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第2部   サフィ10歳。伯爵家の息子です!

俺の学園1日目、終了!

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とりあえずいい感じの仲間をゲットして俺の学園初日は終わった。


みんなで迎えが待っている門に向かうと、なぜかモーゼのように俺の前にさああっと道が開く。

「え?え?どゆこと?!」

その道の先には、ゲイルとお兄様!
にこにこと満面の笑みを浮かべ、俺に向かって両手を広げ「さあ、おいで!」の体勢!
え?は?
ここに飛び込んでおいで、って?

更にその後ろに柔らかな笑み(これしてる時は余所行きモード)のエリアス。
これ絶対に周囲を警戒中。ヤバそうな貴族とか生徒とかをサーチしてる!!

むりむりむりむりーーー!!
うちの保護者たち、強すぎ!

お兄様、ゲイル!いくら待っても無駄だからね!
俺が思う「カッコいい10歳」は、学園、しかもこんなに多くの人の目の前でお父様に抱っこされたりなんかしないから!
やるなら馬車に乗ってから!

ちらりと横の仲間を見ると、みんな「ちーん」みたいに虚無の眼差し。

「まさかここまでとはね……」

ポン、とカミールが俺の背に手を置く。

「……大変なんだな、サフィも……」
「こうやって育つとそうなるのね。納得」

ミントミンツも反対の肩に。
と思ったら3人ともチラリとお兄様を見て慌てて手を離した。
両手をあげてなぜかホールドアップ。
ど、どうした?
お兄様は優しい笑顔で俺を待っているだけだぞ?早くおいでっていう圧が凄いけどな!

「……行ってあげた方がいいんじゃないか?」

リースが優しく俺を促す。
が。

「無理だってばあ!目立ちたくないもん!
あんなモーゼの中をひとりで通りたくない!
ねえ、みんなも着いて来て!!」

「「「えええーーー?」」」
「あそこに?無理でしょ、それは!
ボクだってまだレオンハルト様に恨まれたくない!」
「お兄様に紹介してあげるから!!ひとりであそこまで行くの、むりなんだってばあ!!
おねがい!こんど美味しいアップルパイ持ってきてあげるから!!」
「必死かよw」
「もう!しょうがないなあ!
変な紹介しないでよ?!
普通に『学友です』って紹介してよね?!」
「分かったから!ねえ、お願い!一緒に来てっ!!」

しぶしぶ着いて来てくれたみんなと一緒に、割れた人波の中を通る俺。
視線が…視線が凄いよおおおおおう!!

「あれが王家の掌中の宝珠!」
「おお!伝説のサフィールとグランディールのサラブレッド!」

だのあちこちでひそひそ。
掌中の宝珠って何ー?!
ぐすぐす。怖い…怖すぎる…。
俺はぎゅうっとリースの服の裾を掴んだ。



「おお!さっそくお友達ができたか!さすがは俺の息子!
俺はサフィの父、ゲルリアスだ。よろしく」

にっこにこでお友達にくいつくゲイル。
早速みんなと握手したりして交流を深めてる。

「お帰り!サフィ!学園はどうだった?」

一方、俺の友だちを完全スルー。まるでリースから奪い取るようにして俺をハグするお兄様。
俺はお兄様の腕をぺしぺしして離すようにとアピール。

「お兄様!あのね、お友達ができましたので!
紹介するから、離して!」

しぶしぶ離れたすきに、俺は急いでゲイルの元へ。

「あのね、この子はゲイリースくん!ミカミカの従弟!
優しくて賢くて頼りになる子です!
お兄様、知ってる?」
「ああ、君が!
ミカエルからサフィと同じ年齢のしっかりした従弟がいると聞いているよ。
私のサフィは可愛いだろう?よろしく頼むよ?」
「…はい。サフィラスのことはお任せください」

ギュウううっとしっかりとした握手を交わす2人。
ミカミカの従弟だっていうことで、気に入ったみたい。

「こっちはカミールくん!
美少年ですけども、しっかりものでママみたいなの!
お兄様のファンなんだよ!」
「ちょっとお!変な事言わないでって言ったのに!
「ママみたいなの?とても良い子のようだね。
私のサフィが世話をかけるね?」

柔らかな笑みをこぼしてお兄様は微笑んだ。

「は、はい!サフィってば危ないから!
ボクがしっかりと見張っておきますね!」

真っ赤になって宣言するカミールに、お兄様は目を大きく見開いた。

「ふふふ。君はとても敏い子でもあるんだね。
君のような子がいてくれれば安心だ。よろしく頼むよ」

軽くカミールを引き寄せて耳元で何やら囁いている。

「は、はい!!お任せください!!!」

とても気が合っているようだ。



「あとね。こっちの2人はミンツとミント。双子なんだって!
2人はいろいろなツッコミをしてくれるよ!」
「おい!俺らの扱い、雑すぎねえ?」
「もう少しなんかあるでしょ?!」
「……面白い双子です!」
「あはははは!そうなんだ!
2人とも、サフィをよろしくね?
目を離すと何をするかわからない子だから…」
「「しっかりと目を離さずにおります!!!」」


ここでエリアスが口を開く。

「僕はサフィちゃんの叔父さん、エリアスだよ。
とても良いお友達ができたみたいだね。
ふふふ。おうちの人にもご挨拶しなきゃね。
君たちのこと、教えてくれるかな?」

「「「「は、はい!」」」」




後で皆が語ったところによると、まるで見合い相手の身上調査のようだったらしい。

「「「「サフィの保護者って……うん…サフィの保護者って感じだよね……」」」」

どういう意味かなあ?!
とりあえずみんなは保護者達に「合格」と言われたそうなので、良かったです。はい。
ほんとごめん!うちの保護者、上からすぎ!!



帰りの馬車の中で、ゲイルはニコニコ&涙ぐむを繰り返していた。

「サフィに友達ができて良かった!いい子たちじゃないか!
……いつの間にかこんなに大きくなって…。立派だったぞ!!」

もう誰もいないので、俺は遠慮なくゲイルに抱き着く。

「俺、もう10歳だからね!
ゲイルの息子だもん!立派な学生になるからね!任せて!!」

お兄様は困ったようなお顔。

「サフィはもうさっそくみんなを魅了していたね。
仕方ないとはいえ…心配だ。
あのお友達、特にカミールくんのいうことをよく聞くんだよ?」
「お兄様もママみたいだよね。
カミールくん、お兄様とちょっと似てるよねー」
「カミールくんはともかく、私はママではないよ?!せめてパパと言って欲しいな」
「レオン、それでいいのかよw」
「黙って貰えますか、ゲイル!今はそれでいいことにします」
「レオン殿下も大変だよねえ」
「エリアスも黙って貰えませんか?!」
「もう!みんな!喧嘩しないの!」

あ。そういえば。
俺は一応聞いてみることにした。

「お兄様。
あのね、みんな1人でお風呂に入ってるみたいだよ?
ゲイルはお父様だからいいとして、たぶんお兄様とかとは入らないんだと思う。
なので、3人で入るのはもう終わりにしましょー!俺も大きくなりましたので!
お泊りに来たら、1人で入ってね」

「え?え?どうしてそんな話になったの?どういうこと?」
「え?…なんとなく?」
「いや、あの……うん。確かに…そろそろ辛くなってきたけど…。
そうだね…1人で入ろうかな…」

お兄様、赤くなったり青くなったり。
最終的にはしょんぼりしながらも1人で入ることにしたようだ。

「やっぱりもう狭くなったって思ってたんでしょ?
2人ならまだしも、3人は辛いんだよ。うんうん」

きっとやめどきを見失って、自分からやめるとは言い出せなかったんだろう。
申し訳ない事をした。

「いや、そういうことじゃねえと思うが…。
まあ、そういうことでいいか…」
「ん?どういうこと?」
「そ、そうなんだ!
サフィも大きくなってきたからね。少し狭いと思っていたんだ!!」
「そうでしょ。思い切って言って良かったあ!」

お兄様が「こんなことなら目をそらさずしっかりと見て目に焼き付けておくんだった!」とかブツブツ言ってる。
俺と入るお風呂を楽しみにしてくれてたんだね。
思い出としてしっかりと覚えておきたかったってことだろう。

「じゃあ、今日最後に一緒に入る?」

と言ったらものすごくいい笑顔で頷かれた。
エリアスとゲイルがものすごく微妙な顔をして

「……レオン、大丈夫?」

と言っていたが、どういう意味だろう?

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