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21.本当に大丈夫。
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「いやぁ、まさか王宮に泊まれるとは…。しかも以前私が使っていた部屋だなんてね…ありがたいよ。ルカは殿下の部屋に泊まるのだろう?」
父様が使ってた部屋のソファに座って、メイド達が持ってきてくれた紅茶を一口飲む。もう前の世界を思い出すことはほとんどなくなってきたけれど、メイドが男っていうのはあまり慣れなかったな…、そう思いながら父様に答える。
「うん、学園に入ってから長期休暇くらいしか泊まることなかったしすごく嬉しい!」
「まあ今更何かあるとは思わないが…もし意に沿わないことをされたなら迷わずに父様を呼びなさい。いいね?」
真剣味を帯びてそういう父様は、有無を言わせぬ強さがあった。
「は…い、わかりました。」
父様はよろしい、そう言うとニコニコ微笑んで紅茶を飲み始めた。
何かって何なんだろう…?
恒例事業になってしまったけれど、ゼインは僕を膝に乗せて晩餐を食べさせてくれる。以前、どうして?と聞くと
「だって可愛くて愛らしい半身は、私が常に側にくっついていたいんだ。それにね?クリス殿とアレク殿もルカ達が産まれるまでは膝の上に乗せてご飯を食べていたみたいだよ?だからこれは当たり前のことなの。むしろやらなくちゃいけないことなんだよ?」
後ろで聞いていたロバートとルイスは「んん??」みたいな変な顔をしていたけれどこれをやらなくちゃいけないなら仕方ない。それに僕もくっついてたいしね。
そんなこんなで晩餐も終わり、湯浴みをしてゼインの寝室へと向かう。ゼインはベッドの側にあるデスクで、何か仕事をしているようだった。
「ゼイン…?」
そう声をかけると、僕が部屋に入っていたのを気づかなかったのだろう。ハッ、として僕の方を見ると気まずそうに書類を片付け始めた。
「ごめんね、ちょっと最近忙しくて…。さ、寝よっか。おいで。」
一緒にベッドに入ってゼインの胸元に顔を寄せるけど、先程の様子が気にかかって尋ねてしまった。
「ねぇゼイン。さっきの、こんな夜にまでするくらい忙しいの…?大丈夫?僕、何かできること、あるかな。」
「大丈夫だよ、すぐに忙しいのは終わるから。さっきはごめんね、あんなの見せるつもりはなかったのに。」
ゼイン、すごく無理してる…。僕に何ができる?僕は政務とかそういうのはわからない。なら他に何が……。ゼインを癒す?どうやって?うーん………
「ルカ?どうしたの?」
僕はゼインの腕の中から抜け出して、横向きになっているゼインを仰向けにさせる。そして僕は彼の顔の横にゴロンと寝て、ゼインの額、頬、鼻に口づけを降らせた。ゼインはとても驚いているけど、そのまま僕は胸元に手を置いて、幼子をあやすようにぽんぽんとリズムをとって叩いた。
「おやすみ、ゼイン。ゆっくり寝てね。」
子守唄でも歌えたら良かったのだけど。残念ながら僕は音痴だったみたいで、一度歌えば大笑いされてしまうのだ。だから今夜は無し!
「あ、あぁ。おやすみ、ルカ。ありがとうね。」
そのまますーすーと寝息が聞こえるまでぽんぽんして、僕も良い感じに睡魔が襲ってきたので夢の中へと旅立った。
もう、寝ただろうか。
私の唯一の半身は世界で一番やさしい心根の持ち主だ。こうして仕事が手一杯な私をあやして寝かしつけてくれるなんて。
まるで微笑んでいるような寝顔を見つめて、起こさないようにベッドから出る。危うく本当に寝てしまうところだったが、私にはまだせねばならない仕事が山積みだった。
「殿下、何も今夜くらいは寝たほうがいいのではないですか…?」
ロバートや影からそう声がかかるが、一分も無駄にはできないのだ。まあルカの寝顔を見るのは無駄では無いが。それでも…そんな貴重な時間を削ってでもやらねば…。
「さて。お前たち、報告書を。…………各地の魔物の出現率、やはり上がっているな。セルシオ、これは父王の元へ。ノア、こちらは兄上。ゾーイ、これは……………」
ルカが起きるまでにはある程度終わらせておこう。あの子が私を心配しないように。
父様が使ってた部屋のソファに座って、メイド達が持ってきてくれた紅茶を一口飲む。もう前の世界を思い出すことはほとんどなくなってきたけれど、メイドが男っていうのはあまり慣れなかったな…、そう思いながら父様に答える。
「うん、学園に入ってから長期休暇くらいしか泊まることなかったしすごく嬉しい!」
「まあ今更何かあるとは思わないが…もし意に沿わないことをされたなら迷わずに父様を呼びなさい。いいね?」
真剣味を帯びてそういう父様は、有無を言わせぬ強さがあった。
「は…い、わかりました。」
父様はよろしい、そう言うとニコニコ微笑んで紅茶を飲み始めた。
何かって何なんだろう…?
恒例事業になってしまったけれど、ゼインは僕を膝に乗せて晩餐を食べさせてくれる。以前、どうして?と聞くと
「だって可愛くて愛らしい半身は、私が常に側にくっついていたいんだ。それにね?クリス殿とアレク殿もルカ達が産まれるまでは膝の上に乗せてご飯を食べていたみたいだよ?だからこれは当たり前のことなの。むしろやらなくちゃいけないことなんだよ?」
後ろで聞いていたロバートとルイスは「んん??」みたいな変な顔をしていたけれどこれをやらなくちゃいけないなら仕方ない。それに僕もくっついてたいしね。
そんなこんなで晩餐も終わり、湯浴みをしてゼインの寝室へと向かう。ゼインはベッドの側にあるデスクで、何か仕事をしているようだった。
「ゼイン…?」
そう声をかけると、僕が部屋に入っていたのを気づかなかったのだろう。ハッ、として僕の方を見ると気まずそうに書類を片付け始めた。
「ごめんね、ちょっと最近忙しくて…。さ、寝よっか。おいで。」
一緒にベッドに入ってゼインの胸元に顔を寄せるけど、先程の様子が気にかかって尋ねてしまった。
「ねぇゼイン。さっきの、こんな夜にまでするくらい忙しいの…?大丈夫?僕、何かできること、あるかな。」
「大丈夫だよ、すぐに忙しいのは終わるから。さっきはごめんね、あんなの見せるつもりはなかったのに。」
ゼイン、すごく無理してる…。僕に何ができる?僕は政務とかそういうのはわからない。なら他に何が……。ゼインを癒す?どうやって?うーん………
「ルカ?どうしたの?」
僕はゼインの腕の中から抜け出して、横向きになっているゼインを仰向けにさせる。そして僕は彼の顔の横にゴロンと寝て、ゼインの額、頬、鼻に口づけを降らせた。ゼインはとても驚いているけど、そのまま僕は胸元に手を置いて、幼子をあやすようにぽんぽんとリズムをとって叩いた。
「おやすみ、ゼイン。ゆっくり寝てね。」
子守唄でも歌えたら良かったのだけど。残念ながら僕は音痴だったみたいで、一度歌えば大笑いされてしまうのだ。だから今夜は無し!
「あ、あぁ。おやすみ、ルカ。ありがとうね。」
そのまますーすーと寝息が聞こえるまでぽんぽんして、僕も良い感じに睡魔が襲ってきたので夢の中へと旅立った。
もう、寝ただろうか。
私の唯一の半身は世界で一番やさしい心根の持ち主だ。こうして仕事が手一杯な私をあやして寝かしつけてくれるなんて。
まるで微笑んでいるような寝顔を見つめて、起こさないようにベッドから出る。危うく本当に寝てしまうところだったが、私にはまだせねばならない仕事が山積みだった。
「殿下、何も今夜くらいは寝たほうがいいのではないですか…?」
ロバートや影からそう声がかかるが、一分も無駄にはできないのだ。まあルカの寝顔を見るのは無駄では無いが。それでも…そんな貴重な時間を削ってでもやらねば…。
「さて。お前たち、報告書を。…………各地の魔物の出現率、やはり上がっているな。セルシオ、これは父王の元へ。ノア、こちらは兄上。ゾーイ、これは……………」
ルカが起きるまでにはある程度終わらせておこう。あの子が私を心配しないように。
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