もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。

文字の大きさ
上 下
97 / 358
新生活スタート!

俺びっくり!たいへんたいへん!

しおりを挟む
とりあえず、ルー君のことは様子見で、おやすみなさいした俺とゲイル。


翌日…

「ひゃあああああ!うそでしょおおおお!!」

俺の大声で清々しい朝はスタートしたのだった。

「サフィ?!どうした?!」
 
慌てて飛び起きたゲイルに、俺は布団をめくって中を見せた。
お布団に潜り込んでいたのは…小型犬くらいにおっきくなったルー君!!
見た目、すっかり狼っぽくなってる!!
俺の猫ちゃん、どこー!
1日でこんなにまで変わるとは!フェンリルってすごい!

「はあ?!マジか!……マジかああああ………。これ、猶予ねえやつだわ」

がっくりと項垂れるゲイル。
ふうーっ、と嘆息し、頭に手をやると前髪をくしゃくしゃっと掻き混ぜる。

俺も、ううむ、と腕を組んで考え込む。
確かにこれはもう隠しておくのは難しそう。
ゲイルも、ううむ、と考え込む。

「多分これが元々の大きさなんじゃないか?魔力が足りず維持できなかっただけだろう。この調子でサフィの魔力食ってたら、数日のうちにもっとデカくなるぞ?」
「ひょええええ!」

「しょうがねえ。今から王宮に行ってくるわ」

急にバリと起き上がり、あわただしく着替えだすゲイル。

「…ぼくもいっしょにいくほうがいい?」

こてん、と首を傾げ提案したが、ふは、と笑って却下されてしまった。

「いや、まずは俺が先に話を通してくる。サフィとルーが行くのは、それからだな。
とりあえず、サフィはちとここで待っててくれるか?
ルーも部屋から出すなよ?」



俺の頭をぽんぽん、として。

「まず、公爵に説明してここに連れて来るから。それまでに着替えておいてくれ」
「りょーかい!」

ルー君の首を指でこちょこちょ。

「ルーもいい子にしてろよ?でないとサフィと一緒にいられなくなるからな?分かったか?」

おっきくなったルー君はフサフサになった尻尾をふりふりしながら、うんうん、と頷き

「わかったあ!ルー、いい子にしてるー」

と言った。知能も一気に成長してる!!

「ひゃあ!ルーくん、かしこい!すごい!てんさい!」
「……俺はもう何があっても驚かねえぞ。うん。もう驚かねえからな!
てか、ルー、やっぱ猫のふりしてやがったな!にゃーにゃー言わず普通に話せるんじゃねえか!」
「サフィ、ねこが好き。ぼく、ねこ!」
「ルーくんっ!きをつかわせてごめんねえええ!ぼく、ルーくんがねこじゃなくてもルーくんがすきっ!」
「……ごめんね。うそついた。ぼく、フェンリル。にゃーにゃーいわない」
「やっぱりなああああ!!確定じゃねえか!」

ごめん。ゲイル。
ルー君は俺に気を遣っただけなの。
悪いのは俺。

「フェンリルでもルーくんかわいいよ。よきよき」

「しかし、やっぱフェンリルだったか。見た目ももう明らかに…だもんなあ…」

ゲイルは頭を抱えてブツブツいっていたが、ふるりと頭を振ると「よっし!いくか!」と気合を入れて部屋から出て行った。






ゲイルを待つ間、俺はルー君に色々聞いてみることにした。

「ねえ、るーくん。ぼくのいってることとか、わかるの?」
「わかるよー」
「るーくん、まいご?かぞくは?」
「あのねえ。すだち、って言ってた。ぼく、しめいがあるんだって。においをたどっていきなさい、って言われたの。それでにおい探してたんだけど、なかなかみつからなくって。どんどんお腹へっちゃったんだあ。それで力がでなくなって…。そしたら、好きなにおいがあったの。だから、がんばって人間のまえにでたんだよ。サフィのにおい。あの人間にもついてたの」
「エリアスか!ぼくのおじさまなんだよ。ちがつながってるの。フェンリルのかごがあるかけい、なんだよ」
「だからかあ。あの人もいいにおい。いちばんは、サフィ。ゲイルが次にいいにおい」
「ねえ、すだちってことは、もうルーくんはおうちにかえらなくていいんだよね?」
「うん。サフィといるのが、ぼくのしめい。いっしょにいる!」
「やったあ!えへへへー!じゃあ、ぼくのおとうとになって、いっしょにいようね!ゲイルがおとうさまだよ!」
「ゲイルおとーさま!ぼく、おとーと!」

俺はもうルー君を返さなくていいって分かって、すっごく安心した。
ルー君のおっきくなった身体にもふっと顔を埋め、ぐりぐり。
ルー君が

「くすぐったいよおおお!」

と身体をくねくねしながら、きゃっきゃと笑う。

「えへへー!もふもふこうげきー!」

逃がさないようにもっとぎゅうっと抱きしめて、お腹に顔をうめ、むふー!むふー!と息を吐く。

「ひゃあああ!!やめてええええ!!」




「………何やってんだお前ら」

呆れたような声に顔をあげると、部屋の入口にゲイルがいた。
開き直ったようで、すっかり落ち着きを取り戻している。
良かったあ!

「こおら、サフィ!着替えておけって言っただろ?お行儀が悪いぞ!
ティガー、頼む」
「はい。さあ、サフィラス様、お着替えしましょうね」

ルー君(中)を見ても顔色ひとつかえず、眉をくいっと上げただけで通常仕様のティガー。
やっぱりティガーはすごい!

一方、ゲイルと一緒に来ていた公爵は…かちこーん、と固まっていた。
この人って、あんまりに驚くと固まるんだよね。

俺はちょっとイタズラ心が出て、

「ルーくん、こうしゃくだよ。もっかいじこしょうかいして?」

とルー君に頼んだ。

「はーい!こうしゃく、きのうなでなでありがとー。ぼく、サフィのおとーとになったよ。よろしくー。ぼく、じつはフェンリル。ねこのふりしてごめんねえ?」

公爵が、かちこーん、から、がちこーん、になった。
つんつん。つんつん。
おーい、公爵。大丈夫か?息してるうう?
つんつん。つんつくつん。

あーあ。またこれですか。
俺は以前に押したスイッチを押すことにした。
ゲイルゲイル、と抱っこして貰い、公爵の鼻をぽちっとな!

「さいきどうすいっち、おん!」


公爵は、ハッと息を吸い、動き出した。

「……フェ…フェン…リル⁈……は、話が……で、きる…のか………?」

まだまだ動きが怪しい。

「うん。ぼくお話しできるよー!」

ルー君がハーイ、と手を挙げる。

「かわいいのに、かしこい。ルーくん、てんさい。さいこうのおとうと!」

俺はもんのすんごいドヤアをかました。だって、こんな弟がいる子、いる?
可愛いうえに天才のうえに聖獣!
えっへん!
おっほん!
ルー君を指さしてドヤドヤしていたら、

「サフィはもうすっかり慣れたなあ。相変わらず凄い適応力だ」

ゲイルが何故か突然俺を褒めた。
なんかしらんが、そうでしょうそうでしょう!
俺、適応力には自信があるんだ!存分に褒めるがよい!

「念のため言うが褒めてねーぞ?」
「なんで?ゲイルはぼくをほめるべきでしょお!ぼく、よいこ!」
「はいはい。確かにサフィはいい子だし、大好きだぞー」
「もっとこころをこめて!」
「大好きだぞ。俺の可愛い息子くん」

抱っこですりすり。
これこれー!これが無いと朝が始まらない!
あ、そいえば、おはよーのチューをしてない!

「ゲイル。おはよー!」

チュ!

「あ、ああ。おはよう、サフィ!」

チュウを忘れているゲイルに俺は「ここ、ここ」とほっぺを差し出し、無事にチュウをゲットした。
んふー。ゲイル、だいすきー!
するとゲイルの足元に、とことことこっ、とルー君が。


「ゲイルおとーさま。ぼくもほめてー」
「ん?おとーさま?まあ、サフィの弟だからな。
ん。大好きだぞ、ルー。サフィを頼むな」
「まかせてー!」


俺たちがわちゃわちゃしている間に、公爵はなんとか落ち着いたようだ。
こほん、と咳をひとつすると、固まってなんていませんよ、って感じでスンとした表情で話し出した。

「その、ルー君は本当のフェンリルと言う事でよいのだろうか?
フェンリルといえば、神の使いとされる聖獣なのだが、なぜここにいるのだろう?
昨日会ったときより成長しているようだが、一体どのようなわけなのだ?」

うわ!怒涛のように話し出しましたよおおおお!
まだ正常じゃなかった公爵をゲイルが宥める。

「まあ、落ち着けよ。フィオ。
家の家系がフェンリルの加護もちってもは知ってるよな?
実際、過去に先祖がフェンリルを助けたってのは、本当のことらしい。その縁で、ルーもここに来たんだろう。
フェンリルってのは、魔力を食うんだ。魔力が足りずに弱って本体を維持できなくなってたのが、サフィから貰って力を取り戻したんだろう。これがこいつの元来の大きさだ。
まだ子供だから、もっとでかくなると思うぞ」

フィオ!公爵のこと、フィオって言った!
元々はこうだったのかな。
俺がちょっと公爵と近づいたら、なんかゲイルのあの他人行儀がなくなってきた。ゲイルと公爵、「サフィを守ろう同盟」みたくなってる。
まさか一緒にあのマリーの「サフィを守り隊」の隊員になってたりなんかしないよね?
やめてね。あれはちょっとばかし方向性間違ってるからね!

「こうしゃくとげいるは、まもりたいしないで!」
「は?何のことだ?」
「恐らくマリーが組織したサフィラスの護衛隊の事ではないか?」
「ああ、あれか」

ゲイルが遠い目になった。

「俺はサフィのお父様だからな。入らねえぞ。安心しろ。
あいつら、すっごく頼りになる奴らなんだぞ?…元来は優秀な奴ら…だったんだぞ?
ちょっとサフィが可愛すぎてああなっちまったが…。まあ、役目はしっかりと果たすさ!」

優秀なやつら、って過去形になってんじゃん!
うん。ゲイルは入ってなかった。良かった。

「こうしゃくは?」
「…………」
「こうしゃくは?」
「……当主として全てを把握する必要がある」
「……入ったの?」
「…………全てを把握する必要があるのだ」

目をそらす公爵。こいつ…入りおった!
「1にサフィ様!2にサフィ様!…」してんのかな…。
んんんんん…。
想像してしまった俺は、キュっと口をつぐんだ。
俺は気付いてませんよー気にしませんよー。
ゲイルが入ってなかっただけでよしとしよう。うむ。



「で、何の話だっけ?」

首をかしげるゲイル。

「……フェンリルについてだな」

そうそう!話の腰をおってごめええん!
あ!そいえば!

「ゲイルゲイル。ルーくんにきいた。るーくん、すだちした。『しめいがあるからにおいたどっていけ』っていわれたんだって。そのしめい、ぼくんとこ。ここにくるためにすだったの、ルーくん」



俺の言葉にゲイルと公爵は

「は?」

と言って、今度こそ完全に無になった。
しおりを挟む
はじめまして。初めて書いてみたオリジナル異世界BL。可哀想な主人公が、それに負けずに力業で幸せになるのが好きです。ハピエン主義なので、完全無双のハピエンになります。誤字脱字など、ご容赦くださいませ(;・∀・)→ご指摘があれば修正いたしますので!ご都合主義の作者の自己満足小説です。作者豆腐メンタルのため、ご不満のある方は「そっ閉じ」でお願いいたします。。。お楽しみいただけましたら、ぜひぽちっとイイネをお願いいたします♡コメントもぜひ♡
感想 458

あなたにおすすめの小説

王家も我が家を馬鹿にしてますわよね

章槻雅希
ファンタジー
 よくある婚約者が護衛対象の王女を優先して婚約破棄になるパターンのお話。あの手の話を読んで、『なんで王家は王女の醜聞になりかねない噂を放置してるんだろう』『てか、これ、王家が婚約者の家蔑ろにしてるよね?』と思った結果できた話。ひそかなサブタイは『うちも王家を馬鹿にしてますけど』かもしれません。 『小説家になろう』『アルファポリス』(敬称略)に重複投稿、自サイトにも掲載しています。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

妹の嘘の病により、私の人生は大きく狂わされましたが…漸く、幸せを掴む事が出来ました

coco
恋愛
病弱な妹の願いを叶える為、私の婚約者は私に別れを告げた。 そして彼は、妹の傍に寄り添う事にしたが…?

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

「あなたの好きなひとを盗るつもりなんてなかった。どうか許して」と親友に謝られたけど、その男性は私の好きなひとではありません。まあいっか。

石河 翠
恋愛
真面目が取り柄のハリエットには、同い年の従姉妹エミリーがいる。母親同士の仲が悪く、二人は何かにつけ比較されてきた。 ある日招待されたお茶会にて、ハリエットは突然エミリーから謝られる。なんとエミリーは、ハリエットの好きなひとを盗ってしまったのだという。エミリーの母親は、ハリエットを出し抜けてご機嫌の様子。 ところが、紹介された男性はハリエットの好きなひととは全くの別人。しかもエミリーは勘違いしているわけではないらしい。そこでハリエットは伯母の誤解を解かないまま、エミリーの結婚式への出席を希望し……。 母親の束縛から逃れて初恋を叶えるしたたかなヒロインと恋人を溺愛する腹黒ヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID:23852097)をお借りしております。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?

珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。 だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。 全2話。

処理中です...