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14.ひがいしゃ。
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それからは大忙しだった。主に僕以外の皆が。
僕はただベッドでご飯を食べて、お兄様のくれたぬいぐるみと遊んで、眠くなったら寝る。幼いながらも自堕落だと感じる生活をしていた。
数日前にお医者さんが来てくれたのだけど、あのときの光景が蘇ってきてしまって過呼吸になった。だから知らない人は僕の部屋には近づけさせず、側には必ずルイスとゼインが付き添ってくれた。母様と父様は仕事をほったらかしにしていたようで、1日に1回、夜寝る前に顔を見に来てくれた。
「ルイスは大丈夫だったの…?その…あのとき…。」
あのときルイスは侵入者に気絶させられていたと聞いた。護衛もみな異変に気づかなかったようで、僕の近くにいた人全員起きたら医務室にいたそうだ。
「はい、怪我なく済みましたが…私がもっとしっかりしていればルカ様を守れたかもしれませぬのに…大変申し訳なかったです…!」
そう言って本当に悔しそうに顔を歪めながら謝罪をしてきた。僕はそんなのを望んでるんじゃないのに。
「ルイス、ルカは君に謝ってほしいわけじゃないんだよ。君にただ怪我が無かったか心配なだけ。ルカは自分より他人なんだよ。それは君がよく知ってるでしょ?」
すごい、ゼインは僕の言いたいこと全部言ってくれた!
「ふふ、ルカの顔に出やすいだけだよ?」
「ええ、そうですね。ルカ様、ご心配していただきありがとうございます。そして、ルカ様もよくぞお戻りになりました。本当に、ありがとうございます。」
そう言って微笑むルイス。僕が3歳のときから側にいて、もう第二の兄のような存在のとっても大切な家族。本当に無事でよかった。
「さて、ルカ?もうそろそろお昼だ。ご飯を食べよう?それから体を動かす練習もね。」
僕はずっとベッドの上にいるのだけれど、そこから動いていないせいで筋肉がごっそりと落ちているらしかった。
ゼインに差し出された手をぎゅっと握り締めてフカフカの絨毯へ足を下ろす。こうして1週間前から歩く練習をしているが、未だにベッドとドアまでの距離が精一杯だった。ただ今はすぐ近くにあるテーブルへと行くだけなので、そこまで疲れずに済んだ。
「では私は食事を取りに行ってまいりますので、少々お待ちくださいませ。」
僕が座りやすいようにと、クッションの敷き詰められたソファへ腰を下ろす。隣にゼインも座り、ルイスは部屋を出ていった。ルイスを待っている間、ゼインは僕の細くなった指に手を絡め、労わるように撫でていく。
「……夢でね、ルカの母だと言う女の人に会ったよ。」
びっくりした。だってゼインは、女性というものを知らなかったはずだ。それに、僕の母って、前世のってことだよね…?
「ルカが前世で受けたこと、全部聞いたよ。アレク殿でも、クリス殿でも、君の兄上でも、私でもいい。どうして一人で耐えていたの?ルカが何かに怯えているのはみんな気づいてたんだよ。でも、いつか話してくれるはずだって待ってた。ねぇ、どうして?」
優しく、でも有無を言わせぬ迫力でそう尋ねるゼイン。
「だ、だって………」
「うん、だって?」
「だって、だって……僕がぶたれてたのは、僕が人殺しだったからで……!僕は、それをみんなに知られるのが怖かった…!また、みんなに嫌われるって…!そう思って…!!」
そうだ、僕はお母さんを殺して産まれたんだ。だからお父さんに殴られたし、兄さんにも蹴られて、お祖母さんにも閉じ込められた。あれは僕に必要なことだった。
「私の半身はお馬鹿さんだねぇ。」そう明るくゼインが言いながら僕を抱きしめる。
「こんなに優しいルカが人殺しなわけないでしょう?それを言うならルカの前の家族が人殺しだよ。」
なんで、そんな事言うんだろう。僕が産まれなければ、お母さんはまだ生きていたかもしれないのに。
「だって、ルカの母上は体が弱かったんでしょ?なのに父親はそれを分かっていて産ませたんだ。壊れるかもしれない体に無理をさせたんだよ。そして結局体を壊して、それを産まれた子供のせいだと?笑わせる。それに、本来庇護される立場の幼い子供に暴力を振るって、ルカの精神までも壊したんだ。最終的にルカはそれが原因で海に飛び込んだんでしょう?きっかけはどうであれ、ルカの前の家族は2人も殺してるんだよ。ルカは被害者。だから、自分が人殺しだなんて、そんな悲しいこと言わないで。」
そんなこと、考えもしなかった。
今までの常識がどんどん覆されて行き、まるで視界が開けたかのような爽快感があった。
「うん…うん、ありがとう、ゼイン。
………………………だいすき」
「ふふ、私もルカのこと、愛してるよ?」
ぎゅーぎゅーとお互いを抱きしめあっていると、ノックの音が聞こえてルイスの声がした。
「食事をお持ちいたしました、ルカ様、ゼイン殿下」
「じゃあお昼ごはん、一緒に食べよっか。」
「うん!」
「ゼイン、これすごく美味しい!」
「ふふっ、よかった。はい、口開けて?」
「あ~ん…………おいひぃ~!」
「口の中が無くなってから喋らなきゃだめでしょ?」
「んぐっ……はぁい…」
今日も今日とてあーんされるルカくん。
ルイスは主が元気になってニコニコしています。
でもお部屋の外に出られたらいいね。
僕はただベッドでご飯を食べて、お兄様のくれたぬいぐるみと遊んで、眠くなったら寝る。幼いながらも自堕落だと感じる生活をしていた。
数日前にお医者さんが来てくれたのだけど、あのときの光景が蘇ってきてしまって過呼吸になった。だから知らない人は僕の部屋には近づけさせず、側には必ずルイスとゼインが付き添ってくれた。母様と父様は仕事をほったらかしにしていたようで、1日に1回、夜寝る前に顔を見に来てくれた。
「ルイスは大丈夫だったの…?その…あのとき…。」
あのときルイスは侵入者に気絶させられていたと聞いた。護衛もみな異変に気づかなかったようで、僕の近くにいた人全員起きたら医務室にいたそうだ。
「はい、怪我なく済みましたが…私がもっとしっかりしていればルカ様を守れたかもしれませぬのに…大変申し訳なかったです…!」
そう言って本当に悔しそうに顔を歪めながら謝罪をしてきた。僕はそんなのを望んでるんじゃないのに。
「ルイス、ルカは君に謝ってほしいわけじゃないんだよ。君にただ怪我が無かったか心配なだけ。ルカは自分より他人なんだよ。それは君がよく知ってるでしょ?」
すごい、ゼインは僕の言いたいこと全部言ってくれた!
「ふふ、ルカの顔に出やすいだけだよ?」
「ええ、そうですね。ルカ様、ご心配していただきありがとうございます。そして、ルカ様もよくぞお戻りになりました。本当に、ありがとうございます。」
そう言って微笑むルイス。僕が3歳のときから側にいて、もう第二の兄のような存在のとっても大切な家族。本当に無事でよかった。
「さて、ルカ?もうそろそろお昼だ。ご飯を食べよう?それから体を動かす練習もね。」
僕はずっとベッドの上にいるのだけれど、そこから動いていないせいで筋肉がごっそりと落ちているらしかった。
ゼインに差し出された手をぎゅっと握り締めてフカフカの絨毯へ足を下ろす。こうして1週間前から歩く練習をしているが、未だにベッドとドアまでの距離が精一杯だった。ただ今はすぐ近くにあるテーブルへと行くだけなので、そこまで疲れずに済んだ。
「では私は食事を取りに行ってまいりますので、少々お待ちくださいませ。」
僕が座りやすいようにと、クッションの敷き詰められたソファへ腰を下ろす。隣にゼインも座り、ルイスは部屋を出ていった。ルイスを待っている間、ゼインは僕の細くなった指に手を絡め、労わるように撫でていく。
「……夢でね、ルカの母だと言う女の人に会ったよ。」
びっくりした。だってゼインは、女性というものを知らなかったはずだ。それに、僕の母って、前世のってことだよね…?
「ルカが前世で受けたこと、全部聞いたよ。アレク殿でも、クリス殿でも、君の兄上でも、私でもいい。どうして一人で耐えていたの?ルカが何かに怯えているのはみんな気づいてたんだよ。でも、いつか話してくれるはずだって待ってた。ねぇ、どうして?」
優しく、でも有無を言わせぬ迫力でそう尋ねるゼイン。
「だ、だって………」
「うん、だって?」
「だって、だって……僕がぶたれてたのは、僕が人殺しだったからで……!僕は、それをみんなに知られるのが怖かった…!また、みんなに嫌われるって…!そう思って…!!」
そうだ、僕はお母さんを殺して産まれたんだ。だからお父さんに殴られたし、兄さんにも蹴られて、お祖母さんにも閉じ込められた。あれは僕に必要なことだった。
「私の半身はお馬鹿さんだねぇ。」そう明るくゼインが言いながら僕を抱きしめる。
「こんなに優しいルカが人殺しなわけないでしょう?それを言うならルカの前の家族が人殺しだよ。」
なんで、そんな事言うんだろう。僕が産まれなければ、お母さんはまだ生きていたかもしれないのに。
「だって、ルカの母上は体が弱かったんでしょ?なのに父親はそれを分かっていて産ませたんだ。壊れるかもしれない体に無理をさせたんだよ。そして結局体を壊して、それを産まれた子供のせいだと?笑わせる。それに、本来庇護される立場の幼い子供に暴力を振るって、ルカの精神までも壊したんだ。最終的にルカはそれが原因で海に飛び込んだんでしょう?きっかけはどうであれ、ルカの前の家族は2人も殺してるんだよ。ルカは被害者。だから、自分が人殺しだなんて、そんな悲しいこと言わないで。」
そんなこと、考えもしなかった。
今までの常識がどんどん覆されて行き、まるで視界が開けたかのような爽快感があった。
「うん…うん、ありがとう、ゼイン。
………………………だいすき」
「ふふ、私もルカのこと、愛してるよ?」
ぎゅーぎゅーとお互いを抱きしめあっていると、ノックの音が聞こえてルイスの声がした。
「食事をお持ちいたしました、ルカ様、ゼイン殿下」
「じゃあお昼ごはん、一緒に食べよっか。」
「うん!」
「ゼイン、これすごく美味しい!」
「ふふっ、よかった。はい、口開けて?」
「あ~ん…………おいひぃ~!」
「口の中が無くなってから喋らなきゃだめでしょ?」
「んぐっ……はぁい…」
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