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お披露目会、大成功!…だよね?!

俺とゲイルと下僕は無事生還したのだった

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イケオジな王様と綺麗な王妃様、優しいレオンお兄様どの謁見を無事終えた俺。

王様たち、最後はにこにこだったし。
抱っこしてなでなでしてくれたし、断罪もないって言ってくれたから、もう安心!
ゲイルが俺のお父様だって公式発表も!してくれた!
しかも、俺の後ろ盾になってくれるって!
王族がバックについてくれたら、最強じゃん!
もう断罪ないよね!
王族、好き!

それにしても、むちゃくちゃいい人たちだった。怖がってた自分が申し訳なく思ちゃう。
レオンお兄様、優しかったなー。
前世の兄たちは優しかったけど脳筋ぎみだったから、レオンお兄さまみたいな「頭脳派穏やか兄」ってのにちょっと憧れがあった。
俺の「自称兄」のライリオも、今はまあ殊勝に「兄」をしようとしているようだが、以前がアレだからなあ…。
俺の思う「兄」っていうのはさ、前世兄含めて「守ってくれる」「頼れる」存在なんだよね。だから、俺の仲ではライリオはもう兄じゃないんだ。
今は昔のことを後悔してることも、俺のこと想ってくれてることも分かってる。だけど…おおまけにまけて、せいぜい「年上の親戚」「俺の下僕」ってとこだな。
そこいくと、レオンお兄さまは完璧!俺の中のベストオブ兄!オンリーお兄様!
もっとたくさんお話したかったなー。王様が「後で話をしよう」っていってくれたけど、レオンお兄様も会えるかな?忙しいのかな?
今度会ったら俺の大好きなお菓子をあげよう。ゲイルに貰った宝物の飴を分けてあげてもいい。それくらい好き。
と言ってもゲイルには及ばないけどね!
ゲイルとエリアスとティガーとマリーの次くらいには好き!!

まさか、お披露目会でこんなに好きが増えるなんて思わなかったなー。
幸せなきもち。
おなかや、胸のなか、ぽっかぽか。



俺としては「やりきった!」感でにこにこご機嫌なんだけど。
ゲイルも

「さすがサフィ!やってくれると思ったぜ!」

ってニヤニヤにこにこクスクスなんだけど。
下僕たちはぐったりしている。
リオネルなど、廊下に出たとたん床にしゃがみこんでしまった。

「ぼく、陛下が近づいてきたとき、もうダメかとおもったあああああ!」

公爵もライオネルも、青ざめた顔でため息をついた。

「………ゲイル。先に根回し済みだったのなら、予めそれと教えてくれないだろうか…」
「………叔父上…さすがにこれは心臓に悪すぎます。まだ胸がドキドキしていますよ…」


え、そ、そんなに?!

確かに俺も、陛下と視線で戦った時には生きた心地がしなかった。
だけど、とにかくゲイルだけでも守りたい、って必死だったからなあ。
抱っこして、なでなでされるなんて思わないじゃん?
まあ、けっかおーらい、だよね!
公爵家、乙!

「おうぞく ふれんどりー!やさしいひとたちでよかった!
ぼくおうぞくすき!いいひとたちだった!」

うんうん、と頷き、俺はこの騒動の結末をうまくまとめたのだった。
断罪もふれーもされなくて良かった良かった!




あ。ところで。今更ではありますが。

「ゲイル、ゲイルじゃなかった!げいるりあ?げいりあす?ぐりふすはくしゃく!
ゲイル、ぼくにほんとのなまえおしえてくれなかった!」

大好きなゲイルの本当の名前すら俺、知らなかった!
ちょっとこれは納得いかない!

フンスフンスと鼻息も荒くゲイルに詰め寄る。

ゲイルは困ったように眉を下げ、俺の前に膝まづいた。

「ゲイルが俺の選んだ俺の名前だよ。
グリフィスは伯爵家を継いだ時に与えられたもので、もともと俺のものじゃない。
ゲイルはゲイリアスの愛称なんだ。ゲイリアス、ってなんだか業業しいだろ?俺は医者として身分や地位など関係なくありたい。だから、医者になる時に愛称であるゲイルを名乗ると決めた。ゲイルは俺が選んだ俺の名前だ。
サフィには、俺が選んだ名前で俺呼んでほしい。だから、ゲイルと名乗ったんだ」
「ぼくのサフィとおんなじ?」
「そうだな。同じだ」

そうか。俺も便宜上サフィラス・グランディールのままだけど、ゲイルの息子のただの「サフィ」でありたい。
家名にしても、グランディール公爵家ではなくゲイルやエリアスや母と同じ「サフィール侯爵家」に属していると思っている。
ゲイルもそんな感じなのかな。

「じゃあゲイルはゲイルで」

本当の名前は覚えにくいしね。
ただ、ゲイルに本当の名前があるだなんて考えたこともなかったから。なんだか知らない人のようで嫌だったんだ。
ゲイルが「医者のゲイル」なら、俺は「冒険者のサフィ」になるよ。「ゲイルの息子サフィ」を選ぶ。

「ぼくはゲイルのむすこ、サフィ」

宣言する。
俺の気持ちが伝わったんだろう。ゲイルが目を細め、俺を胸に抱きしめた。
俺もゲイルの背にそっと手を回し、きゅ、と抱き着く。

「げるりあでもぐりふぃすでも ゲイルはゲイルでいて。ぼくのゲイルでいて。
ゲイルはぼくとずっといっしょがいいの。だいすき」
「ああ、勿論そのつもりだ!誰が欲しがったって、離すつもりはないぞ!
ずっとお父様と一緒だ。陛下も認めて下さったしな!ゲイルもサフィが大好きだぞ!ずっとお父様と居ような!」

感動のシーンだったのに。

「………私は何をみせられているんでしょうね…。ええ、もう今さらうちに残って欲しいなどとは言えませんが、ちょっと過保護が過ぎませんか、叔父上」
「………………ちょっと嫉妬しちゃうよね…。あーあ…、僕、ほんとに愚かだったなあ…あんな酷いことさえしなきゃ……」

わちゃわちゃとライリオが割り込んできた。

「ライリオはげぼく。げぼくとして ぼくにつぐなうといい」
「………ライリオ……私とリオネルのことか…」
「下僕はともかく、僕たち、セットでまとめられちゃってるね…」

しょんもりするライリオを公爵が真面目な顔で諭す。

「サフィラスがどうあろうと、我々はサフィラスを支えるのみだ。………サフィラスが幸せならばよい」

そして、しばらくためらった後、公爵はこう言ったんだ。

「それに…………おまえたちには、私がいる。サフィラスは大切だし、これからもサフィラスに償っていくつもりだが…私はお前たちも愛しているぞ」


公爵は俺やゲイルと違い、これまで自分の気持ちはあまり口にしなかった。
俺とのことで、彼は変わろうと努力している。
大切なものは、失ってから気付いても遅い。そのことに気付いた彼は、今ある大切なものとしっかりと向き合っていくと決めたのだ。

「……私も、お父様を愛していますよ」
「僕も」

俺とゲイルみたいに、侯爵もライオネルとリオネルをしっかりと抱きしめた。

「えへへ」
「どうした、サフィ?」
「ライオネルとリオネル、うれしそうだね」
「…そうだな」




兄とは思えないけれど。
嬉しそうなライリオを見るのは、嬉しい。

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