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都立冨澤大学附属高校
私の恋煩い 夏月side
しおりを挟む思いの外近くに、物音の正体は居た
それは古い小説を数冊持って
自分から適度に離れた席に腰掛けていた
約3年間、ここに通っていたが
他の生徒と鉢合わせることは一度もなかった
ここは随分と奥まった場所にあり
部屋自体も広くはなく、10人も居れば
席は埋まるだろう
本の種類も古いものだらけだ
好き好んで読みにくる好きものが居たなんて驚きだった
興味の湧いた夏月は カタリと椅子を下げると 綺麗な栗色の髪色をした生徒の側に寄り話しかけた
「ここ、よく来るのかな?」
生徒は随分驚いた様子で私を見上げると
強張った表情のまま答えてくれた
「や、は、はじめて、です」
彼は私をチラチラ盗み見ながら
困った顔をしたかと思えば、すぐに驚愕した様な顔をみせた
コロコロとよくそんなに表情が変わるものだなと、ふふっと思わず笑いが溢れる
「あ、あの邪魔して、すみませんでした」
ああ、自分が邪魔だと思ったのか
慌ただしく席を立つ彼をみて少し名残惜しく感じる
立ち上がった彼の手元の本から古い恋愛小説を1冊奪うと ペラペラと流し見した
「この本、ハッピーエンドだと思う?」
俺は質問する
突然の質問にコクコクと頷く湊
「残念。ラストで主人公の男女が心中のバッドエンド!有名な作者だけに、発売当初は結構非難されたらしいよ」
私は小説から目を離し彼に視線を移動させるとパチっと目が合う
その瞬間、何故かドキリと胸が高鳴る
こんな話どうでもいいだろうと、今更恥ずかしくなった夏月は慌てて彼に本を返す
「…ハッピーエンドだと思います」
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