上 下
43 / 63
都立冨澤大学附属高校 

俺の動揺 晴臣side

しおりを挟む

20時過ぎ 来訪を伝えるチャイムが鳴る

いつもなら時間ぴったりにくる彼に
珍しいなと思いつつ、特に反応せずスマホで生徒会の会議の日程調整をしていた

ーーーガチャ

ドアを閉めた音と、こちらに向かう足音が聞こえる

「遅かったな」

「ごめんなさい、少し寝ちゃって」

いつも通り俺の足元に正座する彼を見るといつもより頬を赤く染めていて少し息が荒い気もした
寝ていたと言った彼は、自分の部屋から慌てて走って来たのだろうか
鈍臭そうな湊を想像するとなんとも滑稽で笑いそうになった

大事にしてもらう訳でもないのに、毎回、良くへこたれず来るもんだと感心すらする

いつもの様に、俺のズボンに顔を埋めるが彼は上手く口元を使えないのか
モタモタと時間がかかっていた

たまにはズボンぐらい自分で下ろそうかと思い、湊を静止する

「いい、口を離せ」

「…あ、ご、ご…ごめん、なさい!
ごめ…ごめんなさい、ちゃんとするから、頑張るから…俺のこと捨てないで」

突然泣かれて驚愕した

俺はこいつの笑った顔しか見たことなかったからだ
どんなに雑に扱おうが、酷い行為をしようが結局は満足そうに笑っていた

それがなぜ、急に泣かれなければいけないのか

今更、抜いてもらう様な気にもなれず
俺は黙って、自分の足の間にある湊の頭を自分の体から離した

離された湊は絶望したかのような顔をみせて項垂れた

♪ピンポーン

インターフォンが鳴る

急な湊の言動に動揺していた俺は
碌に相手を確認せずに玄関に向かいドアを開けた

そこには俺の知らない派手なピンク色の頭の男が立っていた

「僕の友人、返してもらえるかな」

そう唐突に言う男に
お前は誰だと質問を返そうとした時

「失礼」と一言口にしたかと思えば
俺の制止を気に留めることなく
湊の友人だというピンク頭の男はズカズカと俺の部屋に上がり込む

部屋で泣きじゃくる湊に近寄ると湊の腕を軽く引っ張る

「湊、帰ろう」

それに対して、湊は頭を小さく横に振って拒否する

その姿を見たピンク頭の男は
湊の両肩を掴み自分の方へ向かせた

「高熱出して早退しておきながら、こんな所に行くなんて、僕が心配するに決まってるよね?それか、僕が余程薄情ものだと思われてるのかな」

湊は驚いた顔をした後、申し訳なさそうに目を伏せた

「…ご、ごめん、心配かけて…帰る」

「うん、素直な湊は可愛いよ」

ほら、と湊の肩を抱きながら
玄関に立ちすくむ俺の方へ歩いてくる2人

俺の横を通り過ぎる時、ピンク頭の男は
湊に向けていた心配そうな柔らかい笑顔を引っ込めると酷く冷やかな表情で俺を睨み付け

「その出来の良い優秀な脳みそでも、思いやりというのは、まだ難しい言葉の様ですね」

そう俺にだけ聞こえる様に囁いた

元の表情に戻ると、ピンク頭の男は目を伏せ浅い苦しそうな息をする湊を抱えながら俺の部屋を出て行った



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈

めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。 しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈ 記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。 しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。 異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆! 推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!

いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜

きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員 Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。 そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。 初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。 甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。 第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。 ※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり) ※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り 初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。

英国紳士の熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです

坂合奏
恋愛
「I love much more than you think(君が思っているよりは、愛しているよ)」  祖母の策略によって、冷徹上司であるイギリス人のジャン・ブラウンと婚約することになってしまった、二十八歳の清水萌衣。  こんな男と結婚してしまったら、この先人生お先真っ暗だと思いきや、意外にもジャンは恋人に甘々の男で……。  あまりの熱い抱擁に、今にも腰が砕けそうです。   ※物語の都合で軽い性描写が2~3ページほどあります。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

催眠アプリ(???)

あずき
BL
俺の性癖を詰め込んだバカみたいな小説です() 暖かい目で見てね☆(((殴殴殴

俺と両想いにならないと出られない部屋

小熊井つん
BL
ごく普通の会社員である山吹修介は、同僚の桜庭琥太郎に密かに恋心を寄せていた。 同性という障壁から自分の気持ちを打ち明けることも出来ず悶々とした日々を送っていたが、ある日を境に不思議な夢を見始める。 それは『〇〇しないと出られない部屋』という形で脱出条件が提示される部屋に桜庭と2人きりで閉じ込められるというものだった。 「この夢は自分の願望が反映されたものに違いない」そう考えた山吹は夢の謎を解き明かすため奮闘する。 陽気お人よし攻め×堅物平凡受けのSF(すこし・ふしぎ)なBL。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

処理中です...