もう我慢なんてしません!家族からうとまれていた俺は、家を出て冒険者になります!

をち。

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俺、えりりんと貴族教育する!

俺、新メンバーに困惑する

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貴族教育も大詰めを迎え、俺は…遂に部屋から出ることに!
あー……嫌だなあ……


俺は、サフィを無視したり陰で「いらない子」だの「悪魔の子」だの言ったやつらが嫌だった。積極的に暴力を振るわれたというわけではないので、そこまでの恨みはないが…。
外に出たら優しくして貰えると希望を持っていたサフィのことを想うと、やりきれないのだ。
少しは気を遣ってくれる人もいるにはいたが、この屋敷の大半はサフィを無視したのだから。

俺の公爵家で扱いが激変し、手のひらを返したような態度を取られても困惑しかないじゃん。
「あ、誤解が解けたのね、じゃあ、もういいよ」とは思えないのだ。
下手に気を遣って申し訳なさそうにされたらされたで嫌だしね。

ってことで、俺の安全地帯である部屋から出るのを渋る俺に、ゲイルはサラっととんでもないことを口にした。

「かわいいサフィに不敬を働いた奴らはもうみーんな居ないから、安心して出ていいぞ!」

あの、サフィに怨嗟のような呪いの言葉を吹き込んだ、母の元侍女という女は、サフィが倒れた後ゲイルによって解雇されていた。
解雇した、という際にゲイルがニヤリとしたので、ただ単に解雇しただけではないのだろうが、まあ、そこは突っ込まないでおく。
その他、ゲイルは公爵家の使用人を容赦なく断罪。
本来ならば他家の、しかも上位貴族の家の人事に踏み込むなどあり得ぬことなのだが、ゲイルは有無を言わさず公爵に許可を取り付け、母が存命の頃からの使用人でサフィに辛く当たったもの、反意を持ち悪評を口にしていた者を切り捨てまくっていた。
彼らは、主家の息子に不敬を働いたということで、紹介状無しでの解雇となった。
高位貴族である公爵家から紹介状なしで解雇されたものなど雇うところはない。
今後彼らはまともな職にはつけないだろう。
使用人の中には遠縁の子爵家の3女、4男などもいたが彼らは除籍され、平民扱い。
行先が無く修道院送りとなったものもいるようだ。

「………」

繰り返すが、ここは公爵家。ゲイルは伯爵である。
いくら俺の身内、親族の嫁ぎ先とはいえ、ここまでやりたい放題していいのだろうか。
ゲイル…いったいどんなコネを持っているんだ?
底が知れなさ過ぎて、ちょっと怖い。
俺は最強のお父様を持ったようだ。

「ねえねえ、僕の事を忘れてない?
サフィちゃん、エリアス叔父様も協力したんだよー?
サフィちゃんの為に、選りすぐりの使用人を連れてきたからね!
みんなとっても優秀だから!
まずは、これからずっとサフィちゃんのお世話をしてくれる侍女と、手足となって動いてくれる侍従を紹介するね」

「はい、紹介するから入ってきてー!」

パンパン、とエリアスが手を叩くと、いつの間にか俺の横に2人の使用人が。
1人は25歳くらいの女性で……え?ウソだろ?!めっちゃくちゃ可愛い!
ロングの黒髪をツインテールにしていて、月に代わってお仕置きしちゃう人みたい!

「この子は、マリー。領内の剣術大会で殿堂入りしていまーっす!」
「さふぃらすです。よろしく、マリー」
「サフィラス様。私、マリーと申します。ぴっちぴちの25歳でええっす!
いやあああん!!お可愛らしい!
こんなにお可愛らしいと誘拐されちゃったり、イケナイコトされちゃったりっあらぬことをっされちゃったりっ
ああっ心配だわああああ!!
ハアハア…このマリーが!しっかりとサフィラス様をお守り致しますので、ご安心くださいましねっ!!!」

剣術大会殿堂入り?
え?こっちのお姉さんが武力担当なの?ウソでしょ!
あと、25歳はぴっちぴちといっていいのか?
ツッコミどころ満載だったが、後半はゲイルに耳をふさがれてよく聞こえなかった。
なんかハアハアいってるけど、大丈夫?
鼻血が出てきたので、俺はそっとハンカチを渡した。

「ああああん!お優しいい!マリー、このハンカチ決して洗いません!」

いや、洗って返してね。



もう1人は男性。なんと180センチあるというゲイルよりも大きい!185センチだって!
歳の頃は22、3歳。少しあさ黒い肌の色と細身だけど鍛えられた肉体は黒ヒョウを思わせる。
精悍さを漂わせた美形だ。

「彼は、ティガー。22歳だよ。見ての通り異国の血が入っている。
代々僕の家に仕えてくれている執事の息子なんだ。
彼は万能でね。料理も作ってくれるよ!裁縫だってできちゃうんだ!
あと、着替えからスケジュール管理まで、すべて滞りなくやってくれるからね!
安心してお世話されちゃって!
あとね、彼は貴族院を首席で卒業している。分からないことはなんでも彼に聞いて」

おおおお!!戦力に全振りしたようなマリーと違い、なんて頼りになりそうなんだ!
俺の中で、どっちかというとマリーはえりりんの仲間。ティガーはゲイルの仲間に分類された。
もちろん、後者の方が好感度が高い。
いや、エリアス叔父様は侯爵としての能力は素晴らしいみたいだけどね。
ちょっと俺に対しては変態チックというか…えりりんな部分が…なんか…げふんげふん。

俺はここにきて登場した、たぶんめっちゃ期待できる従者に、にこにこと手を差し出した。

「ぼくはさふぃらすです。よろしく、ティガー。かっこいいね」

ティガーは一歩前に出ると、俺の前に跪き、うやうやしく俺の手に口づけた。

「はじめてお目にかかります。サフィラス様!
お噂にたがわずお美しい…。まさに美の侯爵家のお血筋…。
今後、わたくしめが居ります限り、サフィラス様に不自由など感じさせません!
何でもお申し付け下さい!」

なにこれ!ま、まぶしいいい!!上目遣いで微笑む彼に、キラキラのエフェクトが見える!!

俺は目をしぱしぱさせながら、ゲイルを見た。

「……あー…、2人とも優秀なんだよ。
ちょっと…マリーの方は……アレだし、ティガーの方は天然な人たらしではあるが……
優秀だ、それは間違いない」


侯爵家、家臣まで強火なんですかー?
しかも、可愛い方が武闘派で、精悍な方が家庭的って!
反対だったら良かったのにいいいい!

でも、2人ともにこにこしていて俺を見つめる目が優しい。

「あ、あのー」

よろしいですか、とマリーがおずおずと片手をあげた。

「なんだい、マリー」

俺ではなくエリアスが返事をする。

「サフィラス様を抱っこしてみてもよろしいでしょうか?」

手を伸ばすマリーに、ゲイルがすかさず「却下」と、俺を抱き上げ膝に乗せる。

「では、わたくしでは…」

さり気なく手を伸ばしてくるティガー。ティガー、お前もか!

渋るかと思いきや、ゲイルはしぶしぶながらティガーに俺を差し出す。

「そおっとだぞ、そおっと」
「はい。そおっと、ですね」

ゲイルから慎重に俺を抱き取り、縦抱っこ&ぽんぽんをかますティガー。
俺、何歳だとおもわれているんだろう…。
しかし、意外や意外、ティガーの抱っこはとても素晴らしかった!
俺の身体の支え方といい、尻の下の安定感といい、抜群の抱かれごごちである。
精神的にはゲイルの抱っこが1番なんだが、物理的にはティガーの方が上かもしれん。
ちょっと満足してにこにこしていると、

「おい、もういいだろう。返せ。俺のだ」

とゲイルが無理やり俺を奪い取った。
おとーさまったら…!

今後、部屋から出るときは、ゲイルやエリアスは勿論、彼らが不在の時もこの2人が俺に付き添ってくれるらしい。
おおお!
なんか会ったばかりでアレだが、この2人はゲイルやエリアス臭がして、俺はすっかりこの2人を信頼していた。
俺の勘が、こいつらは俺を裏切らないと言っている。




「俺たちもいつもついててやれる訳じゃないからな。
こいつらが居てくれるなら、どこに居ても安心だ。
サフィ、もう嫌な奴らはいない。そろそろ、外に出てもいい頃だ」

俺を抱き上げたままゲイルが言った。

俺は、指を口元にあてながら「うーん」と考えてみた。そうだな。
いつまでも部屋にこもっていられない。図書館にもまた行きたいしね。
屋敷の人員もほとんど入れ替わってるっていうし、こんなつよつよメンバーがいるなら部屋から出てもいいだろう。
ウザイ奴らなど跳ね飛ばしてくれそうw


「うん!いく!
れっつごー!」

俺はご機嫌で拳を突き上げたのだった。

















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はじめまして。初めて書いてみたオリジナル異世界BL。可哀想な主人公が、それに負けずに力業で幸せになるのが好きです。ハピエン主義なので、完全無双のハピエンになります。誤字脱字など、ご容赦くださいませ(;・∀・)→ご指摘があれば修正いたしますので!ご都合主義の作者の自己満足小説です。作者豆腐メンタルのため、ご不満のある方は「そっ閉じ」でお願いいたします。。。お楽しみいただけましたら、ぜひぽちっとイイネをお願いいたします♡コメントもぜひ♡
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