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16.ギルマス達って声大きいんだね…

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行きもそうだったのだが、帰りもそこそこ長い時間をかけて家へ歩いていた。歩きでいけるとは言うものの、体力のある2人と羽根のある精霊、その人達に付いていくのは至難の業で…。

「そっ…素材を集めるためとはいえ…ほんとに長い……」

ぜぇはぁ息を吐いているとダレンがククッと笑って僕を抱き上げた。片腕で。

「本当にシンは体力が無いなぁ、帰って一段落ついたら体力つけるために運動・・、しような…?」

なんだかその声がお腹に響くような甘さを帯びていて、僕は何だか分からないけれど取り敢えず頷いた。

『あぁ…シンが獣に捕まってしまいました……。もし疲れてしまったら私の所においでなさい、精霊のみが行ける美しい場所を案内しましょう。そしてあわよくばその後に私も…』

「変態は黙りなさい。というかシンは意味わかってる?わからずに頷いたんじゃ無いだろうね。」

えっ…運動って、僕が皆の冒険について行ってもへこたれないくらいの体力をつけようね、ってことでしょ…?

「あぁ…やっぱり分かってなかったか…」

えぇ…?他に意味なんて………あるわ。あぁ、ありましたわ。BLではあるあるの隠語ですよね、大好物でございます、ありがとうございます。

なるほどぉ…僕はこのトラさんにぱくっと食べられてしまうと。なるほど………え、僕食べられるの?

「僕食べられるんですか!!」

なんですって?!という風にびっくりして思わずダレンを見る。彼は可笑しそうに笑って僕にキスをした。この間の感極まって流れるようにしたキスではなく、想いを確かめ合うようなゆっくりとしたキス。唇が合わさっているだけなのに、心がはち切れそうなほど嬉しくて気分が高揚した。

『私と結婚しているし、これからこの2人と結婚するとはいえ、あまり気分の良いものではないですね。』

オベロンのぶすっとした声に我に返る。顔を赤くしてオベロンとザックを振り返ると、オベロンは苦虫を噛み潰したような顔をしていて、ザックは仕方ないなぁ、という風に苦笑していた。

「あれ…でもザックさんは一緒じゃなくていいの?いつも2人で行動してるでしょ?」

そう言ってから気づいた。これでは誘っているのと同じではないか!

「あっ、あっ、ちがっ」

その言葉はザックさんのキスでかき消された。
なんで今日はこんなにキスされるんだぁ…

「ふふっ、可愛いことを言ってくれるね、シンは。もちろん最初から3人で、望むのならそこの嫉妬深い精霊王も交えて愛し合ってもいいんだよ?でも、初めてでいきなり3人も受け入れたらきっと体が壊れてしまうからね。だから最初はダレンだけ。いい?」

「あう…あぅぁ…はいぃ……」

僕はあまりの恥ずかしさにダレンさんの首筋に顔を埋めて残りの道のりを過ごしていった。














✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
















「着いた~~~!!!ダレンさんここまで抱っこしてくれてありがとうございました!重かったですよね、ごめんなさい…!」

「いいや?シンは軽かったぞ?もっと量を増やさねぇとな。」

えぇ…僕あれでも結構食べてる方なんですけどね…

『ほう…ここがあなた達の家ですか。Sランクの冒険者の家にしては随分貧相ではないですか?』

この6万歳のおじいちゃんは何を言っているのでしょうか。

「人の家にケチつけるな!!ここはすごく住心地がいいおうちなの!文句言うならオベロンは帰って!」

いくら精霊王だからといっても、言っていいことと悪いことがある!それがわからないうちは僕はオベロンを夫だとは認めない!

そんなことを考えながら彼を見ると、今にも泣きそうな表情で僕を見ていた。

あ、そういえば精霊って心の中ある程度読めるんだった…

『そ、そんなこと言わないでください…!謝りますから私を貴方の側から離さないで…!』

まるで縋るかのように叫んで、僕の心は大いに揺れた。それはもう揺れまくった。

「まあまあ、確かにここは少々年季が経ってると思うよ。それに精霊王が住むなら近々引っ越そうと思ってたしね。ここは人が住むには余りにも森に近いし、ギルドや店に行くにしても少し遠い。だから次はもっと交通の便がいい所に行こうと思ってるんだ。……でもシン、そう言ってくれてありがとう。嬉しかったよ。」

僕はまだ納得してないけど、ザックさんがそう言うなら…。

「精霊王もシンの前では型無しだな」

またもやケラケラと大笑いするダレン。オベロンはウルウルとした瞳でこちらを見つめる。

『すみませんでした…』

謝れるってのは大切なこと。うむうむ、許してやろうじゃないか。

「ほんとだよ、今度はもうないからね!」

そうしてこれは一件落着!僕はダレンさんにまだ抱えられながら家の中へと入っていった。

「久しぶりな気がする!ただいま!おかえりなさい、ダレンさん、ザックさん!そしてようこそ、オベロン!」

「「ただいま、シン。」」

『お世話になりますね、御三方。』










そのあとザックさんはギルドへ泉の報告と素材の買取、死体の身元判定をしてもらいに行って、僕は荷物の整理。ダレンさんは精霊王用の部屋の用意をしていた。その間オベロンは僕の用意した紅茶と日持ちするお菓子を出して暇をつぶしてもらう。

「ただいま帰りました。」

玄関からザックさんの声がした!

「ザックさん!おかえりなさい!」

「ふふ、ただいま、シン。さて、ダレンを呼んできてくれる?ついでにオベロンも。皆で神殿に行こう。」

それって…!婚姻届出しに行くんだ…!

「はい!!」

クッキーをぽりぽり食べているオベロンと部屋の用意が終わってダイニングにいたダレンに声をかけ、みんなで神殿へ向かった。





「はい、ご結婚おめでとうございます。これにて書類は受理されました。お気をつけてお帰りくださいませ。」

あっさり終わっちゃった…。身元確認とかしなくていいの?と思ったんだけど、Sランク2人のギルドカードと、既に人妻となっていた僕。この2つが身元証明のようなものだったらしかった。

「なんだか…あっさりしすぎてて結婚したっていう実感が湧かない…」

ここらへんの建物より一際大きく、作りもガッチリとした神殿からでて一言目がそれだった。

「今夜嫌でもわかるさ。」

そっ…そうか…!今日結婚したってことは…初夜だ…!!

顔が赤くなっているのを見られたくなくて、わざとらしいとはわかっていても話を変える。

「ね、ねぇ、あそこの建物ってなぁに?」

隣りにいるダレンさんと後ろを歩くオベロンはニヤニヤとしているのが見えたが、僕は気づかないふりをした。

「ふふ、実はあそこがギルドなんだよ。少し寄っていこうか。結婚の報告も兼ねて。」

え!ただ目についた建物について聞いただけなのに…!
それは一見すると少し大きめの居酒屋なのかな、と思うような所で、看板にビールの絵と剣の絵が描いてあった。

「サブギルマスはいるか?ついでにギルマスも。」

入った瞬間ガヤガヤと騒がしかった空間が水を打ったように静まり返る。ぼそぼそとSランクのザックさんだ、ダレンさんだ、あの後ろにいるちっこいのは誰だ、とびきり別嬪の精霊みたいなやつは誰だ、と聞こえる。そんな中僕たちは真っ直ぐと進み、カウンターへと向かって受付の人に尋ねた。

サブギルマスってルドさんだよね…ぬいぐるみのお礼、言わないと。

「ついでってなんだ、ついでって。」

カウンターの奥からは、ガッシリとした濃いヒゲを持っている筋骨隆々なおじさんが出てきた。その後ろにはルドさんもいる。

「おう、ザック、さっきぶりだな!それから坊っちゃん、久しぶりってほどでもないが、元気にしてたか?」

「はい!あの、ぬいぐるみありがとうございました!すごく可愛いです!」

へへっ、よかったぜ、と嬉しそうに笑うルドさん。

「そうそう、ご報告があってな。どこか部屋空いてるか?」

そう聞くとギルマスがこっちだ、と案内をしてここからはロビーが見えないような所まで来た。

「さぁ、入れ。それで?わざわざ部屋を用意させたんだ、何か大事な用があるんだろ。特にそこの精霊、羽根はしまってあるから一瞬精霊かどうかわからなかったが…気配がタダモンじゃねぇ。それにそのチビも、まるで存在そのものがこの世のものじゃねぇみたいだ。」

驚いた。だって、普通ここまで言い当てられるものじゃないだろう。

「さすがだな、元王国騎士団総隊長。その通り。まずそこの精霊はただの精霊じゃない。精霊王だ。まあそれはいいんだが。」

「「はぁ?!」」

ギルマスとルドさんの叫び声が部屋に木霊した。まあ驚くよね。でもそれはいいんだってぇ…

「俺とザックとこの精霊王は、この世界一可愛くて優しいシンと結婚した。」

ルドさん固まっちゃった…。

「……いや、まて。ダレンとザックがそこのチビと結婚したのはわかった、いや年齢的におかしいのは置いておいて。精霊王が結婚しただと…?ただのガキとか?いや、俺はもう驚かねぇ、どうせそいつも神に遣わされた神子だなんだと言うんだろう。」

当たらずも遠からず…といったとこかな。うん。

「あー…まああんた達なら信用できるからこの際言うが、シンは『精霊王の愛し子』で、元異世界人だ。」

「「はあああああああああ!?」」





――――――――うう…耳がビリビリした………。









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