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俺の平凡な日常

俺はおにーたん

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孤児院に行ったら子供達がすっとんできた。

「にーたん!にーたん!」
「さふぃー!」
「だっこして、だっこー!!」

両手両足にくっつき虫さんがたっくさん!

俺はしゃがみ込んで一番のちびっこのアンリを抱っこした。

「ごめんね?
あのね、ちょっとオレがさびしんぼになっちゃってね。
ゲイルから離れられなくなっちゃってたの。
でも、もう大丈夫だからね?またこっちにもあそびに来るよ。
いっしょにお祭りのじゅんびしようね」
「………にーたん、こなかった。あんり、あいたかったの」

俺はアンリをぎゅっとしてほっぺをすりすり。
アンリは幸せそうにキャッキャと笑った。

「ぼくも!ぼくもすりすりする!」
「わたしもー!」

あちこちからいっせいにほっぺをすりすり、むぎゅっ。

「あはははは!ほっぺがへこんじゃうよおおおう!
ふふふ。まって、まってえええ!」

ほっぺからはじきだされ子は腕をはむはむしたり、お膝によじよじしたり。
あっという間に俺はぺっしょんこのふにっふに。よだれまみれにされてしまったのだった。
でも大丈夫!今の俺にはこれがあるからね!

「クリーン!」

一瞬でピッカピカに。
ついでにみんなにも

「クリーン!」


おちびちゃんたちが落ち着くと、ちびっこたちの後ろからちょい俺より下くらいのメンバーがわらわらわら。
一斉にしゃべり出した。


リアナがもじもじと差し出したのはビーズのブレスレット。

「あのね、あのね。これ、私が作ったの!ビーズでじょうずにできたのよ!
サフィにあげる!」

大きいのと小さいのをバランスよく組み合わせ。
多分俺にあわせて、黄色と緑で作ってある。
4歳の子が作ったとは思えない、素晴らしい出来だ。

「すっごく上手になってるううう!すごい!しょくにんさんだ!
しかも、オレの色でつくってくれたの?ありがとー!!」

早速腕にはめてみる。

「えへへ。にあう?」
「にあうよ!すっごくかわいい!」
「ほんと?これ、だいじにするね!たからものにする!」



「おれはね、今、くだものやのおばちゃんのとこ、てつだってるんだよ!
新しいジュースのカイハツちゅー!できたらのませてあげるね!」
「ホント?楽しみにしてるねっ!」

くいしん坊のギルもいいお仕事みつけたみたいだね。良かった!


「ボク、キースに色々な薬草をおしえてもらってるの。
それでね。いつかお薬をつくれるようになりたいな」

ちょっとシャイなナードは俺より1つだけ下の5歳。キースが面倒を見てくれてたみたい。
新しい夢を見つけて目をキラキラさせてる。

「すごいね。ナードはしょうらいのゆめをみつけたんだね。
きっとすばらしいお薬やさんになれるよ!」



そこに同じく5歳のサムが自慢げに袋を差し出す。

「オレはクッキーつくったんだ!サフィの分も!
きたらあげようとおもって、とっておいたぞ!」

あけてみたら、星とかお魚とかの形のクッキーがたくさんはいってた!

「え!これ、サムが作ったの?
売ってるやつみたいだよ、これ!すごおい!」
「だろ?あじもいいんだぜ!カイルと作ったんだ!もってかえっていいぞ!」
「いいの?ありがとー!」

って言ったら周りから視線が。
お口に指くわえてよだれたらたらりんのおチビちゃんたち。
か、かわゆす!!!

「あのね、これ、今ここでみんなでいっしょに食べていい?
お茶いれて来るからみんなで食べよー!」
「ああ。サフィがいいならいいぞ!」
「「「「わーい!!」」




ちょっと待っててね、とお茶を淹れに行こうとしたら。
あ、あれ?足が動かない!
アンリとコールが俺の右足左足にしがみついてる!

この光景、既知!
俺じゃん!ゲイルと俺じゃん!

「あ、あのね。すぐに戻るからね?ちょっと待っててくれる?」
「やーー!!」
「い・やー!!さふぃー!さふぃー!!」

むっちゃ既知!!まさにこれはさっきまでの俺の姿!
俺、こんなおチビちゃんと同じことしてたの?
これはまさに「人のふりみて我がふりなおせ」ってやつだ!
俺は猛烈に反省した。
自分がお兄さんなのにおチビちゃんと同じことしてみんなを困らせたこと。
それと、おチビちゃんたちを寂しがらせちゃったこと。
せっせと通ってたのに急に来なくなったらそりゃあ寂しいよ。
自分のことばっかりで、俺ってば、みんなのこと考えてなかった。どんだけメンヘラってたの俺!
中途半端にかまって急に手を離すなんて、一番やったらダメなことじゃん!
ごめんね。
これからしっかりと頑張って、みんなにも抱っことハグがいきわたるようにするからね!
いっしょに頑張ろうね!

あそこでキースが愛のムチしてくれなかったら、まだ俺はあまえんぼしてたと思う。
それでおチビちゃんたちを寂しくさせたままだったと思う。
キースに感謝!
そしてゲイルにはごめんね!でも夜はまた抱っこしてね!


さて。
俺はもう6歳のお兄さんだけど、おチビちゃんたちはまだ赤ちゃん。
愛のムチにはまだ早いのです。
なので俺はやさしく2人を抱っこし…
ようとしたけど無理だった!
俺はなんて非力なのだろう…。
軽く絶望しながら、どうしたらいいかとうんうん考える。

それで、いいことを思いついた。

「サム。木のはこ、そこのひろばでもらってきて。やおやのおいちゃんなら持ってるとおもう。
それで、くだものやさんおばちゃんに太いヒモもらってきてくれる?」
「?なんに使うんだ?」
「えへへへ!おたのしみだよー!」


もってきてくれた木箱は、キャベツとかが入ってたものみたい。
1~2歳の小さな子供ならふたりは入れるくらいのサイズ。
丈夫だからおチビちゃんくらいなら重さ的にもいける!

「いいかんじ!ありがとね、サム!」


箱の短い辺の片側にひもが通るように穴を2つ横並びにあける。
そこに長い取っ手みたいにひもをつけて。
そしたら箱をうらがえし。
グランディール家お得意の氷魔法で底を凍らせて、保存魔法をかけておく。

そしてつるつるになった底を下にしておいたらば。
前世式、木箱のきしゃぽっぽ、かんせー!
でもここには汽車なんてないから。

「サフィのばしゃのかんせーい!」
「ばしゃ?」
「うん!どうぞお乗りくださーい!」

アンリとコールをたて並びに座らせて。

「しゅっぱつしんこー!!」

ちょっと風の力を借りて少し箱を浮かせたら、つるつるるんとそのまま床を滑らせる。
おお!結構いい感じに進む!
これなら俺の力でもらくらく!

「びゅーん、びゅーん、しゅるるんるん!」
「「びゅー、びゅー、しゅりゅりゅりゅ!」」

2人とも両手をあげてきゃっきゃと喜ぶ。

「あぶないから、しっかりとよこをもつんだよー」

一旦止まっておててで横を掴ませる。

「よーし!しゅるるんしゅるるるん!」

こうして俺は2人を連れてキッチンへ。
お茶を人数分ポットに入れて風でちょうどよくさますと、コップと一緒に箱の中に。

「これをね。もっててくれる?
ゆっくりもどるからね?」

いっくよー!

「びゅーん、びゅびゅーん!」



こうして俺は無事チビちゃんたちと一緒にお茶を淹れるという任務を遂行したのだった。

お茶を淹れてみんなでクッキー頂きましょー!
ようやくお茶の用意が整ったのに。

じいいいいいい。

みんなの視線はキャベツ箱のばしゃにくぎづけ。
仕方ないなあ。

「おやつのあと、じゅんばんこでのせてあげますからね!
だからまずはお茶をどうぞ」

「「「「はーい!」」」」
「やったあ!」
「オレいちばん!」
「じゃあ、わたしがにばん!」

俺はちちち、と指を振る。

「小さいこじゅんね。大きいこはあとから」



大きい子にはこっそり

「みんなはいつもおチビちゃんのおせわしてるよいこたち。
あとでとっておいたクッキーあげるからね」

と内緒話。
みんな小さい子のために沢山がまんしてがんばってるもんね。
おチビちゃんがお昼寝の時に食べてね。




その後、サフィのばしゃは大活躍した。
でも、馬の代わりになれるのが俺しかいないのが難点。
風魔法を使わないとけっこうな重さなのだ。
俺はせっせとみんなを交代でのせて行ったり来たり。
風で浮かせて重さを軽くしているとはいえ、それなりに大変。
10回くらいおうまさんをしたらふらふらになってしまった。

でもまだまだちびっこが目をキラキラさせて次を待ってる。
うーん、どうしよ?
小さい子ひとりくらいなら、風魔法なしでもなんとか大丈夫かな?
試しに力持ちのサムとギルに交代でうまになってもらい、アンリやコールをひとりづつのせてもらった。
サムもギルも張り切ってうまになってくれた。
これなら俺がいない時でも楽しんでもらえると思う。よきよき!

なんだかんだ、孤児院に来たらゲイルが死んじゃうとか考える暇もなかった。(反省はしたけど)
ちょっとの間でもみんなすっごく色々できるようになってたから、ビックリ。
俺も負けてはいられないよね!
やっぱり俺、色々やってた方が精神衛生上よさげだし。
この際だから大きい子用にもなにか遊具的なものを考えてみようっと!



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