの?半分もらってあげる」とか言ってくれる人まで!
さすがに海より深く反省した俺は、ちゃんと厳選に厳選を重ね、うんうんいいながらなんとか1つを選んだ。
その翌日からは、なぜかバイキングコーナーに「ハーフサイズ」が登場していた。
シェフ!と感謝の眼差しを送ると優しい眼差しでうんうんと頷いてくれた。シェフ、いい人!
ミルくんが

「けがの功名っていうのかな?このハーフサイズっていいよね!
まあ…サフィのおかげといわなくもない」

と頭を撫でてくれた。

「甘やかしすぎなのは誰だよ!」

ミンツが突っ込んだが、甘やかしすぎなのは…誰?
みんな結構俺に厳しいと思うんだけど。

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