あの子の花に祝福を。

ぽんた

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閑話「ある母の話3」

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 その話が出た晩にはもう準備が整って、あとは皆が寝るのを待つだけ、という時間になった。
 長男の瑠衣がほんの少しの晩ご飯を持って瑠夏の部屋へ入ると、まだ湯気が出て熱々のものを瑠夏に投げつけた。

「瑠衣っ!!何をしているの!!!」

 思わずそう叫ぶも、私の声は生身の人間には聞こえない。深影様が素早く火傷しないように皮膚を光るもので包んでいるけれど、瑠夏の目には諦めしか見えなかった。

「最近お前がどんどん憎くなっていく。お前の顔を見る度にお前がこの世から居なくなってくれればいいのにって思うんだよ。………なぁ、瑠夏?死ねよ。お前さえ生まれなければ母さんは生きてたんだ!!なぁ死ねよ!!いつまで生きてるんだよ!!死ね!死んでしまえ!!」

 あまりにも酷い戯言を4歳の弟に向かって滔々と吐き続ける。聞くに堪えない、そう思っていると、深影様が見たこと無いほど焦り始めた。

「駄目だ、間に合わないっ!!!」

 そう叫んだ瞬間、ガラスが割れるような音がした。それと同時に、誰かの泣き声と叫び声も。それは気がおかしくなりそうなほど胸をざわつかせて、私も泣き叫びそうになるほどだった。

「花!!くそっ……!ソル!!聞こえるか!!」

 涙と頭痛で殆ど何も見えないところにぼんやりと何かが浮き出てくるのが見えた。

「あらぁ…魂の崩壊じゃなぁい…。ミカゲちゃん、どうしてこんなになるまで放っておいたのよ?ていうかそこのおハナちゃん、辛いでしょ。幽体はモロに崩壊の影響を受けちゃうからねぇ…。」

 深影様より低い声でオネェ言葉を話す人は、私の頭に手を当てた。すると周りの景色がはっきりと見えて、痛みも落ち着いてきたわ。
 目の前の人は長いブロンドを横に流してハチミツのような濃い金色の瞳をした美人さん。
 優雅にピンクのドレスを着こなしているけれど、その体つきはどう見ても男性のもの。

「あ、ありがとう…ございます…。る、るかは…!」

 ばっ、と振り向くと瑠衣は既に部屋を出ており、瑠夏は先程と同じような生気の欠片もない瞳をしていたわ。でも先程と違うのは…どこか清々しいものを感じさせたの。
 それが良いとは全く思えなくて、逆に危険だと、脳が警鐘を鳴らしはじめたの。

「瑠夏……?駄目よ、いなくなっちゃ、駄目よ…?必ずここから出してあげるから、だから、お願い……。いなくならないで…?」

 今にも儚く消えてしまいそうな気配をしていたの。

「花、すまない。もう、手遅れだ…。」

「どういう、ことですか…?」

「言ったでしょ?『魂の崩壊』。
 4歳でこれが起きるとはねぇ…。
 これが起きると崩壊した欠片を求める世のあらゆる魔を引き寄せるの。
 そうなるとこの子はこの子でなくなってしまう。まあある種の防衛本能かしら、魂の崩壊が起こると魔の苗床になるのを防ぐために自死を選ぶ人が多いのよ。
 普通は年齢が二桁に行ってから起こるものなんだけれど。
 まぁあの家族を見てたらそれも当然かしらね。
 ………さて。ミカゲちゃん、修復を頼むためにアタシを呼んだんでしょ?」

 修復…?崩壊の、てことかしら。それができるなら、やってほしいわ。

「あぁ。だが、花。重ねて謝罪しなければならないのだ。このソルという、俺の同僚のようなものなのだが、こいつに魂の修復を頼むには、一度その子の生を終えなければならないという決まりがある。………あんなに手を尽くそうとしてくれたのに…申し訳ない…。」

 どうして、どうしてなの。どうして私はこうもすべてを間違えるの。どうしてあの人と結婚したの。どうして瑠衣を産んでしまったの。瑠夏を産まなければ、あの子はあんな辛い思い、しなかったのに…。

 私が、疫病神だわ―――――

「違うっっ!!お前は疫病神なんかじゃないっ!」

 肩をガシっと力強く掴まれて真っ向から否定されたわ。声に出ていたのかしら。でも真剣な表情でそう言われると、本当にそんな気がするの。

「あの家は神から見ても狂っている。しかもそれが呪いなどという外的要因などではないから余計にだ。元からあの家は狂っているんだよ。だから決して花のせいじゃない!自分を責めないでくれ…!」

「深影様………はい、ありがとうございます…。申し訳ありません。あの子を守ると誓った母がこうでは、いけませんね。」

「ふぅ…話は纏まったかしら?あのねぇ、おハナちゃん。アタシからも言わせてもらうけど、アナタは良い親よぉ?あんな男からしたら女神よ女神!そうだわアナタも神になれば良いんじゃなぁい?いい案だわぁ~!そしたらおハナちゃんとガールズトークもできそうだしぃ?」

「ソル、その話は後でいいか。今は瑠夏をどうするか決めなければ。」

「あら、そうねぇ。取り敢えず、あの子は今夜にでも自分の命を断つでしょうねぇ。
 あの齢で死に方を知ってるなんて……この家潰しましょうね、おハナちゃん。もう更生の余地無しだわ。
 ていうかミカゲちゃん。アナタも分かってたんでしょ?この家はもう無理だって。
 どうしてわざと崩壊を起こさせたのかしら?」

 射抜くようにソル様が深影様を見たわ。一つの嘘も見逃さないと言うように。

「未来を見てしまったからだ…。」

「はぁっ?!アンタ、それ禁忌じゃない!神でさえ見てはいけないもの、運命の歯車が管理するものを…!!いや、でもアンタは今まで真面目にやってたし上からの評判もいいわ、だからなんとかなるかも…。いや、でも…!」

「未来って、なんですか?」

 私は意を決して尋ねたの。
















 ※※※※※※※※※※





 すみません、あと1話くらいで終わります。

 コメントなんでもいいのでください!!
 ここミスってるとか!面白くないとかでもいいんで!!!ください!!(迫真)

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