玻璃色の世界のアリスベル

朝我桜(あさがおー)

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第二章  パッショナートな少女と歩く清夏の祭り

第21話 白亜の町に漂うは異国の香り

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 白銀に輝く曲線美を描く砂丘を歩くこと数分、白亜の都市ヴィスルはあった。

 砂漠だというのに、人の賑わいの中から聞こえる水の音、さっきまで乾いた風は少しだけ水気を帯びている。

「はいっ! 到着っ! ここがヴィスルだよっ!」

「やっと着いた……あれ、なんか涼しい」

 生き返る様な皮膚に触れる清涼感。砂漠の暑さにすっかりやられていた愛花の顔も緩んでいく。

「ヴィスルって砂漠の町と言われているけど、実は豊富な化石水があって、水の町とも言われているんだ」

 アリスの言う通りパンフレットには太古の大森林が残した地下水の完全再利用を実現しているらしい。飲み水を始めとして、様々な産業に使われているんだとか。

「駄目だよ。ソラト? パンフレットばかり見ちゃぁ。私達で新しい素敵ポイントを見つけるって決めたよね?」

 突然アリスは僕が眺めていたパンフレットを取り上げてきた。少しむくれた顔で覗き込んでくる。

 最初の時の話し合い時、僕らは新鮮な気持ちになれようにあまりパンフレットに頼らないようにしようって決めていた。

「予備知識は程ほどにしておいた方が、新鮮な気持ちになって、きっと素敵な場所がいっぱい見つかると思うんだ。そっち方がきっと楽しいよ?」

「ああ、ごめん。そうだったね」

 弾んだ笑顔を見せたアリスは僕と愛花の手を引いて、賑わいの中へと誘う。

「愛花ちゃんも」

「ちょっ! アリスさんそんなに引っ張らないで」

 町へと足を踏み入れるや否や鮮やかな色彩が飛び込んでくる。

 それに大勢の人々が絶え間なく行き交う市場の光景に僕らは圧倒された。

 映像でよく見る中東や中央アジアのバザールのような異国情緒溢れる雰囲気に包まれながら、僕らはバザールの最前列から見て周る。

 どの露店も万華鏡のようなアラベスク柄の布地や手製の絨毯、玉虫色の宝石をあしらったバックやアクセサリー、シンプルな色合いや豊かな色彩の柄模様のショールや民族衣装などで溢れている。

「すごい人だかり……肌の色や髪は違うけど、やっぱりみんな耳が長いんだね」

「うん、この地域はベルドっていう人種のかたが多いかな。私達の惑星ほしには大きく分けて四つの人種があるんだ」

 スペクリム人は大きくベルド、エーカ、ソール、ヴィドの四つの人種に分かれる。

 今僕達がいるバザールで多く見かけられる褐色肌に白い髪をした山と大地の民ベルド。

 まるでアジア人のような容姿をした草原の民エーカ。

 褐色の肌と、金髪を持つ海の民ソール。

 そしてアリスの様に欧米人に似た容姿を持つ森の民と呼ばれるヴィドがいる。

「えっと、そうすると、アリスさんがここに来ても大丈夫? つまり……ね……」
「?」

 言葉を濁しているが、愛花が言いたいのは多分、目の敵にされないのか言いたいんだろう。

 地球の感覚で言えば欧米人のような人が中東のようなところに来ているのだから。

 最初首を傾げていたアリスだったけど、愛花の言いたいことの察しがついたようで――

「やだなぁ~みんな仲がいいから大丈夫。そんなこと絶対ないよ。その証拠に、ほらっ!」

 アリスが徐に振り返ると彼女の目線先に、にこにこ顔の青年店主が手招きしているのが見える。

「どうだい? お嬢ちゃん達見ていくかい?」

「いいんですかぁ?」

「好きなだけ見ていってくれ」

 店主の手招きに釣られ、ふらっと足を運んでみると、そこは雑貨屋。

 店内は木の風合い豊かな寄せ木細工を始め、幾何学模様の刺繍で装飾されたスカーフなどが溢れていた。

「あっ! これ可愛い」

 愛花は一つの小箱に魅せられて手に取った。繊細で幾何学模様の寄せ木がエキゾチックで、細かな細工から感じる職人芸は見事としか言いようがない。

「愛花ちゃん それ可愛い。表面に彫られた二羽の鳥はフケンとミンネルって言って、この地域では幸福と思い出の象徴とされているんだ」

 肩を寄せ合って陳列された雑貨達を楽しそうに眺める二人。

 最初は仲良くなれるか心配だったけど、僕の取り越し苦労で済みそうだった。

 それにしても女の子って本当小物とかそういうの好きだよなぁ。

「じゃあ、お兄さんっ! これ下さいっ!」

「えっ! アリスさんっ! 悪いよっ!」

「いいの。プレゼントさせてくれないかな。愛花ちゃんが私の友達になってくれた記念に」

 愛花が口ごもる。

 気を使わせてしまいモヤモヤした罪悪感を抱えているのだろうか?

「はい、愛花ちゃん」

「アリスさん……」

 でもアリスはそんな愛花に小箱を渡す。愛花が最初に手に取った二羽の鳥をあしらった小箱だ。

「小箱に刻まれた細工一つ一つ職人の願いが込められている。取ってくれる人の事を想いながら幸福になりますようにって」

 アリスは愛花の手を優しく包み込む。

「この小箱に最初に入るのは私達の出会いっていう幸せな思い出だよ」

 アリスという人は誰とでも真正面から向き合って、誰に対しても、僕の時と同じように真正面から受け止める。

 そこには見栄も無い。打算も無い。どこまでも純粋、それが僕のアリスに対する印象だ。

「だめだよ……そんなの……」

「ふぇっ! ど、どうして? 愛花ちゃん……」

 アリスに手を握られたまま、愛花は顔を隠すように俯いて、肩を震わせている。

 もしかして泣いているのか? でも何で?

「だって……だって……」

「うん」

「惚れちゃうじゃないっ!」

「ふぇっ!?」
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