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都立冨澤大学附属高校
俺の反発 晴臣side
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《高校2年生・3月》
俺は浩太郎に呼び出されて
道場の部室で昼食を食べていた
暫くお互いに無言で食事を摂っていたが
昼食を食べ終えた浩太郎が沈黙を破る
「…佐伯のこと、実際晴臣はどう思ってるんだ?」
俺も食べていたおにぎりの最後の一口を口に放り込む
「どうもこうもない」
「別れろと言っても別れないくせにか」
「あいつの決めることだろ」
「ふっ俺に取られるのがそんなに嫌か」
「だから、そんなんじゃねぇよ」
言い合いをしたのち
有りもしない事をしつこく質問する浩太郎を鋭く睨みつけた
「おー怖い。まさか仕事だけの晴臣がここまで人間らしくなるとはな」
「浩太郎、お前良い加減にしろよ…」
「…お前こそ良い加減、自分を客観視しろ晴臣。本当は佐伯のこと好きなんじゃないのか?」
浩太郎が言い終えたかどうかの所で俺はバンッとテーブルを叩くと立ち上がりそのまま部室から飛び出した
ーーーー
道場の部室を出ると
俺はやり場のない怒りをどうしようかと考えながら、桜の木が並ぶ校舎横の広場のベンチにドサリと腰掛けた
遠くから、栗色頭の男がこちらに向かってくるのが見える
俺の苛立ちの要因である彼がトコトコと俺の方に近付いてくる
何でここに居るんだ
全くタイミングの悪い男だと
顰めっ面のまま、視線を彼に合わせ
静止の意味を込めて仕方なしに声をかける
「近寄んな…何の用だよ」
「晴臣くん!お昼休みに会えるなんて奇跡だね!」
湊は俺に静止された位置で素直に歩みを止めた後、ニコニコと嬉しさを隠せずに笑う
そんな姿に胸が苦しくなるのを感じるが俺は会いたくもない顔を見たせいだと睨みつける
「別にんなことないだろ」
「あはは、そうだよね、嬉しくって」
それに俺が特に返事を返さなければ沈黙が訪れる
用がないなら相手をする意味もない
こうして喋っているのを浩太郎に見られたら、また揶揄うに決まっている
(別れろと言われても別れないくせにか)
(本当は佐伯のこと好きなんじゃないのか?)
さっきの浩太郎のセリフが頭浮かぶと
ドクドクと胸が締め付けられるように痛む
俺は別に別れたくないなんて言ってない
どうだって良い
俺は別れたって何の問題もない
…自分はこんなに感情に左右される人間ではないと思っていた
いつも上手く、面倒ごとに巻き込まれないようにしてきた
それが何だこの体たらくは
この男のせいで俺はらしくもなく、浩太郎に反抗して部室を飛び出してきた
その事実が、余計に晴臣のプライドをへし折ったのだ
俺は収まらない苛立ちをどうにかしようと
ベンチから腰を上げると、湊に声をかけることもなく校舎の方へ足を向けた
そんな俺の後ろ姿に湊が声をかける
「あ、あの晴臣くんはさ…大学、もう決めてるの…?」
本当にタイミングの悪い男だとつくづく思う
いつも俺の顔色を必要以上に伺うくせに
なぜ今はズケズケと話しかけてくるのだ
察っしてくれ
今の俺は…
優しくできない
「…お前に何の関係が?
高校までの関係なんだ、余計な詮索するな。
大学までストーカーするつもりか?
勘弁してくれよ、迷惑だ」
ハンっと鼻で笑い湊をを見下ろしたあと
踵を返し校舎に向かう
「あ…そ、そうだよね、迷惑かけて…ごめんなさい」
湊の声は僅かに俺の背中側から聞こえてきた
振り返りはしなかった
振り返ってしまえば
項垂れた彼の姿を目にした俺はどうしようもない感情に囚われる気がした
胸が張り裂けるような苦しさの理由が分からない俺は、彼を傷つけることでしか自分を維持できなかった
俺は浩太郎に呼び出されて
道場の部室で昼食を食べていた
暫くお互いに無言で食事を摂っていたが
昼食を食べ終えた浩太郎が沈黙を破る
「…佐伯のこと、実際晴臣はどう思ってるんだ?」
俺も食べていたおにぎりの最後の一口を口に放り込む
「どうもこうもない」
「別れろと言っても別れないくせにか」
「あいつの決めることだろ」
「ふっ俺に取られるのがそんなに嫌か」
「だから、そんなんじゃねぇよ」
言い合いをしたのち
有りもしない事をしつこく質問する浩太郎を鋭く睨みつけた
「おー怖い。まさか仕事だけの晴臣がここまで人間らしくなるとはな」
「浩太郎、お前良い加減にしろよ…」
「…お前こそ良い加減、自分を客観視しろ晴臣。本当は佐伯のこと好きなんじゃないのか?」
浩太郎が言い終えたかどうかの所で俺はバンッとテーブルを叩くと立ち上がりそのまま部室から飛び出した
ーーーー
道場の部室を出ると
俺はやり場のない怒りをどうしようかと考えながら、桜の木が並ぶ校舎横の広場のベンチにドサリと腰掛けた
遠くから、栗色頭の男がこちらに向かってくるのが見える
俺の苛立ちの要因である彼がトコトコと俺の方に近付いてくる
何でここに居るんだ
全くタイミングの悪い男だと
顰めっ面のまま、視線を彼に合わせ
静止の意味を込めて仕方なしに声をかける
「近寄んな…何の用だよ」
「晴臣くん!お昼休みに会えるなんて奇跡だね!」
湊は俺に静止された位置で素直に歩みを止めた後、ニコニコと嬉しさを隠せずに笑う
そんな姿に胸が苦しくなるのを感じるが俺は会いたくもない顔を見たせいだと睨みつける
「別にんなことないだろ」
「あはは、そうだよね、嬉しくって」
それに俺が特に返事を返さなければ沈黙が訪れる
用がないなら相手をする意味もない
こうして喋っているのを浩太郎に見られたら、また揶揄うに決まっている
(別れろと言われても別れないくせにか)
(本当は佐伯のこと好きなんじゃないのか?)
さっきの浩太郎のセリフが頭浮かぶと
ドクドクと胸が締め付けられるように痛む
俺は別に別れたくないなんて言ってない
どうだって良い
俺は別れたって何の問題もない
…自分はこんなに感情に左右される人間ではないと思っていた
いつも上手く、面倒ごとに巻き込まれないようにしてきた
それが何だこの体たらくは
この男のせいで俺はらしくもなく、浩太郎に反抗して部室を飛び出してきた
その事実が、余計に晴臣のプライドをへし折ったのだ
俺は収まらない苛立ちをどうにかしようと
ベンチから腰を上げると、湊に声をかけることもなく校舎の方へ足を向けた
そんな俺の後ろ姿に湊が声をかける
「あ、あの晴臣くんはさ…大学、もう決めてるの…?」
本当にタイミングの悪い男だとつくづく思う
いつも俺の顔色を必要以上に伺うくせに
なぜ今はズケズケと話しかけてくるのだ
察っしてくれ
今の俺は…
優しくできない
「…お前に何の関係が?
高校までの関係なんだ、余計な詮索するな。
大学までストーカーするつもりか?
勘弁してくれよ、迷惑だ」
ハンっと鼻で笑い湊をを見下ろしたあと
踵を返し校舎に向かう
「あ…そ、そうだよね、迷惑かけて…ごめんなさい」
湊の声は僅かに俺の背中側から聞こえてきた
振り返りはしなかった
振り返ってしまえば
項垂れた彼の姿を目にした俺はどうしようもない感情に囚われる気がした
胸が張り裂けるような苦しさの理由が分からない俺は、彼を傷つけることでしか自分を維持できなかった
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