上 下
184 / 264
俺の平凡な日常

俺の想定より大事に?

しおりを挟む
祭りの予定は2か月後。
準備は着々と進んでおります。
最初こそ俺が「あれはどう?」「これはどう?」と指揮をとり、面倒くさそうな冒険者がいれば士気をあげ、東に泣く子があれば行って大丈夫だよといい、西に困った冒険者がいればこうしたらどうかとアドバイスしていたのですが。
1か月もした今では冒険者たちが自発的にどんどんあれやこれやとやり出し、俺の知り合いの街の人までそれに加わり、楽しそうな様子を見た街の人もそれに加わり…もうこの段階で「街の人と冒険者とがもっと仲良くなる」は達成してる気が…。
それに伴って孤児院でも大忙し。
カフェの人たちも定期的に顔を出してくれてるみたいで、いい匂いがあたりに満ちている。
試作品をギルドに差し入れてくれて、冒険者と子供達も和気あいあい。
俺が教えた「おっちゃんマウンテン登山」や「おっちゃんぐるぐる」をして貰ってはしゃいでいる。

え?なにここ?
ちょっとしたパラダイス?

あたりにはクッキーの良い匂いが漂い、子どもと強面のおっちゃんがきゃっきゃと戯れ。
即席に作られたテントには街の人からの差し入れが山となり、休憩しながらつまめるようになっている。
そのお礼だと、手の空いた冒険者が街の人の手伝いで屋根のペンキ塗りやドアの補修をしたり。
楽し気な様子に誘われて、普段はこっちに来ない街のおじいちゃんおばあちゃんたちまで、おずおずと顔を出している。
冒険者って、基本的にお年寄りと子供には優しいんだよね。
自分たちと違って弱いから守ってあげなきゃ、とか思うのかも。
おじいちゃんに気付いた冒険者が

「ここに座ったらどうだ?」

とかいって椅子を持って行ってあげたりしてるのが微笑ましい。
老若男女、ムキムキもほそほそも、人間も獣人も、大人も子供もまぜこぜになって協力しあってる。
理想郷じゃん!
いつの間にこんなことに!


ちょっと大人しそうなお嬢さんとかにはキラキラなキースがジェントルに声を掛けていた。
適材適所だね。
キースってナンパそうにみえて真面目だし人当たりもいいから、キースに任せとけば安心。
余談だが、俺の中でキースの評価はうなぎ登り!
なにしろ冒険者としては有望。なのに腰は低いし、人望も厚い。
北に困った人あれば手助けし、南に揉める人あれば仲裁し。
合間にちょちょっと依頼もこなす万能っぷり!
孤児院の子たちにも慕われている。
ティガーやミカミカなみの「なんでもお兄さん」だったのだ!
なので、今は「祭り実行委員会」の副会長みたいなことしてもらってる。




え?これって、もう俺ゆっくりしてていいんじゃね?



孤児院と庭と街とで行ったり来たりしてて、俺、最近ゲイルに行きかえりと寝るときくらいしか抱っこしてもらってない!
たまに眠すぎておはようのちゅーしてもらっても覚えてない!
これはゆゆしきじたいですぞ!

ギルド長の調査(地味に継続して観察されてた)によると、俺の癒し力的なものは持続性があるらしく、俺とハグしたり仲良しした人はパワー状態が維持されるぽい。
なので、新しい人が来るまでは俺、数日くらいならお休み頂いてもよいのではないかしら?


なんて思っていたら。
ゲイルより先にお兄様とゆっくりしなくてはならぬきんきゅーじたい発生!
というのも。
週3日に加えて空き時間もお休みの日も朝から1日中こっちに入り浸っているので、お兄様がおかしくなってきてしまったのだ!
癒し力、維持されてるはずなのに!
ミカミカから緊急のお知らせが届いたのですよ。曰く
「宙を見つめながら『サフィ』とつぶやいていた」
「侍女にサフィに似たぬいぐるみをつくれないかと相談していた」
などとけっこう残念な内容。
おまけにその〆はこうだ。
「頼むから1日レオンの為に開けてやってくれ!サフィ切れだ。ヤベエ。また闇落ちするぞ!」

ひいいいいい!!
お泊りしてるじゃん!週に1日は俺があっちにお泊りしてるし、週に2日くらいはお兄様がこっちで寝てるよね?
どんだけ俺が大好きなのよ!

でも、確かに最近は忙しかった。
家でも色々な計画をまとめてみたり、疲れて寝ちゃったりと、ゆっくりとすごす時間が足りてなかったかも。
昼間動き回ってるから帰るとぐっすりで、俺が寝ちゃってからお兄様が来たり。
魔法訓練とかの日も、空き時間はお祭りのお飾りをつくったり、ポスターをつくったりしてた。
あれ?
お兄様と遊んだりとか、お散歩したりとか絵本読んだりとかしてない?
これはあかん!

てことで。ギルド長に相談し、冒険者さんたちにも「今日は帰るね」と伝え、後をキースに任せて。
俺は大急ぎでゲイルに王城まで送ってもらった。


「ありがとね、ゲイル!夜にゲートで帰るからね!ごはんはこっちで食べるー!」
「あーあ、すっかり王城が別宅だなあ」

ゲイルがため息をついた。

「えへへ。ごめんね?
でも、オレにとってはゲイルがいるとこがおウチだからね!」

ぎゅっとして「いってきます」のハグ。
したら、ちょっとゲイル恋しくなって「こっちこっち」と顔を近づけてもらってほっぺすりすりも。

「じゃあ、あとでね!いってきまーす!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愛すべきマリア

志波 連
恋愛
幼い頃に婚約し、定期的な交流は続けていたものの、互いにこの結婚の意味をよく理解していたため、つかず離れずの穏やかな関係を築いていた。 学園を卒業し、第一王子妃教育も終えたマリアが留学から戻った兄と一緒に参加した夜会で、令嬢たちに囲まれた。 家柄も美貌も優秀さも全て揃っているマリアに嫉妬したレイラに指示された女たちは、彼女に嫌味の礫を投げつける。 早めに帰ろうという兄が呼んでいると知らせを受けたマリアが発見されたのは、王族の居住区に近い階段の下だった。 頭から血を流し、意識を失っている状態のマリアはすぐさま医務室に運ばれるが、意識が戻ることは無かった。 その日から十日、やっと目を覚ましたマリアは精神年齢が大幅に退行し、言葉遣いも仕草も全て三歳児と同レベルになっていたのだ。 体は16歳で心は3歳となってしまったマリアのためにと、兄が婚約の辞退を申し出た。 しかし、初めから結婚に重きを置いていなかった皇太子が「面倒だからこのまま結婚する」と言いだし、予定通りマリアは婚姻式に臨むことになった。 他サイトでも掲載しています。 表紙は写真ACより転載しました。

【完結済】病弱な姉に婚約者を寝取られたので、我慢するのをやめる事にしました。

夜乃トバリ
恋愛
 シシュリカ・レーンには姉がいる。儚げで美しい姉――病弱で、家族に愛される姉、使用人に慕われる聖女のような姉がいる――。    優しい優しいエウリカは、私が家族に可愛がられそうになるとすぐに体調を崩す。  今までは、気のせいだと思っていた。あんな場面を見るまでは……。      ※他の作品と書き方が違います※  『メリヌの結末』と言う、おまけの話(補足)を追加しました。この後、当日中に『レウリオ』を投稿予定です。一時的に完結から外れますが、本日中に完結設定に戻します。

旦那様、愛人を作ってもいいですか?

ひろか
恋愛
私には前世の記憶があります。ニホンでの四六年という。 「君の役目は魔力を多く持つ子供を産むこと。その後で君も自由にすればいい」 これ、旦那様から、初夜での言葉です。 んん?美筋肉イケオジな愛人を持っても良いと? ’18/10/21…おまけ小話追加

選ばれたのは美人の親友

杉本凪咲
恋愛
侯爵令息ルドガーの妻となったエルは、良き妻になろうと奮闘していた。しかし突然にルドガーはエルに離婚を宣言し、あろうことかエルの親友であるレベッカと関係を持った。悔しさと怒りで泣き叫ぶエルだが、最後には離婚を決意して縁を切る。程なくして、そんな彼女に新しい縁談が舞い込んできたが、縁を切ったはずのレベッカが現れる。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

十年目の離婚

杉本凪咲
恋愛
結婚十年目。 夫は離婚を切り出しました。 愛人と、その子供と、一緒に暮らしたいからと。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

敗戦して嫁ぎましたが、存在を忘れ去られてしまったので自給自足で頑張ります!

桗梛葉 (たなは)
恋愛
タイトルを変更しました。 ※※※※※※※※※※※※※ 魔族 vs 人間。 冷戦を経ながらくすぶり続けた長い戦いは、人間側の敗戦に近い状況で、ついに終止符が打たれた。 名ばかりの王族リュシェラは、和平の証として、魔王イヴァシグスに第7王妃として嫁ぐ事になる。だけど、嫁いだ夫には魔人の妻との間に、すでに皇子も皇女も何人も居るのだ。 人間のリュシェラが、ここで王妃として求められる事は何もない。和平とは名ばかりの、敗戦国の隷妃として、リュシェラはただ静かに命が潰えていくのを待つばかり……なんて、殊勝な性格でもなく、与えられた宮でのんびり自給自足の生活を楽しんでいく。 そんなリュシェラには、実は誰にも言えない秘密があった。 ※※※※※※※※※※※※※ 短編は難しいな…と痛感したので、慣れた文字数、文体で書いてみました。 お付き合い頂けたら嬉しいです!

処理中です...