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俺、無双

俺、聖女無双する2

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そうこうするうちに、俺たちの出番だ。
俺は知っている。第一印象、大事!

シャララララン!

ラッパではなくハープがかき鳴らされた。
ちょっと笑いそうになっちゃったのをこらえて、俺は「慈愛に満ちた聖女の笑み」を浮かべる。
そうなってるかわかんないけど、イメージは重要です。

お兄様が俺をお迎えに来てくれて「さあ、サフィ」と俺の手を取る。
ゲイルは、とみるといつの間にか現れた正装の公爵がスッとゲイルの手をとった。
ゲ、ゲイル!目が死んでる!気を付けて!!

神秘的な演奏の中、聖女のご入場でございまあーす!!

ザッ!

頼んでもないのに、自ら貴族たちが頭を垂れる。
ひいいい!

ゆっくりと歩みを進めて中央にたどり着くと、またピタリと音楽が止まった。
侍従さんが合図してくれたのね。ありがと。

今の立ち位置は、王様、お兄様&俺、ゲイル&公爵。こんな感じ。
王妃様は王様から一歩下がったところにいる。

「聖女様。みなに声を掛けてやってもらえないだろうか?」

え?俺?
ゲイルでもいいよね、とゲイルを見たら、機能に片眉あげて口ぱくで「や・れ」。
えええ?!

お兄様がにこりと笑んで「さあ、サフィ」と俺を促してきた。
仕方ない。覚悟を決めよう。
俺はできるだけ重々しい感じで言った。

「お、おもてをあげてくだしゃい!」

!!!!やっちまったああああああ!!!!
もおおお!!もおおおおおお!!!!!

貴族たちの肩がビクリと震えた。
「子供?!」「噛んだ?!」みたいな心の声が聞こえるきがするううう!
おまけに誰も頭をあげてくれないっ!なんでええええ?!
意地悪か?空気読めよ!

俺はもう一回精一杯声を張り上げた。

「おもてを!あげて!ください!」

ザアアアッ!!

一斉に貴族の顔が上がり、俺を見て「えっ」「おおっ」「ほう…!」という表情に。
よし、今だ!俺はやるときはやれる男の子!!

「みなさま、オレは、グランディール公爵家が3男、サフィラス・グランディールです。
10さいになりましたら、グリフィス伯爵のこどもになるよていです。
このたび、せいじゅうさまに聖女だと知らされ、この場におります」

ここですんばらしいあのボウアンドな礼をキメる。片足を引き、優雅に可憐に。
そして顔をあげると同時に、くびをかしげて貴族たちに微笑みかけた。
くらえ、いつもゲイルがメロメロになるやつーーー!!

「おお…!なんというお可愛らしさ…」
「稚くもお美しい…!」
「なんと愛らしいお方なのだ!」

貴族の顔がピンクになって口がポカンと開いたから、メロメロ効果はあったと思う。
俺は照れてれしながら小さく手を振ってみた。
えへへ。よろしくー。よろしくー。

あの偉そうだったオジサンたちが、にこにこしながら手を振り返してくれる。
嬉しい!


すかさずスンバラシイ美声が俺に続いた。

「私はサフィラスの叔父、グリフィス伯爵家が当主ゲルリアス・グリフィス。
こたび、私も聖獣様より聖者の任を受け、この場におります次第」

なんて堂々たる口上なの!
てか、ビミョーな発音にしてさりげなく聖女じゃなく聖者って言ってる!ズルイ!!

にこにこして俺を見てた貴族たちが、ゲイルを見て今度は口をパカンと開けた。

「まさか…!グリフィス伯爵?!」
「なんと美しい!あのご当主か?!」
「髭がないだけでこんなにも変わるとは…!」

すっかり見惚れてしまったようだ。これは惚れたね。
中には耳まで赤くなってる人もいる。
うんうん。今のゲイル、セクシー迫力美女だもん!女王様!

公爵がさりげなくゲイルを隠すように前にでて睨みを利かせた。

ちょっと収集つかない感じに、貴族たちを代表してか成金が口を開く。

「発言をお許しいただけますか?」

ゲイルと俺が頷き、王様が許可を出した。

「うむ。許そう」

貴族とは!みたいに偉そうな感じの成金公爵が、今はなんだかもんのすんごい複雑そうな顔で、まるで幼子に話しかけるみたいに優しく俺に話しかけてきた。

「サフィラス様、先日は失礼致しました。息子のシュバイツがお世話になっておるようで…。
私のことは記憶にございますでしょうか?」
「はい。おぼえています。くんれんにさそったらおことわりされました」
「…は、いや…その際は失礼致しました。
無礼をお許しください。しかし…サフィラス様が聖女というのは…誠なのでしょうか?
確かに大変お可愛らしくていらっしゃいますが、サフィラス様は、確か男児であると存じておりました…」

そ・う・で・す・よ・ねー!わかるわかる!!
わかるけど!
なんで今それ言っちゃうかなああ!

ブワリ。

ゲイルからもんの凄い殺気が放たれ、会場が一瞬で10度くらい下がった。

「ヒイ!」

なにしろ最強のゲイル。厚顔な貴族ですら悲鳴を漏らしたが、目の前のオッサンはしらっとしてる。
さすがバイツー先生のクソ親だ!その意気やよし!敵だけど!

俺は男児云々には触れず、にこりと微笑んだ。

「聖獣さまがみとめたものが聖女だそうですので。
しょうこをごらんにいれますね」
「は?証拠?」

俺はすう、と息を吸って両手を高々とあげ、ルーダとルー君を呼んだ。

「聖獣、しょうかん!」

うっひゃあああ!気持ちいいい!これ、やってみたかったやつ!

とたん、グオンと空間が歪み膨大な魔力の圧がかかる。

貴族の中でも魔力の弱いものがその圧に耐え切れず床にふらふらとしゃがみ込んだ。
口元を押さえて蹲っている。リバースしないでねっ、ファイトっ!

と。
急速にその圧が収束し、形を取り始める。
そこには…

「サフィ!呼んだか?」

パンパカパーン!
ルーダとルー君、聖獣おやこ登場!!


シーーーン。
静まり返る会場。みんな動きを止め、ピクリともしない。

そんな彼らに、俺は片手をあげて2聖獣を紹介した。

「ごしょうかいします!ルーダと、ルーくん!聖獣です!
そして、オレのしゅごじゅうです!」

それに応えるように、ルーダが咆哮をあげる。
ウオオオオオン!

「我はフェンリル。神よりこの地を任された聖獣である。
そしてサフィに名を授けられ、サフィの守護獣となった」

ズザアアアアア!!
貴族たちは一斉に床にしゃがむと片膝をつき頭を垂れ、最上位の礼を取った。

「うむ。面をあげよ。楽にするがよい」

俺は顔をあげた貴族たちに渾身のドヤアをお見舞いした。
ドヤアアア!
ほおら、これで文句ないでしょ!俺、聖女!

「ルーダとルーくんは、ゲイルも王家も守ってくれます。
ついでに、オレがおせわになっているサフィールこうしゃくけも、グランディールこうしゃくけも守ります。
みうちですので!」

貴族たちに向かって胸を張って堂々と宣言!

「うむ。サフィは我の主人ゆえ。サフィを傷つけるものには容赦せぬぞ」

ほおら、俺たち、聖獣様が後ろ盾なんですよー!
誘拐しようとか、利用しようとか思わないように!
みんなで一緒に国民のためにがんばりましょー!

念のためちょっと大げさに言っておくことにする。

「えっと。ぐたいてきには、オレとかゲイルとか、みうちになにかあると大変なことがおこります。
りようしようとかしたら、滅されます。
ゆうかいもかんきん、ダメです。滅します。
どうぞそのことをおわすれなきようにおねがいいたしまする!」

貴族たちがみるみる青ざめてアワワ。
必死で頭を左右に振っている。

「なにも悪いことをしなければ大丈夫ですので。ごあんしんを!」

貴族たちの顔に血の気が戻り、ふう、と安心したように肩を落とした。
まだ青いヤツは、きっと悪いこと考えたやつ!顔を覚えとこ!
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