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都立冨澤大学附属高校 

俺の苛立ち2 晴臣side

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《高校2年生・12月》

積雪で外出禁止令が校内に発表された
土曜の昼間、浩太郎の部屋で予定通り勉強会が開かれていた

12月の期末テストに向けた勉強会だと浩太郎は、言ったが
特進クラスと、進学クラスではそもそも内容も難易度も違う
ただの口実だろうが、もっとマシな誘い文句は見つけられないのかと
筋肉馬鹿の浩太郎を心の中で笑った

♪ピンポーン 
来訪を伝えるチャイムが鳴り
浩太郎は玄関まで出迎える

「五十嵐くんお邪魔します…あ!晴臣くん!」

浩太郎に挨拶を済ませた湊は俺を見るや否やパタパタと俺に駆け寄る
そんな姿を見て、気持ちが満たされる気がした
ーーーいやいや、と慌てて思考を打ち消した
1人で考え込んでいると

「久しぶり。自己紹介まだったよね?可愛い湊の友人の早乙女廉です」

そう、俺に挨拶をするピンク頭が目に入る
その男はあの日湊を攫った張本人だった

「ああ…久しぶり。浩太郎の友人の鳳城晴臣だ」

「ふぅーん…じゃあ浩太郎くんの友達として、よろしくね」

意味深に俺を見つめる早乙女に背筋が寒くなるのを感じた

湊はなんで、こいつと一緒に来たんだ
クラスに他に友達が居ないのか
ただでさえ、浩太郎の行動に付いて行けていないのに
勘弁してくれと頭を抱えた

各々、教科書と過去問を広げる

浩太郎が湊の出した教科書を覗き込む

「苦手科目があれば手伝うぞ」

「えっありがとう…!俺、国語が苦手で」

「俺が誘ったんだ、協力させてくれ。国語は何が?」

「文章問題が…答えがハッキリしないのが苦手で…」

「あれは正解がない様に見えるが、数学の公式と同じで、問題の出し方や物事の文章の表し方を覚えれば簡単だよ」

ー2人のやり取りを見ながら俺は無性に苛立ちを覚えていた

何が手伝うぞだ、俺より順位下のくせに
何がありがとうだ、嬉しそうにしやがって勉強会だろ、黙って教科書見てろよ

俺は今だに仲良く喋る2人を刺すような視線で見つめた後

「理解できるまで過去問解けば、嫌でも覚えられるだろ」

そう言い、自分の持っている分厚い参考書をドンっと湊の目の前に置いた

湊は驚いた顔をした後

「えっわざわざ!ありがとう!」

と嬉しそうに参考書を開くのだった

「湊ってば、前回、国語の点数だけ悪かったもんね」

早乙女はニヤニヤと湊を揶揄うように言う

…早乙女はいちいち距離が近い
何で、湊と肘がぶつかる程の距離に座る必要があるんだろうか
何でそんな気安く触らせるんだ
触れるな、仮にも俺の恋人だ

考えれば考える程、俺のは腹の奥が燃える様な苛立ちに囚われていた

これでは碌に集中もできないと
両耳にAirPodsを、差し込み音楽を流して目の前の過去問に向き合った

暫く集中していた俺は
少し休憩しようと背伸びをする

自然と湊の方に視線をやれば
参考書にある過去問を見ながら
一生懸命、紙に答えを解いている姿が目に入る

俺は一言ぐらい応援してやろうかと
頭の中で必死に言葉を選んでいた


その時、浩太郎が嫌味たらしい顔でこちらを見てきたかと思えば

湊の答案の紙を受け取り

「全問正解だ。佐伯は飲み込みが早いな」

そう言って、浩太郎が褒める

湊は照れたように頬を赤く染めるのだ

「賢い湊は可愛いね」

そう言って意味もなく湊を抱きしめる早乙女にも湊はされるがままにされている

俺は苛立ちを抑えられず感情のままに口が動くのを感じる
今まで生きてきて初めて自分の感情に突き動かされた気がした

「一々ひっつくなよ、気色悪いな
…浩太郎は甘いんだよ。湊の答案は俺が見てやるから寄越せ」

無理矢理、湊の答案を浩太郎の手元から奪うと、俺の手元に置いた後、別な過去問を無造作に湊の前に置いた

「そんだけ時間かければ誰でも解けるだろ。テストの時間は有限だ。これの文章問題は10分で」

そういって、スマホのタイマーを操作すると
湊は慌てて過去問を開いて解き始めた

俺は必死な湊をみて満足すると
自分の過去問に視線を戻した

とりあえず、浩太郎のことも
早乙女のことも考えるのは保留にしようと勝手に決めた俺は、湊の横に割り込み
勉強会が終わるまで席を離れなかった








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