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お披露目会、大成功!…だよね?!

俺と王様と王家のひとたち

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なんと、イケオジ。ステージみたいな段から降りて、俺の方に向かってきた!
しかも両脇に護衛を引き連れて!!

いやあああああああ!!!

とっさに俺はゲイルの前へ。
ぎゅうっと目をつぶり、両手を広げてゲイルの前に立ちふさがった。
俺のせいでゲイルまで死なせるわけにはいかんっ!!ゲイルは守るっ!!


ぽすん。
なでなでなでなで。
なでなでなでなで。


「????」


おずおずと目を開けると、そこには笑顔の王様が。
にこにこしながら俺の頭を撫でていた。

「驚かしてしまったようだな。
落ち着くがよい。お主がサフィラスだな?」

これは…

俺は一歩下がり、震える足で頑張ってあのボウアンドなんちゃらかんちゃらを披露した。

「は、はじめまして、へいか。わたくしは グランディールこうしゃくけが さんなん
サフィラスグランディールともうしましゅ!」

か、噛んだ…!!!
おもいっきし、噛んだ!!!!もおおおおおおおおう!!!!

周りでみんながぷるぷると震えているのが分かる。
人の失敗を笑うなんて!!!
恥ずかしさで真っ赤になり、涙目の俺。

いいよ、があるまでこの姿勢なんだよね。
泣きそうになりながら、必死でその姿勢を維持する。

………………まだ?


……………………………まだ?

なかなか「いいよ」がない。
ぷるぷるしながら頑張ったが、もしかして忘れられてるのかもと思い、ほんの少しだけ顔をあげてチラリ。

!王様と目があった!
あわててまた顔をさげて………

………もういいかな?チラリ。


これを繰り返すこと、なんと3回!
どうして「いいよ」がないの?!こんなことってある?!
俺はもう限界になって、おもわず口に出してしまった。

「もうげんかい…ぼくふけーでだんざい…?」

頑張ったけど、不敬?やっぱり不敬?
すると大慌てで王様が

「ああ!す、すまぬ!もうよい、よいぞ、サフィラス!
断罪とはなんのことだ?!
素晴らしい挨拶だった!感動して思わず見つめてしまったわ!」

と言って、俺の両脇に手を入れ、俺を子猫でも抱き上げるかのようにひょいっと抱き上げた。

「ぴええええええ?!」

思わず変な悲鳴をあげ、焦って陛下の頭にぎゅっ!
どどど、どうしよう?!
助けを求めるようにゲイルを見る俺。

「へ、陛下?!うちの子をどうされるおつもりですか?!」

ゲイルもさすがに驚いたようで、慌てて俺に手を伸ばす。
公爵とライリオも「さ、サフィラス!」ととっさに手を前に伸ばしてくれていた。
俺を守ろうとしてくれる4人に勇気を得た俺は、なんとか落ち着こうと試みる。
ん?4人?
すると、その時、とんでもないことに気付いた!
あ!お母さんポジで着いてきてくれたゲイルのこと、王様に説明しなきゃだったんだ!!!
俺はゲイルがふけーにされる前に急いで説明した。

「へいか、けいか」

王様のお顔を両手できゅ、とはさみ、ゲイルに向ける。

「こっちが、ゲイルはくしゃく!わたくしのおとうさまでちゅ!
それで、こっちはこうちゃくでちゅ!」

あああああ!!またしても噛んだ!!!



しーん。


会場に静寂が満ちた。
さっきまで「陛下!」「王妃!」「王子!!」だの騒いでた護衛たちまでもが、無言で立ち尽くしている。


困った俺は、改めて言い直すことにした。
今度は噛まないように、ゆっくりと丁寧に。

「………こっちが、ゲイルはくしゃく です。わたくしの おとうさまです」
こっちは、ぐらんでぃーるの こうしゃくです。
ほんじつは わたくし 5さいの おうさまへごあいさつのため おうじょうに まいりました」


言えた!!!噛まずに!!かんっぺきに言えた!!!
嬉しくなってしまい、俺は王様に満面の笑みを向けた。

どう?どう?これなら

「ふけー、しない?」
「ああああああ!!しない、しないとも、サフィラス!いや、サフィと呼んでよいかな?
なんとも可愛らしく素晴らしい挨拶であった。うむ!
生まれつき病弱だと聞いておったが、もう身体はよいのか?」

俺をぎゅうぎゅうしながら、王様が褒めてくれた。
やった!大成功だ!
王様、俺を断罪しなかった!

「ありがとうございます。もうだいじょうぶです。ゲイルがなおしてくれました」

すかさずゲイルを売り込む俺に、王様は優しい笑顔で頷いてくれた。

「そうか、そうか。それは良かった。決して無理はせぬようにな。
伯爵は素晴らしい医師だ。よい保護者を得たようでなによりだ」

ゲイルを褒めてくれた!しかも、優しい!!

「……王様、好き!」

あ。口にでちゃった!
思わず口を押えた俺に、王様はにこにこ。

「ほう!私が好きだと申してくれるのか?それは嬉しい!はっはっは!」

すると突然王妃様が王様の横からひょいっと顔を出し俺をのぞき込んできた。

「あなたばかり、ずるいわ!サフィちゃん。私はどうかしら?」

う、美しいいいい!!
これぞ金髪、っていう輝く髪に、神秘的なムラサキの瞳。
これで子供産んだの?ウソでしょ?!
お肌なんてぴっかぴかで透き通りそう!
目なんてまつ毛バッサバサでキラキラで宝石みたい!
絵本でみた、お姫様だ!!お姫様がいるうううう!!
俺はあまりの美しさに恥ずかしくなって顔を両手で隠しながら言った。

「………えほんのおひめさま。おはだぴかぴか。おめめはきらきらのほうせき。
まるでおはなのようせいみたいにきれいです」
「あらあらあら!まあ!!嬉しいわああ!
皆さまお聞きになりました?なんと美しく誌的な表現なんでしょう!素晴らしいわ!
わたくし、このような素敵な誉め言葉を頂いたのは初めてでしてよ!
ありがとう、サフィちゃん!」

王妃様は俺の頬に「ちゅ!」てしてくれた。
ひゃああああああああ!!!

俺はびっくりして、嬉しくて全身ぼわんぼわんのくにゃんくにゃんに。

「母上、やりすぎです!」

あわてて俺を支えてれたのは、王子!王子様!!
ライオネルよりも少し年上。
金髪に碧眼の、ザ・王子様!!
優性遺伝、すげええええ!!!
まだ子供なのにオーラが!オーラが半端ない!

おれは思わず目をシパシパ。

「大丈夫かい?私は第一王子のレオンハルトだ。私も父上たちのようにサフィと呼んでいいかな?よろしく、サフィ」

いいかな、と聞いたのに俺の返事も待たずにサフィと呼んでいる。
いいけど。

「でんかがまぶしかっただけ。だいじょうぶです。
わたくしは ぐらんでぃーるこうしゃくけがさんなん サフィラスです
サフィでいいです。よろしくおねがいいたします」

俺は忘れないうちに聞かれたことを全部答えた。何か言い忘れてないよね?全部言ったよね?
こてん、と首をかしげると

「かわいいなあ!私はこのように可愛らしい妹が欲しかったんだ!」

王子様がへにゃりとした笑顔で俺に微笑んだ。

「ぼく、おとこのこ。いもうとちがうです。おとうと」
「ごめんごめん。男の子だよね。うん。分かってるよ。
じゃあ、弟になるかい?レオンお兄さまって呼んでくれる?」
「おとうとならいいです。レオンおにいさま」
「うわあ!かわいいなあ!」

なでなでなでなで。
なでなでなでなで。
なでなでなでなで。

3方向からなでなでされた。
ちなみにこの間、俺はずっと王様に縦抱っこのままである。
しかも、落ちそうで怖いので、王様の首に抱き着いている。


…………お披露目ってこれでいいのだろうか?

不安になった俺は、恐る恐る保護者達の方を見た。
するとゲイルは呆れたように苦笑。
公爵は驚きのあまり無表情でフリーズ。
ライリオは何故か不機嫌で王子を睨んでいる。
なに、このカオス。

とりあえず、ゲイルに小さく手を振ると、ゲイルが口パク。

「だいじょうぶだ。そのままそこにいろ」

よかった!大丈夫なようだ!
俺は安心して王様に抱っこして貰った。
ゲイルもティガーも、みんな俺を抱っこしたがるからね。
王様も子供好きなんだね。うんうん。
優しい王族で良かった!

「やさしいおうさま、すき!」
「やさしいおうひさま、すき!」
「やさしいレオンおにいさま!すき!」

にこにこしながら伝えたら、みんなすごく優しい顔になった。

「ありがとう。なんとうれしいことだ!」
「まあ!わたくしも可愛らしいサフィちゃんが大好きよ!」
「ふふふ!ありがとう、サフィ。私も大好きだよ!」

そして、王妃様が「ねえ、サフィちゃん。私にはお返しをくれないのかしら?」と頬をトントンとするので、慌てて俺はお返しをした。

ちゅ!

すると残る2人も頬を差し出すので、2人にも。

ちゅ!
ちゅ!


俺、冒険者になったら、王家のことも守ってあげるからね!まかせておいて!

こうして王族へのお披露目を終えた俺は、無事ゲイルの腕の中に返された。
そう、下におろされたんじゃなくって、王様の腕からゲイルの腕にバトンタッチ。

ゲイルの腕に俺を渡しながら、王様は広間を見渡しながら、こう宣言した。

「サフィラスは、10歳を迎えた際、後継のないゲルリアス・グリフィス伯爵の養子になることが決まっておる!
先だってゲルリアスより相談を受け、既にその許可は出した。
つまりこのサフィラスには、グランディール公爵家のみならず、グリフィス伯爵、そして叔父のサフィール筆頭侯爵家、そしてこの私が後援につくことになる。
皆もその旨、心するがよい!」

そして、俺の保護者達に向かって言う。

「グランディール公爵家が3男、サフィラス・グランディール。
とても聡明で賢い子だ。しかも、魔力が多いと聞いておる。
病弱であったと聞が、そのことも影響しておるのだろう。
皆でしっかりと守ってやるように」
「「は!しかと承ります!」」


「サフィ。魔力測定をしたら、またゆっくりと話そうではないか。
城内を自由に見て回る許可を出そう。皆のお披露目が終わるまで、城で待っていてもらえるかな?」

俺は元気よく返事をした。

「はい!へいか!ありがとうございます!へいかのこと、おしろでおまちいたしますね!」





こうして俺のお披露目は大成功で終わったのだった。
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