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ゲイル、息子(予定)の為に公爵家に通います!

俺、貴族教育を再開する。(加筆修正済)

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療養して1か月。
さんざんゲイルに甘やかされ、美味いものをたくさん食べて、適度に運動(といっても、部屋の中でやる「ゲイル登り」やら「ゲイル飛び」やら「ゲイル引き」ならを運動というのなら、だが)した結果。
俺はあっという間に健康体に!
俺の身体って凄くない?
魔力チート万歳!
これにはゲイルも

「……いや、これ、俺の予想よりヤバいだろ…。
いったいどれだけ魔力があるんだ?
俺も多い方なんだが、ことと次第によっては俺の数倍は…」

なんて眉を寄せてブツブツ言いだした。
え?もしかしてヤバい?チートが過ぎてるの?
……俺はこれ以上考えることを放棄することにした。

インナー俺も、安定!
この1か月くらいは、むちゃくちゃ子供返りしたり(まだ子供だけど)、かと思えば行動や口調はともかく思考回路はばっちり17歳俺だったり。
とにかく、自分でも「うわー。ごちゃまぜだわー」と引くくらいおかしかったと思う。
それはまあ、状況が状況だったので「精神的に不安定なのだ」と無理やり納得させていたような感じなのだが…。
ここにきてようやく俺がまとまった。
今の俺は知識や脳内は17歳だけど、実際の感情や言動は4歳、みたいな感じ。

前世より若返ってみて、気付いたことがある。
子供って凄いのな。
あっちこっちに意識がそれる。
それは自分ではどうしようもない。面白いって思ったらもうそれしか見えねーんだもん。
そんで、好きとか嫌いとかの気持ちがかなり言動にでてしまう。
ゲイルにはでろでろ甘々100%。
それ以外にはツンで冷静な俺、みたいな。
その変わりっぷりもまた凄いらしい。

公爵とゲイルと俺がいる場合、ゲイルが俺を抱っこしながら公爵に向かってすんげえドヤってる一方、公爵はあんまり表情は変わらないのだがどこか捨てられた犬のような哀愁を漂わせている。
あんなに俺を無視してたヤツがしょげてんのを見て、ちょっとだけ胸がスカッとする俺。
時折俺に話しかけたそうにしているが、無視だ無視!もっと反省してろ!
まあ、クソな親父は今までが今までだからな。
俺に優しくされるのは期待しないで欲しい。
俺はね、もう開き直ると決めたの。
アンタは他人。俺のお財布。俺の下僕。
そう思い込む。
アンタには出来の良い優秀な息子が2人もいるんだし、それでいいじゃん。
俺としたら、10歳まで「幼子に精神的苦痛を与えた慰謝料」として俺の面倒をみる、主に衣食住や教師の手配やら金銭的なものやらをしてくれたらそれでいいの。
別にもう家族してくれなくていいの。
その分、ゲイルがいっぱい家族してくれるもんね!
それに、まだ会ったことはないけど、ゲイルの親戚たちだってくれるはずだし!
もう公爵家のはいらんから。ノーサンキューです。

「こうしゃくはひつようない。おかねくれるだけでいいの」

ガーン、と公爵の後ろにエフェクトが見えた。

「げぼくとしてならいいよ。がんばってぼくをささえて」

俺は公爵をはげましてやる。倒れられたら困るしね、俺の金づる。




さて。そんなわけでようやくサフィとして安定した俺は、次のターンに入ることにした。
そう。
俺をボロボロにしちゃってくれた「貴族教育」の再開である!
5歳のお披露目で、俺はばっちりとスンバラシイ姿を見せるのだ!
だって、俺はゲイルの息子なんだもの!
優秀でスンバラシイ息子たんとして、ゲイルの自慢の息子になるんだ!ドヤア!

公爵に向かって「おひろめはちゃんとする」と宣言した俺だが、公爵は「無理しなくても良い」といった。
いや、それ、今更ですわ。
そもそも、アンタが俺を4年も何の教育もせず放置したあげく「1年でなんとかしろ」無茶ぶりするからこうなったんだぞ?
でも、大丈夫。
だって今の俺には17歳の俺の記憶がある!
んでもって、サフィが頑張ってた分の記憶もバッチリあるんですよ!
サフィには難しかったかもしれんが、何しろ受験戦争を勝ち抜いた俺ですよ?
しっかりきっちり覚えております!
まあ、インプットは問題ないとして、あとはそれをうまくアウトプットできるか。それだけだな。
見てろよー!めにものをみせてくれるわ!はっはっは!
サフィちゃんの実力を思い知るがいい!

てことで、貴族教育を再開すると言った俺を、ゲイルは止めなかった。

「お前がやれるというんなら、やれるんだろう。
でも、無理だけはするんじゃないぞ?」

そう言ってくれたんだ。
信頼されてるんだなー、って思えてなんだか嬉しい。
と思ったら…

「その代わり、しばらくは俺が先生だな!
医者の仕事は緊急以外は助手に任せて、俺はサフィの選任教師だ!
これでも一応当主として貴族教育は受けたからな!
お父様に任せなさい!」

「いや、今度こそ私がよくよく吟味した教師を…」

「は?!」

公爵の言葉を遮り、ゲイルが氷点下の視線を投げる。

「いやいや、公爵様がよくよく吟味して選んだ相手がアレだったんですよねえ?
ここはわたくしに任せて頂ければ」

「………」

何も言えない公爵。
勝ったといわんばかりに、にこにこと俺をふりかえるゲイルに、俺は言った。

「ダメ!ゲイル きちんとしごとして!
しごとのあと ここにかえってきて!
おれゲイルじゃないせんせいでいい。
ゲイルは おいしゃさんで、りょうしゅ。
おしごとをして!」

「サフィー…。おとうさま、教えるのはとっても上手だぞ?」

「でもダメ」

上目遣いでおねだりしても、ダメなものはダメなんです。
それにしても、オッさんの上目遣いなんて、と言えなく威力があるところが、ゲイルの凄い所だ。
このオッさん、無駄に顔がいい。その威力もわかってやがる。
俺だってゲイルに教えて欲しいけど…
でも、俺は負けない。ゲイルの為だもん。
ゲイルにはきちんと仕事ができるカッコいい大人でいて欲しいんだ。
俺は胸の前で腕を組み、断固とした態度で言った。

「おしごとをちゃんとする、カッコいいゲイルすき。
だからおしごとして!」

ゲイルが「負けた!」という顔で、大きくため息をついた。

「……公爵様。教師の手配はお任せします。
でも、サフィに会わせる前に、必ず私が面接をいたします。
信用していないわけではございませんが、なにしろ、あのクソ教師…失礼、とんでもない教師という前例がありますのでねえ…」

「分かった。吟味するつもりだが、君さえよいのであれば、サフィラスに会わせる前に必ず君に会わせよう。」

言った後、公爵はおずおずと俺に確認した。

「…サフィラス、それでよいだろうか?」

「はい。それでいいです。よろしくおねがいします」





こうして平和に貴族教育再開の打ち合わせは終わったのだった。

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