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25.捕まってしもたわ!
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「オベロン、これ手伝って~」
『はーい』
「これをこうして~」
『はーい』
家でオベロンに僕秘伝の掃除のコツを伝授していた。ダレン達は早めに帰ってくるとは言っていたものの、指名依頼は時間がかかるものが多いと聞いている。まあわざわざSランク2人を指名してるもんね。長くならないわけがない。だからその間にオベロンと2人で大掃除をしようということになったのだ。
みんなで出かけたのは朝。そしてギルドで解散したのが昼前。だから夜になるくらいに帰ってくるのでは、というのが僕たちの考え。たくさん掃除して、いっぱい美味しいもの作ろー!となっているところなのだ。
オベロンは王様だから、こういうのは慣れないだろうな、と思っていた。でも案外テキパキ動いていて、驚いたものだ。それを正直に言うと苦笑しながら『これでも六万年は生きてますからね』と言われて、確かに長生きしてるから手順はわかっているのかもしれない、そう思った。
大掃除もあらかた終わって(元々物が少かった)、夕飯の下ごしらえをしようと話していた頃だった。
コンコン、とノックをする音が聞こえて、
「ザックたちかな?早いね」
そう言って玄関に向かおうとすると、オベロンはいつになく警戒した顔で
『シン、急いで裏口から出てギルドへ向かいなさい。あの二人の元へ。禍々しい何かが来ました。急ぎなさい…!』
オベロンは緊迫した声でそう言うと、ランや他の精霊を呼び出して僕に護衛としてつけさせてくれた。そして裏口から外に出ようとしたとき。
「あぁ、待ってください。貴方に逃げられるとお話しできなくなるじゃないですか。精霊王、失礼しますね。」
燕尾服を着た黒髪黒目、僕と同じ色の紳士が僕の腕を引っ張るとそこで意識は途絶えてしまった。
『シン!!』
「なぁ、嫌な予感がするんだが。」
「奇遇だな、私もだ。」
「主さんよぉ、ちょいと急ぐから荒くなっても文句は言うなよ?」
「はぁ、わかっ……~~~~?!?!ぎゃあああ」
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
ダレンとこのベッドもフカフカだけど…ここのベッドの方がフカフカなきがする……。お腹にすべすべのシーツが当たってきもちぇ…。
寝返りを打とうとすると、手、足、首からジャラリと音がした。
「はぇ…??」
パチパチと覚醒すると、僕の首と手首、足首にも枷が付いていた。鎖はベッドの柱についていて、僕の非力さではどうにもならない気がする。てか裸じゃん!
あ、魔法使えばいいじゃん。えい、……えい、…………えい…?できない…イメージしてるのに!もしかしてこれあるあるの魔法禁止する枷ですかね…?いやぁ~!魔法使えなかったら僕ただの一般人!!やめてよぉ!!
ていうかここどこよ!
……絶対にお金持ちの家だ…。
全てが黒と茶色と白で統一されてるけど、僕が見てもこれお高いよね…?おいくら万円?と言いたくなるような壺や椅子がある。てかこのベッド天蓋付きだし…天井にはなんともグロい絵が描かれている。悪魔が人々を食べて血がべっとりしてる絵。家具はいい趣味なのに天井が悪趣味すぎて…。
そんな事を考えていると、目の端に人がいることに気づかなかった。
「体は大丈夫そうですか?シン。」
テノールの低く優しい声が聞こえてきて、僕は怒りを滲ませてそちらを見る。なんてったってこの紳士がここに攫ってきた張本人なのだから。
「この鎖なんですか!外してよ!僕を家に返して!ぐすっ……帰してよぉ…!!」
もっと落ち着いて見下すかのように言うつもりだったけど、隣にあの3人が居ないことで、僕は途中から泣きべそをかいて怒鳴ってしまった。
腰まで伸ばしてある黒髪を一つに束ねて人好きしそうな笑みを浮かべるこの美丈夫は、本当に愛おしいという瞳で僕を見てくる。
「すみません、それはできないです。私はもう殺しはしないと誓いましたが、好きなものは何をしてでも手に入れるという質なので。」
なんなんだよこいつ…!サイコパスだ!……まって殺しはしない?もしかして…この人が邪神…?
「ぐすっ……あんたが邪神ですか…」
「ええ、そうです。私は邪神パズズ。よくおわかりになりましたね、シン。長い間封印されてもう懲り懲りなのでね。殺しはしないですよ。」
ゆっくりと近づいてきたパズズは、ひんやりとした手を頬に近づけてさらりと撫でる。
「私はね、封印から解かれたと思ったら、ゴミが私に命令をしてきたので無視して来たのです。そしたら変わった美しい人間を見つけましてね。この子が私のそばにいればどれだけ満たされるのだろうと。だからここにつれてきたのです。この鎖はあなたが逃げないようにするためのもの。逃げようだなんて思わなければこれは外しますよ。」
もしかして、帰れない…?ずっとここで鎖に繋がれなくちゃいけないの…?僕の旦那様たち、3日いなくなっただけで沈みに沈みまくってたのに、一生帰れなかったら……。
「わかった……すんっ……逃げようだなんて思わなきゃいいんだろ。逃げないからこれ解いて!」
「ふふ、そんな見え透いた嘘、ただの人間でもわかりますよ。いいですか?シン。私は仮にも神です。あの創造神を思い出しなさい。心を読むなんて造作もないことですよ。」
こいつに嘘は通じない。魔法も使えない。
八方塞がりじゃないか………。
助けて、みんな……
『はーい』
「これをこうして~」
『はーい』
家でオベロンに僕秘伝の掃除のコツを伝授していた。ダレン達は早めに帰ってくるとは言っていたものの、指名依頼は時間がかかるものが多いと聞いている。まあわざわざSランク2人を指名してるもんね。長くならないわけがない。だからその間にオベロンと2人で大掃除をしようということになったのだ。
みんなで出かけたのは朝。そしてギルドで解散したのが昼前。だから夜になるくらいに帰ってくるのでは、というのが僕たちの考え。たくさん掃除して、いっぱい美味しいもの作ろー!となっているところなのだ。
オベロンは王様だから、こういうのは慣れないだろうな、と思っていた。でも案外テキパキ動いていて、驚いたものだ。それを正直に言うと苦笑しながら『これでも六万年は生きてますからね』と言われて、確かに長生きしてるから手順はわかっているのかもしれない、そう思った。
大掃除もあらかた終わって(元々物が少かった)、夕飯の下ごしらえをしようと話していた頃だった。
コンコン、とノックをする音が聞こえて、
「ザックたちかな?早いね」
そう言って玄関に向かおうとすると、オベロンはいつになく警戒した顔で
『シン、急いで裏口から出てギルドへ向かいなさい。あの二人の元へ。禍々しい何かが来ました。急ぎなさい…!』
オベロンは緊迫した声でそう言うと、ランや他の精霊を呼び出して僕に護衛としてつけさせてくれた。そして裏口から外に出ようとしたとき。
「あぁ、待ってください。貴方に逃げられるとお話しできなくなるじゃないですか。精霊王、失礼しますね。」
燕尾服を着た黒髪黒目、僕と同じ色の紳士が僕の腕を引っ張るとそこで意識は途絶えてしまった。
『シン!!』
「なぁ、嫌な予感がするんだが。」
「奇遇だな、私もだ。」
「主さんよぉ、ちょいと急ぐから荒くなっても文句は言うなよ?」
「はぁ、わかっ……~~~~?!?!ぎゃあああ」
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ダレンとこのベッドもフカフカだけど…ここのベッドの方がフカフカなきがする……。お腹にすべすべのシーツが当たってきもちぇ…。
寝返りを打とうとすると、手、足、首からジャラリと音がした。
「はぇ…??」
パチパチと覚醒すると、僕の首と手首、足首にも枷が付いていた。鎖はベッドの柱についていて、僕の非力さではどうにもならない気がする。てか裸じゃん!
あ、魔法使えばいいじゃん。えい、……えい、…………えい…?できない…イメージしてるのに!もしかしてこれあるあるの魔法禁止する枷ですかね…?いやぁ~!魔法使えなかったら僕ただの一般人!!やめてよぉ!!
ていうかここどこよ!
……絶対にお金持ちの家だ…。
全てが黒と茶色と白で統一されてるけど、僕が見てもこれお高いよね…?おいくら万円?と言いたくなるような壺や椅子がある。てかこのベッド天蓋付きだし…天井にはなんともグロい絵が描かれている。悪魔が人々を食べて血がべっとりしてる絵。家具はいい趣味なのに天井が悪趣味すぎて…。
そんな事を考えていると、目の端に人がいることに気づかなかった。
「体は大丈夫そうですか?シン。」
テノールの低く優しい声が聞こえてきて、僕は怒りを滲ませてそちらを見る。なんてったってこの紳士がここに攫ってきた張本人なのだから。
「この鎖なんですか!外してよ!僕を家に返して!ぐすっ……帰してよぉ…!!」
もっと落ち着いて見下すかのように言うつもりだったけど、隣にあの3人が居ないことで、僕は途中から泣きべそをかいて怒鳴ってしまった。
腰まで伸ばしてある黒髪を一つに束ねて人好きしそうな笑みを浮かべるこの美丈夫は、本当に愛おしいという瞳で僕を見てくる。
「すみません、それはできないです。私はもう殺しはしないと誓いましたが、好きなものは何をしてでも手に入れるという質なので。」
なんなんだよこいつ…!サイコパスだ!……まって殺しはしない?もしかして…この人が邪神…?
「ぐすっ……あんたが邪神ですか…」
「ええ、そうです。私は邪神パズズ。よくおわかりになりましたね、シン。長い間封印されてもう懲り懲りなのでね。殺しはしないですよ。」
ゆっくりと近づいてきたパズズは、ひんやりとした手を頬に近づけてさらりと撫でる。
「私はね、封印から解かれたと思ったら、ゴミが私に命令をしてきたので無視して来たのです。そしたら変わった美しい人間を見つけましてね。この子が私のそばにいればどれだけ満たされるのだろうと。だからここにつれてきたのです。この鎖はあなたが逃げないようにするためのもの。逃げようだなんて思わなければこれは外しますよ。」
もしかして、帰れない…?ずっとここで鎖に繋がれなくちゃいけないの…?僕の旦那様たち、3日いなくなっただけで沈みに沈みまくってたのに、一生帰れなかったら……。
「わかった……すんっ……逃げようだなんて思わなきゃいいんだろ。逃げないからこれ解いて!」
「ふふ、そんな見え透いた嘘、ただの人間でもわかりますよ。いいですか?シン。私は仮にも神です。あの創造神を思い出しなさい。心を読むなんて造作もないことですよ。」
こいつに嘘は通じない。魔法も使えない。
八方塞がりじゃないか………。
助けて、みんな……
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