26 / 30
23.スタンピードの原因
しおりを挟む
僕とオベロンが精霊の国に行っていた3日間、この2人は気が気でなかったらしい。常々オベロンが僕と二人きりで暮らしたいということを知っていたから、精霊の国に繋ぎ止めて一生そこで暮らすつもりなのではないかとヤキモキしていたらしい。それを聞いてたオベロンは苦虫を噛み潰したような顔をしていたけれど、
『シンは貴方がたを愛しています。無理矢理引き裂いて私の側にいさせるのは、きっとシンを壊してしまう…。だから数日だけに納めたのですよ。』
まるで僕が壊れたことがあるかのような言い方で、あまりにも辛そうな表情をしていたから、思わず手を握ってしまった。
「お前、それは…。」
『ふふ、私は優しいですからね。』
なんともいえない違和感が、僕の奥底にこびりついて離れなかった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
~ダレンSide~
誰でも知ってる昔話。
精霊王は愛した精霊がいた。
その精霊は人間が大好きで、人間のために色々手伝ってくれたそうだ。
深く関わった人間が寿命で亡くなる度に精霊は涙を流す。
人間ごときに愛しい精霊の涙を流させるのは、王は気に食わなかった。
私のために生きてほしい、私のために泣いてほしい。
歪んだ愛は、精霊に苦しみを与えた。
私から離れてはならぬ、人間を助けてはならぬ。
精霊は人間を救えなくなった。
精霊は己のせいだと己を恨んだ。
やがて精霊は自身を壊し、この世から消え去った。
王は深い絶望に暮れ、後悔の念に苛まれた。
己の愛はあの子を壊した、と―――――――
「これって実話だよな」
「多分ね。」
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから数日が過ぎ、僕達は教会へ来た。オベロンには羽根を隠してもらって、キラキラオーラも無くしてもらえるとありがたい、そう言って中へ入る。目立つと良くないからね。
中は前の世界のような美しさだった。ステンドグラスに覆われた壁、天井には天使がラッパを吹いて飛んでいる。裸の神様みたいな男が葡萄を持って決めポーズしている絵。そして部屋の中央に精悍な美丈夫の石像が置いてある。そこには、『創造神ウラノスを崇める』と書いてあり、もしかしてあのおじいちゃん若い時はこんなにかっこよかったのかな、なんて。
『ほら、あの神に聞きたいことがあるのでしょう?』
そうだった。あの復活した邪神について。
(神様~!シンです!ちょっと聞きたいことが………)
手を組んでぎゅっと目を閉じると、一気に空気が変わった気がして、パチリと目を開ける。そこは初めて神様と出会った場所の、真っ白の何も無い空間だった。
『おう、久しぶりよの。そいで?パズズのことじゃったなぁ~。あやつ、多分近いうちお前らと会うことになるぞ?』
「えっ、ええええ?!?!どゆことですか!Sランク2名と精霊王、魔法チートの4名で倒せる相手ですか?!」
『だはははは!あやつはそんな事望んでおらぬよ、もう封印だけで手一杯だったようでなぁ!それに、良いものも見つけたようでな?今後は殺しはせぬと誓っておったわ。』
「嘘じゃなくて?」
『ちゃうわ、あほめ。このわしが嘘かどうかわからんわけないじゃろう!』
「ていうかいいものって何?」
『さぁの、それはわしにもわからぬ。だが異色の人間には会いたいと言っておったぞ。』
それって僕のことかなぁ…。元々異世界人だし。
『ふふふ…。まあ一度会ってみろ。あやつは面白い。』
「あ、それと神様。最近スタンピード多いのと、一家大量殺人の原因と犯人、わかる?」
『スタンピードの原因と殺人は繋がっているぞ。なんせ犯人はあの父親のように恨みが籠もった魔石入りの人間を各地に捨てているからなぁ。わしが言えるのは此処までよ…。』
えっ、こういうのってテンプレ通りに行くんだったら、邪神の目覚めが原因でスタンピードが起きてるんじゃなかったの?!
『お前、ここは小説の世界じゃないんだから、てんぷれがどうのとかやめろ。』
「あぅ…ごめんなさーい。」
『はぁ…ちなみにこれはわしの独り言なのだが…、犯人は邪神の召喚で世界を壊したかったらしい。結界を崩して召喚して、世界を滅ぼし、己が王になりたかったようだが…。いかんせん邪神がああではなぁ。まあ似たようなことは起きてるがの?だいぶ苛ついてるみたいじゃの。』
おっきい独り言だなぁ…
『おみゃーの為に言ったんだろーが!!おみゃーの為に!!』
そんな顔を真っ赤にしなくても…。
『かーーっ!!とにかく!邪神に関しては心配いらぬ!お前らがするのは犯人を捕まえること!わしは神だから直接介入はできぬ。あのクソ精霊王と他のメンバーと協力して探すんじゃ!』
「わかった~!ありがとう神様~!」
そこで空気が揺らぎ、あの教会へ戻ってきた。
「おう、話はできたか?少し長かったが。」
「うん、えっとね、邪神は確かに目覚めてるけど、害はないって。だけどスタンピードの原因が一家大量殺人と関係あるみたい。」
「ここでは話しにくい。ギルドに行こう。」
そして僕たちは教会から出てギルドへ向かった。
『シンは貴方がたを愛しています。無理矢理引き裂いて私の側にいさせるのは、きっとシンを壊してしまう…。だから数日だけに納めたのですよ。』
まるで僕が壊れたことがあるかのような言い方で、あまりにも辛そうな表情をしていたから、思わず手を握ってしまった。
「お前、それは…。」
『ふふ、私は優しいですからね。』
なんともいえない違和感が、僕の奥底にこびりついて離れなかった。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
~ダレンSide~
誰でも知ってる昔話。
精霊王は愛した精霊がいた。
その精霊は人間が大好きで、人間のために色々手伝ってくれたそうだ。
深く関わった人間が寿命で亡くなる度に精霊は涙を流す。
人間ごときに愛しい精霊の涙を流させるのは、王は気に食わなかった。
私のために生きてほしい、私のために泣いてほしい。
歪んだ愛は、精霊に苦しみを与えた。
私から離れてはならぬ、人間を助けてはならぬ。
精霊は人間を救えなくなった。
精霊は己のせいだと己を恨んだ。
やがて精霊は自身を壊し、この世から消え去った。
王は深い絶望に暮れ、後悔の念に苛まれた。
己の愛はあの子を壊した、と―――――――
「これって実話だよな」
「多分ね。」
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから数日が過ぎ、僕達は教会へ来た。オベロンには羽根を隠してもらって、キラキラオーラも無くしてもらえるとありがたい、そう言って中へ入る。目立つと良くないからね。
中は前の世界のような美しさだった。ステンドグラスに覆われた壁、天井には天使がラッパを吹いて飛んでいる。裸の神様みたいな男が葡萄を持って決めポーズしている絵。そして部屋の中央に精悍な美丈夫の石像が置いてある。そこには、『創造神ウラノスを崇める』と書いてあり、もしかしてあのおじいちゃん若い時はこんなにかっこよかったのかな、なんて。
『ほら、あの神に聞きたいことがあるのでしょう?』
そうだった。あの復活した邪神について。
(神様~!シンです!ちょっと聞きたいことが………)
手を組んでぎゅっと目を閉じると、一気に空気が変わった気がして、パチリと目を開ける。そこは初めて神様と出会った場所の、真っ白の何も無い空間だった。
『おう、久しぶりよの。そいで?パズズのことじゃったなぁ~。あやつ、多分近いうちお前らと会うことになるぞ?』
「えっ、ええええ?!?!どゆことですか!Sランク2名と精霊王、魔法チートの4名で倒せる相手ですか?!」
『だはははは!あやつはそんな事望んでおらぬよ、もう封印だけで手一杯だったようでなぁ!それに、良いものも見つけたようでな?今後は殺しはせぬと誓っておったわ。』
「嘘じゃなくて?」
『ちゃうわ、あほめ。このわしが嘘かどうかわからんわけないじゃろう!』
「ていうかいいものって何?」
『さぁの、それはわしにもわからぬ。だが異色の人間には会いたいと言っておったぞ。』
それって僕のことかなぁ…。元々異世界人だし。
『ふふふ…。まあ一度会ってみろ。あやつは面白い。』
「あ、それと神様。最近スタンピード多いのと、一家大量殺人の原因と犯人、わかる?」
『スタンピードの原因と殺人は繋がっているぞ。なんせ犯人はあの父親のように恨みが籠もった魔石入りの人間を各地に捨てているからなぁ。わしが言えるのは此処までよ…。』
えっ、こういうのってテンプレ通りに行くんだったら、邪神の目覚めが原因でスタンピードが起きてるんじゃなかったの?!
『お前、ここは小説の世界じゃないんだから、てんぷれがどうのとかやめろ。』
「あぅ…ごめんなさーい。」
『はぁ…ちなみにこれはわしの独り言なのだが…、犯人は邪神の召喚で世界を壊したかったらしい。結界を崩して召喚して、世界を滅ぼし、己が王になりたかったようだが…。いかんせん邪神がああではなぁ。まあ似たようなことは起きてるがの?だいぶ苛ついてるみたいじゃの。』
おっきい独り言だなぁ…
『おみゃーの為に言ったんだろーが!!おみゃーの為に!!』
そんな顔を真っ赤にしなくても…。
『かーーっ!!とにかく!邪神に関しては心配いらぬ!お前らがするのは犯人を捕まえること!わしは神だから直接介入はできぬ。あのクソ精霊王と他のメンバーと協力して探すんじゃ!』
「わかった~!ありがとう神様~!」
そこで空気が揺らぎ、あの教会へ戻ってきた。
「おう、話はできたか?少し長かったが。」
「うん、えっとね、邪神は確かに目覚めてるけど、害はないって。だけどスタンピードの原因が一家大量殺人と関係あるみたい。」
「ここでは話しにくい。ギルドに行こう。」
そして僕たちは教会から出てギルドへ向かった。
68
お気に入りに追加
384
あなたにおすすめの小説

転生先がBLの世界とか…俺、聞いてないんですけどぉ〜?
彩ノ華
BL
何も知らないままBLの世界へと転生させられた主人公…。
彼の言動によって知らないうちに皆の好感度を爆上げしていってしまう…。
主人公総受けの話です!((ちなみに無自覚…

お前ら、、頼むから正気に戻れや!!
彩ノ華
BL
母の再婚で俺に弟が出来た。義理の弟だ。
小さい頃の俺はとにかく弟をイジメまくった。
高校生になり奴とも同じ学校に通うことになった
(わざわざ偏差値の低い学校にしたのに…)
優秀で真面目な子と周りは思っているようだが…上辺だけのアイツの笑顔が俺は気に食わなかった。
俺よりも葵を大事にする母に腹を立て…家出をする途中、トラックに惹かれてしまい命を落とす。
しかし目を覚ますと小さい頃の俺に戻っていた。
これは義弟と仲良くやり直せるチャンスなのでは、、!?
ツンデレな兄が義弟に優しく接するにつれて義弟にはもちろん愛され、周りの人達からも愛されるお話。

俺が総受けって何かの間違いですよね?
彩ノ華
BL
生まれた時から体が弱く病院生活を送っていた俺。
17歳で死んだ俺だが女神様のおかげで男同志が恋愛をするのが普通だという世界に転生した。
ここで俺は青春と愛情を感じてみたい!
ひっそりと平和な日常を送ります。
待って!俺ってモブだよね…??
女神様が言ってた話では…
このゲームってヒロインが総受けにされるんでしょっ!?
俺ヒロインじゃないから!ヒロインあっちだよ!俺モブだから…!!
平和に日常を過ごさせて〜〜〜!!!(泣)
女神様…俺が総受けって何かの間違いですよね?
モブ(無自覚ヒロイン)がみんなから総愛されるお話です。

転生したら溺愛されていた俺の話を聞いてくれ!
彩ノ華
BL
不運の事故に遭い、命を失ってしまった俺…。
なんと転生させて貰えることに!
いや、でもなんだかおかしいぞ…この世界…
みんなの俺に対する愛が重すぎやしませんか…??
主人公総受けになっています。

平凡な俺、何故かイケメンヤンキーのお気に入りです?!
彩ノ華
BL
ある事がきっかけでヤンキー(イケメン)に目をつけられた俺。
何をしても平凡な俺は、きっとパシリとして使われるのだろうと思っていたけど…!?
俺どうなっちゃうの~~ッ?!
イケメンヤンキー×平凡

ある日、義弟に突然「兄ちゃんが主人公で総受けとかウケるwww俺は絶対好きにならn…好き…」…いや、お前もかーい。
彩ノ華
BL
ある日、突然義弟からこの世界はBL小説の世界だと言われ俺はその中の〝主人公〟なのだとか…。
『兄ちゃんが主人公で総受けとかウケるwww俺は絶対好きにならないwww』
と笑っていたお前だが…
いや、お前もやないかい。
イケメン義弟×無自覚たらし兄
※ゆるゆる投稿
※素人作品

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる