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36.ゼインとの繋がり。
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~ゼインSide~
あの子の苦痛に歪んだ顔が脳裏から離れない。
腕を縛られて、服を脱がされて、同意のない行為を行おうとした。
これではいくら婚約者だと言っても、運命であっても、ただの暴力以外の何物でもなかった。
わかってたんだ、ルカがイードル殿に気がないということは。ただ、私の嫉妬心が肥大化しただけ。
父上に婚約破棄の件を伝えたら、了解したとの返事だけ貰った。それをフースカ国王夫妻にも先日伝えたが…。
どれだけあの子を傷つけたら気が済むのか、あの子にかかる負担を考えなさいとか。
そんなの、私といるよりはマシだろう?
私があの子といれば、きっとまた体を壊すほどの負担をかける。
まさか、突発性難聴と魔力妨害症を併発するとは思っていなかったけど。
でも、私と離れていればきっと。きっと回復して、新しいルカを大切にしてくれる人と出会えば、またあの子は笑えるようになるはずだ。
と、たくさんの思考に耽っていると、ノックがされた。
扉を開けたのは、ジークフリード。
「アントス王国に着いたそうです、ルカ。………すみません、あのときは、やりすぎました。王族である貴方を殴るなど。処分は如何様にも。ただ、家族にはご容赦ください。」
そんなこと、するわけがないのに。
「いや、私が悪かった。此度は不問とする。………ルカは、どんな様子だった。」
ギリッと歯軋りをして、苦しそうにこちらを見る彼。
「都合のいい事を今から言います。
あのときは、ルカの前から消えてしまえと言いましたが…。どうか、あの子の側にいてあげてくださいませんか。
あのままでは、あの子はきっと………この世から消えてしまう。お願いします。どうか、あの子の側に…」
「もう、無理だよ。聞いただろう?婚約破棄の件を。父上からは既に了承の旨が伝えられた。
それに、きっとルカが辛いのは、今だけだよ。時間が経てばきっと…私といるより幸せになれるはずだ。」
「っ……!申し訳…ありませんでした…。」
なんの謝罪なのだろう。わからない。
ジークフリードは謝罪だけすると辞していった。
私は…この年にもなって一体何をしているんだろうね。
思えばよくあの子を怖がらせていた気がする。いつも醜い嫉妬ばかりして。
きっとあの子は我慢していたのだろう。
クリス殿とアレク殿に、合わせる顔がないな…。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから2週間ほど経って、お兄様も帰ってきた。
僕はまだ何も聞こえなくて、魔法も使えない。
火魔法を使おうとすると、手のひらからボフッていう感じの衝撃があって煙が出るだけだし、水魔法を使おうとすると、手のひらが湿るだけ。
それから…僕は、先週家に帰ってから微熱と怠さ、悪寒がずっと纏わりついていて、ベッドから出られていない。
只管、ゼインから貰った全てのものをかき集めて、ベッドの上に置いて。
ゼインから貰った服、ネックレス、腕輪、指輪、宝石、ペン、ぬいぐるみ。細かいものは箱に入れているけれど。
ゼインとの繋がりを感じられるものがないと、気が狂ってしまいそうだった。
なのに。
(無い……無い……!どこっ…!!やだっ!!ゼイン!ゼインのが…!!どこにあるの!!!)
彼から貰ったブローチが、どこにも無くなっていた。箱の中を見て心を落ち着けようと開けると、どこにも無くて。
悲鳴を上げる体を無視して、ベッドの下やシーツに絡まってないか入念に探した。けれど、いくら探せども無くて。
終いには、服に飾られていた宝石もいくつかなくなっていることに気づいて。
疑いたくはなかったけれど、この部屋に掃除しに来ていた使用人が…?あまり、見ない顔だった…。
ぺたりと絨毯の上に座り込んで服を抱きしめ、止まらない涙を流した。
すると、肩をぐいっと引っ張られる。そちらを向くと、父様がいて。
聞こえないからちゃんと話せているか不安だったが、ブローチと服の装飾が無くなったことを伝えると、今まで見たことのない怒りの形相で頷いて、僕の頭を撫でた。
そのままベッドまで運んでくれて、待ってなさい、というふうにもう一つ頭を撫でて部屋を出ていく。
彼から貰った服がぐしゃぐしゃになっても、抱き締めるのを辞められそうにはなかった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
~クリスSide~
ネロー殿下の魔法を解く仕事が終わった…と思えば、ゼイン殿が私の可愛い息子を泣かせたというではないか。
そして責任を感じたゼイン殿が婚約破棄を申し出て、それを聞いてしまったあの子が再び泣いて。
それが原因で耳も聞こえなくなるわ魔法も使えなくなるわ。
しかも運命不足で体調を崩している。
運命が離れるとどうなるのかあいつはわからんのか?!
最悪気が狂って死ぬんだぞ!!
ルカは死なないと思っているようだが……。
そして今日はあのクズから貰った贈り物がいくつか無くなっていたらしいし!
誰だこの屋敷にいる盗人は!
先程ルカの部屋を掃除したあの使用人。最近入った人間だ。まさかあいつか?
調べてみるとすぐに話し始めた。
「は、はい…私です!!弟の病の治療代がっ足りなくて…!!」
嘘だ。こちとら使用人を雇うときはすべて調べているんだよ。お前に弟がいないことも、お前が休みのたびに豪遊していることも、すべて知っているんだぞ。
自分の財布の範囲内で遊ぶのならと目を瞑っていたが…。
しかし服の装飾の方はまだ手を付けていなかったみたいだが、ブローチは既に売られてしまったのか…。
もう看過はできない。
「アレク、行くぞ。」
「わかったよ、クリス。」
「あ、あのっ…?!ちょ、やめてくださいっ!嫌だっ!!」
バタバタ暴れるのを拘束して、我が家の地下牢へと連れて行く。
最新の魔道具があるんだ。使えるような人間がいなかったから、こいつを実験台にしよう。
「ああ、リアス。ブローチの行方を追え。買い戻せるなら我が家の財産すべて使ってもいい。」
「御意」
影に潜んでいた腹心にそう命じると、アレクと共に魔道具を使用し始めた。
……ああ、いけないな。こんなに身体が飛び散るだなんて。改良の余地あり、か。
ああ、臭い。
あの子の苦痛に歪んだ顔が脳裏から離れない。
腕を縛られて、服を脱がされて、同意のない行為を行おうとした。
これではいくら婚約者だと言っても、運命であっても、ただの暴力以外の何物でもなかった。
わかってたんだ、ルカがイードル殿に気がないということは。ただ、私の嫉妬心が肥大化しただけ。
父上に婚約破棄の件を伝えたら、了解したとの返事だけ貰った。それをフースカ国王夫妻にも先日伝えたが…。
どれだけあの子を傷つけたら気が済むのか、あの子にかかる負担を考えなさいとか。
そんなの、私といるよりはマシだろう?
私があの子といれば、きっとまた体を壊すほどの負担をかける。
まさか、突発性難聴と魔力妨害症を併発するとは思っていなかったけど。
でも、私と離れていればきっと。きっと回復して、新しいルカを大切にしてくれる人と出会えば、またあの子は笑えるようになるはずだ。
と、たくさんの思考に耽っていると、ノックがされた。
扉を開けたのは、ジークフリード。
「アントス王国に着いたそうです、ルカ。………すみません、あのときは、やりすぎました。王族である貴方を殴るなど。処分は如何様にも。ただ、家族にはご容赦ください。」
そんなこと、するわけがないのに。
「いや、私が悪かった。此度は不問とする。………ルカは、どんな様子だった。」
ギリッと歯軋りをして、苦しそうにこちらを見る彼。
「都合のいい事を今から言います。
あのときは、ルカの前から消えてしまえと言いましたが…。どうか、あの子の側にいてあげてくださいませんか。
あのままでは、あの子はきっと………この世から消えてしまう。お願いします。どうか、あの子の側に…」
「もう、無理だよ。聞いただろう?婚約破棄の件を。父上からは既に了承の旨が伝えられた。
それに、きっとルカが辛いのは、今だけだよ。時間が経てばきっと…私といるより幸せになれるはずだ。」
「っ……!申し訳…ありませんでした…。」
なんの謝罪なのだろう。わからない。
ジークフリードは謝罪だけすると辞していった。
私は…この年にもなって一体何をしているんだろうね。
思えばよくあの子を怖がらせていた気がする。いつも醜い嫉妬ばかりして。
きっとあの子は我慢していたのだろう。
クリス殿とアレク殿に、合わせる顔がないな…。
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あれから2週間ほど経って、お兄様も帰ってきた。
僕はまだ何も聞こえなくて、魔法も使えない。
火魔法を使おうとすると、手のひらからボフッていう感じの衝撃があって煙が出るだけだし、水魔法を使おうとすると、手のひらが湿るだけ。
それから…僕は、先週家に帰ってから微熱と怠さ、悪寒がずっと纏わりついていて、ベッドから出られていない。
只管、ゼインから貰った全てのものをかき集めて、ベッドの上に置いて。
ゼインから貰った服、ネックレス、腕輪、指輪、宝石、ペン、ぬいぐるみ。細かいものは箱に入れているけれど。
ゼインとの繋がりを感じられるものがないと、気が狂ってしまいそうだった。
なのに。
(無い……無い……!どこっ…!!やだっ!!ゼイン!ゼインのが…!!どこにあるの!!!)
彼から貰ったブローチが、どこにも無くなっていた。箱の中を見て心を落ち着けようと開けると、どこにも無くて。
悲鳴を上げる体を無視して、ベッドの下やシーツに絡まってないか入念に探した。けれど、いくら探せども無くて。
終いには、服に飾られていた宝石もいくつかなくなっていることに気づいて。
疑いたくはなかったけれど、この部屋に掃除しに来ていた使用人が…?あまり、見ない顔だった…。
ぺたりと絨毯の上に座り込んで服を抱きしめ、止まらない涙を流した。
すると、肩をぐいっと引っ張られる。そちらを向くと、父様がいて。
聞こえないからちゃんと話せているか不安だったが、ブローチと服の装飾が無くなったことを伝えると、今まで見たことのない怒りの形相で頷いて、僕の頭を撫でた。
そのままベッドまで運んでくれて、待ってなさい、というふうにもう一つ頭を撫でて部屋を出ていく。
彼から貰った服がぐしゃぐしゃになっても、抱き締めるのを辞められそうにはなかった。
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~クリスSide~
ネロー殿下の魔法を解く仕事が終わった…と思えば、ゼイン殿が私の可愛い息子を泣かせたというではないか。
そして責任を感じたゼイン殿が婚約破棄を申し出て、それを聞いてしまったあの子が再び泣いて。
それが原因で耳も聞こえなくなるわ魔法も使えなくなるわ。
しかも運命不足で体調を崩している。
運命が離れるとどうなるのかあいつはわからんのか?!
最悪気が狂って死ぬんだぞ!!
ルカは死なないと思っているようだが……。
そして今日はあのクズから貰った贈り物がいくつか無くなっていたらしいし!
誰だこの屋敷にいる盗人は!
先程ルカの部屋を掃除したあの使用人。最近入った人間だ。まさかあいつか?
調べてみるとすぐに話し始めた。
「は、はい…私です!!弟の病の治療代がっ足りなくて…!!」
嘘だ。こちとら使用人を雇うときはすべて調べているんだよ。お前に弟がいないことも、お前が休みのたびに豪遊していることも、すべて知っているんだぞ。
自分の財布の範囲内で遊ぶのならと目を瞑っていたが…。
しかし服の装飾の方はまだ手を付けていなかったみたいだが、ブローチは既に売られてしまったのか…。
もう看過はできない。
「アレク、行くぞ。」
「わかったよ、クリス。」
「あ、あのっ…?!ちょ、やめてくださいっ!嫌だっ!!」
バタバタ暴れるのを拘束して、我が家の地下牢へと連れて行く。
最新の魔道具があるんだ。使えるような人間がいなかったから、こいつを実験台にしよう。
「ああ、リアス。ブローチの行方を追え。買い戻せるなら我が家の財産すべて使ってもいい。」
「御意」
影に潜んでいた腹心にそう命じると、アレクと共に魔道具を使用し始めた。
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ああ、臭い。
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