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22.新しいクラスメイト。
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「ルカ!おはよ!………ていうか、どうして王宮の馬車で来たの…?」
学園の校門でエドと会い、挨拶を交わす。
「うふふ、ゼインとお泊りしたの!母様とお兄様が帰ってくるまでいていいよって!」
「わぁ…痣持ちって執着心強いって聞いてたけど本当なんだ…」
引き気味でエドがそう言うけれど、何でなのか全くわからない。執着されてるとはあまり思ってないし…
「あぁ~…普通はね?いくら好きな相手でも、結婚前はお泊りとかは普通しないんだよ?まあ痣持ちは例外ってのは聞いたことあるけど…。本当にそうだとは…。ん?もしかして長期休暇とかも泊まってる?」
もしかして顔に出てたかな…
「うん、そうだよ?それより、泊まらないのが普通なんだね。僕ちょっと耐えられないかも…へへ…」
教室に向かいながらワイワイと話していると、既にミラとライトは着いていたみたいだった。
「「おはよう」」
「おはよう、なぁルカ、お前噂になってるぞ?王宮の馬車できたって。まあどうせ婚約者んとこお泊まりしてきたんだろーけどさ」
「驚かないの?さっき聞いたけど、普通はそんな事しないんでしょう?」
あまりにもあっけらかんとしてそう言ってくるので、不思議になって尋ねた。
「いやあだって、痣持ちは相手と離れるのが一番のストレスで、離れないためなら何だってするってくらい執着心強いって聞くし、たしかお前のご両親も痣持ちだろ?それに今魔導騎士団が遠征してるって聞いてるし、団長か副団長が本国に残ってるんなら、会いたくてげっそりしてるんじゃないか?」
すごい。確かにそうだ。父様最近どんよりしてることが多いもの。僕もゼインに会えない時はすごく寂しくて、一人で勝手にゼインに会いに行こうかと思ったくらいだもん。
「確かに父様最近元気ないね…。お兄様から聞いた母様の話すると、いつも以上にデレデレしてるから、それだけ母様足りてないんだと思う。」
そう言うと三人とも納得…という感じで頷いた。そうこうしてるうちに先生が教室に来て、授業が始まる。……と、思っていたのだけれど。
「本日からこの学園で学ぶことになります、『フースカ』から来ました、ネロー・フースカと申します。宜しくお願い致します。」
ネロー・フースカ?確かこの国の南にある国の第四王子じゃなかったっけ?お兄様達が遠征に行ってる『ガラノース』とは別の国だけど、確かそこそこ仲の良い国同士だったはずだ。でも王子がなんで?
「ネロー殿下は一年留学という形を取っている。ルカリオン、公爵家として学園の案内をしてやってくれ。」
先生から名指しで頼まれたことに少し驚いたけれど、そうだよね、僕公爵家令息だもの。ちょっと忘れてたや。
「わかりました。ネロー様、学園を案内させていただきます、公爵家次男、ルカリオン・アーバスノットでございます。よろしくお願い致します。」
席を立ってネロー様にお辞儀をすると、少し驚いたように目を見開いてこちらを見ていらっしゃった。
どうしたんだろう…?
お互い挨拶を交わして、今度こそ授業が始まった。移動教室の際は自己紹介のようなものをして移動し、また授業を受ける。お昼休みになると、本当はいつもみたいに食堂の裏庭でルイスの持ってきてくれたものを食べたかったけど、今日は食堂の中で学食を頼んだ。
「ネロー様、学食のおすすめはこれです。柔らかくて口の中に入れたらとけるようなお肉が特徴的なんですよ!」
「ルカリオン殿、様はやめてくれ。敬語もなしで頼みたいな。」
困ったように笑う彼がそう言うけれど…王子様だし…
「じゃあ僕のことルカって呼んでくれる?」
「わかった、ルカ、君がおすすめしてくれたこれが食べたい。それより、君の学友は誘わなくてもよかったのか?」
「えとね…相手が王子様だったら自分が何かやらかしそうで怖いって別行動してるの。ふふ、みんな一応貴族なんだから、大丈夫なのにね。」
クスクスと笑っていると、つられたようにネローも微笑む。今日の学食は久しぶりに食べるけど、変わらない味で美味しかった。
「王宮の馬車?どうして?」
「あ、僕今ゼインの所でお泊りしてるの。そういえばネローも王宮だったっけ?離宮でしばらく暮らすんでしょう?」
「うん、そうだよ。そっか、婚約者の所でお泊まり、ね。もしかして今夜の夕食の時会えるかな?」
「うーん、どうだろう。ゼイン、僕とご飯を食べるときって絶対に自室から出ないの。前に一度ね?お膝の上に乗せたまま給餌しなくていい、恥ずかしいって言ったら、じゃあ自分とルカしかいない部屋で食べようってなっちゃって。」
「ふふ、殿下はルカのこと大好きなんだね。」
そう言いながら馬車に乗り込み、王宮へと向かう。そういえば王子が留学するなんて聞いてなかったな…なんて思いながら。
「ゼイン~!ただいま!」
ぎゅーっと抱きしめられて一息つく。やっぱり安心するなぁ…。ふふふ…
「ふふ、おかえり、ルカ。そしてようこそ、ネロー第四王子。これはいつものことなのでお気になさらないでください。ネロー殿下は水の離宮にお泊りになるのですよね?今から案内させますので。さあ、ルカ、おいで?」
ネローは執事に離宮へ連れられて僕とはお別れをした。
そうだ、ゼインに聞かなきゃいけないことがあるんだった。
「ねえゼイン。いつネローが来るって決まったの?僕ここに泊まってても大丈夫?」
「ごめんね、言うタイミングを掴めなかったんだ。それより…もう、呼び捨てにしてるんだね。」
スッとゼインの雰囲気が冷たくなって、握っている手も少し痛いくらいに強くなっていた。
「え、うん……様はやめてくれって言うから……」
するとゼインはギリッと奥歯を噛み締めて前を向き急ぎ足で歩き始めた。僕の足では小走りでついていくのが精一杯で。
「はっはっはっ…ゼイン…!まって、ゼイン…!どうして怒ってるの…!ごめんなさい…!怒らないで…!!ゼイン…!うぅ……、ヒック…」
今までそんな顔を見たことがなくて、僕は何を間違えたのだろうと泣いてしまった。
「あっ、ああ…あ…ごめん!!怖がらせるつもりじゃなかったのに…!ごめん…!ルカが悪いわけじゃないんだよ、本当にごめん…!」
僕の嗚咽が聞こえたゼインは部屋に着くと僕を咄嗟に抱きしめて宥める。しばらく時間が経つと、ぽつぽつとゼインは話し始めた。
「嫉妬してしまったんだ。あのネロー王子は絶対にルカのこと、そういう目で見ていたし…大人気ないのはわかってる。だけど、会って間もない人間が、軽々しくルカを呼び捨てにして婚約者の前で親密そうにしてるんだ。嫉妬しないわけがないじゃないか…。でも結果的にルカを怯えさせてしまって…。本当に申し訳ない。」
「嫉妬したの?うふふ、そっか…。そっかぁ。えへへ、よかった。ありがとう、ゼイン。だぁいすき。でもそんな目ってなぁに?」
「ふふ、ないしょ。」
学園の校門でエドと会い、挨拶を交わす。
「うふふ、ゼインとお泊りしたの!母様とお兄様が帰ってくるまでいていいよって!」
「わぁ…痣持ちって執着心強いって聞いてたけど本当なんだ…」
引き気味でエドがそう言うけれど、何でなのか全くわからない。執着されてるとはあまり思ってないし…
「あぁ~…普通はね?いくら好きな相手でも、結婚前はお泊りとかは普通しないんだよ?まあ痣持ちは例外ってのは聞いたことあるけど…。本当にそうだとは…。ん?もしかして長期休暇とかも泊まってる?」
もしかして顔に出てたかな…
「うん、そうだよ?それより、泊まらないのが普通なんだね。僕ちょっと耐えられないかも…へへ…」
教室に向かいながらワイワイと話していると、既にミラとライトは着いていたみたいだった。
「「おはよう」」
「おはよう、なぁルカ、お前噂になってるぞ?王宮の馬車できたって。まあどうせ婚約者んとこお泊まりしてきたんだろーけどさ」
「驚かないの?さっき聞いたけど、普通はそんな事しないんでしょう?」
あまりにもあっけらかんとしてそう言ってくるので、不思議になって尋ねた。
「いやあだって、痣持ちは相手と離れるのが一番のストレスで、離れないためなら何だってするってくらい執着心強いって聞くし、たしかお前のご両親も痣持ちだろ?それに今魔導騎士団が遠征してるって聞いてるし、団長か副団長が本国に残ってるんなら、会いたくてげっそりしてるんじゃないか?」
すごい。確かにそうだ。父様最近どんよりしてることが多いもの。僕もゼインに会えない時はすごく寂しくて、一人で勝手にゼインに会いに行こうかと思ったくらいだもん。
「確かに父様最近元気ないね…。お兄様から聞いた母様の話すると、いつも以上にデレデレしてるから、それだけ母様足りてないんだと思う。」
そう言うと三人とも納得…という感じで頷いた。そうこうしてるうちに先生が教室に来て、授業が始まる。……と、思っていたのだけれど。
「本日からこの学園で学ぶことになります、『フースカ』から来ました、ネロー・フースカと申します。宜しくお願い致します。」
ネロー・フースカ?確かこの国の南にある国の第四王子じゃなかったっけ?お兄様達が遠征に行ってる『ガラノース』とは別の国だけど、確かそこそこ仲の良い国同士だったはずだ。でも王子がなんで?
「ネロー殿下は一年留学という形を取っている。ルカリオン、公爵家として学園の案内をしてやってくれ。」
先生から名指しで頼まれたことに少し驚いたけれど、そうだよね、僕公爵家令息だもの。ちょっと忘れてたや。
「わかりました。ネロー様、学園を案内させていただきます、公爵家次男、ルカリオン・アーバスノットでございます。よろしくお願い致します。」
席を立ってネロー様にお辞儀をすると、少し驚いたように目を見開いてこちらを見ていらっしゃった。
どうしたんだろう…?
お互い挨拶を交わして、今度こそ授業が始まった。移動教室の際は自己紹介のようなものをして移動し、また授業を受ける。お昼休みになると、本当はいつもみたいに食堂の裏庭でルイスの持ってきてくれたものを食べたかったけど、今日は食堂の中で学食を頼んだ。
「ネロー様、学食のおすすめはこれです。柔らかくて口の中に入れたらとけるようなお肉が特徴的なんですよ!」
「ルカリオン殿、様はやめてくれ。敬語もなしで頼みたいな。」
困ったように笑う彼がそう言うけれど…王子様だし…
「じゃあ僕のことルカって呼んでくれる?」
「わかった、ルカ、君がおすすめしてくれたこれが食べたい。それより、君の学友は誘わなくてもよかったのか?」
「えとね…相手が王子様だったら自分が何かやらかしそうで怖いって別行動してるの。ふふ、みんな一応貴族なんだから、大丈夫なのにね。」
クスクスと笑っていると、つられたようにネローも微笑む。今日の学食は久しぶりに食べるけど、変わらない味で美味しかった。
「王宮の馬車?どうして?」
「あ、僕今ゼインの所でお泊りしてるの。そういえばネローも王宮だったっけ?離宮でしばらく暮らすんでしょう?」
「うん、そうだよ。そっか、婚約者の所でお泊まり、ね。もしかして今夜の夕食の時会えるかな?」
「うーん、どうだろう。ゼイン、僕とご飯を食べるときって絶対に自室から出ないの。前に一度ね?お膝の上に乗せたまま給餌しなくていい、恥ずかしいって言ったら、じゃあ自分とルカしかいない部屋で食べようってなっちゃって。」
「ふふ、殿下はルカのこと大好きなんだね。」
そう言いながら馬車に乗り込み、王宮へと向かう。そういえば王子が留学するなんて聞いてなかったな…なんて思いながら。
「ゼイン~!ただいま!」
ぎゅーっと抱きしめられて一息つく。やっぱり安心するなぁ…。ふふふ…
「ふふ、おかえり、ルカ。そしてようこそ、ネロー第四王子。これはいつものことなのでお気になさらないでください。ネロー殿下は水の離宮にお泊りになるのですよね?今から案内させますので。さあ、ルカ、おいで?」
ネローは執事に離宮へ連れられて僕とはお別れをした。
そうだ、ゼインに聞かなきゃいけないことがあるんだった。
「ねえゼイン。いつネローが来るって決まったの?僕ここに泊まってても大丈夫?」
「ごめんね、言うタイミングを掴めなかったんだ。それより…もう、呼び捨てにしてるんだね。」
スッとゼインの雰囲気が冷たくなって、握っている手も少し痛いくらいに強くなっていた。
「え、うん……様はやめてくれって言うから……」
するとゼインはギリッと奥歯を噛み締めて前を向き急ぎ足で歩き始めた。僕の足では小走りでついていくのが精一杯で。
「はっはっはっ…ゼイン…!まって、ゼイン…!どうして怒ってるの…!ごめんなさい…!怒らないで…!!ゼイン…!うぅ……、ヒック…」
今までそんな顔を見たことがなくて、僕は何を間違えたのだろうと泣いてしまった。
「あっ、ああ…あ…ごめん!!怖がらせるつもりじゃなかったのに…!ごめん…!ルカが悪いわけじゃないんだよ、本当にごめん…!」
僕の嗚咽が聞こえたゼインは部屋に着くと僕を咄嗟に抱きしめて宥める。しばらく時間が経つと、ぽつぽつとゼインは話し始めた。
「嫉妬してしまったんだ。あのネロー王子は絶対にルカのこと、そういう目で見ていたし…大人気ないのはわかってる。だけど、会って間もない人間が、軽々しくルカを呼び捨てにして婚約者の前で親密そうにしてるんだ。嫉妬しないわけがないじゃないか…。でも結果的にルカを怯えさせてしまって…。本当に申し訳ない。」
「嫉妬したの?うふふ、そっか…。そっかぁ。えへへ、よかった。ありがとう、ゼイン。だぁいすき。でもそんな目ってなぁに?」
「ふふ、ないしょ。」
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