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7.可愛い少年
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~ザックSide~
初めてその子を見たときに説明できない胸の疼きがあった。その子はなんと異世界から転生した子で、しかも16歳だという。私達の発言から気に病んでしまったのだろう、迷惑だろうから出ていくと言った。そんなのはだめだ、許せない。私達の元から離れようとするなんて!そう思い叫んでしまったのが悪かったのだ。
黒曜石のような美しい瞳から光が消え、唐突に怯え始めた。ダレンが過呼吸になっているシンを抱きしめてしきりに息を吸うように伝えるが、私たちに助けを求めて藻掻くだけだった。そうしてプツリと糸が切れたように気絶してしまったのだ。
あれは以前魔導騎士団で働いていたときによく見た、少年たちの瞳だった。奴隷として働かされ、さらには夜の相手まで無理やりさせられていた者たちの目だった。一体誰が。おそらく前の世界にいるときのことだろうから、私たちには何もできないのが歯がゆかった。
シンをベッドに寝かせ、ダレンは起きたときのために夕飯を作りに行っていた。顔が青白い。眉根も寄っていて、苦しそうに顔を歪めている。悪い夢を見ているようだ。
そうこうしているうちに表情が安らかになり、ダレンもあらかた作り終えたのか、部屋に戻ってきた。ちょうどその時、シンが目を覚ましたのだ。シンは怯えたことに対して謝り、なぜああなったかは今はまだ言えないと伝えてくれた。あたりまえだ。この短時間でとても懐いてくれたとはいえ、今日が初対面なのだ。おそらく酷いことがあったことは言えないだろう。そしてダレンが夕飯に誘い、最終工程を終わらせるためにまた部屋を出ていった。私はシンをベッドから降ろすために手を差し出すと、シンの足がかくかくと震えていたようで、私の方に倒れてきた。咄嗟に抱きとめると、腰があまりにも細いことに驚いた。力いっぱいに抱き締めたら折れてしまいそうだ。そして私は歩けなさそうなシンを抱きかかえ、リビングへ向かおうとすると、シンがこちらをじっと見つめていることに気がついた。見惚れているのかとからかうと、本当に見惚れていたらしい。可愛いなこの子は。どうにかして私達が囲い込まねば。
そして夕食を食べていると、無性に給餌をしたくなってしまった。おそらくこの子は異世界人だから、給餌行為の意味は知らないはず。まあ知っていてもいいのだが。フォークを可愛らしい口元へ持っていくと、躊躇いもなく口を開けて咀嚼する。可愛らしい声を上げて美味しいという様は何故かイケナイものを見ているようだった。しかしお腹がいっぱいになったのだろう、片手にフォークを持ちながら船を漕ぎ始めた。可愛い。
「シン、疲れてたんだな…ザック、今空いてる部屋にベッドってあったか?」
「いや、なかった…仕方ない、私の部屋で寝させよう」
「いやお前欲望ダダ漏れじゃねぇか…俺もお前の部屋で寝るからな」
「はぁ…わかったよ…みんなで一緒に寝るか…」
二人で同じベッドを使うつもりだったが…仕方ない。幸い私が4人は寝られそうなほど広いベッドだ。シンと寝られるなら目を瞑ってやる。
食器を片付け終えると、椅子の背もたれに体重を預けながらよだれを垂らして寝ている天使がいた。
「なぁザック…俺たちの子を孕ませようか。」
「それは良い案だがしばらくはダメだ。今日の様子を見ただろう?元騎士団団長?」
そう、こいつは私の幼馴染で、私は魔導騎士団、こいつは騎士団の団長をそれぞれやっていた。だが私達は何かに縛られることが嫌で冒険者に転職したのだ。
「あぁ…そうだな…あんな怯え方をする子は久しぶりに見たよ…はぁ…ま、追々、だな?」
そして寝室へ抱きかかえて運ぼうとすると、
「ザック、今度は俺が運ぶ。さっきのを見て結構羨ましかったんだからな?」
わかったよ、ダレン。
✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
可愛い寝顔を見つめてまだ起きなさそうなことを確認して朝飯の準備をする。準備と言っても私は料理ができないので、作るのはダレンに任せて皿だけを出している。
ダレンがシンを呼びに行くのを確認して料理に皿を盛り付けテーブルへ運び、戻ってきたダレンと席についた。すると寝起きのぽやん、としたシンが部屋に入ってきたが…ダボダボのシャツを1枚しか着ていないではないか!真っ白な首筋が見えてとても美味しそうだし、スラリと伸びた足も柔らかそうで…!!は、いけない。冷静さがなくなってしまうところだった。
ダレンに確認すると、やはりあの着替えはわざとだったようだが、あそこまで破壊力があるとは思わなかったという。今日は服を買いに行かねばな…。
昨日の夜に給餌していたのがダレンは羨ましかったようで、張り合うようにせっせと二人で給餌していた。そして朝ごはんも食べ終えて買い出しに行くためにいくつかの注意事項をシンに伝えて出かけた。なんだか胸騒ぎがするが、大丈夫だろうか…。そういえば最近あいつが来てないな…。まあ静かでいいが。
服屋でシンに似合いそうなものを手始めに20着ほど買い揃えた。正直まだ足りない気もするが…他に似合いそうなものがもう無い。とはいえ予想以上に時間を食ってしまったな…もう帰らないと。
本当ならもっと早く帰るべきだったのに。
荷物をマジックバックに詰め込んで帰路につくと、ドアが壊れていた。
「しまった!シン!」
私達は慌てて家の中に入ると部屋の中から悲痛な叫び声と、私達を呼ぶ声がした。するとやっぱり。サブギルマスのルドがいた。こいつは用事があるたびにうちに来るのだが、俺たちが留守にしていても無理やり家の中へ入ってくるためドアがよく壊れているのだ。しかし許せない。私達のシンをよくも怯えさせたな。ダレンが頭を殴り、私は咄嗟に風魔法で壁に叩きつけた。二人でシンの元へ駆けつけ抱きしめると、ぽろぽろと涙を流しながら怖かったと泣いた。やがて落ち着いてきたのか、ルドのことを気にしはじめる。そして私がルドを紹介すると、ルドは謝りながら、やはり用事があることを伝えてきた。
可愛くて小さなシンを膝の上に乗せて話を聞くと、精霊の泉がおかしいから様子を見に行けというものだった。だが私達はシンを置いては行けない。そう考えるとシンが危うく称号の話をするところだった。危ない。とりあえずまあ、シンも一緒に行くか。だが決して危ない目には会わせまい。安心してくれ、可愛いシン。
シンのことになると可愛いが頭を覆い尽くすザックさん。
初めてその子を見たときに説明できない胸の疼きがあった。その子はなんと異世界から転生した子で、しかも16歳だという。私達の発言から気に病んでしまったのだろう、迷惑だろうから出ていくと言った。そんなのはだめだ、許せない。私達の元から離れようとするなんて!そう思い叫んでしまったのが悪かったのだ。
黒曜石のような美しい瞳から光が消え、唐突に怯え始めた。ダレンが過呼吸になっているシンを抱きしめてしきりに息を吸うように伝えるが、私たちに助けを求めて藻掻くだけだった。そうしてプツリと糸が切れたように気絶してしまったのだ。
あれは以前魔導騎士団で働いていたときによく見た、少年たちの瞳だった。奴隷として働かされ、さらには夜の相手まで無理やりさせられていた者たちの目だった。一体誰が。おそらく前の世界にいるときのことだろうから、私たちには何もできないのが歯がゆかった。
シンをベッドに寝かせ、ダレンは起きたときのために夕飯を作りに行っていた。顔が青白い。眉根も寄っていて、苦しそうに顔を歪めている。悪い夢を見ているようだ。
そうこうしているうちに表情が安らかになり、ダレンもあらかた作り終えたのか、部屋に戻ってきた。ちょうどその時、シンが目を覚ましたのだ。シンは怯えたことに対して謝り、なぜああなったかは今はまだ言えないと伝えてくれた。あたりまえだ。この短時間でとても懐いてくれたとはいえ、今日が初対面なのだ。おそらく酷いことがあったことは言えないだろう。そしてダレンが夕飯に誘い、最終工程を終わらせるためにまた部屋を出ていった。私はシンをベッドから降ろすために手を差し出すと、シンの足がかくかくと震えていたようで、私の方に倒れてきた。咄嗟に抱きとめると、腰があまりにも細いことに驚いた。力いっぱいに抱き締めたら折れてしまいそうだ。そして私は歩けなさそうなシンを抱きかかえ、リビングへ向かおうとすると、シンがこちらをじっと見つめていることに気がついた。見惚れているのかとからかうと、本当に見惚れていたらしい。可愛いなこの子は。どうにかして私達が囲い込まねば。
そして夕食を食べていると、無性に給餌をしたくなってしまった。おそらくこの子は異世界人だから、給餌行為の意味は知らないはず。まあ知っていてもいいのだが。フォークを可愛らしい口元へ持っていくと、躊躇いもなく口を開けて咀嚼する。可愛らしい声を上げて美味しいという様は何故かイケナイものを見ているようだった。しかしお腹がいっぱいになったのだろう、片手にフォークを持ちながら船を漕ぎ始めた。可愛い。
「シン、疲れてたんだな…ザック、今空いてる部屋にベッドってあったか?」
「いや、なかった…仕方ない、私の部屋で寝させよう」
「いやお前欲望ダダ漏れじゃねぇか…俺もお前の部屋で寝るからな」
「はぁ…わかったよ…みんなで一緒に寝るか…」
二人で同じベッドを使うつもりだったが…仕方ない。幸い私が4人は寝られそうなほど広いベッドだ。シンと寝られるなら目を瞑ってやる。
食器を片付け終えると、椅子の背もたれに体重を預けながらよだれを垂らして寝ている天使がいた。
「なぁザック…俺たちの子を孕ませようか。」
「それは良い案だがしばらくはダメだ。今日の様子を見ただろう?元騎士団団長?」
そう、こいつは私の幼馴染で、私は魔導騎士団、こいつは騎士団の団長をそれぞれやっていた。だが私達は何かに縛られることが嫌で冒険者に転職したのだ。
「あぁ…そうだな…あんな怯え方をする子は久しぶりに見たよ…はぁ…ま、追々、だな?」
そして寝室へ抱きかかえて運ぼうとすると、
「ザック、今度は俺が運ぶ。さっきのを見て結構羨ましかったんだからな?」
わかったよ、ダレン。
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可愛い寝顔を見つめてまだ起きなさそうなことを確認して朝飯の準備をする。準備と言っても私は料理ができないので、作るのはダレンに任せて皿だけを出している。
ダレンがシンを呼びに行くのを確認して料理に皿を盛り付けテーブルへ運び、戻ってきたダレンと席についた。すると寝起きのぽやん、としたシンが部屋に入ってきたが…ダボダボのシャツを1枚しか着ていないではないか!真っ白な首筋が見えてとても美味しそうだし、スラリと伸びた足も柔らかそうで…!!は、いけない。冷静さがなくなってしまうところだった。
ダレンに確認すると、やはりあの着替えはわざとだったようだが、あそこまで破壊力があるとは思わなかったという。今日は服を買いに行かねばな…。
昨日の夜に給餌していたのがダレンは羨ましかったようで、張り合うようにせっせと二人で給餌していた。そして朝ごはんも食べ終えて買い出しに行くためにいくつかの注意事項をシンに伝えて出かけた。なんだか胸騒ぎがするが、大丈夫だろうか…。そういえば最近あいつが来てないな…。まあ静かでいいが。
服屋でシンに似合いそうなものを手始めに20着ほど買い揃えた。正直まだ足りない気もするが…他に似合いそうなものがもう無い。とはいえ予想以上に時間を食ってしまったな…もう帰らないと。
本当ならもっと早く帰るべきだったのに。
荷物をマジックバックに詰め込んで帰路につくと、ドアが壊れていた。
「しまった!シン!」
私達は慌てて家の中に入ると部屋の中から悲痛な叫び声と、私達を呼ぶ声がした。するとやっぱり。サブギルマスのルドがいた。こいつは用事があるたびにうちに来るのだが、俺たちが留守にしていても無理やり家の中へ入ってくるためドアがよく壊れているのだ。しかし許せない。私達のシンをよくも怯えさせたな。ダレンが頭を殴り、私は咄嗟に風魔法で壁に叩きつけた。二人でシンの元へ駆けつけ抱きしめると、ぽろぽろと涙を流しながら怖かったと泣いた。やがて落ち着いてきたのか、ルドのことを気にしはじめる。そして私がルドを紹介すると、ルドは謝りながら、やはり用事があることを伝えてきた。
可愛くて小さなシンを膝の上に乗せて話を聞くと、精霊の泉がおかしいから様子を見に行けというものだった。だが私達はシンを置いては行けない。そう考えるとシンが危うく称号の話をするところだった。危ない。とりあえずまあ、シンも一緒に行くか。だが決して危ない目には会わせまい。安心してくれ、可愛いシン。
シンのことになると可愛いが頭を覆い尽くすザックさん。
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