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15.おへやのそと。
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お昼ご飯を食べ終わると、窓から差し込む日差しと満腹感からうとうとと微睡む。
「ルイス、下がっていいよ」
食器を片付け終えて部屋の隅に待機していたルイスを、ゼインは強制的に下がらせる。
「かしこまりました。」
ふわっと体が浮いた気がして目を開けると、ゼインが僕をベッドまで運んでくれていた。
「んむぅ…ぜいん……ありがと…」
僕を寝かせると彼は離れていこうとしたので、咄嗟に袖を掴んで引き止めてしまった。
「ルカ…?どしたの?」
「えと……あの…ね、いっしょに…ねよ?」
すると何故かゼインは目を大きく開いたまま固まって反応しなくなった。
「だ、だめだった…?…………ごめんね…」
「ち、ちがう!いや、その、嬉しくて…!決して嫌だったとかそんなのではない!」
顔をほんのり赤くさせて弁解するゼインは何だか可愛くて、僕はクスリと笑う。ゼインは何かを固く決意したような表情で僕のベッドに入り込んできた。
そっと背中に回された大きな手に嬉しくなって、僕はゼインの胸元に擦り寄り、ぎゅーぎゅーと頭を押し付ける。
「ふふふ、ゼインとねるの、久しぶりだねぇ…あったかい…」
そう言うと少し僕を抱きしめる力を強くさせたゼインが、
「ああ、私も暖かいよ。ゆっくりおやすみ、私のルカ。」
子守唄のように脳に響くその声で、僕は夢の中へと落ちていった。
「ゼイン殿下。ご報告があります。」
腕の中ですやすやと眠る天使を眺めていると、無粋な声が割り込んでくる。影だ。
「何用だ、私とルカの時間を邪魔するなど、相応のものなのだろうな?」
ルカは一度眠ればすぐには起きない。万が一も無いだろうが、念の為に防音の魔法をルカにかけた。
「は、例の罪人が持っていた魔導具の作成者を捕らえました。」
「誰だ。」
「…………アーバスノット公爵夫人の従兄弟に当たります、セオドア・フォレスト子爵でございます。」
あぁ、魔法を愛して研究をするあまり、とんでもない魔導具をぽんぽんと生み出してしまうという天才か…。
「『捕らえた』ということは、それを意図してあの豚に与えたということか?」
「さようにございます。」
何故そんなことをしたんだ?
まぁ、今はまだこの子の安らかな寝顔を見ていよう。
「わかった、下がれ。」
「は。」
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
「ルカも部屋の中はよく歩けるようになったから、今日からは部屋の外に出てみよう。いいかい?」
ゼインは優しく尋ねるが、僕は気が進まなかった。
僕の寝室は、常にゼインとルイスがいて『絶対に誰にも害されることのない空間』として認識をしていた。
だが、そこから出るということは、この2人以外の多数の人物とすれ違うことになるわけで。王城の中庭で起きたことのように、もしまた僕が攫われたら?もしゼインやルイスが気絶だけではなく何かしら怪我を負わせられたら?
僕の不安視していることがわかったのだろうか、ゼインはゆっくりと手を重ねてきて、微笑んだ。
「ルカ。もうあんなことにはならないよ?あのとき皆が気絶させられて、ルカの魔導具が発動しなかったのは、国宝級の魔導具が使われていたからなんだ。1つは指定した人物以外の意識を失わせるもの、もう1つは全ての魔法の効果を打ち消す魔導具。それらは没収されたし、作った人も捕まったからね。だから大丈夫。」
それなら…大丈夫、かな…
「わ、わかった…」
「どうしても怖いなら、すぐに帰ってこよう。でも大丈夫みたいなら、運動も兼ねてジークの部屋まで行ってみようか。ついでに顔を見せに行こう?」
お兄様に、会える…!
あ、でも今は……
「今は、お兄様魔法のお勉強のお時間じゃなぁい?行っても大丈夫なのかなぁ…」
お兄様のお勉強の邪魔をしてまで会わなければならないことはない。むしろそれで迷惑になったらとても悲しい。
「ふふ、ジーク様はお勉強よりルカ様とお話するほうがお好きですから、大丈夫ですよ?」
ルイス、それあんまり良くないことなんじゃ……
「んむぅ……じゃあ、廊下出てみる…。」
ゼインが片手を出してエスコートをする。
大きくて、熱くて、剣だこのあるこの手が僕は大好きだった。
はやくゼインと同じくらい大きくなりたいなぁ…
そんな事を考えているうちに扉の前に立っていた。
ここを開けたら廊下で、何も怖いものはなくって、それにゼインもルイスもいてくれる。だから大丈夫。
「ふぅ…よし、行こ、ゼイン。」
ガチャリと扉を開けて廊下へいざ…!
ぽてぽて……
ほっ、出られた…。
あれ…?何だか視線を感じるぞ…?
すると廊下の奥に数名の使用人がおり、心做しかキラキラとした目でこちらを見つめていた。
いつもここのお掃除をしてくれる人たちだ。
「「「ルッ、ルカ様!!」」」
そう叫ぶやいなや早足でこちらへと近づく、皆の迫力が凄すぎて、僕は少しびびってしまった。
「下がりなさい、あなた達、ルカ様が回復したのが嬉しいのは分かりますが、公爵家の使用人としての節度を弁えなさい。」
スッ、と前に出て僕をかばってくれたのはルイスだった。
「「「す、すみません!!」」」
すると1人の茶髪にそばかすの付いた青年が一歩前へと出た。
「ルカ様、またお顔を拝見できてとても嬉しいです!本当に良うございました…!お帰りなさいませ、ルカ様…!」
心からそう思っていることが伝わる。
僕が部屋から出るのを、みんな待っててくれたんだ…。さっきまで悩んでたのが嘘みたいに無くなっていく。もっと早く外に出たら良かったな。
「へへ、ただいま?みんな。」
その使用人たちとはお別れをして、ずんずん廊下を進んでいった。行く先々でみんなに「おかえりなさいませ」と喜ばれる。こんなに待ってくれてる人がいたんだなぁ…。
そうこうしているうちにお兄様の部屋に着いた。
「こんこーん、お兄様~!ルカがきましたよ~!」
中からドタドタッ!ガタンッ!ガタガタ…!という音が聞こえて扉を開けられた。
「ルカ!!………と、ゼイン殿下…。ようこそいらっしゃいました。ルカ、お部屋出られるようになったんだね、お兄様は嬉しいぞぉ!」
頭をぐりぐりと撫でられて褒められる。ふふっ、なんだか擽ったい。でもちょっと、機嫌が悪い…?ゼインに気づくまでは機嫌良かったのに。
「ジーク、お邪魔じゃなかったかい?今は勉強中だったんじゃないか?」
そうだった、お兄様、今お勉強してるんだった。
中を覗くとお爺ちゃんみたいなヨボヨボとした方がこちらを見る。なんだか仙人みたいだ…。
「ほっほっほ、誰かと思えばあなたがルカ様。お元気になられて良かったです。そしてゼイン殿下、お久しぶりですなぁ。えぇ、今丁度休憩中だったのでね、大丈夫ですよ。」
ニコニコして長い髭を触りながら喋るおじいちゃん先生。ゼインとは知り合いだったのか?
「マーク先生、ご無沙汰しております。もう10年経つというのに、まだまだ現役そうで良かったです。」
「えっ…先生はゼイン殿下のことも…?」
「ええ、そうですよ。あの頃のゼイン殿下はそれはもう――――」
「マーク先生、もう休憩時間過ぎてるんじゃないですか?」
そうゼインが微笑みながら話をかぶせた。
どうしたんだろう?
※※※※※※※※※※※
長くなりそうなのでここらで一旦切らせてください…!
「ルイス、下がっていいよ」
食器を片付け終えて部屋の隅に待機していたルイスを、ゼインは強制的に下がらせる。
「かしこまりました。」
ふわっと体が浮いた気がして目を開けると、ゼインが僕をベッドまで運んでくれていた。
「んむぅ…ぜいん……ありがと…」
僕を寝かせると彼は離れていこうとしたので、咄嗟に袖を掴んで引き止めてしまった。
「ルカ…?どしたの?」
「えと……あの…ね、いっしょに…ねよ?」
すると何故かゼインは目を大きく開いたまま固まって反応しなくなった。
「だ、だめだった…?…………ごめんね…」
「ち、ちがう!いや、その、嬉しくて…!決して嫌だったとかそんなのではない!」
顔をほんのり赤くさせて弁解するゼインは何だか可愛くて、僕はクスリと笑う。ゼインは何かを固く決意したような表情で僕のベッドに入り込んできた。
そっと背中に回された大きな手に嬉しくなって、僕はゼインの胸元に擦り寄り、ぎゅーぎゅーと頭を押し付ける。
「ふふふ、ゼインとねるの、久しぶりだねぇ…あったかい…」
そう言うと少し僕を抱きしめる力を強くさせたゼインが、
「ああ、私も暖かいよ。ゆっくりおやすみ、私のルカ。」
子守唄のように脳に響くその声で、僕は夢の中へと落ちていった。
「ゼイン殿下。ご報告があります。」
腕の中ですやすやと眠る天使を眺めていると、無粋な声が割り込んでくる。影だ。
「何用だ、私とルカの時間を邪魔するなど、相応のものなのだろうな?」
ルカは一度眠ればすぐには起きない。万が一も無いだろうが、念の為に防音の魔法をルカにかけた。
「は、例の罪人が持っていた魔導具の作成者を捕らえました。」
「誰だ。」
「…………アーバスノット公爵夫人の従兄弟に当たります、セオドア・フォレスト子爵でございます。」
あぁ、魔法を愛して研究をするあまり、とんでもない魔導具をぽんぽんと生み出してしまうという天才か…。
「『捕らえた』ということは、それを意図してあの豚に与えたということか?」
「さようにございます。」
何故そんなことをしたんだ?
まぁ、今はまだこの子の安らかな寝顔を見ていよう。
「わかった、下がれ。」
「は。」
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「ルカも部屋の中はよく歩けるようになったから、今日からは部屋の外に出てみよう。いいかい?」
ゼインは優しく尋ねるが、僕は気が進まなかった。
僕の寝室は、常にゼインとルイスがいて『絶対に誰にも害されることのない空間』として認識をしていた。
だが、そこから出るということは、この2人以外の多数の人物とすれ違うことになるわけで。王城の中庭で起きたことのように、もしまた僕が攫われたら?もしゼインやルイスが気絶だけではなく何かしら怪我を負わせられたら?
僕の不安視していることがわかったのだろうか、ゼインはゆっくりと手を重ねてきて、微笑んだ。
「ルカ。もうあんなことにはならないよ?あのとき皆が気絶させられて、ルカの魔導具が発動しなかったのは、国宝級の魔導具が使われていたからなんだ。1つは指定した人物以外の意識を失わせるもの、もう1つは全ての魔法の効果を打ち消す魔導具。それらは没収されたし、作った人も捕まったからね。だから大丈夫。」
それなら…大丈夫、かな…
「わ、わかった…」
「どうしても怖いなら、すぐに帰ってこよう。でも大丈夫みたいなら、運動も兼ねてジークの部屋まで行ってみようか。ついでに顔を見せに行こう?」
お兄様に、会える…!
あ、でも今は……
「今は、お兄様魔法のお勉強のお時間じゃなぁい?行っても大丈夫なのかなぁ…」
お兄様のお勉強の邪魔をしてまで会わなければならないことはない。むしろそれで迷惑になったらとても悲しい。
「ふふ、ジーク様はお勉強よりルカ様とお話するほうがお好きですから、大丈夫ですよ?」
ルイス、それあんまり良くないことなんじゃ……
「んむぅ……じゃあ、廊下出てみる…。」
ゼインが片手を出してエスコートをする。
大きくて、熱くて、剣だこのあるこの手が僕は大好きだった。
はやくゼインと同じくらい大きくなりたいなぁ…
そんな事を考えているうちに扉の前に立っていた。
ここを開けたら廊下で、何も怖いものはなくって、それにゼインもルイスもいてくれる。だから大丈夫。
「ふぅ…よし、行こ、ゼイン。」
ガチャリと扉を開けて廊下へいざ…!
ぽてぽて……
ほっ、出られた…。
あれ…?何だか視線を感じるぞ…?
すると廊下の奥に数名の使用人がおり、心做しかキラキラとした目でこちらを見つめていた。
いつもここのお掃除をしてくれる人たちだ。
「「「ルッ、ルカ様!!」」」
そう叫ぶやいなや早足でこちらへと近づく、皆の迫力が凄すぎて、僕は少しびびってしまった。
「下がりなさい、あなた達、ルカ様が回復したのが嬉しいのは分かりますが、公爵家の使用人としての節度を弁えなさい。」
スッ、と前に出て僕をかばってくれたのはルイスだった。
「「「す、すみません!!」」」
すると1人の茶髪にそばかすの付いた青年が一歩前へと出た。
「ルカ様、またお顔を拝見できてとても嬉しいです!本当に良うございました…!お帰りなさいませ、ルカ様…!」
心からそう思っていることが伝わる。
僕が部屋から出るのを、みんな待っててくれたんだ…。さっきまで悩んでたのが嘘みたいに無くなっていく。もっと早く外に出たら良かったな。
「へへ、ただいま?みんな。」
その使用人たちとはお別れをして、ずんずん廊下を進んでいった。行く先々でみんなに「おかえりなさいませ」と喜ばれる。こんなに待ってくれてる人がいたんだなぁ…。
そうこうしているうちにお兄様の部屋に着いた。
「こんこーん、お兄様~!ルカがきましたよ~!」
中からドタドタッ!ガタンッ!ガタガタ…!という音が聞こえて扉を開けられた。
「ルカ!!………と、ゼイン殿下…。ようこそいらっしゃいました。ルカ、お部屋出られるようになったんだね、お兄様は嬉しいぞぉ!」
頭をぐりぐりと撫でられて褒められる。ふふっ、なんだか擽ったい。でもちょっと、機嫌が悪い…?ゼインに気づくまでは機嫌良かったのに。
「ジーク、お邪魔じゃなかったかい?今は勉強中だったんじゃないか?」
そうだった、お兄様、今お勉強してるんだった。
中を覗くとお爺ちゃんみたいなヨボヨボとした方がこちらを見る。なんだか仙人みたいだ…。
「ほっほっほ、誰かと思えばあなたがルカ様。お元気になられて良かったです。そしてゼイン殿下、お久しぶりですなぁ。えぇ、今丁度休憩中だったのでね、大丈夫ですよ。」
ニコニコして長い髭を触りながら喋るおじいちゃん先生。ゼインとは知り合いだったのか?
「マーク先生、ご無沙汰しております。もう10年経つというのに、まだまだ現役そうで良かったです。」
「えっ…先生はゼイン殿下のことも…?」
「ええ、そうですよ。あの頃のゼイン殿下はそれはもう――――」
「マーク先生、もう休憩時間過ぎてるんじゃないですか?」
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