もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。

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王城でのまがりにん生活

俺の王城生活最後の日 お昼ごはん

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オルガ団長に「基礎訓練終了!」のお墨付きとお兄さんの剣を貰い、俺は王城での間借り人生活最後の剣術訓練を終えた。
みんなものすんごく感慨深く別れの雰囲気を出しているが。
俺も思わずしんみりとしてしまっていたが。

ここでよおく考えてみて欲しい。
王城のみんなの強火の嘆きに、なんだか「ゲイルとまたいっしょ!」と喜ぶ俺の方が冷たいような感じになってしまっているけれど。
お世話になりっぱなしの王家の皆様には感謝しかないが、そもそも臣下である公爵家の、しかも嫡男ですらない3男なのだ。虹色魔力という異例の事態とはいえ、今の「王城でお泊りだよ!」状況の方がおかしいのである。お披露目会からそのまま拉致られてしまったような今の状況がおかしいのである。

たしかにお兄様と過ごす時間は、激減する。だって、1週間ずっと毎日お兄様の抱っこ&甘やかしで寝て、朝は「ミカミカの甘やかし朝ごはんon theお兄様のお膝」だったから、お兄様とミカミカとのお別れはほんとうに名残惜しい。
優しい王様や王妃様とのランチやディナーも週に1日になる。それも寂しい。

でもね。

あのー…。
俺、毎週こっちにも通うよ?
なんなら、オルガ先生とはほぼ1日おきに会うよね?
お兄様とミカミカに至っては、毎週末一緒だし魔法訓練もいっしょだから、ほぼ週4日は会うでしょ。
もおおお!
どんだけみんな俺のこと大好きなのおおお?困っちゃうなあ!
うそ!
うれしい!むちゃくちゃうれしい!胸がぽっかぽか。
みんな、みんな大好きいいいい!

ということで、俺は名残を惜しむみんなににっこにこ。
そりゃあ寂しいけど、それ以上に嬉しくってにっこにこ。ご機嫌。



「……サフィはそんなに帰るのが待ち遠しかったのか?王城では落ち着けなかったのかのう…」

お昼ごはんしながら、王様がしょんぼりと口にした。
俺があんまりにもにこにこしているから、そう思わせちゃったみたいだ。王様たちはすっごく良くしてくれた。良くしすぎなくらいに。
だから俺も、ゲイルにするみたいにわがまま言ったり甘えたりできたんだよ。うれしい、たのしいって思ったことを口にできたんだよ。

「んーん。おうじょう、とってもすてきなところ。だいすきです。ゲイルとはいっしょがいいけど。みんながぼくのこと だいすきっていってくれるのがうれしいの。だからにこにこしちゃうのです」
「おわかれがさびしいのは すきだから。だから さびしいけど うれしい。ぼくも みんながだいすきだから」

「それにね。まいしゅうあえるのもうれしい。おうさまたち、おいそがしいでしょう?それなのに、ぼくのためにじかんをくれるの。ごめんなさいだけど、うれしいの」

そう。結局、みんなの暖かな気持ちを浴びるほどにもらって、俺は本当にここに来て良かったと思った。
公爵家のあの部屋にこもったままでは、ゲイルという優しさに浸かったままでは、気付けなかっただろう。
大変なことも、苦しい事もあるけど。
目を向ければ、世界はこんなにも優しい。
勿論、悪意だって十分知っている。冷たい視線や、心無い言葉がどれだけ人を傷つけるのかも。
ゲイルに会うまでは「いきていないほうがよかったのかも」って思ったりしたのに。
みんなが俺が居て嬉しいって。俺と居るのが幸せだって言ってくれるから。
その視線で、言葉で、行動で語ってくれるから。
「いきてていいんだ」って。世界に認めて貰ってるって、気がするんだよ。

これまでね。俺は「俺の家族を、ゲイルたちを幸せにするんだ!」って思ってたけど。俺みたいな子がいないように、助けたいって思ってたけど。
今は違うんだよ。
俺は冒険者になって、みんなを守りたいの。みんなの幸せのために、頑張ってみたい。新しい未来を切り開いて見せたい。
そう願うようになったんだ。

たった1週間で、みんなは俺を変えてくれたんだよ。
沢山の幸せとありがとうを、伝えたい。上手く伝えられないけど。

「たった1しゅうかんでしたが。ぼく みんながだいすきになったの。だからうれしいのです。おうさま、おうひさま、おにいさま。やさしくしてくれてありがとうございます。これからもずっと だいすき!こうしゃくけにもどっても だいすきなので!ずっとずっと。ぼくはだいすきなので!ごあんしんください!」


伝わったかな。伝わってるといいな。
そう願いながらみんなをみたら、みんなの顔から「寂しい」とかが消えてた。代わりに浮かぶのは、幸せそうな微笑み。

「……そうだな。まだ出会ってたったの1週間だったな…。それなのに、もう我々にとってサフィは大切な子なのだ。それは、ずっとこれからも変わらない。変わらないのだから、寂しがる必要などないな。うむ!」
「うふふ。そうね。サフィちゃんに教えられちゃったわ。これが本当のお別れじゃないんだものね。毎週会えるんだし、ずっとずっとこの気持ちは変わらないんだもの。笑顔で見送ってあげなきゃ。ゲイルも待っているものね」

でも、お兄様だけはまだちょっとしょんぼり。

「………でも、やはり……寂しいなあ」

そういわれたら…

「…ぼくも…ちょっとさびしい」

するとお兄様が急にいいお顔になった。
言葉にするならば、ぱあああ、と全身から後光をまき散らす勢い。

「………そうだ!私の方がサフィのところに泊めて貰うこともできるじゃないか!うん!サフィ、すぐに会いに行くからね!待っていてね?」

おお!おにいさま!てんさいか!
俺がこっちに泊まるのがダメだったらそれでいこう!完璧!

「おにいさま、てんさい!それです!よき!」

嬉しくてお兄様のお膝でジタバタジタバタ。

「あははは!サフィ、危ないよ?そんなにはしゃがないで!」

声を出してお兄様が笑う。
元気になったみたいでよかったあ!俺も嬉しいよ!

「……レオン…あなた、そんな子だったかしら…?」
「レオンには兄弟がおらぬからなあ。本来はこういう子だったのかもしれん。サフィのおかげでレオンも明るくなったな。うむ。だが……レオン、あまり囲い込むのも良くないと思うぞ?」

困ったように首をひねる王様と王妃様に、俺は全然問題ないですよ、とアピールする。
ちゃんとしっかりとお兄様を迎えられるよう準備致しますから!ええ!問題などございませんので!

「だいじょうぶです!ゲイルにおおきなベッドをもらいますので!3にんでもねれます!」
「そ…そうか。ゲイルと寝ておるのか…。う…うむ…しかし…3人…はやめた方がよいのかもしれぬぞ…?」
「そうねえ。3人はちょっと…レオンとゲイルが……ええ…と…サフィちゃんを取り合って喧嘩しちゃうかもしれないわよ…?」
「なかよしなので!だいじょうぶです!」

こうして、無事王様たちから許可を貰い、お兄様はゲイルと公爵の許可がでたら、公爵家にお泊りできることになった。やったあ!
俺は嬉しくって、お膝の上でピョンピョン、はできずボヨンボヨンしながら、お腹に回されたお兄様の腕をぺちぺちした。


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はじめまして。初めて書いてみたオリジナル異世界BL。可哀想な主人公が、それに負けずに力業で幸せになるのが好きです。ハピエン主義なので、完全無双のハピエンになります。誤字脱字など、ご容赦くださいませ(;・∀・)→ご指摘があれば修正いたしますので!ご都合主義の作者の自己満足小説です。作者豆腐メンタルのため、ご不満のある方は「そっ閉じ」でお願いいたします。。。お楽しみいただけましたら、ぜひぽちっとイイネをお願いいたします♡コメントもぜひ♡
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