12 / 35
Season1 セオリー・S・マクダウェルの理不尽な理論
#012 地下に潜む虎狼 Trial
しおりを挟む
煌々と照明が差す地下の空間、冷たいコンクリートの柱とコンテナの密林に蠅が犇めくような騒々しい空調機の音が充満している。
様子からして調圧水槽にも見える。
「大麻はなさそうですわね」
「ああ、罠のもなさそう――」
真上から降り注ぐ殺気にいち早く察知したセオリーと暁は反射的に身を翻した。
「お前かっ! レザースーツの女」
殺気の正体は黒いレザースーツと黒いバイク用ヘルメットを被った女。身長は170cmを優に越えている。
女の身体は見事に鍛え抜かれていて、張り詰めるレザースーツが精悍な肉体を艶かしく強調し、言葉を失うほどの筋肉美を作り出していた。
着地して刹那、暁へ襲い掛かる。
「――っ!」
隙を付かれ暁は愛銃を蹴とばされた。
驚く暇さえ与えず、女の蹴りの応酬を受け、瞬く間に暁は防戦へと立たされる。
「ぐっ――!!」
女の上段回し蹴りが、ガードした右前腕に突き刺さり、暁は苦悶する。
「暁っ!」
加勢しよう駆け寄るセオリーは突如背後に人間とは違う生き物の殺気を感じて、咄嗟に身を伏せた。
「誰ですのっ!?」
眼前に現れたのは一匹の灰色狼。その全長2メートルは優に超えている。
猛々しい鈍色の毛並み、警戒感を露にした鋭い金色の眼光がセオリーに容赦なく突き刺さる。
「……シベリア狼ですわね」
セオリーだけを一点見つめ猛然と灰色狼は唸り声を上げ威嚇してくる。彼女もまた狼だけを見つめて冷静に分析を開始する。
(これは恐怖から転じて来ているものですわね……)
セオリーは物心ついた時からアフリカのサバンナの動物と触れ合ってきた野生児である。
そのため彼女は動物の機微を直感的に感じ取ることが出来るようになっていた。
(でも何か妙ですわね? この子……なんというかとても人間っぽいですわね)
狼の瞳をじっと観察したセオリーは恐怖に彩られているというより、恐怖を押し殺して立ち向かっているようなそんな人間味を感じてならなかった。
「……よろしいですわ。一緒に遊びましょう?」
徐に立ち上がったセオリーはまるで彼を抱き止めるかのように大きく両手を広げて、満面の笑みを向けた。
無防備に首元を晒し、間髪入れず襲い掛かってくるだろうとセオリーは予期していたのだが、彼女の想像を超える出来事が起きた。
『遊ぶだとっ!? 貴様っ!? ふざけているのかっ!?』
「えっ!?」
どこからともなく聞こえてくる男の子の音声。一体どこからとセオリーは周囲を見渡すが、やはり自分と灰色狼しかいない。黒いレザースーツの女と格闘している暁は無論あり得ない。
(あの首輪もしかして……)
セオリーは灰色狼の首に、鈍い銀色の首輪が煌いていることに気付く。その首元にはスピーカーのようなものが下がっているように見えた。
「まさか……今喋ったのはもしかして貴方?」
『そうだっ! 何か文句でもあるのかっ! 一体お前たち……は……』
突如、灰色狼は唸るのをやめて、歯をむき出しにして怯えたように後ろへ後退る。
その歩調に合わせるようにしてセオリーは段々と灰色狼へと近寄っていった。
『何だっ!? その顔はっ! やめろっ! こっちくんなよっ!』
先ほどまで威厳ある成人男性のようだった灰色狼の声は、まるで幽霊を見た子供のような怯えた声へと変わる。
灰色狼が怯えるのも無理はない。セオリーの顔は猟奇的な微笑みを向けていたからだ。
「じ、実に興味深いですわっ! これを発明した人は天才ですわっ! 動物とお話しすることが子供の時からの夢でしたのっ! まるで6歳の時に読んだ『ドリトル先生アフリカゆき』のドリトル先生になった気分ですわっ!」
死の恐怖とは異なる身の危険を感じた狼はセオリーから一目散に走って逃げた。
映画の『Dr.ドリトル』ではなく原作をチョイスする当たり意外にもセオリーは本の虫だったりする。
「逃がしませんわっ! 貴方は私の実験体二号にして差し上げますわっ!」
(ジーンオントロジー……瞬発力強化、乳酸代謝強化……アセチレーションっ!)
セオリーは脳裏に符牒を刻む。左腕に輝く赤い輝線は両脚へと延びて、そして一気に地面を蹴った。
巻き上がる粉塵。短距離走のトップアスリート顔負けの疾走を見せるセオリー――否、寧ろそれ以上だった。
狼の全速力の疾走は凡そ時速40kmから50km。20mぐらい離れていた距離から物の数秒で追いついた。
「つっかまえたっ!」
満面の笑みでセオリーは灰色狼に飛びつき、マウントをとる。その手際の速さは最早神業だった。
「よーし、よーし、よし、Goodboy Goodboy、ん? ここが気持ちいいの?」
『やめっ! やめろっ! 放せ……』
子供のような笑みでセオリーは吠え暴れる灰色狼を巧みに押さえつけ、お腹を優しく撫でて始める。
セオリーの行動には甘やかす他にも自分が優位であることを知らしめることもあった。いくら人語を理解するとはいえ、理性的に未熟かつ遺伝子に刻まれた本能は人間の様に逆らえない。
「クーン、クーン」
と、甘えるような微かに細く高い鼻声で鳴いて、おなかを天井に向ける服従のポーズをセオリーに向ける。
「貴方、お名前はありますの?」
『せ、刹那……博士が付けてくれて……』
「刹那っ! 良い名前ですわねっ!」
遺伝学のみならず、動物行動学や進化学を修めたセオリーの溢れんばかりの動物愛とテクニックに灰色狼はあっさりと陥落した。
あっさりとセオリーが狼を手懐けた一方――
暁はレザースーツの女に苦戦を強いられていた。
肝臓や腎臓、肋骨などを的確に急所を狙ってくるシンプルで効果的な技で構築された技術体系は見事としか言いようがない。
(こいつ……一体何者だ)
その正確性は一般人ではあり得ない、訓練を積んだ者だと暁は直に分かった。
暁もまた同様の訓練を受けていて、毎日の反復訓練も欠かさなかったが、女の動きはそれを上回るものだった。
「お前、自衛軍の兵士かっ!?」
暁の問いに女は答えない。
同様の訓練を受けていて露骨に差が出るという事は実戦経験の差と訓練に費やした時間の差以外に考えられない。
(さて、どうする?)
あともう一つ違いを上げるとすれば、相手は殺傷を目的としているのに対し、警察のそれは制圧・逮捕を目的としている点。
このままで同様の格闘術を使っていては不利だと判断する暁。形勢逆転の気を伺い、神経が研ぎ澄ましていくと――
(なんだ? 急に奴の動きがスローに――)
女から放たれた正拳がまるでスローモーションの様に単調な動きへと変わり、暁は腕を掴んで取り押さえる。
(さては……あのマッドサイエンティスト、何かしやがったな……)
スローモーションに見えた原因がセオリーにあるのは自明の理。
ともあれ、その能力と咄嗟に逮捕術へ切り替えたことで、運よく女の不意を突くことが出来た。
「貴様一体何者だっ!? なぜ白髪の男を追っているっ!?」
相手は軍人。女だろうと隙を見せてはこっちがやられると判断した暁は全体重をかけて押さえつけにかかった。
「……わ、私は元自衛軍情報保全隊所属、如月凰華。階級は三尉だった……」
「それでっ!? 俺達を襲ったのは何故だっ!?」
答えようとしない凰華に対して、暁は下手に暴れれば押え付けている腕が折れる程度に力を込める。
自白するには脅しが弱すぎるのだろうと、骨の一本折ってやれば……と思った矢先――
「そこまでですわっ!」
灰色狼を傍に連れたセオリーが現れる。
「……暁、もういいですわ。大丈夫です。その方々は敵じゃありません」
彼女は組み伏せられた凰華の前に膝を付いて「しょうがない人達ですわね」と言って微笑を浮かべる。
「話してあげてくださいな。もう彼女は危害を加える意志はありません。そうですわよね? ミス凰華?」
俄かには信じられない暁であったが、セオリーが現れたことで無意識のうちに自分の力が緩んでいた事に気付く。
「本当だ。君たちに危害を加えるつもりは無かった」
「どの口が言うっ!?」
と暁は言葉にしてみるものの、拘束の手が緩んでいるにもかかわらず、凰華が暴れていないのも可笑しかった。
セオリーの言う通り交戦の意志は感じられないのも確かだ。
「この方々も暁と同じく白髪の男に因縁があるようです。一度お話を伺ってみては如何かしら?」
暁は渋々拘束を解いていく。
痛めつけられた肩を庇いがら凰華は立ち上がる。
「……いや、すまない。どうしても君たちの実力を知りたくて試してしまった」
最初に襲ってきたような敵意や殺気を感じられないが、暁はまだ気を許すことが出来ない。
「そんなに警戒をしないでくれ、赤髪の御仁を抑えられなかった時点で私達の勝ち目はないだろう?」
「そういう事ですわ」
「そうは言うが、素顔を見せられない人間を俄かに信用できると思うか?」
「強情ですわね」
話は分かるが、暁は相手が何者なのか分からないままで安易に警戒を緩める訳にもいかなかい。
凰華は「分かった」と言って、徐にヘルメットを脱いで素顔を晒した。
「これでよろしいか?」
汗を振り払いながら露になる凰華の素顔。ふわりと靡く亜麻色の長髪、眉目秀麗で凛とした端整な顔立ち。
綺麗と言うよりは凛々しく男前という表現が似合う女だった。
様子からして調圧水槽にも見える。
「大麻はなさそうですわね」
「ああ、罠のもなさそう――」
真上から降り注ぐ殺気にいち早く察知したセオリーと暁は反射的に身を翻した。
「お前かっ! レザースーツの女」
殺気の正体は黒いレザースーツと黒いバイク用ヘルメットを被った女。身長は170cmを優に越えている。
女の身体は見事に鍛え抜かれていて、張り詰めるレザースーツが精悍な肉体を艶かしく強調し、言葉を失うほどの筋肉美を作り出していた。
着地して刹那、暁へ襲い掛かる。
「――っ!」
隙を付かれ暁は愛銃を蹴とばされた。
驚く暇さえ与えず、女の蹴りの応酬を受け、瞬く間に暁は防戦へと立たされる。
「ぐっ――!!」
女の上段回し蹴りが、ガードした右前腕に突き刺さり、暁は苦悶する。
「暁っ!」
加勢しよう駆け寄るセオリーは突如背後に人間とは違う生き物の殺気を感じて、咄嗟に身を伏せた。
「誰ですのっ!?」
眼前に現れたのは一匹の灰色狼。その全長2メートルは優に超えている。
猛々しい鈍色の毛並み、警戒感を露にした鋭い金色の眼光がセオリーに容赦なく突き刺さる。
「……シベリア狼ですわね」
セオリーだけを一点見つめ猛然と灰色狼は唸り声を上げ威嚇してくる。彼女もまた狼だけを見つめて冷静に分析を開始する。
(これは恐怖から転じて来ているものですわね……)
セオリーは物心ついた時からアフリカのサバンナの動物と触れ合ってきた野生児である。
そのため彼女は動物の機微を直感的に感じ取ることが出来るようになっていた。
(でも何か妙ですわね? この子……なんというかとても人間っぽいですわね)
狼の瞳をじっと観察したセオリーは恐怖に彩られているというより、恐怖を押し殺して立ち向かっているようなそんな人間味を感じてならなかった。
「……よろしいですわ。一緒に遊びましょう?」
徐に立ち上がったセオリーはまるで彼を抱き止めるかのように大きく両手を広げて、満面の笑みを向けた。
無防備に首元を晒し、間髪入れず襲い掛かってくるだろうとセオリーは予期していたのだが、彼女の想像を超える出来事が起きた。
『遊ぶだとっ!? 貴様っ!? ふざけているのかっ!?』
「えっ!?」
どこからともなく聞こえてくる男の子の音声。一体どこからとセオリーは周囲を見渡すが、やはり自分と灰色狼しかいない。黒いレザースーツの女と格闘している暁は無論あり得ない。
(あの首輪もしかして……)
セオリーは灰色狼の首に、鈍い銀色の首輪が煌いていることに気付く。その首元にはスピーカーのようなものが下がっているように見えた。
「まさか……今喋ったのはもしかして貴方?」
『そうだっ! 何か文句でもあるのかっ! 一体お前たち……は……』
突如、灰色狼は唸るのをやめて、歯をむき出しにして怯えたように後ろへ後退る。
その歩調に合わせるようにしてセオリーは段々と灰色狼へと近寄っていった。
『何だっ!? その顔はっ! やめろっ! こっちくんなよっ!』
先ほどまで威厳ある成人男性のようだった灰色狼の声は、まるで幽霊を見た子供のような怯えた声へと変わる。
灰色狼が怯えるのも無理はない。セオリーの顔は猟奇的な微笑みを向けていたからだ。
「じ、実に興味深いですわっ! これを発明した人は天才ですわっ! 動物とお話しすることが子供の時からの夢でしたのっ! まるで6歳の時に読んだ『ドリトル先生アフリカゆき』のドリトル先生になった気分ですわっ!」
死の恐怖とは異なる身の危険を感じた狼はセオリーから一目散に走って逃げた。
映画の『Dr.ドリトル』ではなく原作をチョイスする当たり意外にもセオリーは本の虫だったりする。
「逃がしませんわっ! 貴方は私の実験体二号にして差し上げますわっ!」
(ジーンオントロジー……瞬発力強化、乳酸代謝強化……アセチレーションっ!)
セオリーは脳裏に符牒を刻む。左腕に輝く赤い輝線は両脚へと延びて、そして一気に地面を蹴った。
巻き上がる粉塵。短距離走のトップアスリート顔負けの疾走を見せるセオリー――否、寧ろそれ以上だった。
狼の全速力の疾走は凡そ時速40kmから50km。20mぐらい離れていた距離から物の数秒で追いついた。
「つっかまえたっ!」
満面の笑みでセオリーは灰色狼に飛びつき、マウントをとる。その手際の速さは最早神業だった。
「よーし、よーし、よし、Goodboy Goodboy、ん? ここが気持ちいいの?」
『やめっ! やめろっ! 放せ……』
子供のような笑みでセオリーは吠え暴れる灰色狼を巧みに押さえつけ、お腹を優しく撫でて始める。
セオリーの行動には甘やかす他にも自分が優位であることを知らしめることもあった。いくら人語を理解するとはいえ、理性的に未熟かつ遺伝子に刻まれた本能は人間の様に逆らえない。
「クーン、クーン」
と、甘えるような微かに細く高い鼻声で鳴いて、おなかを天井に向ける服従のポーズをセオリーに向ける。
「貴方、お名前はありますの?」
『せ、刹那……博士が付けてくれて……』
「刹那っ! 良い名前ですわねっ!」
遺伝学のみならず、動物行動学や進化学を修めたセオリーの溢れんばかりの動物愛とテクニックに灰色狼はあっさりと陥落した。
あっさりとセオリーが狼を手懐けた一方――
暁はレザースーツの女に苦戦を強いられていた。
肝臓や腎臓、肋骨などを的確に急所を狙ってくるシンプルで効果的な技で構築された技術体系は見事としか言いようがない。
(こいつ……一体何者だ)
その正確性は一般人ではあり得ない、訓練を積んだ者だと暁は直に分かった。
暁もまた同様の訓練を受けていて、毎日の反復訓練も欠かさなかったが、女の動きはそれを上回るものだった。
「お前、自衛軍の兵士かっ!?」
暁の問いに女は答えない。
同様の訓練を受けていて露骨に差が出るという事は実戦経験の差と訓練に費やした時間の差以外に考えられない。
(さて、どうする?)
あともう一つ違いを上げるとすれば、相手は殺傷を目的としているのに対し、警察のそれは制圧・逮捕を目的としている点。
このままで同様の格闘術を使っていては不利だと判断する暁。形勢逆転の気を伺い、神経が研ぎ澄ましていくと――
(なんだ? 急に奴の動きがスローに――)
女から放たれた正拳がまるでスローモーションの様に単調な動きへと変わり、暁は腕を掴んで取り押さえる。
(さては……あのマッドサイエンティスト、何かしやがったな……)
スローモーションに見えた原因がセオリーにあるのは自明の理。
ともあれ、その能力と咄嗟に逮捕術へ切り替えたことで、運よく女の不意を突くことが出来た。
「貴様一体何者だっ!? なぜ白髪の男を追っているっ!?」
相手は軍人。女だろうと隙を見せてはこっちがやられると判断した暁は全体重をかけて押さえつけにかかった。
「……わ、私は元自衛軍情報保全隊所属、如月凰華。階級は三尉だった……」
「それでっ!? 俺達を襲ったのは何故だっ!?」
答えようとしない凰華に対して、暁は下手に暴れれば押え付けている腕が折れる程度に力を込める。
自白するには脅しが弱すぎるのだろうと、骨の一本折ってやれば……と思った矢先――
「そこまでですわっ!」
灰色狼を傍に連れたセオリーが現れる。
「……暁、もういいですわ。大丈夫です。その方々は敵じゃありません」
彼女は組み伏せられた凰華の前に膝を付いて「しょうがない人達ですわね」と言って微笑を浮かべる。
「話してあげてくださいな。もう彼女は危害を加える意志はありません。そうですわよね? ミス凰華?」
俄かには信じられない暁であったが、セオリーが現れたことで無意識のうちに自分の力が緩んでいた事に気付く。
「本当だ。君たちに危害を加えるつもりは無かった」
「どの口が言うっ!?」
と暁は言葉にしてみるものの、拘束の手が緩んでいるにもかかわらず、凰華が暴れていないのも可笑しかった。
セオリーの言う通り交戦の意志は感じられないのも確かだ。
「この方々も暁と同じく白髪の男に因縁があるようです。一度お話を伺ってみては如何かしら?」
暁は渋々拘束を解いていく。
痛めつけられた肩を庇いがら凰華は立ち上がる。
「……いや、すまない。どうしても君たちの実力を知りたくて試してしまった」
最初に襲ってきたような敵意や殺気を感じられないが、暁はまだ気を許すことが出来ない。
「そんなに警戒をしないでくれ、赤髪の御仁を抑えられなかった時点で私達の勝ち目はないだろう?」
「そういう事ですわ」
「そうは言うが、素顔を見せられない人間を俄かに信用できると思うか?」
「強情ですわね」
話は分かるが、暁は相手が何者なのか分からないままで安易に警戒を緩める訳にもいかなかい。
凰華は「分かった」と言って、徐にヘルメットを脱いで素顔を晒した。
「これでよろしいか?」
汗を振り払いながら露になる凰華の素顔。ふわりと靡く亜麻色の長髪、眉目秀麗で凛とした端整な顔立ち。
綺麗と言うよりは凛々しく男前という表現が似合う女だった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ブラフマン~疑似転生~
臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。
しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。
あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。
死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。
二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。
一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。
漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。
彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。
――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。
意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。
「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。
~魔王の近況~
〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。
幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。
——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ダイスを振ってカードコレクト!
すみ 小桜(sumitan)
SF
主人公のアズマは、幼馴染のサトシと夏休みを利用してVRゲームのテスターをする事にした。そのゲームは物づくりゲーム。このお話は、二人がゲームを楽しむ様子を描いたものです。
復讐に燃えたところで身体は燃え尽きて鋼になり果てた。~とある傭兵に復讐しようと傭兵になってみたら実は全部仕組まれていた件
坂樋戸伊(さかつうといさ)
SF
平凡なシティの一市民として人生を送っていたはずだった杉屋 亮平の人生は、その日を境に一変した。
とある傭兵が平和を享受していただけのシティにおいてテロ行為を起こし、亮平は家族、友人、そして日常の全てを蹂躙された。
復讐を果たすための手段を模索していた亮平に、アリス=R=ルミナリスが接近。亮平のコーチング、マネジメントをすると
持ちかけられ、亮平はこれを了承。彼は自分から平穏を奪った傭兵を倒すべく、自分もFAV-汎用戦闘歩行車両-を使い、
そして復讐を果たすことを誓う。
しかし、それはある思惑によって引き起こされたことを彼は全く知らず、悪鬼羅刹に変わっていくのであった。
他方、市街地襲撃の依頼を受けた傭兵、荒川 尊史は、自分が傭兵であることに意味を見失っていた。
周りの物を何も見ず、頼らず、ただただ無為に時間を過ごし、怠惰に時間を過ごす日々。
見かねた女房役兼専属オペレーター、藤木 恵令奈が経済的な危機を訴えてきた。
そして、尊史と恵令奈は手ごろな依頼を受ける。
その依頼に眠る思惑がどういったものかも知らず。
交錯する幾つもの魂。
絡まり、もつれ合う彼らの運命の先に待つものは、悲願の達成なのか。
それとも、空虚な絶望か。
※他小説投稿サイト(カクヨム様、小説家になろう様)にも投稿中
最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~
椎名 富比路
SF
愛猫と冒険へ! → うわうちのコ強すぎ
ペットと一緒に冒険に出られるVRMMOという『ペット・ラン・ファクトリー』は、「ペットと一緒に仮想空間で遊べる」ことが売り。
愛猫ビビ(サビ猫で美人だから)とともに、主人公は冒険に。
……と思ったが、ビビは「ネコ亜人キャラ」、「魔法攻撃職」を自分で勝手に選んだ。
飼い主を差し置いて、トッププレイヤーに。
意思疎通ができ、言葉まで話せるようになった。
他のプレイヤーはムリなのに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる