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15.僕は覚悟を決めた!
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ぐっすり眠って起きると、まだ日が出て間もないのだろう、部屋が薄暗かった。隣にはダレンさんが眠っていて、おそらく前日はザックさんだったから今日は俺だ、とか言ったのかな、とアタリをつける。ぎゅっと宝物を抱きしめるように僕を腕の中に囲み、まるでおもちゃを取られないようにしている子供のようだと微笑んだ。
この世界に落ちてからたった1週間しかなかったのに、あまりにもいろんなことが起きたと思う。それに…僕が会ったばかりの人達をすぐに愛してしまうだなんて全く想像してもなかった。神様に頼んだときはもっと軽く考えていて。ただイケメンと出会って、初めは顔で好きになってもらって、その後はなるようになるだろうと思ってたし。
なんだか僕がどんどん変わっていくなぁ…。
もぞもぞとダレンの腕から抜け出してベッドから降り、ベランダへと出る。
そういえばオベロンはもう帰ったのかな。色々と口を滑らせてた精霊王だけど、結果的には丸く収まった?から、許してやってもいいかな。
朝焼けの美しいオレンジ色の光に染まった町がよく見える。ノーザンスの町の近くには魔物が出る森がすぐそこにあるのに、道行く人々の表情は明るかったな。まあ屈強そうな男たちがそこらを闊歩してたからもし魔物が町に来たとしてもすぐ返り討ちにしてしまうのかも。
朝特有の清浄な空気を肺いっぱいに吸い込む。
本当に僕異世界に来ちゃった。もうBL小説は読めないし、青い鳥にここが良かったとか呟けない。家の外で遊ぶ小学生たちの笑い声ももう聞けないんだ…。ふふふ、今更なのに。お母さん、お父さん、マイちゃん、僕、いつの間にか結婚してたんだよ。それに、ここは重婚も可能な世界でさ。今日帰ったら好きな人と婚姻届出しに行くの。羨ましいでしょ?特にマイちゃんは喜びそう。あの子も腐女子だったし。『お兄ちゃんそれまじ?!うっひょーー!』とか言ったりして。
「ふふっ」
思わず笑みが零れた。なんか僕が異世界に行くって言ったのに、その時は全然覚悟なんてできてなかったみたい。今は、もう。ここで行きていく覚悟ができた。あの人達の隣に立てるように、僕も頑張ろう。
「もう夏とは言え朝は冷えるぞ、シン。それに…心配した…。」
後ろからすっぽりと大きな体が被さってくる。
「そうだよ、シンがベッドからいなくなってる!って起こしに来たんだから。」
甘く囁かれる声と楽しげに揺れる声が後ろから聞こえてきた。後頭部をダレンの胸に押し付けてぐりぐりと擦り付ける。
「えへへ…ごめんね?目が覚めちゃって。それから…おはよう、二人共。」
「「おはよう」」
ダレンは僕の頬に口づけて、ザックは手の甲に唇を押し当てる。幸せだなぁ。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから僕はお腹が空いたと言ってあの甘い空気をぶち壊した。二人は苦笑してたけど、仕方ない。昨日何も食べずに寝ちゃったから。じゃあ何か食べるか、と言って早朝の大通りへ出た。
「こんなに朝早いけど、屋台なんて出てるの?まだみんな寝てない?」
たぶん今は5時半頃なんじゃないだろうか?
「大丈夫だ。冒険者をしていると、早朝でないと出現しない魔物を倒したり、その時に採取しなければ効能が薄れる薬草だったりと、朝早くから動かねばならない時がある。だからその分早いんだ。」
なるほど…冒険者も大変なんだなぁ…
「あっ、ダレンさん、ザックさん!あそこにキングホースの串焼きがありますよ!行きましょう!」
ふんわりと香ばしい香りが鼻腔についた瞬間に僕は走り出す。あれは忘れられないくらいおいしいキングホースの串焼きだぁ!
「おじさん!串焼き3つください!」
屋台のいかつめなおじさんに元気よく注文する。するとおじさんはびっくりした顔をしつつもお肉を焼いてくれた。
「坊主、えらい別嬪な人族じゃねぇか!ほらよ、そこのトラとオオカミがお前の保護者か?もう2本おまけしとくからよ、みんなで食べな。」
強面から一瞬で優しそうな笑顔を見せてくれたおじさんは僕用の普通サイズの串焼き一本と、二人用の大きめサイズを2本ずつくれた。
「親父さん助かる、ありがとな」
「申し訳ない、ありがとう」
僕達は、側にあるベンチで腰を落ち着けて食べ始めた。
口に入れた瞬間にふわっとした香ばしさが広がり、舌の上でトロける。歯なんて必要ないんではないかというレベルの柔らかさ!
「んみゃぁい………しゃあわせぇ…♡」
僕このお肉大好き。安いのに国産和牛みたいな味と食感。馬なのに!素晴らしすぎる…。
僕が食べ終わる頃には二人共二本目もあと僅か、というところまできていた。食べるの早すぎやろ…、ってもう食べ終わったんかいな…。
「ふぅ~!美味しかった!お二人共、今日もありがとう御座いました~!」
ぽんぽんとお腹をさすって一息つく。すると二人共鼻を押さえて俯いた。
「えっえっ、ど、どうしたんですか?!具合悪いんですか?!もうしかして当たっちゃったのかな…どど、どうしよう…!」
ぼくがあわあわと焦っていると、ダレンさんがぼそりと
「まるで腹に子供でもいるみたいな撫で方だったから…」
ごにょごにょと聞こえない…と思っているとザックさんは立ち上がってダレンさんの後頭部をバチーン!と叩いた。
「ひえっ?!ザ、ザックさんんん?!」
「なんでもないよ、シン。さぁ、この変態は置いて宿に戻ろうか。それでユノヴァーンに帰ろう。」
そう言われて手を引かれて歩くけれど…
まだダレンさん蹲ってる…大丈夫だろうか…
「あれはすぐに追いつくよ。」
僕の考え読まれてた?!
「ふふっ、顔に出やすいだけ。」
あわわわわわわ……!!
そうこうしてるうちにダレンさんが追いついて、宿につく。僕達の荷物をまとめて、さぁ帰ろうか、という雰囲気になっていた。
「あれ、そういえばオベロンに何も言わなくてもいいの?」
あんなに私の妻~!とはしゃいでたのに、今は全く姿を見せない。
「ああ~…あいつは、大丈夫だ。多分見えないだけで側にいる。なんか気配がする。」
えっそうなの?!ザックさんも頷いてるし…僕だけ気づかなかった…?
『あら…やっぱりわかってたんですねぇ…。さすがSランク。侮れません。』
「侮ってたのかよ、まあいい。帰るぞ。」
あれ?オベロンも一緒なのかな?
「うーん…そろそろ引っ越しを考えないといけない…」
ぼそっとザックさんが呟いたのを聞いて、みんな一緒に住めるんだ~と呑気に考えていた。
「ユノヴァーンにかえるぞぉ~!」
『帰りましょう~!』
わいわいと騒ぎながら宿を出る。
ちらほらと道行く人々が増えてきて、屋台もさっきより数が多くなっていた。
―――――――――――今日も良い天気になりそうだなぁ。
この世界に落ちてからたった1週間しかなかったのに、あまりにもいろんなことが起きたと思う。それに…僕が会ったばかりの人達をすぐに愛してしまうだなんて全く想像してもなかった。神様に頼んだときはもっと軽く考えていて。ただイケメンと出会って、初めは顔で好きになってもらって、その後はなるようになるだろうと思ってたし。
なんだか僕がどんどん変わっていくなぁ…。
もぞもぞとダレンの腕から抜け出してベッドから降り、ベランダへと出る。
そういえばオベロンはもう帰ったのかな。色々と口を滑らせてた精霊王だけど、結果的には丸く収まった?から、許してやってもいいかな。
朝焼けの美しいオレンジ色の光に染まった町がよく見える。ノーザンスの町の近くには魔物が出る森がすぐそこにあるのに、道行く人々の表情は明るかったな。まあ屈強そうな男たちがそこらを闊歩してたからもし魔物が町に来たとしてもすぐ返り討ちにしてしまうのかも。
朝特有の清浄な空気を肺いっぱいに吸い込む。
本当に僕異世界に来ちゃった。もうBL小説は読めないし、青い鳥にここが良かったとか呟けない。家の外で遊ぶ小学生たちの笑い声ももう聞けないんだ…。ふふふ、今更なのに。お母さん、お父さん、マイちゃん、僕、いつの間にか結婚してたんだよ。それに、ここは重婚も可能な世界でさ。今日帰ったら好きな人と婚姻届出しに行くの。羨ましいでしょ?特にマイちゃんは喜びそう。あの子も腐女子だったし。『お兄ちゃんそれまじ?!うっひょーー!』とか言ったりして。
「ふふっ」
思わず笑みが零れた。なんか僕が異世界に行くって言ったのに、その時は全然覚悟なんてできてなかったみたい。今は、もう。ここで行きていく覚悟ができた。あの人達の隣に立てるように、僕も頑張ろう。
「もう夏とは言え朝は冷えるぞ、シン。それに…心配した…。」
後ろからすっぽりと大きな体が被さってくる。
「そうだよ、シンがベッドからいなくなってる!って起こしに来たんだから。」
甘く囁かれる声と楽しげに揺れる声が後ろから聞こえてきた。後頭部をダレンの胸に押し付けてぐりぐりと擦り付ける。
「えへへ…ごめんね?目が覚めちゃって。それから…おはよう、二人共。」
「「おはよう」」
ダレンは僕の頬に口づけて、ザックは手の甲に唇を押し当てる。幸せだなぁ。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
あれから僕はお腹が空いたと言ってあの甘い空気をぶち壊した。二人は苦笑してたけど、仕方ない。昨日何も食べずに寝ちゃったから。じゃあ何か食べるか、と言って早朝の大通りへ出た。
「こんなに朝早いけど、屋台なんて出てるの?まだみんな寝てない?」
たぶん今は5時半頃なんじゃないだろうか?
「大丈夫だ。冒険者をしていると、早朝でないと出現しない魔物を倒したり、その時に採取しなければ効能が薄れる薬草だったりと、朝早くから動かねばならない時がある。だからその分早いんだ。」
なるほど…冒険者も大変なんだなぁ…
「あっ、ダレンさん、ザックさん!あそこにキングホースの串焼きがありますよ!行きましょう!」
ふんわりと香ばしい香りが鼻腔についた瞬間に僕は走り出す。あれは忘れられないくらいおいしいキングホースの串焼きだぁ!
「おじさん!串焼き3つください!」
屋台のいかつめなおじさんに元気よく注文する。するとおじさんはびっくりした顔をしつつもお肉を焼いてくれた。
「坊主、えらい別嬪な人族じゃねぇか!ほらよ、そこのトラとオオカミがお前の保護者か?もう2本おまけしとくからよ、みんなで食べな。」
強面から一瞬で優しそうな笑顔を見せてくれたおじさんは僕用の普通サイズの串焼き一本と、二人用の大きめサイズを2本ずつくれた。
「親父さん助かる、ありがとな」
「申し訳ない、ありがとう」
僕達は、側にあるベンチで腰を落ち着けて食べ始めた。
口に入れた瞬間にふわっとした香ばしさが広がり、舌の上でトロける。歯なんて必要ないんではないかというレベルの柔らかさ!
「んみゃぁい………しゃあわせぇ…♡」
僕このお肉大好き。安いのに国産和牛みたいな味と食感。馬なのに!素晴らしすぎる…。
僕が食べ終わる頃には二人共二本目もあと僅か、というところまできていた。食べるの早すぎやろ…、ってもう食べ終わったんかいな…。
「ふぅ~!美味しかった!お二人共、今日もありがとう御座いました~!」
ぽんぽんとお腹をさすって一息つく。すると二人共鼻を押さえて俯いた。
「えっえっ、ど、どうしたんですか?!具合悪いんですか?!もうしかして当たっちゃったのかな…どど、どうしよう…!」
ぼくがあわあわと焦っていると、ダレンさんがぼそりと
「まるで腹に子供でもいるみたいな撫で方だったから…」
ごにょごにょと聞こえない…と思っているとザックさんは立ち上がってダレンさんの後頭部をバチーン!と叩いた。
「ひえっ?!ザ、ザックさんんん?!」
「なんでもないよ、シン。さぁ、この変態は置いて宿に戻ろうか。それでユノヴァーンに帰ろう。」
そう言われて手を引かれて歩くけれど…
まだダレンさん蹲ってる…大丈夫だろうか…
「あれはすぐに追いつくよ。」
僕の考え読まれてた?!
「ふふっ、顔に出やすいだけ。」
あわわわわわわ……!!
そうこうしてるうちにダレンさんが追いついて、宿につく。僕達の荷物をまとめて、さぁ帰ろうか、という雰囲気になっていた。
「あれ、そういえばオベロンに何も言わなくてもいいの?」
あんなに私の妻~!とはしゃいでたのに、今は全く姿を見せない。
「ああ~…あいつは、大丈夫だ。多分見えないだけで側にいる。なんか気配がする。」
えっそうなの?!ザックさんも頷いてるし…僕だけ気づかなかった…?
『あら…やっぱりわかってたんですねぇ…。さすがSランク。侮れません。』
「侮ってたのかよ、まあいい。帰るぞ。」
あれ?オベロンも一緒なのかな?
「うーん…そろそろ引っ越しを考えないといけない…」
ぼそっとザックさんが呟いたのを聞いて、みんな一緒に住めるんだ~と呑気に考えていた。
「ユノヴァーンにかえるぞぉ~!」
『帰りましょう~!』
わいわいと騒ぎながら宿を出る。
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―――――――――――今日も良い天気になりそうだなぁ。
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