もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。

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お披露目会、大成功!…だよね?!

俺と王族とこれからのこと

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「あわわわわ………ふけーにふけーをかさねた……。
お、おうさま!
ぼくが、ぼくがぼうけんしようって いいましたっ!リーダーぼく!
だから…ふけーはっ……ふけーは ぼくだけにしてくださいっっっ!」


俺はとっさにパーティーメンバーを庇うように両手を広げ、ラスボスおうさまの前に躍り出た。
俺のせいでみんなが断罪されちゃう!
リーダーの俺が守らなきゃ!

しーん。

……あれ?おれ、何か間違えた?

ってか、よく考えたら、王様が勝手に冒険に加わってたんだよね?
パーティーの後ろに加わってたってことは、王様もメンバー?

「………おうさまたちも パーティーメンバー?」

念のため聞いてみると、王様の方の護衛たちから小さくカシャカシャと鎧を震わせる音がした。
俺が背に庇った俺のメンバーたちからも、カシャカシャと音がする。
もしかして、恐怖で震えてるっ?!
俺、そんなにヤバい事きいちゃった?!
だんざい…これはだんざいかもしれない………」

目に涙を浮かべながら恐怖に耐えていると、いつの間にか王様が近くに来ていて、俺の頭をポン。

「だから、断罪とは何のことだ?私はそんなに怖いかのう…」

しょんぼりと眉を下げるイケオジ。
疑ってゴメン!

「けんりょく!けんいにひるんだ!おうさまこわくない!おうさまいいひと!
おうさま、すき!」

俺は疑ってしまったお詫びの気持ちを込め、王様にごめんねの「ぎゅ!」をした。
そんな俺を抱き上げ(なぜかほっぺすりすりしながら)王様はメンバーに言う。

「驚かせてしまったようだな。すまぬ。皆、普通にしてほしい」
「「「「「「は!」」」」」

よ、よ、よ、よかったああああああ!!!!

俺があんなに慌てたと言うのに、メンバーたちはにこにこしていた。
おい!震えてたのは何だったんだよ!

「いや、必死で俺たちを庇うサフィが可愛くてw」

通常運転のゲイルはともかく

「………この私たちまで庇ってくれるとは…」

顔を手で覆ってまだ震えている公爵!アンタちょっと泣いてない?!
え?!そんな涙もろかったっけ?
涙腺壊れちゃった?!大丈夫?

「……このような素晴らしい子に、私はなんということをしてしまったのだ………」

ああ、それね。うん。もういいから。
よくないけど、今はいったん置いとこ。

そんな公爵の肩をそっと抱くライリオ。
お前らもかああああ!!

俺は王様に抱っこされたままそっとハンカチを取り出すと、ポイっと公爵たち向かって投げてやった。
疑うな。鼻水はついてない。それはゲイルのだから大丈夫だ。
後で返せよ。

で、鎧をカチャカチャいわせた俺メンは…

「サフィラス様の勇気に感動致しまして…」
「ちびっこが!ちびっこが!ちびっこなのに俺たちを庇って……!!」

イケメン!お前、涙をふけ!
ハンカチをやろうかと思ったがもうなかったので、自分でなんとかしろ。
あ、王様貸してくれるの?こんなに豪華なのいいの?
とワタワタしてたら、王様のカチャカチャ護衛がどこからかハンカチを取り出して貸してくれた。
ありがと!
受け取れ、イケメン!ポイッとな!

で、髭オジ!お前はなぜ笑っている!くそう!
ちびっこちびっこ言うな!どうせ俺なんか頼りになりませんよ!
いいじゃん!ここは気持ちの問題なんだよ、気持ち!!!


なんだかなー、な俺メンを見て、俺はおもわずこう言ってしまった。

「ぼくのめんばー ざんねん。おうさま ごめんなさい」

パーティーメンバーの責任はリーダーである俺の責任だからな!







まあ、ともかく。
いろいろあった末に、不敬にも問われることなく、俺たちは無事「お話をする部屋」に通された。

まず目に入るのが、ドーン、と置かれた柔らかそうなふっかふかの長椅子。
肌触りのよさそうなその椅子にはびっしりと細かな織が施されている。
きっとあれ、なんちゃら織だとか、どこやらの特産品で献上品だとかそういうものでできてるんだろうなあ…。
汚したら怒られそう。近寄らないでおこう。
その両横に、一人がけの椅子。これもまた同じ素材だ。
こちら側にあるのが「王様の椅子」なんだろう。

で、反対側には、皮のような素材の長椅子が2脚。こっちが客用かな。

王様におろして貰って、ててて、とそっちに行こうとすると

「お前はここだ」

と高そうな高級座椅子に座る王様のお膝に載せられてしまった。
ちょーん。。。
俺の椅子、王様。。。。

「なんたるふけー」

絶望に満ちた視線をゲイルに送ると、ゲイルは苦笑しながら
「そのままでいい」というジェスチャーをした。
ほんとかな。

くるり、と振り返ると王様がにこり。

うん。いいらしい。
俺の椅子、王様。


でもって、
王族の椅子の真ん中に王様オン・ザ・俺。
その両横に、レオンハルトお兄様、王妃様。
机とお菓子を挟んで
向かいの長椅子に、ゲイル、公爵、ライリオ。
それぞれの布陣の後ろにそれぞれの護衛。
そんな感じに落ち着きました。

ふうー。お疲れ様!

「今から話すことは決して外に漏らさぬよう。ここだけの話とする。良いか?」

うんうん。重要な話なんだね。理解した。
みんなも一様に「は!」だの「御意!」だの言っている。

すると、

「ここからは、無礼講でいこうではないか。なあ、ゲイル」

突然のタメ口!

「ブリュクハルト、あそこまでしろとは頼んでないぞ?」

ゲイルまでため口!あわわわわわわ!!

驚いてぴょんと飛び上がった俺に、ゲイルが笑いながら種明かしをしてくれた。

「言ってなかったか?俺と陛下は、学生時代の友人なんだよ」
「懐かしいなあ!良く一緒に馬鹿をしたものだ」

陛下が懐かしそうに眼を細めた。
どんな馬鹿をしたんだろう。すっごく聞きたい。

「内緒」

え?ゲイルやっぱ俺の心が読めるの?

「読めねーよw顔に出てたw」

ああ、そうですか。



でもって、そこからゲイルと王様がいろんなことを教えてくれた。
この国で魔力を使えるのは貴族だけなんだって。
平民に魔力がある人はほとんどいない。
そして、高位貴族ほど魔力が多いらしい。
代々受け継がれていくからだろうって話だ。

そこで、どんな魔力かって話になるんだけど……
公爵家に代々受け継がれているのは、氷、水の魔力。
勿論、結婚相手により違う魔力の子が生まれることもあるけどね。
公爵は氷、ライも氷、リオは水の魔力を持っているんだって。
攻撃にも守りにも有効な魔法だから、公爵家は地位も権力だけでなく、攻撃力も防御力もピカイチってこと!

で、侯爵家は緑、風の魔法が得意。
神獣であるフェンリルを守護獣にしていて、風はフェンリルの加護によるものなんだって。
侯爵家が特別扱いされているのは、この神獣の加護によるもの。
高位貴族の中でも神獣の加護を持つのは侯爵家だけなんだってさ!
昔々のご先祖様が神獣を助けたからだっていうけど…凄いよね!
その特別な侯爵家の中でも、ゲイルは特別に強力な治癒の力を持って生まれた。
実は、ほとんどの病気や怪我は「キュピーン☆」と治しちゃえるんだって。
あまりに強大なゲイルの力は、利用価値がありすぎるっていうので、侯爵家と王族以外には伏せられた。
まあ、本人の治癒力を最大限高めるだけだから、やりすぎると後から反動がきちゃうってんで、めったにそこまではしないらしいけど。
対外的には「普通の治癒が使える」程度に公表されたのだった。

でも、ゲイルは医者になった。
治癒が使えるのは、貴族に数人程度。平民にはいない。
代わりに平民にいるのは、医者だ。
ここで重要なのは、治癒を使える貴族で医者になろうという奇特なものなどいないと言う事。
治癒が使え、しかも医者でもあるというのはゲイルだけなのだ。
まあ、ゲイルの力の強さまでは大っぴらにはしていないけど。
「治癒を使える」「医者」だっていうだけで貴族には有難い存在なのだ。
貴族だって、みんな人間。だから傷つきもするし、病気になる。
彼らにとってゲイルは「絶対に敵に回したらダメ」な人になった。
いざって時に助けて貰えなくなるからね!
てことで、ゲイルのバックは…いうならば、貴族全員、って感じになるらしい。
そりゃ、公爵だって逆らえない訳だ!

勿論、王族の治療に呼ばれることも多く、レオンお兄様が落馬により大けがをしたときにも「キラキラリーン☆」と治しちゃったんだって。まあ、そのあとお兄様は反動でしばらく寝込んだらしいけど。足が動かなくなるよりどんだけもマシだよね。
その後も、レオンお兄様が病気で死にかけた時に救ったりとかもしたんだって。それ、命の恩人じゃん!
そういう訳で、お兄様はゲイルを「ゲイルおじ様」と呼んで慕っているし、王様や王妃様もゲイルには恩がある。
王様全員と同級生ってだけでなく、王族全員と親しかったんだ。ゲイルは。

「まあ、王族と親しいっていうと、利用しようって輩が出て来るからな。
そこは内々の話ってことで」

アハハ、とゲイルは笑うけど。
もんのすんごい話をぶっちゃけられて、俺は呆然。
ゲイル、凄いし完璧だしつよつよだって知ってたけど。

「おれのおとうさま…むてきだった…」


公爵家の面々も、まさかそこまでゲイルが王族と親しいとは知らなかったようで、驚いていた。

「………」
「エリアナは知ってたぞ?」
「確かに、『ゲイルは凄いんだから』とは聞いていたが、そこまでとは…」
「だから、エリアナのことも『最後の手段』さえ使えばなんとかなると思っていたんだ。
使ってしまうとその後の負担が大きいから、1度しか使えないんだが…。それさえ使えばなんとかなる、って。
エリアナもそう思っていたんだと思う」
「…………そうか………」
「あそこまでサフィの魔力が多いなんて、想定外だったんだよ」

そう。
貴族の中でも最大の魔力だというゲイルでも母を救えなかったのは、そんなゲイルをも、俺の魔力が上回ったから。
母が俺を無事に産み落とせるかすら怪しいくらい、母の体力は落ちていた。
最後の手段ということで、これまで出したこともない最大限の魔力で治癒を施したが、それでも効かなかったのだそうだ。

「あの状態でサフィラスが元気で無事に生まれたこと、それ自体が奇跡だったんだ。
きっとエリアナが最後の力でサフィを守ったんだと思う」

ちょっと俺たちはしんみりしてしまった。

色々な想定外があったんだな、と思って。
どこかがちょっとだけ違ったら、母は生きていたのかも。

そんなことを思っていたら、お腹に暖かなものを感じた。
王様が、両腕を俺のお腹に回して、抱きしめてくれたのだ。

「無事に生まれてきてくれて、良かった。サフィ」

横からレオンお兄様も俺の頭をなでてくれた。

「サフィの母君は、すべての力をサフィにくれたんだね。それだけサフィは愛されていたんだ」

公爵が言った。

「サフィラス。私たちは最初を間違えてしまったのだ。詫びようがない。
だが、心から言おう。お前が無事で良かった」

ライオネルとリオネルも。

「私も同じ気持ちだ。サフィラスが無事に生まれてくれて良かった」
「サフィ。ほんとうにごめんね。でも、僕もサフィが無事でよかったって思ってるよ」



もう、ダメだった。
俺は、母についてはあまり考えないようにしていた。
産んでくれてありがとうって気持ちはあったけど、どうして産んだのって気持ちもどこかにあった。
でも、母は最期まで「自分と俺が生きること」を信じていたんだ。
それで、ダメだって分かっても今度は「俺を生かすため」に全力を注いでくれたんだ。

みんながみんな。全力で頑張った。
その結果、俺が産まれた。
無事に生まれることができたんだ。

いろいろあったけど。
みんな、俺が生まれてよかったって。
無事でよかったって。




俺は「うわああああああああん!!!」と泣いた。
びっくりするくらい大きな声で。
こんなに泣いたのは初めてだった。

「うわあああああん!!
ちゆがきかなくてごめんなさあああああい!
ぼくだって おかあさまに あいたかったよう!
だっこしてほしかったあああ!
まりょく そんなにいらなかったのにい!ちょっとでよかったのお!
まりょく たくさんで ごめんねえええ!
ぼくをまもってくれて ありがとおおおおおお!
おかあさまああああ!!!だいすきいいいいい!!」




泣いて泣いて泣いて。
とくかく色々なことを叫んだ。

王様たちだっているのに。

知らない場所、知らない部屋で。
知らないところで。
俺が今まで知らないかった話を聞いて。

だからこそ、俺は吐き出せたんだ。
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はじめまして。初めて書いてみたオリジナル異世界BL。可哀想な主人公が、それに負けずに力業で幸せになるのが好きです。ハピエン主義なので、完全無双のハピエンになります。誤字脱字など、ご容赦くださいませ(;・∀・)→ご指摘があれば修正いたしますので!ご都合主義の作者の自己満足小説です。作者豆腐メンタルのため、ご不満のある方は「そっ閉じ」でお願いいたします。。。お楽しみいただけましたら、ぜひぽちっとイイネをお願いいたします♡コメントもぜひ♡
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