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終章 ずっと一途に。
第42話 決着。今際の際に支配者より明かされる『穢れ』の治療法
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体重ではなく質量ってレアさんは言っていたけど、とにかく重いもが高速で衝突すればとてつもない破壊力を生む。
そして瞬間的な筋力は平常時の3乗に達する。
ただし彼女とシャルの二人からは1日12秒間しか使っちゃいけないと、きつく言われていた。それ以上は体がもたないって。
『そんなこと……をすれば……寿命を……縮めるぞ?』
「人間をやめたあんたには言われたくねぇな」
実際特訓から使い初めて、最初手首までだった〈龍紋〉が前腕の半分辺りまで侵食していた。
多分、全身にまわったら死ぬってことなんだと思う。
『さっき……聞いていたな……なぜ……戦争……を……もとめるのか……と』
「……ああ」
でも戦っていて何となく分かってしまった。だってこいつからは――。
『前に……いった……通り……多くの……民が……食糧に……うえている……からだ』
「そうかよ。最後に頼みがある」
どうしても戦いの途中でわいた疑問。こと切れる前にどうしても聞いておいたかった。
「さっき血清がどうのこうのって言っていたな?」
クローディアスは不思議な顔をする。
「うちで大切な人がケガレで苦しんでいるんだ。一つ分けてくれねぇか?」
『……の中に……一つ……数ヶ月……程度……初期……であれば……完治……できる……』
ズボンのポケットをまさぐると、中から小さなアンプルが1本出でくる。こんな小さなものが、よく壊れなかったもんだ。
「ありがとう、助かる」
『……奴……には……気を……つけ……たまへ……』
最後にそういうと、二度とまぶたを開けることはなかった。
奴とは誰のことかはわからない。
だだ最後に俺が出来たことは、【霊象獣】と同じく骨も肉もドロドロにとけていく亡骸へ、ヒマワリの種を手向けることだけだった。
手を合わせ供養し、再びフェイの元へ向かった俺を煮えたぎる熱さが襲った。
「ぐ……あ……」
体の内側から焼きつくされる高熱にたまらず膝をつく。
左腕の〈龍紋〉が熱した鉄みたいに真っ赤に染まり、俺の腕を侵食していく。
なんとか肘下までで止まったけど、体力を根こそぎ持っていかれ、もうその場に倒れ込むほか無かった。
実をいうと全力稼働はこれが初めてだった。まさかこんなに体へ負担がかかる技だったなんて……。
――マジでやべぇな、もう、今回ばかりは……。
うすれていく意識の中で、澄み渡った青空に1匹の大きな鳥が飛んでいく姿を見ながら、俺は死を覚悟した。
まぁ、実際には死ななかったんだけど……。
次に目が覚めた時、これが輪廻転生ってやつかって正直思ったよ。
でも来世にしては天井が鉄の骨組みというあまりの殺風景さに、すぐに飛行艇の中だって分かった――。
「あ……」
側にいたアセナと目が合った。意識を取り戻すなり、今にも泣きだしそうな顔で口を堅くぎゅっと結んで、いきなり抱き着いてきた。
「……ちょ、おいおい、アセナ」
「ばか! 心配したんだよ!」
「……悪い」
こぼれ落ちていく涙が俺の肩を濡らしていく。
「あ、気が付いたんだね!」
ベッドに付した俺を奥からシャルがのぞき込んでくる。
その顔は少し疲れて、あきれていて、ほっとしているそんな感じ。少なくともかーなーり心配かけたことだけはわかった。
「悪い、シャルにも心配かけた」
「ホントだよ。まったく」肩をすくめてシャルは言った。「でも今回はウチじゃなく、あーしゃんとレアさんのお陰で助かったんだ」
どういうこと? って首を俺は傾げたよ。いつも通り彼女が治療にあたってくれていたんじゃなかったのかって――。
「二人の力が無きゃ、浸食を抑えられなかった」
ふと腕に目を落とした。肘まで達していたはずの龍門がいつの間にか前腕4分の1のところで止まっている。
「……あーしゃんの血液から造った血清が無かったら、左腕全部持っていかれていたと思う」
「血清?」
確かクローディアスが言っていた。【蒼血人】の血はケガレを抑えることができて、アセナの【天血】はその何倍もの効果があるって。
でもそれをなんでレアさんが知っているんだ。いやそれよりも、この短時間でどうやって?
「なんかレアさんが急ピッチで造ってくれて、遠心分離なんとかって言ったかな? それでまぁ……ウチは注射しただけって感じ」
あとは研究データからどうのこうのと、頭が回っていてもいなくても良く分からない話だ。
血が足りてねぇからあんまり難しい話はやめてほしいんだけど。
「……そのレアさんは? お礼を言いたいんだけど?」
「ん? 向こうで寝ているよ。起きたら言ってあげて」
そっか、俺を助けるために頑張ってくれていたんだ。今は休ませてあげよう。
「まぁ、とにかく今はエルやんよりも、フェイくんだっけ? 彼の方が大変だったよ」
「フェイ!? フェイだって!? 生きていんのか!?」
辛うじて、とがっくり肩を落とした。飛行艇内では設備が不十分で、シャルができたのは応急処置だけだったという。
今は何とか命を繋いでいる状態だと言った。
「セシルさんがこの高速飛行艇で迎えにきてくれなかったら、危なかったかもしれない」
高速飛行艇? そういえば見覚えがあった。
そして瞬間的な筋力は平常時の3乗に達する。
ただし彼女とシャルの二人からは1日12秒間しか使っちゃいけないと、きつく言われていた。それ以上は体がもたないって。
『そんなこと……をすれば……寿命を……縮めるぞ?』
「人間をやめたあんたには言われたくねぇな」
実際特訓から使い初めて、最初手首までだった〈龍紋〉が前腕の半分辺りまで侵食していた。
多分、全身にまわったら死ぬってことなんだと思う。
『さっき……聞いていたな……なぜ……戦争……を……もとめるのか……と』
「……ああ」
でも戦っていて何となく分かってしまった。だってこいつからは――。
『前に……いった……通り……多くの……民が……食糧に……うえている……からだ』
「そうかよ。最後に頼みがある」
どうしても戦いの途中でわいた疑問。こと切れる前にどうしても聞いておいたかった。
「さっき血清がどうのこうのって言っていたな?」
クローディアスは不思議な顔をする。
「うちで大切な人がケガレで苦しんでいるんだ。一つ分けてくれねぇか?」
『……の中に……一つ……数ヶ月……程度……初期……であれば……完治……できる……』
ズボンのポケットをまさぐると、中から小さなアンプルが1本出でくる。こんな小さなものが、よく壊れなかったもんだ。
「ありがとう、助かる」
『……奴……には……気を……つけ……たまへ……』
最後にそういうと、二度とまぶたを開けることはなかった。
奴とは誰のことかはわからない。
だだ最後に俺が出来たことは、【霊象獣】と同じく骨も肉もドロドロにとけていく亡骸へ、ヒマワリの種を手向けることだけだった。
手を合わせ供養し、再びフェイの元へ向かった俺を煮えたぎる熱さが襲った。
「ぐ……あ……」
体の内側から焼きつくされる高熱にたまらず膝をつく。
左腕の〈龍紋〉が熱した鉄みたいに真っ赤に染まり、俺の腕を侵食していく。
なんとか肘下までで止まったけど、体力を根こそぎ持っていかれ、もうその場に倒れ込むほか無かった。
実をいうと全力稼働はこれが初めてだった。まさかこんなに体へ負担がかかる技だったなんて……。
――マジでやべぇな、もう、今回ばかりは……。
うすれていく意識の中で、澄み渡った青空に1匹の大きな鳥が飛んでいく姿を見ながら、俺は死を覚悟した。
まぁ、実際には死ななかったんだけど……。
次に目が覚めた時、これが輪廻転生ってやつかって正直思ったよ。
でも来世にしては天井が鉄の骨組みというあまりの殺風景さに、すぐに飛行艇の中だって分かった――。
「あ……」
側にいたアセナと目が合った。意識を取り戻すなり、今にも泣きだしそうな顔で口を堅くぎゅっと結んで、いきなり抱き着いてきた。
「……ちょ、おいおい、アセナ」
「ばか! 心配したんだよ!」
「……悪い」
こぼれ落ちていく涙が俺の肩を濡らしていく。
「あ、気が付いたんだね!」
ベッドに付した俺を奥からシャルがのぞき込んでくる。
その顔は少し疲れて、あきれていて、ほっとしているそんな感じ。少なくともかーなーり心配かけたことだけはわかった。
「悪い、シャルにも心配かけた」
「ホントだよ。まったく」肩をすくめてシャルは言った。「でも今回はウチじゃなく、あーしゃんとレアさんのお陰で助かったんだ」
どういうこと? って首を俺は傾げたよ。いつも通り彼女が治療にあたってくれていたんじゃなかったのかって――。
「二人の力が無きゃ、浸食を抑えられなかった」
ふと腕に目を落とした。肘まで達していたはずの龍門がいつの間にか前腕4分の1のところで止まっている。
「……あーしゃんの血液から造った血清が無かったら、左腕全部持っていかれていたと思う」
「血清?」
確かクローディアスが言っていた。【蒼血人】の血はケガレを抑えることができて、アセナの【天血】はその何倍もの効果があるって。
でもそれをなんでレアさんが知っているんだ。いやそれよりも、この短時間でどうやって?
「なんかレアさんが急ピッチで造ってくれて、遠心分離なんとかって言ったかな? それでまぁ……ウチは注射しただけって感じ」
あとは研究データからどうのこうのと、頭が回っていてもいなくても良く分からない話だ。
血が足りてねぇからあんまり難しい話はやめてほしいんだけど。
「……そのレアさんは? お礼を言いたいんだけど?」
「ん? 向こうで寝ているよ。起きたら言ってあげて」
そっか、俺を助けるために頑張ってくれていたんだ。今は休ませてあげよう。
「まぁ、とにかく今はエルやんよりも、フェイくんだっけ? 彼の方が大変だったよ」
「フェイ!? フェイだって!? 生きていんのか!?」
辛うじて、とがっくり肩を落とした。飛行艇内では設備が不十分で、シャルができたのは応急処置だけだったという。
今は何とか命を繋いでいる状態だと言った。
「セシルさんがこの高速飛行艇で迎えにきてくれなかったら、危なかったかもしれない」
高速飛行艇? そういえば見覚えがあった。
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