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俺、またしてもお披露目会?!

俺、きんしん

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お兄様もようやくいつもの仕様(キラキラ)に戻り、ひとあんしん。

でも。
今いうのも酷かもしれないが、忘れてそうなので言っておく。

「あのね。なかなおりしましたけれども!
あの『こうしゃくけたちいりきんし』はけいぞくですので!
おわすれなく!」

俺をママ扱いした恨み、忘れてないんだからな!

「え?あれ、有効なの?!
魔法の訓練に、私も公爵家に通う事になっていたと思うんだけど…」

困ったような顔をしてるけど、それ絶対わざとでしょ!
このどさくさで、うやむやにするつもりだな!
俺はだまされませんので!

腕を胸の前で組み、威厳を持って俺は言った。

「それはじぶんのおうちでおねがいします。
ぼく だいじょうぶですので!おきづかいなく!」

ガーン!
お兄様の顔にそんな文字が見える気がする。
でもゆずらぬ!
男には決してゆずれぬ戦いがあるのだ!いつかどこかで誰かのじっちゃんが言ってた!

「ハハハ!これはレオンの負けだなw諦めろ。
まあ、サフィがそっちに行った時には会えるんだし、いいだろ?」
「無理ですよ!ゲイル叔父様も分かってますよね?
私はサフィと毎日一緒に眠っていたのですよ?
サフィを抱きしめて眠り、サフィのおはようで起き、一緒に朝食を…。
それがどれだけ私の癒しになっていたか…!!
その癒しを急に失い…どれだけ毎日がむなしいか……!!」

えー?!そうだったの?
お兄様、俺で癒されちゃってたの?
毎日俺のお世話で申し訳ないと思ってたんだけど。
問題ナッシングだったのか!早くいってよおお!

「ぼくがゲイルだっこで『ほう!』てなるのとおんなじ!
それがないとむなしい!わかりみ!
それはたいへん!いちだいじ!」
「そうだよなあ。俺もサフィが居ないと癒しがねえもん。分かるぞ、レオン」


共感を示し同意してあげたというのに、お兄様は複雑なお顔。
拗ねたように唇を尖らせて

「サフィはゲイルが一番なんだね。私ではダメなのかな?」

と上目遣い。
ええー?!かわいい!
カッコいいお兄様が、かわいい!

「お前でもそういう顔するんだなあ!」

ゲイルが顎をさすりながら感心したように口笛を吹いた。
お行儀悪いですよ!

「……分かっていますよ。子供みたいなことを言っているって。
自分でも『らしくない』と思いますよ。
……でも……私だって嫉妬くらいするんです」

お兄様はぼそぼそとそう言うと、プイっとおよそを向いてしまった。

「おにいさま、すねた!すねすねもーど!」

おおお!!

ぷいっ。
覗き込む。
ぷいっ。
ちょっと面白くなってしまって、顔をそむけたお兄様の顔を右に左に移動して覗き込む。

何度か繰り返してたら

「ぷはっ!
あはははは!もう!サフィ!」

お兄様が笑い出した。
俺も可笑しくなって、ふひゃひゃとお腹を抱えて大笑い。

「レオン…サフィに似てきたぞ?」

ゲイルが呆れたようにお兄様の頭をくしゃっとした。
最初の頃に比べるとだいぶんぞんざいな扱いになっちゃってるんだけど、お兄様はそれが嬉しそう。

「叔父様!」

髪を撫でつけ、抗議しながらも笑ってる。こういうのがずうっと続けばいいのにね。




ほのぼのとした気持ちでいた俺だが、ゲイルの言葉に撃沈。

「サフィは、一週間謹慎だ」
「え?!」
「お前は何度気をつけろといってもきかねーからな。少しは反省しろ。
1週間は外出禁止!
エリアスとバイツー先生を部屋にやるから、部屋で精神を鍛える訓練をしておけ!
魔力もそれで安定するし、一石二鳥だろ?」
「……それって…ばつ?」
「ん?」
「おへやにおこもり、ぼくのつうじょうしよう。ずっとそうだったし。
ぜんぜんへいきなんだけど」
「……そういえばそうか。
あんまりに色々ありすぎて随分前のことに思えるが…部屋から出てあちこちしてんの、この2週間くらいだったな」

うーん…。
謹慎じゃあ俺には罰にならないよねえ、と頭を悩ませていると。

「まあ、それでも罰にはなるだろ」

とゲイル。
ん?どうして?
その疑問の答えはすぐに与えられた。

「私にとっては充分な罰ですね…」

おにいさま、しょんぼり。
そうか!侯爵家、出入り禁止。俺が王城に行かないと会えないのか!
ガーン!そ、それは俺も寂しい!

ゲイルは分かってたようで、にやあ、っとまるでチェシャ猫のような笑みを見せた。

そういうことかあ!
うう…。お兄様。1週間ばいばいだね。
がんばってね。俺もがんばるから。


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