もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。

文字の大きさ
上 下
115 / 362
俺、またしてもお披露目会?!

閑話休題 サフィが、ばたんきゅう(お兄様視点)

しおりを挟む
サフィちゃんが寝ている間に、お兄様ちょっと可哀想な感じになっていたのでした。

※※※※※※※※※※※※※※※※

ルーダ様と楽し気に遊んでいたサフィが、突然倒れた。
つい先ほどまできゃっきゃとあちこち走り回っていたのに、突然立ち止まり

「めがまわる…」

と言ったと思ったら、ふらふらと足元がおぼつかなくなりそのまま床に崩れ落ちたのだ!

「サフィ!!」

とっさに近くにいたゲイルが抱き止める。

私も慌てて駆け寄り、サフィの様子を見た。ゲイルの腕の中のサフィは、意識がない。そしてその顔は真っ青だった。
いつもやわらかなピンクに染まっているほほも、色を失ってしまっている。
楽し気に輝くその瞳も今は閉じられたまま、長いまつげが顔にかすかな影を落としていた。

背筋がゾッとした。
公爵に聞いた「サフィラスが死にかけたことがある」という話が脳裏に浮かび、急に現実味を帯びて私にのしかかってきた。

思わず伸ばした手を、ゲイルが制す。

「大丈夫。息はしている。
……どこか、サフィを寝かせてやれる部屋はないだろうか?
そこでこうなった原因を詳しく調べたいんだが…」

まるで親鳥が子を守らんとするかのように、ゲイルの腕がしっかりとサフィを囲い込み「俺のものだ」と主張していた。

「レオン、俺が支えるからサフィの上着とブーツを脱がせてやってくれないか?」
「あ、ああ!…サフィは大丈夫だろうか?」
「魔力の乱れを感じる。恐らく、一気に魔力を使い過ぎたんだろう」
「そうか…。私の魔力を分けてやることはできるだろうか?」
「いや、俺のをやる。俺は血縁だし、属性もかなり近いからな」

慌てて部屋を手配させる一方で、どこか焦燥を感じた。
私など蚊帳のそとで、ゲイルにより私の大切なサフィの処遇が決まっていく。

ずきん!

ゲイルの行動は、愛する息子を心配する親として当然の行動。
家族として当然の権利だ。

なのになぜか私の胸は痛んだ。

なぜサフィを守るのが私の腕ではないんだ?
私の大切な子が倒れたというのに、なぜ黙ってゲイルの指示に従うことしかできない?

ゲイルが親であり医師だと分かってはいても。
私にはない権利をゲイルが持っている、そのことが羨ましく、無性に悔しかった。

私はゲイルのようにサフィを1番に守る権利が欲しいと思った。
サフィを腕の中に囲い、大切に大切にする権利が欲しい、そう思った。

今の私の立場は、サフィが自分を「まがりにん」と称したように「一時的に宿を貸す家主」であり「仮のサフィの兄」に過ぎない。
将来的に父親になると決まっているゲイルは元より、過去に色々あれど血縁である公爵たちよりも私のサフィへの立場は下なのだ。
サフィに関する権利は彼らにあり、私はいわば「部外者」なのだ。
そのことをまざまざと見せつけられたような気がした。




サフィは青ざめた顔でひたすら眠っている。上下ずる胸だけが彼の生を伝えてくれた。

その手をしっかりと握り、まるで祈るような姿勢で少しづつ魔力をサフィに流し込むゲイル。
本来ならば魔力の多いサフィにゲイルから魔力を送ることはできない。
だが、今の魔力量はサフィのほうが少なくなっているため、このような手段が可能なのだという。

先に屋敷に戻っていた公爵たちには、
サフィが倒れたこと、
こちらで寝かせてゲイルが付き添い様子を見ること、
サフィの意識が戻るまではそちらで待機してもらうようにと連絡をさせた。
そして最後まで部屋に残っていた父上たちも、サフィが落ち着いたのを確認し、しぶしぶ公務に戻っていった。

全ての手配が終わっても、私はどうしてもサフィから離れられず、かといってサフィに触れいたずらにサフィ魔力を揺らしてしまうこともできず、ただサフィの横でひたすら彼の顔を眺めて立ち尽くしている。

サフィの手を握りつきっきりで世話をやくゲイルは、そんな私に苦笑した。

「おい。レオン。お前の方が倒れそうだぞ?」

それをあなたが言うのか。
あなたのほうが私よりよほど倒れそうではないか。
いっそ私があなたと交代したほうが…!

できるなら、私の魔力をサフィにあげたかった。
私以外の魔力など、サフィに流して欲しくなかった。

私だって、たった1週間ではあるがまるで親のようにサフィを慈しみ、大切に守り、世話をしたのだ!
それなのに…!

溢れそうな言葉を、無理やり飲み下した。
サフィにはゲイルが必要なのだ。
そして、ゲイルにはサフィの側にいる権利がある。



私が何を言わずともゲイルには私の気持ちが伝わったようだ。
どこか疲れ切ったような顔で苦笑し、私を諫める。

「…お前の気持ちはよくわかる。
だがな、いずれにせよ、今お前がここにいてもやれることはない。俺に任せろ。
俺はサフィの父親であり、医者なんだぞ?
目を覚ましたら一番に呼んでやるから。
それまではしっかり休み、自分の仕事をしろ。サフィだって、そうして欲しいはずだ」

確かに。
サフィは私が仕事を放棄することなど望まないだろう。
魔力が足りず眠っているだけだ。命の危険はない。だから、何人もつきそっている必要はないのだ。
分かっている。分かってはいるんだ!

でも……

私は触れてしまわぬよう気を付けながら、そっとサフィの小さな頬に手をかざした。
青ざめた頬に私の熱が少しでも伝わればいいと。そう願って…。

ただひたすら眠る彼の顔は、とても静かで端正だった。
いつもにこにことしているから気づかなかった。笑顔が消えるだけで、こんなにも違うのか。
まるで神が作った奇跡のビスクドールのようだ。繊細で秀麗な生ける美術品。

それでも。

ちょっすねたように唇を尖らす顔が見たい。
目をキラキラさせたあの笑顔が見たい。
怒って頬を膨らませる、あの可愛い表情を見せて欲しい。
生き生きとしたサフィが、私は好きなのだ。

「……サフィ。少しだけ離れるからね?
私は自分のなすべきことをしてくるよ。
だから…早くその目をあけて、私を見て?そのお口でお兄様の名を呼んで?
早く元気におなり」

「……熱烈な告白みたいだぞ?」

ゲイルが呆れたように片眉をあげた。

「…、そのつもりはありませんよ。
なにしろサフィには最強の保護者がついていますから」

私は苦々しい想いで呟く。

今は、悔しいがゲイルに託そう。

だが…サフィに許されるなら、権利が欲しい。
一番にサフィを守る、その権利をどうか…。





しおりを挟む
はじめまして。初めて書いてみたオリジナル異世界BL。可哀想な主人公が、それに負けずに力業で幸せになるのが好きです。ハピエン主義なので、完全無双のハピエンになります。誤字脱字など、ご容赦くださいませ(;・∀・)→ご指摘があれば修正いたしますので!ご都合主義の作者の自己満足小説です。作者豆腐メンタルのため、ご不満のある方は「そっ閉じ」でお願いいたします。。。お楽しみいただけましたら、ぜひぽちっとイイネをお願いいたします♡コメントもぜひ♡
感想 464

あなたにおすすめの小説

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします。

樋口紗夕
恋愛
公爵令嬢ヘレーネは王立魔法学園の卒業パーティーで第三王子ジークベルトから婚約破棄を宣言される。 ジークベルトの真実の愛の相手、男爵令嬢ルーシアへの嫌がらせが原因だ。 国外追放を言い渡したジークベルトに、ヘレーネは眉一つ動かさずに答えた。 「国外追放ですか? 承りました。では、すぐに国外にテレポートします」

自分勝手な側妃を見習えとおっしゃったのですから、わたくしの望む未来を手にすると決めました。

Mayoi
恋愛
国王キングズリーの寵愛を受ける側妃メラニー。 二人から見下される正妃クローディア。 正妃として国王に苦言を呈すれば嫉妬だと言われ、逆に側妃を見習うように言わる始末。 国王であるキングズリーがそう言ったのだからクローディアも決心する。 クローディアは自らの望む未来を手にすべく、密かに手を回す。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約破棄 ~家名を名乗らなかっただけ

青の雀
恋愛
シルヴィアは、隣国での留学を終え5年ぶりに生まれ故郷の祖国へ帰ってきた。 今夜、王宮で開かれる自身の婚約披露パーティに出席するためである。 婚約者とは、一度も会っていない親同士が決めた婚約である。 その婚約者と会うなり「家名を名乗らない平民女とは、婚約破棄だ。」と言い渡されてしまう。 実は、シルヴィアは王女殿下であったのだ。

【完結】王太子殿下が幼馴染を溺愛するので、あえて応援することにしました。

かとるり
恋愛
王太子のオースティンが愛するのは婚約者のティファニーではなく、幼馴染のリアンだった。 ティファニーは何度も傷つき、一つの結論に達する。 二人が結ばれるよう、あえて応援する、と。

義母様から「あなたは婚約相手として相応しくない」と言われたので、家出してあげました。

新野乃花(大舟)
恋愛
婚約関係にあったカーテル伯爵とアリスは、相思相愛の理想的な関係にあった。しかし、それを快く思わない伯爵の母が、アリスの事を執拗に口で攻撃する…。その行いがしばらく繰り返されたのち、アリスは自らその姿を消してしまうこととなる。それを知った伯爵は自らの母に対して怒りをあらわにし…。

双子の妹を選んだ婚約者様、貴方に選ばれなかった事に感謝の言葉を送ります

すもも
恋愛
学園の卒業パーティ 人々の中心にいる婚約者ユーリは私を見つけて微笑んだ。 傍らに、私とよく似た顔、背丈、スタイルをした双子の妹エリスを抱き寄せながら。 「セレナ、お前の婚約者と言う立場は今、この瞬間、終わりを迎える」 私セレナが、ユーリの婚約者として過ごした7年間が否定された瞬間だった。

処理中です...