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ゲイル、息子(予定)の為に公爵家に通います!

閑話休題 俺とえりりん

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顔合わせを経て早速開始された貴族教育だが…

「えりりん」
「エリアスせんせい」
「えりりんだよ、サフィ」
「……えりあすせんせい」
「え・り・り・ん」

俺の前で頬杖を突くこの男。
現侯爵家主君にして、シスコンこじらせサフィコンになった俺の叔父、エリアスである。
エリアスは、なんと姉である母から「えりりん」と呼ばれていたらしい。
(何やっちゃってたのおかあさま!!)
俺の貴族教育の教師として公爵家に来ているのだから、当然のように「エリアス先生」と呼んだ俺に対して、エリアスが要求したことが、先述のアレだ。

俺さ、一応悩んだんだよ?
「エリアス叔父様」か「エリアス先生」か、ってね。
一応「エリアス侯爵」も候補に挙げたんだが、教師にそれってどうなのかなと思ったんだ。
まあ、結構考えた末の「エリアス先生」だったんだが…
あー…まさかそう来るとは!
悩んだ俺の時間を返してほしい。

そもそも侯爵家当主が「えりりん」って!!
無理でしょ!
無理がありすぎるでしょうが!!

こういうわけで
「えりりん」呼びをさせたいエリアス叔父
VS
「エリアス叔父様」もしくは「エリアス先生」でお願いしたい常識人な俺
とのしょーもない戦いが開催されているわけである。


なかなか終わらない低レベルな戦いを見るに見かねて、「初回だけでも監視する」と俺たち(主にエリアスが何かしでかさないか)を見守っていたゲイルが、しぶしぶと口をは挟んできた。

「あー…、さすがによそんちで『えりりん』は不味いだろ。年齢と立場を考えろ。
せめてエリーに…」

「それは姉さんの愛称だ」

それまでのふざけっぷりが嘘のような強張った声でエリアスが言った。

「……すまん。失言だった。俺はリアって呼んでたから…」



気まずい沈黙に耐えかねて、俺はことさらに明るい声を出す。

「じゃあ、たんに『せんせい』で。
『こうしこんどうはだめ』だからね。
それで、おしえてもらっているときいがいでは『えりあすおじさま』とよばせてください」

ね、いいでしょう?とにっこり。
侯爵家の俺廃どもよ!俺の天使の微笑み、くらうがいい!

ところが、敵は強かった。

「ええー。教師の時にはそれで我慢するけど…。
じゃあ、それ以外では『えりあす』って呼び捨てにしない?
サフィ、ゲイル兄さんのことはたまに『ゲイル』って呼んでるでしょ?
もしくは『ゲイルおとうさま』とか。
ずるいよ!僕だって呼び捨てにされたい!
もっともっと近い距離がいい!」

とごねだしたのである。
侯爵家…当主か………。
ほんとうに大丈夫なのかな…侯爵家……。

結局、1日目は「エリアスを何と呼ぶか」で終わってしまった。
今後には心配しかない…。


余談だが、これ以降、エリアスに何か無理を頼みたい時には「えりりん」と呼ぶことにした。
にしても、「えりりん」かあ…マジでおかあさま何やっちゃってんでしょうね…。
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