9 / 63
晴臣と浩太郎(過去編+中学生)五十嵐side
俺の親父
しおりを挟む
なんだか暗い感情を抱えながら、
義嗣さんの後ろをついて回る
グルグルと嫌な感情に心を支配されて
視線はずっと、自分の足元を見て歩いていた
ボフンッと立ち止まった義嗣さんのお尻に勢い良く顔をぶつけてしまう
突然の痛みに顔を抑えながら謝罪する
「浩太郎くん、あれ、見えるかな」
気にする様子も無く、
本堂の中を指さす義嗣さんの
指先へ、視線を移すと
大きな柱が何本も目に入る
俺は、横目で晴臣を見ると、ギラギラ瞳を輝かせている様に見えた
尊敬している自分の父親の職場はやはり興奮するんだろうか
そんなことを考えていた俺の頭を
義嗣さんはさらりと撫でると、
今度は本堂の天井を指差し
こちらの顔を覗き込む
「なぜ、この本堂は何千年も耐えられたと思う?」
小学生相手になんと困難な質問をするんだと思ったが、晴臣はさっきのギラギラした目を見開いて手を挙げていた
俺は小さく手を挙げて「組み立て型…とか?」と首を傾げた。
義嗣さんは笑顔のまま、うんうんと何度か頷いて、俺と晴臣の、頭を再度撫でると話を続けた
「ははッ。晴臣は後から聞こうね。
もちろん、様々な理由はあるさ。だが、今の私の問いの正解は柱だ。
この太い樹齢何百年にもなる大樹の柱のおかげだよ。」
俺は納得するようなしないような顔を浮かべて義嗣さんの次の言葉を黙って待っていた
「…良いかい?
柱が細くては重さも高さも支えられない。
では太ければ良いか?
いや、中が虫に喰われていればあっという間に潰れてしまう。
なら、健康で硬い丈夫な木を用意するか?
それでもダメだ。
ある程度のしなりがなければ地震や重さに耐えられないだろう。
これから何千年もこの本堂を、
この寺を、この祀られる神様の祠を守る為にはそれ相応の樹木が必要なんだ
今の日本には、中々手に入れられない。
手間も時間も金も掛かるだろう。
気候も四季様々なこの国で、天気だけじゃない、虫や、獣、強風、豪雨、熱波からも、必死に守り、育ててくれるおかげで、我々鳳城は仕事ができる。
そんな木々を市朗は育てているんだよ」
浩太郎は驚いていた
五十嵐林業について語る義嗣さんも
その話を聞いて、変わらずギラギラと
瞳を輝かせる晴臣の姿にもだ
親父は言葉数が、少ないほうだった
製品の良さも、苦労も、喜びも
俺も深くは追求しなかった
いつか継がなくてはならないなら
せめて、今は泥臭い父親の仕事を
考えたくないと思っていた
「やっぱり、市朗さんってかっけーよな!」
晴臣の言葉と表情に鼻の奥がツンとした
そうだ。俺の親父はかっこいいんだ
必死に努力を続けていて、
貴重な木材を育てて、加工し、出荷時している
こうやって1つの建物や家具や、小物に変わり、何かを支え、誰かを喜ばせているんだ
俺は、俺が一番恥ずかしかった
晴臣はいつも、うちにくれば俺の親父について周り、木々の話や苦労話まで聞き入っていた
こんなにも近くに凄いとカッコいいと言ってくれる友人がいるのに
「ああ…かっこいいんだよ」
そのあとは、本堂の中や、建築について
様々な話をきいた
帰ったら、親父に聞いてみよう
仕事の楽しさや大変さを、苦労話を
何だっていい、少しでも多く聞いてみたいと
胸が高鳴るのを感じた
あれから、俺は学業や部活動の片手間にはなるが家業を手伝っている
親父は無理に継がせるつもりはなかったと
笑っていたが、興味を持った俺を
それは嬉しそうに話す姿を見て
鳳城親子に感謝と尊敬の気持ちでいっぱいだった
義嗣さんの後ろをついて回る
グルグルと嫌な感情に心を支配されて
視線はずっと、自分の足元を見て歩いていた
ボフンッと立ち止まった義嗣さんのお尻に勢い良く顔をぶつけてしまう
突然の痛みに顔を抑えながら謝罪する
「浩太郎くん、あれ、見えるかな」
気にする様子も無く、
本堂の中を指さす義嗣さんの
指先へ、視線を移すと
大きな柱が何本も目に入る
俺は、横目で晴臣を見ると、ギラギラ瞳を輝かせている様に見えた
尊敬している自分の父親の職場はやはり興奮するんだろうか
そんなことを考えていた俺の頭を
義嗣さんはさらりと撫でると、
今度は本堂の天井を指差し
こちらの顔を覗き込む
「なぜ、この本堂は何千年も耐えられたと思う?」
小学生相手になんと困難な質問をするんだと思ったが、晴臣はさっきのギラギラした目を見開いて手を挙げていた
俺は小さく手を挙げて「組み立て型…とか?」と首を傾げた。
義嗣さんは笑顔のまま、うんうんと何度か頷いて、俺と晴臣の、頭を再度撫でると話を続けた
「ははッ。晴臣は後から聞こうね。
もちろん、様々な理由はあるさ。だが、今の私の問いの正解は柱だ。
この太い樹齢何百年にもなる大樹の柱のおかげだよ。」
俺は納得するようなしないような顔を浮かべて義嗣さんの次の言葉を黙って待っていた
「…良いかい?
柱が細くては重さも高さも支えられない。
では太ければ良いか?
いや、中が虫に喰われていればあっという間に潰れてしまう。
なら、健康で硬い丈夫な木を用意するか?
それでもダメだ。
ある程度のしなりがなければ地震や重さに耐えられないだろう。
これから何千年もこの本堂を、
この寺を、この祀られる神様の祠を守る為にはそれ相応の樹木が必要なんだ
今の日本には、中々手に入れられない。
手間も時間も金も掛かるだろう。
気候も四季様々なこの国で、天気だけじゃない、虫や、獣、強風、豪雨、熱波からも、必死に守り、育ててくれるおかげで、我々鳳城は仕事ができる。
そんな木々を市朗は育てているんだよ」
浩太郎は驚いていた
五十嵐林業について語る義嗣さんも
その話を聞いて、変わらずギラギラと
瞳を輝かせる晴臣の姿にもだ
親父は言葉数が、少ないほうだった
製品の良さも、苦労も、喜びも
俺も深くは追求しなかった
いつか継がなくてはならないなら
せめて、今は泥臭い父親の仕事を
考えたくないと思っていた
「やっぱり、市朗さんってかっけーよな!」
晴臣の言葉と表情に鼻の奥がツンとした
そうだ。俺の親父はかっこいいんだ
必死に努力を続けていて、
貴重な木材を育てて、加工し、出荷時している
こうやって1つの建物や家具や、小物に変わり、何かを支え、誰かを喜ばせているんだ
俺は、俺が一番恥ずかしかった
晴臣はいつも、うちにくれば俺の親父について周り、木々の話や苦労話まで聞き入っていた
こんなにも近くに凄いとカッコいいと言ってくれる友人がいるのに
「ああ…かっこいいんだよ」
そのあとは、本堂の中や、建築について
様々な話をきいた
帰ったら、親父に聞いてみよう
仕事の楽しさや大変さを、苦労話を
何だっていい、少しでも多く聞いてみたいと
胸が高鳴るのを感じた
あれから、俺は学業や部活動の片手間にはなるが家業を手伝っている
親父は無理に継がせるつもりはなかったと
笑っていたが、興味を持った俺を
それは嬉しそうに話す姿を見て
鳳城親子に感謝と尊敬の気持ちでいっぱいだった
0
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

理香は俺のカノジョじゃねえ
中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。
俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした
たっこ
BL
【加筆修正済】
7話完結の短編です。
中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。
二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。
「優、迎えに来たぞ」
でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。

笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる