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Season1 セオリー・S・マクダウェルの理不尽な理論
#013 共同戦線 Fivesome
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地下に装設された管理棟と思われる一室が凰華たちの潜伏先。
数十台のサーバーが併設されており、セオリー達は招かれるや緑色の髪を二つ結びにした女の子のホログラムアバターが出迎えた。
『よくもレーツェルのボディを壊したなっ! お前たち絶対に許さないからっ!』
そのアバターは自分の事をレーツェルと名乗り、膨れ面でセオリーの前に立ちはだかる。
(緻密で繊細な動き、これが本当にAIなの?)
慎ましい胸と150cmに満たない外見から設定年齢は15歳~16歳と言ったところ。
飾り気のない白のイブニングドレスを着ていて、ある意味で特殊趣味性の高い外見をしている。
アバターの姿よりもセオリーは感情の表現の豊かさや、人間味溢れる細かい仕草に好奇心を擽られた。
「貴女、レーツェルと言うのね。私はセオリー・S・マクダウェル。もしかして貴女が戦車の操縦や、街頭カメラの映像を書き換えたのかしら?」
『そうだよっ! 凄いでしょっ!』
えっへんと得意気に腰に手を当てレーツェルは胸を張る。その高度なAIの行動にセオリーは驚嘆を隠せない。
「凄いですわ。貴女、嘘が付けるのですのね」
『嘘じゃなーいっ! レーツェルが全部やったのーっ!』
両手を振り上げて憤慨する彼女の思考と動作は、セオリーの好奇心を惹き付けて止まない。
(アラン・チューリングも顔負けですわ。人間そのものじゃありませんか……この子も実に興味深いですわ。暫く会話の中で時々チューリングテストを仕掛けてみましょう)
『よすんだ。レーツェル。すまないセオリー。オウカ、時間もあまりない、早々に情報交換へ移りた――いっ!」
「あら、格好つけちゃって可愛いっ!」
レーツェルを宥めるように寄り添っていく刹那の可愛さに、セオリーは堪らず顎下から首回りに掛けてモフる。
『や、やめてっ! 話が進まないんだよっ!』
余程、気持ちいいのか刹那の声と顔が緩んでいく。
犬にもハラスメントがあるとすれば、こういう弄りもハラスメントというのかもしれない。
『やめてっ!』
流石にやり過ぎたようで刹那から吠えられると、セオリーは肩を竦め、残念そうに手を放す。
「ごめんなさい。つい可愛かったものですから……」
「凄いな。セオリー殿は……あの刹那が懐くなんて」
「あらそう? ただ私は動物好きなだけですわ」
『懐いてなんかいないっ!』
「ツンデレですわね」
『違うっ!』
「無駄話はその辺にしてさっさと始めろ、お前たちは一体何者なんだ?」
セオリーが親睦を深めようとしていたところに、業を煮やした暁が割って入ってきた。
野暮な暁にセオリーは怪訝な眼差しを向ける。
「仕方がありませんわね。でも話は彼女の肩の治療をしながらでも構いませんわよね?」
と、やさしくセオリーはオウカの肩に触れる。
「――っ!」
そこは暁が彼女を取り押さえているときに極めていた箇所。触れただけで顔を引きつらせるところから見て、相当痛めていることは明白だった。
レーツェルの本体の冷却ファンが轟轟と唸る室内。9個のホログラムウインドウが展開されて、周辺の街頭カメラの映像が映し出されている。
「元々、ここは大麻栽培に使用されていた地下倉庫だったが、数年前に廃棄され、現在は私のセーフハウスになっている」
凰華の肩は骨に罅が入り腱板と靭帯も痛めていて、セオリーはじろりと暁を睨む。
「暁、これは女性に対して過ぎですわよ」
肩を竦めている暁を後目に一先ずセオリーは応急処置で包帯を巻いて固定をする。
もちろん暁には背を向けていてもらった。
(この方にもオントロジーエコノミクスを転写してみましょう。その方が治癒も早いですもの……あら? この方……)
転写の際、セオリーは飽くまでも不可抗力で採取してしまったDNAデータに興味深いものを見つける。
「あなたもしかしてSRY遺伝子転座のXY型女性ですの?」
「……え? ああ、よく分かりましたね。流石遺伝学者です。確かに私はスワイヤー症候群です」
不謹慎ながら珍しい個体に胸が躍りそうになるのをぐっと堪えた。多分それは凰華にとってコンプレックスになっているに違いなかったからだ。
(生殖器は女性ですが、Y染色体があるからと言って男性だと決めつける社会的ハラスメントは大にしてありますものね……)
「もしよろしければ、あなたも私の実験体になりませんこと? そしたら遺伝子治療してあげますわ。斯く言うそこに突っ立っている暁も私の実験体になっていますわ」
不本意ながらと首を竦めて見せる暁。
「こいつが筋肉ダルマになる力をくれるらしい」
「筋肉ダルマ……ですってっ!」
顔を真っ赤にしてむくれるセオリーを後目に、暁は続けて「因みにクーリングオフも無いそうだ」と言い放った。
「それはなかなか魅力的ですが、これでも私は自分の身体を気に入っているので、また別の機会にしましょう」
手当てが終わった凰華は慎ましく「ありがとう」とセオリーに礼を言うと、半脱ぎしていたレザースーツに袖を通す。
長い髪をポニーテールに結いあげるようとしていたが肩が上がらないので、セオリーは手伝ってあげた。
「私たちは銀髪の男の捜索という共通の目的で行動している。私は育ての親である如月黎次大佐の汚名を晴らすため。刹那とレーツェルは主人であったGADSの設計者の一人、三笠武明博士の死の真相を知るため」
「ちょっと待って下さいませ、三笠博士亡くなられていたのですの?」
「痛いです。セオリー殿」
「ああ、ごめんなさい」
衝撃の事実を知りセオリーのヘアゴムを引っ張る手につい力が入ってしまった。
三笠武明は人工知能の研究者としてのパイオニアだった人で、セオリーも畑違いで阿あったが彼の書いた論文は発表の度に必ず読むほどリスペクトしていた。
(惜しい方を亡くしましたわね。これは……)
晩年は人の脳内の神経回路網、ニューラルネットワークをベースにした集積回路やプログラミングの研究をしていた。
「ちょうど去年の8月。原因は脳卒中でした」
『違うっ! 博士は健康には人一倍気を使っていたんだっ! 食事も栄養バランスに気を付けていたっ! それなのに……』と吠える刹那。
『健康チェックはレーツェルがちゃんとやっていたのっ! 食事だってレーツェルが体調に合わせたメニューを……それなのに、みんなレーツェルの不具合だって決めつけて……』
と、殺人犯に仕立て上げられたと涙を流すレーツェル。
近年、調理用アームの普及によりプロ顔負けの食事を作る事が可能になっている。
レーツェルはそれを操作して博士と刹那の食事を作っていたという。
「私は大佐が将補への昇進の際に行われた適性検査に疑いを持ち、大佐は変わる筈の無い大佐昇格時のDNAデータが変わっていた為、将補へは昇格出来なかった。それどころか……」
再審の申出や不当であると訴え出ていた大佐に対して、大佐昇格時のDNAデータの改竄をしたと決めつけて解雇した。
「ですが、大佐は以前から何かを掴んでいたらしいく解雇された次の日、自殺に見せかけられて殺されました。あくまでも警察ではDNAシーケンスへの悲観のあまり自殺したと判断されましたが……」
凰華と彼らが出会ったのは、大佐の死について疑問を持ちながら遺品を整理しているとき、銀髪の男に纏わる個人的な調査資料を見つけ、その資料の中に三笠博士の名前が出てきたという。
「私は三笠博士に会いに行ったのだが、その時が丁度、博士が救急車で運ばれるときだったのだ。そして彼らから話を聞けば、その死の前日に銀髪の男が会いに来たというらしい……」
「小耳程度には挟んでいたが、そんな裏があったとはな……」
壁に持たれて掛かっていた暁は天井を仰いでふっと溜息を漏らす。
「それでその男の名前は分かっているのか?」
「ああ、名前は『且又乍而』という。恐らく偽名だろう」
凰華の養父、如月黎次大佐は且又という男を個人的に追っていた。
「且又は政府内部の官僚、大臣や大企業の代表取締役、CEO。各種宗教団体の教祖に多数の人物に接点がありながらその正体が一切掴めない。だが――」
且又と接点がある者は必ずと言っていい程、成功を収めているという共通点が存在するという。
「それでこれからどういたしますの? その且又という男の行方は掴めていますの?」
「ああ、それだが……貴女達がレーツェルと交戦中に、CCC内で岐部殿を通じ、穏田殿と話をしたのだが、捜査協力をすることになった。明日公安部へ出頭すると約束した。そして男の行方だが……」
肩を庇う様に凰華は立ち上がり、デスクの上に整頓されていた一冊のファイルを取り出し暁へ手渡す。
「何だ? これは」
「大佐の且又に関する資料と、一応巧綾会の事務所のPC内のデータがある」
直に目を通し始めて、数ページ捲ると突如、手が止まり暁は眉を顰める。
「何が書いてありましたの?」
「……これに書かれているのは本当か?」
「ああ、恐らくな。専らPCの中のデータは削除されたものの断片を繋ぎ合わせたものだ」
続けて凰華は待ち構えていた組合員に襲撃を受け、正当防衛の末止む無く殺したことを自白する。
だが事が終わり、PCを調べたが既にデータは削除されていて、辛うじて復元できたものをファイルにした。
「私にも見せてくださいな」
セオリーは暁から少々乱暴に手渡されたファイルへ目を通す。そのデータの内容は実に意外なものだった。
「あの男は現在、私立霜陵学園に勤務しているらしい。そして7月27日に薬の取引があるらしいことだけは分かった」
――7月27日、2:00 江東区豊洲●●――
ファイルの一枚に江東区豊洲の住所が書かれていた。
「それが取引の場所。江東区豊洲にある取り壊し予定のタワーマンションだ」
それは現状銀髪の男、『且又乍而』に繋がると思われる唯一の尻尾だった。
数十台のサーバーが併設されており、セオリー達は招かれるや緑色の髪を二つ結びにした女の子のホログラムアバターが出迎えた。
『よくもレーツェルのボディを壊したなっ! お前たち絶対に許さないからっ!』
そのアバターは自分の事をレーツェルと名乗り、膨れ面でセオリーの前に立ちはだかる。
(緻密で繊細な動き、これが本当にAIなの?)
慎ましい胸と150cmに満たない外見から設定年齢は15歳~16歳と言ったところ。
飾り気のない白のイブニングドレスを着ていて、ある意味で特殊趣味性の高い外見をしている。
アバターの姿よりもセオリーは感情の表現の豊かさや、人間味溢れる細かい仕草に好奇心を擽られた。
「貴女、レーツェルと言うのね。私はセオリー・S・マクダウェル。もしかして貴女が戦車の操縦や、街頭カメラの映像を書き換えたのかしら?」
『そうだよっ! 凄いでしょっ!』
えっへんと得意気に腰に手を当てレーツェルは胸を張る。その高度なAIの行動にセオリーは驚嘆を隠せない。
「凄いですわ。貴女、嘘が付けるのですのね」
『嘘じゃなーいっ! レーツェルが全部やったのーっ!』
両手を振り上げて憤慨する彼女の思考と動作は、セオリーの好奇心を惹き付けて止まない。
(アラン・チューリングも顔負けですわ。人間そのものじゃありませんか……この子も実に興味深いですわ。暫く会話の中で時々チューリングテストを仕掛けてみましょう)
『よすんだ。レーツェル。すまないセオリー。オウカ、時間もあまりない、早々に情報交換へ移りた――いっ!」
「あら、格好つけちゃって可愛いっ!」
レーツェルを宥めるように寄り添っていく刹那の可愛さに、セオリーは堪らず顎下から首回りに掛けてモフる。
『や、やめてっ! 話が進まないんだよっ!』
余程、気持ちいいのか刹那の声と顔が緩んでいく。
犬にもハラスメントがあるとすれば、こういう弄りもハラスメントというのかもしれない。
『やめてっ!』
流石にやり過ぎたようで刹那から吠えられると、セオリーは肩を竦め、残念そうに手を放す。
「ごめんなさい。つい可愛かったものですから……」
「凄いな。セオリー殿は……あの刹那が懐くなんて」
「あらそう? ただ私は動物好きなだけですわ」
『懐いてなんかいないっ!』
「ツンデレですわね」
『違うっ!』
「無駄話はその辺にしてさっさと始めろ、お前たちは一体何者なんだ?」
セオリーが親睦を深めようとしていたところに、業を煮やした暁が割って入ってきた。
野暮な暁にセオリーは怪訝な眼差しを向ける。
「仕方がありませんわね。でも話は彼女の肩の治療をしながらでも構いませんわよね?」
と、やさしくセオリーはオウカの肩に触れる。
「――っ!」
そこは暁が彼女を取り押さえているときに極めていた箇所。触れただけで顔を引きつらせるところから見て、相当痛めていることは明白だった。
レーツェルの本体の冷却ファンが轟轟と唸る室内。9個のホログラムウインドウが展開されて、周辺の街頭カメラの映像が映し出されている。
「元々、ここは大麻栽培に使用されていた地下倉庫だったが、数年前に廃棄され、現在は私のセーフハウスになっている」
凰華の肩は骨に罅が入り腱板と靭帯も痛めていて、セオリーはじろりと暁を睨む。
「暁、これは女性に対して過ぎですわよ」
肩を竦めている暁を後目に一先ずセオリーは応急処置で包帯を巻いて固定をする。
もちろん暁には背を向けていてもらった。
(この方にもオントロジーエコノミクスを転写してみましょう。その方が治癒も早いですもの……あら? この方……)
転写の際、セオリーは飽くまでも不可抗力で採取してしまったDNAデータに興味深いものを見つける。
「あなたもしかしてSRY遺伝子転座のXY型女性ですの?」
「……え? ああ、よく分かりましたね。流石遺伝学者です。確かに私はスワイヤー症候群です」
不謹慎ながら珍しい個体に胸が躍りそうになるのをぐっと堪えた。多分それは凰華にとってコンプレックスになっているに違いなかったからだ。
(生殖器は女性ですが、Y染色体があるからと言って男性だと決めつける社会的ハラスメントは大にしてありますものね……)
「もしよろしければ、あなたも私の実験体になりませんこと? そしたら遺伝子治療してあげますわ。斯く言うそこに突っ立っている暁も私の実験体になっていますわ」
不本意ながらと首を竦めて見せる暁。
「こいつが筋肉ダルマになる力をくれるらしい」
「筋肉ダルマ……ですってっ!」
顔を真っ赤にしてむくれるセオリーを後目に、暁は続けて「因みにクーリングオフも無いそうだ」と言い放った。
「それはなかなか魅力的ですが、これでも私は自分の身体を気に入っているので、また別の機会にしましょう」
手当てが終わった凰華は慎ましく「ありがとう」とセオリーに礼を言うと、半脱ぎしていたレザースーツに袖を通す。
長い髪をポニーテールに結いあげるようとしていたが肩が上がらないので、セオリーは手伝ってあげた。
「私たちは銀髪の男の捜索という共通の目的で行動している。私は育ての親である如月黎次大佐の汚名を晴らすため。刹那とレーツェルは主人であったGADSの設計者の一人、三笠武明博士の死の真相を知るため」
「ちょっと待って下さいませ、三笠博士亡くなられていたのですの?」
「痛いです。セオリー殿」
「ああ、ごめんなさい」
衝撃の事実を知りセオリーのヘアゴムを引っ張る手につい力が入ってしまった。
三笠武明は人工知能の研究者としてのパイオニアだった人で、セオリーも畑違いで阿あったが彼の書いた論文は発表の度に必ず読むほどリスペクトしていた。
(惜しい方を亡くしましたわね。これは……)
晩年は人の脳内の神経回路網、ニューラルネットワークをベースにした集積回路やプログラミングの研究をしていた。
「ちょうど去年の8月。原因は脳卒中でした」
『違うっ! 博士は健康には人一倍気を使っていたんだっ! 食事も栄養バランスに気を付けていたっ! それなのに……』と吠える刹那。
『健康チェックはレーツェルがちゃんとやっていたのっ! 食事だってレーツェルが体調に合わせたメニューを……それなのに、みんなレーツェルの不具合だって決めつけて……』
と、殺人犯に仕立て上げられたと涙を流すレーツェル。
近年、調理用アームの普及によりプロ顔負けの食事を作る事が可能になっている。
レーツェルはそれを操作して博士と刹那の食事を作っていたという。
「私は大佐が将補への昇進の際に行われた適性検査に疑いを持ち、大佐は変わる筈の無い大佐昇格時のDNAデータが変わっていた為、将補へは昇格出来なかった。それどころか……」
再審の申出や不当であると訴え出ていた大佐に対して、大佐昇格時のDNAデータの改竄をしたと決めつけて解雇した。
「ですが、大佐は以前から何かを掴んでいたらしいく解雇された次の日、自殺に見せかけられて殺されました。あくまでも警察ではDNAシーケンスへの悲観のあまり自殺したと判断されましたが……」
凰華と彼らが出会ったのは、大佐の死について疑問を持ちながら遺品を整理しているとき、銀髪の男に纏わる個人的な調査資料を見つけ、その資料の中に三笠博士の名前が出てきたという。
「私は三笠博士に会いに行ったのだが、その時が丁度、博士が救急車で運ばれるときだったのだ。そして彼らから話を聞けば、その死の前日に銀髪の男が会いに来たというらしい……」
「小耳程度には挟んでいたが、そんな裏があったとはな……」
壁に持たれて掛かっていた暁は天井を仰いでふっと溜息を漏らす。
「それでその男の名前は分かっているのか?」
「ああ、名前は『且又乍而』という。恐らく偽名だろう」
凰華の養父、如月黎次大佐は且又という男を個人的に追っていた。
「且又は政府内部の官僚、大臣や大企業の代表取締役、CEO。各種宗教団体の教祖に多数の人物に接点がありながらその正体が一切掴めない。だが――」
且又と接点がある者は必ずと言っていい程、成功を収めているという共通点が存在するという。
「それでこれからどういたしますの? その且又という男の行方は掴めていますの?」
「ああ、それだが……貴女達がレーツェルと交戦中に、CCC内で岐部殿を通じ、穏田殿と話をしたのだが、捜査協力をすることになった。明日公安部へ出頭すると約束した。そして男の行方だが……」
肩を庇う様に凰華は立ち上がり、デスクの上に整頓されていた一冊のファイルを取り出し暁へ手渡す。
「何だ? これは」
「大佐の且又に関する資料と、一応巧綾会の事務所のPC内のデータがある」
直に目を通し始めて、数ページ捲ると突如、手が止まり暁は眉を顰める。
「何が書いてありましたの?」
「……これに書かれているのは本当か?」
「ああ、恐らくな。専らPCの中のデータは削除されたものの断片を繋ぎ合わせたものだ」
続けて凰華は待ち構えていた組合員に襲撃を受け、正当防衛の末止む無く殺したことを自白する。
だが事が終わり、PCを調べたが既にデータは削除されていて、辛うじて復元できたものをファイルにした。
「私にも見せてくださいな」
セオリーは暁から少々乱暴に手渡されたファイルへ目を通す。そのデータの内容は実に意外なものだった。
「あの男は現在、私立霜陵学園に勤務しているらしい。そして7月27日に薬の取引があるらしいことだけは分かった」
――7月27日、2:00 江東区豊洲●●――
ファイルの一枚に江東区豊洲の住所が書かれていた。
「それが取引の場所。江東区豊洲にある取り壊し予定のタワーマンションだ」
それは現状銀髪の男、『且又乍而』に繋がると思われる唯一の尻尾だった。
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