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Season1 セオリー・S・マクダウェルの理不尽な理論
#024 幸せの数 Bonds
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「ごめんなさい。無神経な事を言いましたわ。でも反社会パーソナリティ障害の全ての方が犯した罪は、貴方個人とは何の関係も無いのですよ」
「ああ分かっている。だが世間はそうは見ない」
セオリーは言葉に詰まる。それを言われてしまっては返す言葉はもうない。
「……でも、セオリーのお陰で少しだけ楽になった。ありがとう」
暁の気遣いがセオリーは胸に染みる。
慰めるつもりが逆に慰められ、セオリーはとても歯痒く少しだけ嬉しくもある。
「暁……」
「セオリー……」
セオリーの脳裏に暁を愛おしく思う感情が溢れていき、彼女の理性を犯していく。
(私にもまだこんな感情があったとは驚きましたわ……)
ほぼ無意識に手を彼の胸へと持っていく。そして――
「二人ともよろしいか?」
酷く気不味そうな顔した凰華がドア枠を叩きながら現れる。折角の良い雰囲気に水を刺されセオリーは無性に腹が立ってくる。
それは凰華の言葉の節々から少し匂わせるわざとらしさがセオリーの鼻に付いた。
「いいえ、駄目です。これから2時間のご休憩を所望します」
「いや、充分休んだから大丈夫だ。行こう」
「はぁ?」
ここでのご休憩を本気で休むこととだと思っている暁の唐変木さにセオリーは呆れ返る。
自分の腕をそっと解き、平然と寝室を後にする暁にセオリーは言葉が出なかった。
「別に貴方達二人がどのような関係になっても一向に構わないのですが、私がいる横でおっぱじめようとするのはやめて貰えないでしょうか?」
凰華の言い分は最もなのだが、そんなことは一先ずセオリーにはどうでも良かった。
「……あの唐変木。ど直球で投げましたのに見逃しましたわ」
「それは辛うじて同情できますが、セオリー殿も癖球を投げるのも悪いんですよ」
肩を竦めて苦笑いを浮かべる凰華を後目に、暁から袖にされた腹立たしさにセオリーはベッドへと倒れ込み不貞腐れた。
凰華の『腹が空いては戦が出来ません』という鶴の一声で、今後の打ち合わせを兼ねて凰華が作った料理に一行は舌鼓を打つことになった。
凰華の手料理は古風で、ご飯、味噌汁、焼き魚、お新香という純和食という献立。
「なんだよ?」
「別に何でもありませんわ」
暁に対してそっぽをセオリーは向く。何で臍を曲げているか全く分かっていない彼の様子にセオリーは更に苛立ちを募らせていく。
「女に恥をかかせるような暁には一生分からないのでしょうから、もういいですわ」
「恥って……一体いつそんな場面があったんだ?」
先ほどの良い雰囲気だったのを全く覚えていないと言ったように本気で首を傾げる暁に、セオリーの苛立ちは頂点に達する。最早、鈍感を通り越して何かの病気ではないかと本気で検査してやろうかとさえ思った。
「決戦前夜にヒロインを抱かない主人公がどこにいますかっ!?」
「ヒロイン?」
漸く少しだけ合点がいったようだったが、暁の鈍感さはやはり精密検査が必要なようで、彼の口から出た言葉はセオリーの予想を斜め上行く言葉だった。
「ヒロインってお前……イロモノの間違いだろ?」
ぶちっとセオリーの中で何かが切れる音がした。
セオリーはこの時初めて、自分は怒りが頂点に達すると笑うということを知る。
「私をイロモノ扱いなんて良い度胸ですわね。暁……私を怒らせるとどうなるか見せてあげますわ」
不気味に微笑みながら詰め寄るセオリーとその彼女がなぜキレられているのか訳がわらかない暁との間へ凰華が割って入った。
「まぁまぁセオリー殿っ! どうかその辺でっ! さっきも言いましたが『腹が空いては戦が出来ぬ』と言いますし、とりあえず何か腹に入れて、何事もそれからにしましょう?」
セオリーは凰華から宥められたことで冷静さを取り戻し、納得は行かないまでもこの場は鞘を納めることにした。
一先ず事態の悪化は避けられ、改めて終始苦笑いを続ける凰華の手料理を食することになったわけだが――
「あり合わせで作ってみたのですが、どうでしょうか?」
「……あ、このお味噌汁美味しいですわ、でも……」
凰華の料理は見た目もさることながら、実に美味で、郷愁を誘う味だった
セオリーは日本に来てこんな形ではあったが日本食を味わえてこの上なかったが――
(ちょっと、あれなんなんですの?)
味よりも気を散らす目の前のモノにセオリーはテーブルの床で犬ご飯に貪る刹那に小声で話しかける。
(知らないよ。僕だって初めて見たんだ)
刹那も気になっていたようで、当の本人には聞かれないよう最低ボリュームで返す。
セオリーが気になっているのは、凰華のふりっふりのエプロン姿であった。エプロン自体は可愛らしい。しかしその素体が可愛いというよりカッコいい女性であるため、どうしても不釣り合いに見える。
(でも、見ている内になんだかこれはこれで有りなような気がしてきましたわ……)
そんなことを思考しながらセオリーはジーっと凰華を見つめていると不意に声を掛けられる。
「やはり口に合わなかったでしょうか?」
「い、いいえ、大変美味しいですわ。ですが、そのエプロン……可愛いですわねっ!」
それとなく伝えようとしたセオリーがやっとの思いで口に出来たのがそれだった。
凰華の心なしかウキウキしている様子から随分気に入っているようだったので似合っていないとは言えなかった。
「ありがとうございます。実はこれ、私のお気に入りなんです。大佐からはあまり良い印象は抱いていなかった……いいえ、湿っぽい話はやめましょう」
(大層言葉に詰まったことでしょうね……)
フリルの付いたエプロンに胸を躍らせる長身美形の娘に凰華の父親代わりであった如月大佐がさぞ渋い顔をしていただろうとセオリーは容易に想像が出来た。
「それでこれからどうしますか? セオリー殿は国に帰られた方がよろしいのでは?」
「それがそうもいきませんの。どうやらテロ準備罪の容疑が掛けられているのですわ」
セオリーは首を横に振る。元々帰る気も無い、容疑を晴らさない内には帰るに帰れない。
「そうすると各省庁のトップを始め、政界や警視庁上層部も既に奴の手が回っているのは確定だな。四課が調べた結果、そいつらもどうやら『アセンション』という薬を摂取しているらしい」
確か取り締まるべき『厚労省』のトップの連中もリストにはいたと暁は苦笑する。
既に『アセンション』は蔓延し、それらの人間はGADSの抜け穴を利用して利権や利益を得ているという事だった。
世は違えど歴史上、そういったことは幾度となくあり珍しくも何ともない。
利己性というものが遺伝子の本質である以上、セオリーは心底軽蔑しない。しかし実に動物的ではあるとは思ってはいる。
「それに且又の計画を止めなければなりません」
セオリーは全員に陽葵から聞き出した計画について話をする。
エロジオーネファンタズマというARイベントが7日後に行われる。
そこでは『アセンション』を投与され、遺伝子強化されたプレイヤーによる暴動が起きるとセオリーは予想していた。
「未曽有の混乱に陥ると思います。しかし私は且又の目的がそれとは別のところにあると思っています」
セオリーは人を影から操る巧妙な且又にしては、計画が少々単純すぎるような気がしていた。
「俺もそう思う。奴はどうも混乱していく人間の姿を楽しんでいるように思える」
「貴方達の言う通り、意図的に噂を流布するような巧妙な奴です。私もそれだけで終わるとは思えない」
『そうだね。僕とレーツェルで7日の間に情報を集めてみるよ。今のところ外へ出ても怪しまれないのは僕達だけだからね』
『作為的に悪意あるコミュニケーションアプリやSNSをばら撒く奴だもん。徹底的に調べてみるよ』
一旦、顔の割れていない刹那とレーツェルが情報収集をする方向へ固まる一行、しかしセオリーだけはレーツェルの言葉に妙な引っ掛かりを抱く。
「ちょっと待ってください。レーツェル」
結論が出て自分がやるべきことに取り掛かろうと声を上げた皆をセオリーは引き留めた。
(悪意ある……アプリ……SNS……噂……レトロウイルス……政界……リスト……まさか……)
皆が首を傾げる中、思案するにつれ、セオリーの脳裏で何かが閃いた。
混乱の後、陥る現象について推測を重ねる内に、セオリーは胃がまるで石ように固くなっていくような感覚を覚える。
「暁、ちょっとよろしいですか? 四課が裏をとったという『アセンション』を摂取していると思われる人物のリストって、今どこにあるのです?」
「ああ、それなら課長が持っているから、現在課長は警視庁に幽閉されている」
自分の予想が正しければ且又はとんでもないことを目論んでいる。
「どうされました? セオリー殿。顔が青いですよ」
凰華の言葉にセオリーは自分の顔が険しくなっていることに気付く。
ふと見れば掌にも汗が滲んで、心臓も激しく脈を打っている。
(私自身、あまり怖がることなんてなかったですのに、珍しいこともありますわね)
見上げると暁の顔が目に入り、自分もまた暁と同じように一人で抱え込もうとしていることに気付き失笑する。
「なんだよ。人の顔を見て笑うんじゃねーよ」
「ごめんなさい。他意はないのですわ」
孤独を愛すると自分で言っておきながら、自分の周りに頼れる人間がいたことを知り、思わず自分は何て幸せな者なのだろうとセオリーはつい嬉しくなってしまった。
(幸せを数えたら、あなたはすぐ幸せになれる……か、その通りですわね)
ふっと溜息を付きセオリーは腹を括る。
「恐らく且又の真の狙いは、マインウイルスによるマインドハザードを起こすことだと思われますわ」
且又の目的はパンデミックや災害の裏で必ずと言っていいほど起こる小規模の精神の災害を大規模で起こすこと。
それがセオリーの導き出した答えだった。
「ああ分かっている。だが世間はそうは見ない」
セオリーは言葉に詰まる。それを言われてしまっては返す言葉はもうない。
「……でも、セオリーのお陰で少しだけ楽になった。ありがとう」
暁の気遣いがセオリーは胸に染みる。
慰めるつもりが逆に慰められ、セオリーはとても歯痒く少しだけ嬉しくもある。
「暁……」
「セオリー……」
セオリーの脳裏に暁を愛おしく思う感情が溢れていき、彼女の理性を犯していく。
(私にもまだこんな感情があったとは驚きましたわ……)
ほぼ無意識に手を彼の胸へと持っていく。そして――
「二人ともよろしいか?」
酷く気不味そうな顔した凰華がドア枠を叩きながら現れる。折角の良い雰囲気に水を刺されセオリーは無性に腹が立ってくる。
それは凰華の言葉の節々から少し匂わせるわざとらしさがセオリーの鼻に付いた。
「いいえ、駄目です。これから2時間のご休憩を所望します」
「いや、充分休んだから大丈夫だ。行こう」
「はぁ?」
ここでのご休憩を本気で休むこととだと思っている暁の唐変木さにセオリーは呆れ返る。
自分の腕をそっと解き、平然と寝室を後にする暁にセオリーは言葉が出なかった。
「別に貴方達二人がどのような関係になっても一向に構わないのですが、私がいる横でおっぱじめようとするのはやめて貰えないでしょうか?」
凰華の言い分は最もなのだが、そんなことは一先ずセオリーにはどうでも良かった。
「……あの唐変木。ど直球で投げましたのに見逃しましたわ」
「それは辛うじて同情できますが、セオリー殿も癖球を投げるのも悪いんですよ」
肩を竦めて苦笑いを浮かべる凰華を後目に、暁から袖にされた腹立たしさにセオリーはベッドへと倒れ込み不貞腐れた。
凰華の『腹が空いては戦が出来ません』という鶴の一声で、今後の打ち合わせを兼ねて凰華が作った料理に一行は舌鼓を打つことになった。
凰華の手料理は古風で、ご飯、味噌汁、焼き魚、お新香という純和食という献立。
「なんだよ?」
「別に何でもありませんわ」
暁に対してそっぽをセオリーは向く。何で臍を曲げているか全く分かっていない彼の様子にセオリーは更に苛立ちを募らせていく。
「女に恥をかかせるような暁には一生分からないのでしょうから、もういいですわ」
「恥って……一体いつそんな場面があったんだ?」
先ほどの良い雰囲気だったのを全く覚えていないと言ったように本気で首を傾げる暁に、セオリーの苛立ちは頂点に達する。最早、鈍感を通り越して何かの病気ではないかと本気で検査してやろうかとさえ思った。
「決戦前夜にヒロインを抱かない主人公がどこにいますかっ!?」
「ヒロイン?」
漸く少しだけ合点がいったようだったが、暁の鈍感さはやはり精密検査が必要なようで、彼の口から出た言葉はセオリーの予想を斜め上行く言葉だった。
「ヒロインってお前……イロモノの間違いだろ?」
ぶちっとセオリーの中で何かが切れる音がした。
セオリーはこの時初めて、自分は怒りが頂点に達すると笑うということを知る。
「私をイロモノ扱いなんて良い度胸ですわね。暁……私を怒らせるとどうなるか見せてあげますわ」
不気味に微笑みながら詰め寄るセオリーとその彼女がなぜキレられているのか訳がわらかない暁との間へ凰華が割って入った。
「まぁまぁセオリー殿っ! どうかその辺でっ! さっきも言いましたが『腹が空いては戦が出来ぬ』と言いますし、とりあえず何か腹に入れて、何事もそれからにしましょう?」
セオリーは凰華から宥められたことで冷静さを取り戻し、納得は行かないまでもこの場は鞘を納めることにした。
一先ず事態の悪化は避けられ、改めて終始苦笑いを続ける凰華の手料理を食することになったわけだが――
「あり合わせで作ってみたのですが、どうでしょうか?」
「……あ、このお味噌汁美味しいですわ、でも……」
凰華の料理は見た目もさることながら、実に美味で、郷愁を誘う味だった
セオリーは日本に来てこんな形ではあったが日本食を味わえてこの上なかったが――
(ちょっと、あれなんなんですの?)
味よりも気を散らす目の前のモノにセオリーはテーブルの床で犬ご飯に貪る刹那に小声で話しかける。
(知らないよ。僕だって初めて見たんだ)
刹那も気になっていたようで、当の本人には聞かれないよう最低ボリュームで返す。
セオリーが気になっているのは、凰華のふりっふりのエプロン姿であった。エプロン自体は可愛らしい。しかしその素体が可愛いというよりカッコいい女性であるため、どうしても不釣り合いに見える。
(でも、見ている内になんだかこれはこれで有りなような気がしてきましたわ……)
そんなことを思考しながらセオリーはジーっと凰華を見つめていると不意に声を掛けられる。
「やはり口に合わなかったでしょうか?」
「い、いいえ、大変美味しいですわ。ですが、そのエプロン……可愛いですわねっ!」
それとなく伝えようとしたセオリーがやっとの思いで口に出来たのがそれだった。
凰華の心なしかウキウキしている様子から随分気に入っているようだったので似合っていないとは言えなかった。
「ありがとうございます。実はこれ、私のお気に入りなんです。大佐からはあまり良い印象は抱いていなかった……いいえ、湿っぽい話はやめましょう」
(大層言葉に詰まったことでしょうね……)
フリルの付いたエプロンに胸を躍らせる長身美形の娘に凰華の父親代わりであった如月大佐がさぞ渋い顔をしていただろうとセオリーは容易に想像が出来た。
「それでこれからどうしますか? セオリー殿は国に帰られた方がよろしいのでは?」
「それがそうもいきませんの。どうやらテロ準備罪の容疑が掛けられているのですわ」
セオリーは首を横に振る。元々帰る気も無い、容疑を晴らさない内には帰るに帰れない。
「そうすると各省庁のトップを始め、政界や警視庁上層部も既に奴の手が回っているのは確定だな。四課が調べた結果、そいつらもどうやら『アセンション』という薬を摂取しているらしい」
確か取り締まるべき『厚労省』のトップの連中もリストにはいたと暁は苦笑する。
既に『アセンション』は蔓延し、それらの人間はGADSの抜け穴を利用して利権や利益を得ているという事だった。
世は違えど歴史上、そういったことは幾度となくあり珍しくも何ともない。
利己性というものが遺伝子の本質である以上、セオリーは心底軽蔑しない。しかし実に動物的ではあるとは思ってはいる。
「それに且又の計画を止めなければなりません」
セオリーは全員に陽葵から聞き出した計画について話をする。
エロジオーネファンタズマというARイベントが7日後に行われる。
そこでは『アセンション』を投与され、遺伝子強化されたプレイヤーによる暴動が起きるとセオリーは予想していた。
「未曽有の混乱に陥ると思います。しかし私は且又の目的がそれとは別のところにあると思っています」
セオリーは人を影から操る巧妙な且又にしては、計画が少々単純すぎるような気がしていた。
「俺もそう思う。奴はどうも混乱していく人間の姿を楽しんでいるように思える」
「貴方達の言う通り、意図的に噂を流布するような巧妙な奴です。私もそれだけで終わるとは思えない」
『そうだね。僕とレーツェルで7日の間に情報を集めてみるよ。今のところ外へ出ても怪しまれないのは僕達だけだからね』
『作為的に悪意あるコミュニケーションアプリやSNSをばら撒く奴だもん。徹底的に調べてみるよ』
一旦、顔の割れていない刹那とレーツェルが情報収集をする方向へ固まる一行、しかしセオリーだけはレーツェルの言葉に妙な引っ掛かりを抱く。
「ちょっと待ってください。レーツェル」
結論が出て自分がやるべきことに取り掛かろうと声を上げた皆をセオリーは引き留めた。
(悪意ある……アプリ……SNS……噂……レトロウイルス……政界……リスト……まさか……)
皆が首を傾げる中、思案するにつれ、セオリーの脳裏で何かが閃いた。
混乱の後、陥る現象について推測を重ねる内に、セオリーは胃がまるで石ように固くなっていくような感覚を覚える。
「暁、ちょっとよろしいですか? 四課が裏をとったという『アセンション』を摂取していると思われる人物のリストって、今どこにあるのです?」
「ああ、それなら課長が持っているから、現在課長は警視庁に幽閉されている」
自分の予想が正しければ且又はとんでもないことを目論んでいる。
「どうされました? セオリー殿。顔が青いですよ」
凰華の言葉にセオリーは自分の顔が険しくなっていることに気付く。
ふと見れば掌にも汗が滲んで、心臓も激しく脈を打っている。
(私自身、あまり怖がることなんてなかったですのに、珍しいこともありますわね)
見上げると暁の顔が目に入り、自分もまた暁と同じように一人で抱え込もうとしていることに気付き失笑する。
「なんだよ。人の顔を見て笑うんじゃねーよ」
「ごめんなさい。他意はないのですわ」
孤独を愛すると自分で言っておきながら、自分の周りに頼れる人間がいたことを知り、思わず自分は何て幸せな者なのだろうとセオリーはつい嬉しくなってしまった。
(幸せを数えたら、あなたはすぐ幸せになれる……か、その通りですわね)
ふっと溜息を付きセオリーは腹を括る。
「恐らく且又の真の狙いは、マインウイルスによるマインドハザードを起こすことだと思われますわ」
且又の目的はパンデミックや災害の裏で必ずと言っていいほど起こる小規模の精神の災害を大規模で起こすこと。
それがセオリーの導き出した答えだった。
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