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お披露目会、大成功!…だよね?!
俺、コアラになる
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というわけで。
今俺はコアラになっている。
絶対に離れるもんか!という断固とした意志でもって、ゲイルのお腹に抱き着いている。
首にしっかりと手を回し、両足でがっちりとゲイルを挟み込む。
ゲイルも両腕で俺を包み込み「俺の!これ、俺の!渡さん!」モード。
ガルルルと見えない敵を威嚇している。
有難い。
絶対に離さないでね!ブルブルブル…。
ゲイルなら監禁でいいから!抱っこしてて!
王様が恐る恐る俺たちの手を伸ばす。
「ゲ…ゲイル…。大丈夫だ、取らぬから。サフィはお前の息子だ、皆わかっておるから。
だから…そんなに威嚇するな。
魔力が漏れておるぞ。皆が怯えておるではないか。少し抑えろ」
ひしっ!
ガルルルルルル。
「ひいっ」
護衛さんのほうからかすかに悲鳴が聞こえる。
ゲイルがすまん。
でも、無理。
俺、ぶるぶる。
なんか、俺の魔力、ミラクルだった。
あれは無理でしょ。
みんなまだ呆然としてるもん。
異世界物について詳しい俺。
怖いことばっかり頭にうかんじゃって…。
魔力が規格外とか、特別な魔力持ちとかって、これ、ろくなことになってないヤツじゃん!
誘拐されたり、命を狙われたり、つかまって魔力を搾り取られたりしてボロボロにされるんでしょ?!
ひいいいいい!!
無理だからああああ!!
そっからの逆転劇な展開もあるあるだけど。
そもそも俺、ボロボロになりたくないのっ!怖いよおおおおお!!!
ゲイルうううう!!お父様だけが頼り!
ひしっ!!
しっかりと抱きしめあう俺たち親子。
絶対に絶対に離れないんだから!
そんな俺たちに「しょうがないなあ」と王様は首を振り。
とりあえず護衛のみなさんに「絶対にここで見聞きしたことは口外しません!」って誓約書にサインさせた。
もしこの誓約を破ると、死。
そう、「死」!!!
お口から血がどばー!身体中から血がどぴゅー!
きょ、きょうりょくうううううう!!!
つまり…そんくらい俺のことはヤバいことってこと。
護衛のみなさんは、真っ青になって強張った顔してその書類にサイン。
そして、俺に気づかわし気に見て「大丈夫ですよ」と頷いてくれた。
や、やさしいいいいい!ごめんね、俺のせいで。俺がこんなに規格外だったばかりに!!
俺がこんなにつよつよだったばかりに!!!
って。
あ、あれ?
俺、つよつよなんだよね?
俺、最強の魔力持ちなんだよね?
……あれれー?
想定外の結果に思わず「こっわ、めっちゃこっわ!」ってブルっちゃったけど…。
俺、ぶるぶるな必要なくね?
俺、つよつよじゃん?
魔力規格外。今のところの全方位の魔法適正があるんでしょ?
最強じゃん!
「俺、強え」じゃん!!
怖がることなんてなかった!
俺、無敵!
俺は俄然元気になった。
ぶるぶるモードから、一気にシャッキーン!
安全地帯をぐいっとおしのけ、皆の前へ。
「ぼく、むてき!こわくない!ぼく、つよつよ!
だいじょうぶ!ゆーかいはん やっつける!かえりうち!
みんなもぼくがまもる!まかせろです!」
「ぼく、おうこくさいきょうだった!みらくるサフィ!
ブリーンアローのみんな!!めざせ、だんじょんせいは!ぼうけんしゃに おれはなる!」
俺は片腕を高々と天に掲げ(剣があったらよかったなー)、ふんすふんすと鼻息も荒く「俺の無双伝説」始まりを宣言したのだった。
最初に言葉を発したのは、ゲイルだった。
「は…はは…っ。フ、フフフフフ。ハッハッハッハ!そうきたか!
確かに!確かにそうだ!
俺の息子は最高なんだ!怖いもんなんてねーわ!
すまん。ちょっと驚きすぎておかしくなってた。
お父様だって最強なんだぞ!
ここにいるみんなだって、王国の精鋭だ!俺たちは無敵だ!
悪い奴らは返り討ちだ!」
俺を抱き上げ、ぐるぐると回る。
「……ふ…っ」
「…………ックッ…」
プハーっとみんなまで笑い出した。
「そ、そうだな。悪い方向にばかり考えがいってしまった。
サフィの力は確かに強大すぎて狙われやすい。脅威にもなりうる。
だが、サフィだ。私たちもいるのだ。なんとかなるだろう。」
「父上、いくら魔力が強大とはいえ、まだサフィも魔法を使えるわけではありませんから。
そこを狙われては…」
「やっぱり一人前になるまでは監禁!」
「ええええー?!ゲイルかんきん?うーん…ゲイルならいい!!」
「いや、サフィ。よく考えて。良くはないでしょ?
王城に遊びに来られなくなるよ?レオンお兄様に会えなくなるんだよ?」
「なに?!我らまでサフィに会えなくなるのか?!それはいかん!
………転移ゲートでも設置するか…どうだ、ゲイル?
……………王族には臣下をしっかりと監視する義務が…」
「サフィに会いたいだけだろうが。」
「屋敷とこの部屋を結ぶ転移ゲートを設置せよ!これは王命である!」
「おうさま、おうぼー!けんいのおしつけ!」
「………サフィちゃん…私もあなたに会いたいわあ…。会えなくなってしまうのは寂しいわ…」
「ゲイル!ゲートつくって!せっち!おうめい!」
「…お前なあ…。
……はあ…。分かりましたよ。
その代わり、魔塔の当主にサフィの訓練の協力を願います。もちろん誓約書にサインさせた上で。
それにはサフィを絶対に害さない、と一筆付け加えて下さい。
また、訓練には必ず俺も同席しますから。
これは決定事項です。いいですね?!」
「ならば、こちらからも要望がある。レオンハルトも一緒に学ばせて貰いたい」
「仕方がありませんね。許可します」
いつの間にかゲイルと王様の地位が逆転している。
凄いぞゲイルお父様!
にしても…サクサクどんどん話が決まっていく。
さすが王国の精鋭たち!王様とゲイルだけどね!
俺は「おお…」と他人事のように足をぷらぷらさせながら聞いていた。
すると…
「…………申し訳ない。ひとつ伺ってもよいだろうか?」
公爵が遠慮がちに口を挟んできた。
「ああん?!」
ゲ、ゲイル。一応その人、公爵ですけど…。
王様にもため口とはいえ、「ああん?!」はさすがに…
「も、申し訳ない。すこし…」
あ、いいのね。公爵。
すっかり大人しくなったね。うんうん。
そうか!俺の下僕は、すなわち、俺のお父様であるゲイルの下僕!
そういうことか!
「しょうがねーなあ。なんだよ、さっさとしろ」
公爵に嫌味を込めてわざと貴族風に話すのはもうやめたらしい。素のゲイルは容赦がなかった。
忖度しないおとーさま、かっちょえー!
「…先ほど転移ゲート設置の話が出ていたが…。それは、わが邸に、ということで良いのだろうか?サフィラスは10歳までは公爵邸にその身を置くということになっている。その話は今でも有効なのだろうか?」
公爵の横でライオネルとリオネルが目をうるうるさせながら俺たちを見ていた。
「出て行っちゃうの?僕たちが嫌だから…?
…ごめんなさい。ごめんなさい。
いっぱい謝るから。たくさん謝るから。」
「…………10歳になり邸を出れば、私たちと会う事も無いのだろう?………せめてそれまでは………少しでも顔をサフィラスの見る機会を貰えないだろうか…」
肩を悄然と落とし、泣きそうになりながら必死に訴えて来る2人。
あああああ!もう!!
「やくそくはまもる。おとこは、じぶんのことばに せきにんをとるもの。だから10さいまではいる。」
俺の言葉に2人の顔が、ぱあああああ、と明るくなった。
「ありがとう!サフィ!僕たち、絶対にサフィを守るからね!」
「私も、絶対にサフィラスを守る!怪しいものは屋敷には入れぬ!だから安心して欲しい!」
公爵がふかぶかと俺に頭を下げた。
「……ありがとう、サフィラス。我々もお前を守るよう全力を尽くそう。
ゲイル……許して貰えるだろうか?」
「本人がそうするっていうんだ。仕方ねーだろ。
……客間がまだいくつか残っていたな?その1つをゲート専用にしよう。部屋の鍵は俺が持つ。いいな?」
「異論はない。そのように手配しよう。」
「屋敷周りには俺が結界を二重に貼る。基本的に来客は無し。用があるなら外で会え。
どうしようもない社交の際は、予めサフィを王城か俺の邸に移す」
「ああ。承知した。」
「庭の一部にサフィ専用の訓練所を作る。外から見えないように壁で囲っておけ」
「……ああ」
「それから……」
ゲイルの要求は延々と続いた。
王様が新しいお茶とお菓子を手配してくれたので、俺たちはお茶を飲みながら話がまとまるのを待った。
「サフィ、これ、私のおすすめなんだ」
レオンお兄様が俺の口元にマカロンを差し出してくれる。
「はい、あーん」
「あーん。……!おいし!」
「サフィ。こちらもなかなかの味だぞ?どうだ?ほら」
ライオネルまでプディングのようなものをスプーンですくって差し出してきた。
「あーん。………あまあま!のうこう!よいおあじ!」
「こっちもおいしいよ!これ!ほら!」
リオネルがぐいぐいと俺にクッキーを押し付けてくる。
「ん…もぐもぐ…まだ…おくち…はいってる…」
しょぼん。分かりやすく落ち込むリオ。
口の中を空にした俺が「あーん」と口をあけてやると、嬉々として口に入れてくれた。
「……ん!サクサク!」
次々とみんなが口に入れてくれるので、俺はゲイルの膝に座ったまま雛鳥のように口をあけ、ときおり
「あれ」「こっち」と食べたいものを指さすだけでよかった。
全自動食べさせマシーンが3台もいる。らくらくだ。
ほどほどにお腹がいっぱいになったところで、
「サフィちゃん。これもおいしいのよ?」
王妃様!
どうやら、俺に食わせるタイミングを計っていたらしい。
お、おなか…ぽんぽこりんなんですが…
「はい。どうぞ?」
キラキラした目で言われたら…
「あーん」
お口をあけるしかないでしょー!
うう…もぐもぐ…あ、これもおいしい!
「ほら、サフィ。こっちもなかなかだぞ?」
王様!アンタもかー!!
無理です!もうお腹に……
「………ワシの菓子は要らぬか…」
ああああああ、もう!!
「……あーん」
もぐもぐ…もぐもぐ…。
「おいしーです。おーさま。
でももうぱんぱん。おなかまんぱい。われちゃう」
「さ、サフィ?どうした?」
ようやく話が終わったらしいゲイルが、お腹を押さえてぐったりした俺をみて仰天した。
「こら!食わせ過ぎだ!かわいいかわいい俺の息子の腹が破れたらどうしてくれる!」
王様たちに説教している。
俺はふうふうと喘ぎながらお願いした。
「げ…げいる…ひーる…ひーるしてみて…。
それでいけるとおもうの…」
「いや、でもお前には効かないだろ?」
「ぼくじゃない…おなかのたべもの…うごかして…ぶんかい…」
「そ、そうか!分解ヒール!」
ピカピカーン!
おおおおおお!!す、すごい!!
俺のぽんぽこりんなお腹がみるみるひっこんだ。
「おおおおおお!!」
「こ、こんな使い方が?!」
ライリオや王様たちまで驚いている。
ふふん!凄いでしょ!僕のお父様!
お腹もひっこんだところで…。
「あーん」
これで大丈夫!
みんなに向かって口を開けた。
「まだ食う気か?」
今俺はコアラになっている。
絶対に離れるもんか!という断固とした意志でもって、ゲイルのお腹に抱き着いている。
首にしっかりと手を回し、両足でがっちりとゲイルを挟み込む。
ゲイルも両腕で俺を包み込み「俺の!これ、俺の!渡さん!」モード。
ガルルルと見えない敵を威嚇している。
有難い。
絶対に離さないでね!ブルブルブル…。
ゲイルなら監禁でいいから!抱っこしてて!
王様が恐る恐る俺たちの手を伸ばす。
「ゲ…ゲイル…。大丈夫だ、取らぬから。サフィはお前の息子だ、皆わかっておるから。
だから…そんなに威嚇するな。
魔力が漏れておるぞ。皆が怯えておるではないか。少し抑えろ」
ひしっ!
ガルルルルルル。
「ひいっ」
護衛さんのほうからかすかに悲鳴が聞こえる。
ゲイルがすまん。
でも、無理。
俺、ぶるぶる。
なんか、俺の魔力、ミラクルだった。
あれは無理でしょ。
みんなまだ呆然としてるもん。
異世界物について詳しい俺。
怖いことばっかり頭にうかんじゃって…。
魔力が規格外とか、特別な魔力持ちとかって、これ、ろくなことになってないヤツじゃん!
誘拐されたり、命を狙われたり、つかまって魔力を搾り取られたりしてボロボロにされるんでしょ?!
ひいいいいい!!
無理だからああああ!!
そっからの逆転劇な展開もあるあるだけど。
そもそも俺、ボロボロになりたくないのっ!怖いよおおおおお!!!
ゲイルうううう!!お父様だけが頼り!
ひしっ!!
しっかりと抱きしめあう俺たち親子。
絶対に絶対に離れないんだから!
そんな俺たちに「しょうがないなあ」と王様は首を振り。
とりあえず護衛のみなさんに「絶対にここで見聞きしたことは口外しません!」って誓約書にサインさせた。
もしこの誓約を破ると、死。
そう、「死」!!!
お口から血がどばー!身体中から血がどぴゅー!
きょ、きょうりょくうううううう!!!
つまり…そんくらい俺のことはヤバいことってこと。
護衛のみなさんは、真っ青になって強張った顔してその書類にサイン。
そして、俺に気づかわし気に見て「大丈夫ですよ」と頷いてくれた。
や、やさしいいいいい!ごめんね、俺のせいで。俺がこんなに規格外だったばかりに!!
俺がこんなにつよつよだったばかりに!!!
って。
あ、あれ?
俺、つよつよなんだよね?
俺、最強の魔力持ちなんだよね?
……あれれー?
想定外の結果に思わず「こっわ、めっちゃこっわ!」ってブルっちゃったけど…。
俺、ぶるぶるな必要なくね?
俺、つよつよじゃん?
魔力規格外。今のところの全方位の魔法適正があるんでしょ?
最強じゃん!
「俺、強え」じゃん!!
怖がることなんてなかった!
俺、無敵!
俺は俄然元気になった。
ぶるぶるモードから、一気にシャッキーン!
安全地帯をぐいっとおしのけ、皆の前へ。
「ぼく、むてき!こわくない!ぼく、つよつよ!
だいじょうぶ!ゆーかいはん やっつける!かえりうち!
みんなもぼくがまもる!まかせろです!」
「ぼく、おうこくさいきょうだった!みらくるサフィ!
ブリーンアローのみんな!!めざせ、だんじょんせいは!ぼうけんしゃに おれはなる!」
俺は片腕を高々と天に掲げ(剣があったらよかったなー)、ふんすふんすと鼻息も荒く「俺の無双伝説」始まりを宣言したのだった。
最初に言葉を発したのは、ゲイルだった。
「は…はは…っ。フ、フフフフフ。ハッハッハッハ!そうきたか!
確かに!確かにそうだ!
俺の息子は最高なんだ!怖いもんなんてねーわ!
すまん。ちょっと驚きすぎておかしくなってた。
お父様だって最強なんだぞ!
ここにいるみんなだって、王国の精鋭だ!俺たちは無敵だ!
悪い奴らは返り討ちだ!」
俺を抱き上げ、ぐるぐると回る。
「……ふ…っ」
「…………ックッ…」
プハーっとみんなまで笑い出した。
「そ、そうだな。悪い方向にばかり考えがいってしまった。
サフィの力は確かに強大すぎて狙われやすい。脅威にもなりうる。
だが、サフィだ。私たちもいるのだ。なんとかなるだろう。」
「父上、いくら魔力が強大とはいえ、まだサフィも魔法を使えるわけではありませんから。
そこを狙われては…」
「やっぱり一人前になるまでは監禁!」
「ええええー?!ゲイルかんきん?うーん…ゲイルならいい!!」
「いや、サフィ。よく考えて。良くはないでしょ?
王城に遊びに来られなくなるよ?レオンお兄様に会えなくなるんだよ?」
「なに?!我らまでサフィに会えなくなるのか?!それはいかん!
………転移ゲートでも設置するか…どうだ、ゲイル?
……………王族には臣下をしっかりと監視する義務が…」
「サフィに会いたいだけだろうが。」
「屋敷とこの部屋を結ぶ転移ゲートを設置せよ!これは王命である!」
「おうさま、おうぼー!けんいのおしつけ!」
「………サフィちゃん…私もあなたに会いたいわあ…。会えなくなってしまうのは寂しいわ…」
「ゲイル!ゲートつくって!せっち!おうめい!」
「…お前なあ…。
……はあ…。分かりましたよ。
その代わり、魔塔の当主にサフィの訓練の協力を願います。もちろん誓約書にサインさせた上で。
それにはサフィを絶対に害さない、と一筆付け加えて下さい。
また、訓練には必ず俺も同席しますから。
これは決定事項です。いいですね?!」
「ならば、こちらからも要望がある。レオンハルトも一緒に学ばせて貰いたい」
「仕方がありませんね。許可します」
いつの間にかゲイルと王様の地位が逆転している。
凄いぞゲイルお父様!
にしても…サクサクどんどん話が決まっていく。
さすが王国の精鋭たち!王様とゲイルだけどね!
俺は「おお…」と他人事のように足をぷらぷらさせながら聞いていた。
すると…
「…………申し訳ない。ひとつ伺ってもよいだろうか?」
公爵が遠慮がちに口を挟んできた。
「ああん?!」
ゲ、ゲイル。一応その人、公爵ですけど…。
王様にもため口とはいえ、「ああん?!」はさすがに…
「も、申し訳ない。すこし…」
あ、いいのね。公爵。
すっかり大人しくなったね。うんうん。
そうか!俺の下僕は、すなわち、俺のお父様であるゲイルの下僕!
そういうことか!
「しょうがねーなあ。なんだよ、さっさとしろ」
公爵に嫌味を込めてわざと貴族風に話すのはもうやめたらしい。素のゲイルは容赦がなかった。
忖度しないおとーさま、かっちょえー!
「…先ほど転移ゲート設置の話が出ていたが…。それは、わが邸に、ということで良いのだろうか?サフィラスは10歳までは公爵邸にその身を置くということになっている。その話は今でも有効なのだろうか?」
公爵の横でライオネルとリオネルが目をうるうるさせながら俺たちを見ていた。
「出て行っちゃうの?僕たちが嫌だから…?
…ごめんなさい。ごめんなさい。
いっぱい謝るから。たくさん謝るから。」
「…………10歳になり邸を出れば、私たちと会う事も無いのだろう?………せめてそれまでは………少しでも顔をサフィラスの見る機会を貰えないだろうか…」
肩を悄然と落とし、泣きそうになりながら必死に訴えて来る2人。
あああああ!もう!!
「やくそくはまもる。おとこは、じぶんのことばに せきにんをとるもの。だから10さいまではいる。」
俺の言葉に2人の顔が、ぱあああああ、と明るくなった。
「ありがとう!サフィ!僕たち、絶対にサフィを守るからね!」
「私も、絶対にサフィラスを守る!怪しいものは屋敷には入れぬ!だから安心して欲しい!」
公爵がふかぶかと俺に頭を下げた。
「……ありがとう、サフィラス。我々もお前を守るよう全力を尽くそう。
ゲイル……許して貰えるだろうか?」
「本人がそうするっていうんだ。仕方ねーだろ。
……客間がまだいくつか残っていたな?その1つをゲート専用にしよう。部屋の鍵は俺が持つ。いいな?」
「異論はない。そのように手配しよう。」
「屋敷周りには俺が結界を二重に貼る。基本的に来客は無し。用があるなら外で会え。
どうしようもない社交の際は、予めサフィを王城か俺の邸に移す」
「ああ。承知した。」
「庭の一部にサフィ専用の訓練所を作る。外から見えないように壁で囲っておけ」
「……ああ」
「それから……」
ゲイルの要求は延々と続いた。
王様が新しいお茶とお菓子を手配してくれたので、俺たちはお茶を飲みながら話がまとまるのを待った。
「サフィ、これ、私のおすすめなんだ」
レオンお兄様が俺の口元にマカロンを差し出してくれる。
「はい、あーん」
「あーん。……!おいし!」
「サフィ。こちらもなかなかの味だぞ?どうだ?ほら」
ライオネルまでプディングのようなものをスプーンですくって差し出してきた。
「あーん。………あまあま!のうこう!よいおあじ!」
「こっちもおいしいよ!これ!ほら!」
リオネルがぐいぐいと俺にクッキーを押し付けてくる。
「ん…もぐもぐ…まだ…おくち…はいってる…」
しょぼん。分かりやすく落ち込むリオ。
口の中を空にした俺が「あーん」と口をあけてやると、嬉々として口に入れてくれた。
「……ん!サクサク!」
次々とみんなが口に入れてくれるので、俺はゲイルの膝に座ったまま雛鳥のように口をあけ、ときおり
「あれ」「こっち」と食べたいものを指さすだけでよかった。
全自動食べさせマシーンが3台もいる。らくらくだ。
ほどほどにお腹がいっぱいになったところで、
「サフィちゃん。これもおいしいのよ?」
王妃様!
どうやら、俺に食わせるタイミングを計っていたらしい。
お、おなか…ぽんぽこりんなんですが…
「はい。どうぞ?」
キラキラした目で言われたら…
「あーん」
お口をあけるしかないでしょー!
うう…もぐもぐ…あ、これもおいしい!
「ほら、サフィ。こっちもなかなかだぞ?」
王様!アンタもかー!!
無理です!もうお腹に……
「………ワシの菓子は要らぬか…」
ああああああ、もう!!
「……あーん」
もぐもぐ…もぐもぐ…。
「おいしーです。おーさま。
でももうぱんぱん。おなかまんぱい。われちゃう」
「さ、サフィ?どうした?」
ようやく話が終わったらしいゲイルが、お腹を押さえてぐったりした俺をみて仰天した。
「こら!食わせ過ぎだ!かわいいかわいい俺の息子の腹が破れたらどうしてくれる!」
王様たちに説教している。
俺はふうふうと喘ぎながらお願いした。
「げ…げいる…ひーる…ひーるしてみて…。
それでいけるとおもうの…」
「いや、でもお前には効かないだろ?」
「ぼくじゃない…おなかのたべもの…うごかして…ぶんかい…」
「そ、そうか!分解ヒール!」
ピカピカーン!
おおおおおお!!す、すごい!!
俺のぽんぽこりんなお腹がみるみるひっこんだ。
「おおおおおお!!」
「こ、こんな使い方が?!」
ライリオや王様たちまで驚いている。
ふふん!凄いでしょ!僕のお父様!
お腹もひっこんだところで…。
「あーん」
これで大丈夫!
みんなに向かって口を開けた。
「まだ食う気か?」
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