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王城でのまがりにん生活

俺の王城生活最後の日 午前中

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なんとか壊れたお兄様を復活させ、ようやく朝ごはーん!
お腹すきすきー!


テーブルの上には、大きな箱が。
な、なに?なに?
高まりまくる俺の期待。わくわくわくわく!

「今日の朝ごはんはー、これ!ジャ・ジャーン!」

ミカミカが蓋を開けると…

ママママ、マフィーン!!マフィーン!!

色とりどりのマフィンがぎっしり!!
赤・緑・黄色・紫・オレンジ…。
しかもその上には、あまあいフィリングやチョコ!
おおおおおおお!!!すげえええ!
魅惑の世界がここにある!!

「なにこれなにこれーーーっ!!!
うわああああああ!!す、すごいよおおおおお!!」

テンションがあがりすぎた俺は、思わずテーブルの周りを走り回ってしまった。

「おっと!落ち着こうね、サフィ!」

とちゅう、お兄様につかまってお膝の上に確保!
それでも我慢できず足をパタパタ。

「これ、これ、にじみたい!きれーい!おいしそー!!
ミカミカ、てんさい!きょうもてんさい!!さいこうのしぇふ!」
「いや、俺、侍従と側近だけどなwまあ、そんだけ喜んでくれたら作った甲斐があったわ!
ちなみに、例によってお野菜のペーストを練り込んであるぞ!栄養バランスもばっちりだ!
紫は、紫タマネギな!いやあ、サフィが苦手な野菜も食えるようにって、苦労したんだぜー!
食ってみてくれ!」

自慢げに胸を張るミカミカに、お兄様が苦笑した。

「ミカエル…君は一体どこにいくんだろうね…」

侍従けん、側近けん……シェフ?

じゃ、まずはおすすめの紫から…

「!!むらさき!おいしー!くさくない!とってもよき!!すごーい!!」

お兄様も食べてみて、とちょっと端っこをちぎってお兄様のお口に。

「おにいさま、あーんして!おいしーから!」
「あ、ああ…」

ちょっと赤くなりながら「あーん」と口を開けるお兄様。かわいい。

「!確かにこれは!」
「だろ?!
「…………まさか本当にシェフになるつもりかい?
シェフの代わりはいるが、私の側近はミカしかいないんだぞ…」

お兄様のいきなりのデレ!頂きましたー!

「いや、これはあくまでも趣味だから!てか、元々はお前に食わせるために始めたんですけどねえ?
側近も侍従も、クビにされるまでは辞める気はねえよ。クビにされるつもりもねえけどな!」

ミカが珍しく慌てている。
いつも余裕のミカが!照れてる!!
ううむ。朝からいいものを見てしまった。

「ふたりはなかよし。よきよき」

次はどれにしようかなー?

「サ、サフィとも仲良しだぞー!ほら、あーん!」

ミカが赤いマフィンをちぎって俺のお口に入れてくれた。

「そうだね。私はサフィが大好きだよ。ほら、こんどはこっち。あーん」

お兄様が黄色。

もぐもぐもぐ。

「じゃあ、こんどはこっち。ミカミカ、おにいさま、あーんして!」

俺がオレンジ。あ、これオレンジピールの色だ!

「うふふふふ。たのしーね!!
とってもおいしい。たのしくて、しあわせ」
「そうだね。幸せだ」


「ミカミカ!」

こっちこっち、とお兄様のお膝からミカミカを呼ぶ。

「ん?どうした?」

ミカミカが俺の方に身体を倒してくれる。
いつもミカミカはやさしい。
お口はわるいけど、とっても気遣いの人なのだ。
俺はミカミカをぎゅっとして、言った。


「あのね。ミカミカ。まいにちおいしーをありがとう。
とってもたのしい。おいしくてうれしい。
やさしくしてくれてありがと。ミカミカ、だいすき!」

「ぼく わすれない。また おとまりできたらごいっしょしてね。
おにいさまをよろしくね。さびしいときは いっしょにねてあげてね。
だっこしてあげてね。またくるからね。なかよくしてね」

突然、ミカミカの目から、ボトボトボトっと水が!

「み、みかみか?!」

「もおおおおおおお!!我慢してたのにさあああああ!サフィってばさあああ!!
俺だって、サフィが大好きだぞおおお!!
もう、ほんと、レオンじゃねーけど、俺のにしたいくらいだっての!!
俺の弟になるか?辺境に来る?毎日うまいもん食わしてやるぞ!」
「いや、それなら私の弟に…」
「ゲイルのむすこですので。ごめんなさい」
「つれない!そっこーじゃん!…………マジでさ。サフィに飯作るのも楽しかったんだよ。喜んでくれるのが、嬉しかった。レオンもすっごく幸せそうだし。………サフィ………ここにいろよ……」
「……ごめんね?でも、ありがと。またくるからね」
「………しょーがねーよな。ゲイルがいるもんな。…じゃあ、また来いよ!待ってるからな!」

ミカミカが鼻をすすりながら、俺をぎゅうってした。レオンお兄様ごと。
お兄様は

「痛いぞ、ミカ」

と言いながらも、大人しく抱きしめられてた。
その声はちょっと鼻声で震えてた。
俺は何か言ったら泣いちゃいそうで、黙ってぎゅうってし返した。


なんだか俺たち、親子みたいだな。
世話焼きのミカおかあさまと、レオンおとうさまと、俺。
毎日、とっても幸せで楽しかったよ。ありがとう。






それから、いつものメンバーに加え、お兄様とミカミカも一緒に剣術訓練に行った。
お兄様と俺とミカミカが手を繋いでるのを、いつメンたちが生ぬるい目で見ている。
いいじゃん!仲良し!
なんか前世でこういう宇宙人の写真見たことあるけど、気にしないもんね!

さて、訓練場には…なんと!
オルガ団長だけじゃなく、王様と王妃様も待ち構えていた!何故⁈

「おはよう、サフィ。よく眠れたかな?」
「お、おはよーございます。おうさまとおうひさま、どうしているの?!」

は!ヤバい!
驚きすぎて思わず失礼なことを言ってしまった。

「…おうさまと、おうひさま、どうしていらっしゃいまするか?」

言い直してみたら噛んだ。あああああ!!やっちゃったあ!
お口を慌てて手で塞ぐ俺。
そんな俺にも王様は優しかった。

「良い良い。気にするな!」

となでなでされたと思ったら、さり気なあく王様抱っこ。


「どおれ、大きくなったかな?」

まだ1週間ですが、大きくなってますか?
運動して沢山食べたから、10センチくらいはいけるんでない?
さあ!どれくらい?遠慮なく言っていいんだよ?
ワクワクと王様を見たら。

「……少し…少し!大きくなったようだな!うむ!」

………お気遣いありがとうございます…。しょぼん。

「……父上、母上。何事ですか?」

お兄様の呆れたような問いかけに、王妃様がにこにこと答える。

「あらあ!だって、今日サフィちゃん帰っちゃうんでしょ。レオンだけお休みをとってサフィちゃんとずっといるんなんて、ずるいわ!私たちだって、サフィちゃんと居たいもの」
「うむ!サフィがどれくらい上達したのかと思ってな。私にもサフィを預かった王家としての責任があるからな」

カッコいいことを言っているようですが、俺のほっぺをぷにぷにしながらだとカッコよさ半減だよ、王様…。

「まずは、サフィを返してください」

両手を上にあげ、返せ返せとアピールするレオンお兄様。

「いや、お前のじゃねーだろ!」

素早く突っ込むミカミカ。

「私のです!今日までは私が保護者ですから!」

キッパリと断言するお兄様に

「いや、保護者は私だろう」

と王様。
カオス!カオスです!!

俺は「私が」「いや、私が」とあっちにこっちにやられ…

「いい加減になさい!
とりあえず、下に降ろしてあげなさい!サフィちゃんが、ふらふらじゃないの!」

王妃様の一括で我に返った2人により、ようやく下に降ろされた。
ふらふらするよおおおう!

「可哀想にねえ。ごめんなさいね、うちの子と陛下が」

しゃがんで両手を広げた王妃様が俺を温かく迎え、ハグしてくれる。

ううう…。いいきもち…。いいにおい………。
すりすりすり…。

そのまま息をするように俺は王妃様の腕の中へ。
癒されるううう!

「………母上……。返して下さい………」
「いいじゃないの。ちょっとくらい。私だってサフィちゃんが可愛いのよ」

第2試合の開始かと思われた、その時。



「みなさん!そろそろ、訓練を始めてよろしいでしょうか?」

腰に手を当て仁王立ちの団長。
ご、ごめええん!
俺の保護者たちが、ごめんよおおおう!!

「さあ、サフィ。おいで!」

俺は団長の元に、たたーっと駆け寄った。

そして、そのまんま団長にハグ&すりすりされたのである。
団長、お前もか!!

保護者達の冷たい視線にも負けず、団長は堂々と言い放つ。

「いいでしょう!俺だって、この可愛いサフィとの時間が毎日の癒しだったんですから!
毎日むさくるしい騎士に囲まれているんですよ!少しくらい癒しをくれてもいいでしょうが!」

だ、団長さああああん⁈
俺、訓練のつもりだった!
真剣勝負だと思ってたのにいいい!
団長には癒しタイムだったのね!!

がああああん!という顔の俺に、団長は慌てて訂正。

「このサフィとの訓練が、毎日の癒しだったんですから!」

せっかく言い直してくれても、あんまり中身変わってないぞ!
でも、団長も俺みたいに俺との訓練楽しみにしてくれてたんだね。
ありがとうね、団長!
俺は団長にぎゅっとした。

「これからもあえますから!いちにちおきに くんれんするので!
だいじょうぶです!そのぶん たくさんいやしますので!がんばって!」




そこから何故か全員参加で 訓練した。
嘘みたいだけど、王様まで参加したんだよ!
なんと、ドレス姿だった王妃様以外は全員参加したのです!(王妃様は参加できなくてすっごく悔しがってた)

大人数になってしまったので、団長は俺ひとりだけを前に、その後ろに保護者達を一列に並ばせた。
団長の掛け声に合わせて、俺は剣の型を披露する。
みっちりやってきたから、かなりカッコよくできてるはず。
俺を先頭に、俺が「しゅ!」てすると、みんなも木刀を「シュ!」。
俺が「びゅ!」ってすると、みんなも「ビュ!」。
すっごく面白くなって、俺は調子にのって、「しゅ!しゅ!しゅ!」とか「しゅ!びゅ!しゅ!」とかやってみた。
最高に楽しい訓練だった。


最後に、オルガ団長が

「王城での集中訓練はこれで終了だ。よく頑張ったな、サフィ!公爵家に戻っても、しっかり練習しような」

と言って、俺に新しい、少しだけ今の剣より重い剣をくれた。
形は同じだけど、木の素材が違うみたい。前のがレベル1なら、これはレベル3って感じ!

「これ!これ!!いまのよりおにいさんのけん!」

筋力ついたから、ってことだよね?
これまでの頑張りを認めて貰ったみたいで、すごく嬉しい!

「みて!みて!」

俺はみんなに剣を見せて回った。
いっぺんに見てもらえるから、みんなここに居てくれてよかった!
どう?カッコいいでしょ!俺の雄姿、しっかりと目に焼き付けておくように!

「オルガだんちょー、ありがとお!!だいすき!!」


俺はオルガ団長の腕にぎゅうっと抱き着いた。

「だんちょうさんのうで、カッコいい。みんなをまもる すてきなうで。ぼくもだんちょうさんみたいに なるからね。みててね」
「……俺こそ、ありがとう。サフィ。……寂しくなるな…」

団長は優しくぎゅうっと抱き返してくれた。




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