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俺、えりりんと貴族教育する!

俺のお披露目会の衣装が届いたよ!

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パンパカパーン!
届きましたよー!
え?何がって?
ゲイルが数か月前から注文してくれてた、俺のお披露目の衣装でえーっす!

服にはそんなに興味もないし、着せ替えにはうんざりだった俺だけど。
でも、でも届いてみると気になるの!
だって、ゲイルが!俺の為に!どんなのを作ってくれたのか気になるじゃん!
なるよね?!
ってことで、俺、そわそわ。
でも、それをゲイルにバレないよう必死で取り繕ってます。
その箱なあにー?衣装だなんて思ってないからねー?




今日届くって言うのは、内緒だったみたい。
って俺、なんとなーく分かってたんだけどね。
だってさ。ゲイルってば数日前から俺を見てはにこにこしてたし。
今日なんて、平日なのに俺の部屋に居た。

「ゲイル、びょういんは?おしごとは?」

て聞いたら

「あ、ああ。今日は休みなんだよなー。
たまにはゆっくりしようと思ってさ。
え?なんだよその疑いの目は!
ホントに休みなんだって!いや、たまにはいいだろ?休んでも。
サフィだって、お父様と一緒に居たいよな?な?」

なーんて。むちゃくちゃ挙動不審。
でもって、決定打となったのは…
ゲイル、外をちらちら気にしすぎ!
外から誰か来るか何か届くかするんだなって、丸わかりだっての!
で、俺の衣装頼んであるって言ってたなー、とか
1か月前だからそろそろ出来上がって来るんじゃないか、とか。
俺のこれまでの履修知識から判断したってわけ!

もちろん、ゲイルには俺が気付いたことは伝えてない。
だって多分「サプライズだ!」って休みまでとって張り切ってるんだもん!
ここは「うわー!衣装?!届いたの?!すごーい!!驚いたあ!」ってやってあげるのが愛息子ってもんだ!


でもって、馬車が付いたとたん

「あ!ちょっと用が…!」

と空々しく叫んで飛び出してったゲイルを、そわそわ待っているナウなんですわ。

すー。はー。
心構えはいいか?
気付いてたことは気取られるなよ、俺!



「サフィ、ちょっといいか?」

来た!

「これ、何だと思う?」
「えー!ぼくわかんなあい!ゲイル、そのおおきなはこ、なあに?」

(………バレてるな、こりゃ。なんで分かったんだ?)

ゲイルは苦笑しながら、俺の前に箱を置いた。

「サフィ、開けてごらん」

ワクワク。ドキドキ。

「!!これ!!」

本当に驚いた。
だって!凄いよこれ!!
見るからに高級な生地を使っているのが分かる。
色は、まるで新緑のようなグリーン。
俺とゲイルとエリアスの瞳の色。
つまり、サフィール家の色だ。

そおっと手で触れて出してみる。

「………ぼくの!ゲイルのいろだ!
ゲイルがえらんでくれた、ぼくのふく、ゲイルのいろだ!」

感動して思わず叫んでしまった。
ゲイルは手で顔を覆って上を向いている。
そんな「尊みが深い!」なオタポーズしてどうした、ゲイル?

「ゲイル、ゲイル!」

と俺はぐいぐいその腕を引っ張り、ゲイルをしゃがませる。

「みてみて!
ゲイルのいろ!いっしょだ!」

とゲイルの横に服をかかげてみせると、ゲイルは顔を赤らめてこうこぼした。

「そんなに俺の色だって連呼すんな、サフィ。
おとうさま、恥ずかしくなっちゃうだろ」
「なんで?ぼく、うれしいよ!はずかしくないよ!」
「あー…、貴族の間では『自分の色を好きな相手や婚約者に纏わせる』ってのがあるんだよ。
『俺のもの』みたいなさ。
まあ、それはそういう意味じゃないんだが…
いや、まあ、公爵家への牽制というか…
あー、と、とにかく、そんなに連呼されたら恥ずかしいんだよ!
おとうさまとしては、そこはさりげなあく流して欲しいなー、サフィちゃん」

つよつよなゲイルにも繊細な心の機微があるようである。
俺は訳知り顔で「うんうん」と頷いた。

「おとうさまごごろはふくざつ。りかいした」


そして改めて服を掲げる。

「よくわからないけど、ぼく、これすき!」

色もいいのだが、広げてみて驚いた。
全体にびっしりと同じ色で細かな刺繍が施してあるのだ!
その刺繍は植物をモチーフとした幾何学模様で、目を凝らして初めてそれをわかる細やかさである。
これ、手作業だよね?
どれだけ手間がかかってるの?
揃いのリボンやらまで箱に入っていて、ゲイルの力の入れようが良く分かる。

きっとゲイルは色や形は勿論、刺繍の位置、袖口や裾に施された飾り、あらゆるところまで凄く時間をかけて吟味してくれたんだろうな。
職人さんと額を突き合わせながら、ああでもないこうでもないといちいち細かく口出ししているゲイルが目に見えるようだ。

ぽとり。

あれ?どうしたのかな?

ぽろぽろぽろり。

俺の目から涙がこぼれ落ちた。

「ど、どうした?!サフィ?!
どこか痛いところでもあるのか?
それとも、この服、ほんとや嫌だったのか?
ゲイルに話してごらん?」

慌てて俺を抱き上げ、俺の涙をぬぐうゲイル。

「…ちがう。いたくない。
あのね、ゲイル。ありがと。
すっごおくすっごおくうれしいなっておもったら
なみだでた」

「ゲイル。ありがと。
ゲイル、たくさんたくさんがんばった。
たくさんかんがえてくれてありがと。
ゲイル、だいすき。ありがと」

一生懸命気持ちを伝えた俺に、ゲイルはものすごく優しく微笑んだ。

「うん。おとうさま、サフィのためにたくさん頑張ったぞ。
素晴らしい俺の息子にはとっておきの衣装でなくちゃ。
気に入ってくれたらうれしい」

「きにいった!さいこう!すき!だいすき!」





その後、その衣装を着た俺はくるくると。
あっちからこっちから360度チェックされた。

「うーん。どこから見ても可愛いな、うちのサフィは!天使!」

「手を挙げてみてくれるか?はい、ばんざーい!」

「どこかきつい所はないかい?苦しい所は?」

「はい、ピョンピョンしてみようか!
うー!やっぱ可愛いなあ!」

チェックの合間に、なんだか関係ないことをやらされている気がする…。



さんざん色々させられぐったりした俺に、ゲイルは一枚のハンカチをくれた。

「最後に、これを。
胸のポケットに入れてもいいかな?」

それは、公爵家の碧だった。

「サフィはもううちの子だ。俺の大切な息子だ。
でも…公爵家の血を引いていることも確かだ。
サフィはそのルーツを含めてまるごと俺の大切な息子なんだよ
だから…このハンカチを」

そう言ってそっと俺の胸にさし、ポンポン、と優しいしぐさで俺の肩を叩いた。

「これで完成!」

うん。うん。
ゲイルがそういうのなら。
公爵家は好きになれないけれど、この碧だけなら身に付けてやってもいい。
俺の身体は緑に彩られているけれど。
胸元にほんの少しだけ。

ゲイルは、「公爵のために」とも「公爵家のために」とも言わなかった。
ただ、俺の「ルーツだから」と。
だから。
俺の消せない過去の証として。
俺が確かにここに生まれた証として。










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