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9.へんなひと。
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何故来週の水の日と指定されたのか。それはその日までにゼイン王子とルカの婚約を発表するためであった。第二王子と公爵家の次男との婚約発表に国は盛り上がりを見せた。
「ルカ。先週ぶりだね?元気だった?もうこれでいつでも好きなときに私達は会えるよ。」
そう。まだ婚約発表をしていない状態では、無闇にお互いの家に行き来できなかったのだ。いくら従兄弟の家だとはいえ、法律上結婚はできるし、王子が出入りしていると良くない噂が出てくる可能性があった。
「ぜいん~!えへへ、またあえてうれち!」
「今日は王城を案内してあげよう。まずはどこに行きたい?」
「んと…ん~…ぜいんのお部屋でご本よんでほちいの…だめ…?」
「ぐ…かわ………も、もちろん良いに決まってる!じゃあ案内はまた今度にしよう!」
なんだかぜいんのかおがあかいけど…どうしたんだろ…?
今日も抱っこされて城の中を歩くが、道行く使用人や騎士達から微笑ましいものを見るような目で見られた。すると向こうの廊下から身なりの良いでっぷりとしたお腹を揺らしながら歩いてくる貴族のような人が来た。
「おやおや!ゼイン王子、それからぁ…あぁ、アーバスノット公爵令息!本日も麗しく……」
「すまないがノルン侯爵、私達は急ぎの用事があってね。今日はこれで…」
おはなしのとちゅうだったのに、いいの?
そう疑問に思い王子をみると、見たことのないほど冷たい瞳でノルン侯爵を見つめていた。周囲の温度がどんどん冷えていくのがわかるほどで、目の前の人間や、周りの騎士達も顔を青ざめさせていた。
「ぜ、ぜいん…?」
「行こうか、ルカ。」
一転して春の木漏れ日のような温かい笑みを浮かべた王子がこちらを見て、話は終わったとばかりに侯爵の横を通り過ぎて行った。
王子の部屋に入ると、公爵家の自分の部屋よりも広く、そして豪華ながらも落ち着きを持った空間が広がっていた。
「さっきはごめんね、ルカ。怖くなかった?」
とても申し訳無さそうに尋ねてくるので必死に首をふる。
「ううん…!だいじょうぶでちたよ…?でも、なんでおはなしのとちゅうでおわらせちゃったの?」
「うーん…説明がちょっと難しいんだけどね…あの人は、少し良くない噂がたくさんある。君みたいに可愛くて小さな子を攫ったり、嫌なことをさせてるっていう噂がね。他にも色々。だからルカをあまり見せたくなかったんだ。ごめんね…」
「そっか…でも、ぜいんがぼくのためにちてくれたことだから、うれちい!ありがとございましゅ!」
王子が自分を守ってくれる、という事実が何より僕を幸せにした。
「そういえばね、ぜいん。ここにはおんなのひと、いないの?」
ずっと気にはなっていたのだが、如何せん聞くのを忘れていたために今になってしまった。
「おんなのひと…?って、だぁれ?」
心底わからない、という顔でこちらを見る王子。僕の中にはやはり…という感覚があった。
「えと…せいべつは、おとこだけ?」
「うん、そうだよ?それがどうかしたの?」
「ううん、やっぱりなんでもない!ふふ!」
笑って誤魔化すと、気になった様子はありつつも見逃してくれた。
そしてその日は言っていたように、王子の膝の上で絵本を読んでもらい、お菓子を食べさせてもらったり、中庭に出て散歩をしたりと有意義な時間を過ごしてまたお別れをした。
「またね、ルカ。今度からは好きなときにおいで。どんなに忙しくても絶対に会いに行くからね。」
「わかりまちた!でもおしごとはちゃんとちてくだしゃい!ぼくいいこにちてまってましゅ!」
「うん、わかった。じゃあ気を付けて帰るんだよ。またね、可愛いルカ。」
そう言って体をかがめると、リップ音をさせて旋毛にキスをしてくれた。
「またね、ぜいん!」
「まだ証拠は見つからないのか。」
「はい。申し訳ございません。」
「私の可愛いルカがあの豚に見つかってしまった。わざわざ人通りの少ない道を選んだというのに…何故あいつはあそこにいたんだ」
「おそらくルカ様が登城する情報が侯爵に渡ってしまったのかと…大変申し訳ございません。」
そこには先程とは様子の全く違う王子がいた。鬼神と称するにふさわしいほどのオーラで王家の影を威圧する。その額には青筋が目立っていた。
「ルカに何かあれば…そのときは…………」
「ルカ。先週ぶりだね?元気だった?もうこれでいつでも好きなときに私達は会えるよ。」
そう。まだ婚約発表をしていない状態では、無闇にお互いの家に行き来できなかったのだ。いくら従兄弟の家だとはいえ、法律上結婚はできるし、王子が出入りしていると良くない噂が出てくる可能性があった。
「ぜいん~!えへへ、またあえてうれち!」
「今日は王城を案内してあげよう。まずはどこに行きたい?」
「んと…ん~…ぜいんのお部屋でご本よんでほちいの…だめ…?」
「ぐ…かわ………も、もちろん良いに決まってる!じゃあ案内はまた今度にしよう!」
なんだかぜいんのかおがあかいけど…どうしたんだろ…?
今日も抱っこされて城の中を歩くが、道行く使用人や騎士達から微笑ましいものを見るような目で見られた。すると向こうの廊下から身なりの良いでっぷりとしたお腹を揺らしながら歩いてくる貴族のような人が来た。
「おやおや!ゼイン王子、それからぁ…あぁ、アーバスノット公爵令息!本日も麗しく……」
「すまないがノルン侯爵、私達は急ぎの用事があってね。今日はこれで…」
おはなしのとちゅうだったのに、いいの?
そう疑問に思い王子をみると、見たことのないほど冷たい瞳でノルン侯爵を見つめていた。周囲の温度がどんどん冷えていくのがわかるほどで、目の前の人間や、周りの騎士達も顔を青ざめさせていた。
「ぜ、ぜいん…?」
「行こうか、ルカ。」
一転して春の木漏れ日のような温かい笑みを浮かべた王子がこちらを見て、話は終わったとばかりに侯爵の横を通り過ぎて行った。
王子の部屋に入ると、公爵家の自分の部屋よりも広く、そして豪華ながらも落ち着きを持った空間が広がっていた。
「さっきはごめんね、ルカ。怖くなかった?」
とても申し訳無さそうに尋ねてくるので必死に首をふる。
「ううん…!だいじょうぶでちたよ…?でも、なんでおはなしのとちゅうでおわらせちゃったの?」
「うーん…説明がちょっと難しいんだけどね…あの人は、少し良くない噂がたくさんある。君みたいに可愛くて小さな子を攫ったり、嫌なことをさせてるっていう噂がね。他にも色々。だからルカをあまり見せたくなかったんだ。ごめんね…」
「そっか…でも、ぜいんがぼくのためにちてくれたことだから、うれちい!ありがとございましゅ!」
王子が自分を守ってくれる、という事実が何より僕を幸せにした。
「そういえばね、ぜいん。ここにはおんなのひと、いないの?」
ずっと気にはなっていたのだが、如何せん聞くのを忘れていたために今になってしまった。
「おんなのひと…?って、だぁれ?」
心底わからない、という顔でこちらを見る王子。僕の中にはやはり…という感覚があった。
「えと…せいべつは、おとこだけ?」
「うん、そうだよ?それがどうかしたの?」
「ううん、やっぱりなんでもない!ふふ!」
笑って誤魔化すと、気になった様子はありつつも見逃してくれた。
そしてその日は言っていたように、王子の膝の上で絵本を読んでもらい、お菓子を食べさせてもらったり、中庭に出て散歩をしたりと有意義な時間を過ごしてまたお別れをした。
「またね、ルカ。今度からは好きなときにおいで。どんなに忙しくても絶対に会いに行くからね。」
「わかりまちた!でもおしごとはちゃんとちてくだしゃい!ぼくいいこにちてまってましゅ!」
「うん、わかった。じゃあ気を付けて帰るんだよ。またね、可愛いルカ。」
そう言って体をかがめると、リップ音をさせて旋毛にキスをしてくれた。
「またね、ぜいん!」
「まだ証拠は見つからないのか。」
「はい。申し訳ございません。」
「私の可愛いルカがあの豚に見つかってしまった。わざわざ人通りの少ない道を選んだというのに…何故あいつはあそこにいたんだ」
「おそらくルカ様が登城する情報が侯爵に渡ってしまったのかと…大変申し訳ございません。」
そこには先程とは様子の全く違う王子がいた。鬼神と称するにふさわしいほどのオーラで王家の影を威圧する。その額には青筋が目立っていた。
「ルカに何かあれば…そのときは…………」
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