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第二章 パッショナートな少女と歩く清夏の祭り
第19話 ちぐはぐ者達の心誤り
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「うがぁー 湿っぽい話は禁止っ!」
「なにすんだっ!」
突然、僕の頭をぐしゃぐしゃに掻き乱す愛花。
感情のキャパが越えると愛花は堪らず人の頭を掻き乱しにかかってくる。
癖というより最早、愛花の習性だ。
自分から湿っぽい話をしておきながら、と言うのは通用しない。
勘弁してほしい。
「宙人達こそ資料整理って言っていたけど? どんなことしてるの? 観光地のパンフレットのようなものがあったよう見見えたけど、どんなところがあるの?」
「守秘義務」
「えーっ! 教えなさいよっ! ケチ」
ケチって問題かぁ?
そもそも『スペクリム』の件は秘密にも拘らず、アリスは楽しそうに僕らの様子を眺めている。
少しは気にしてほしい。
「仲がいいんだね? もしかして二人とも付き合っていたりして?」
「やめてくれ、違うよ。愛花は只の幼馴染。アリスのクラスにいる隅田省吾っているだろ? あいつの彼女」
「私、隣りのクラスの川原愛花。よろしくねアリスさん」
「うん。こちらこそ、ソラトにはお世話になってます。確かに隅田君と一緒によくいるよね」
「お世話になってるね……」
僕に不敵な笑みを向けてくる愛花は何か言いたげだった。
「いやらしい」
「……愛花、もしかして物凄い勘違いしてない?」
いやらしい呼ばわりされる意味が分からない。
「あぁ、やだやだ。お邪魔みたいだし、これで私は帰ってあげますよ~」
「やっぱり勘違いしている。アリスは別に――」
バシンっと軽快な音が店内に響き渡る。
盛大に勘違いした愛花は、僕の背中を思いっきり叩いてきた。
「痛ったっ! 何すんだっ!?」
「頑張んなさいよっ!」
訳の分からない捨て台詞を残して、愛花は去っていた。
一体何を頑張れと?
「何だったんだ」
「多分、嬉しかったんじゃないかな? ソラトが元気になってくれて」
本当にアリスのポジティブ思考にはつくづく尊敬する。
打ち合わせは滞りなく進んで、最終的に『白い砂漠と情熱の太陽の町ヴィスル』にしようという話になった。
ヴィスルには再来月にスリュナンナ・ハウストという8日間昼夜ぶっ通しで行われるお祭りがあるので、それを企画に取り入れることになったのだけど……
今更大丈夫かって話だ。
アリスが言うには、『大丈夫みんな大型連休の1週間前に決めるなんて珍しくもないから』なんだとか。
信用していない訳じゃないけど、不安で仕方がない。
意気揚々にファイユさんへ報告してくると言って飛び出していったのは良いけど、連絡はない。
まだ『スペクリム』から戻ってきていないんだろう。
「お帰りなさい。随分遅かったのね」
アリスの心配をしながら家路についた僕を、玄関前で愛花が待っていた。
今日は厄日か何かかな……
「ただいま。どうしたの? 家の前で待っていたりなんかして」
「はい、これ、お母さんが持って行けって」
愛花から突き出された買い物袋の中にはパックに小分けされた、おかずが数点。実質一人暮らしの僕には非常に助かる。
「助かるよ。ありがとう。愛花」
素直に感謝の言葉が出るのなんて、いつぶりだろうか。
打算なく人は人に優しくしない、という身も蓋も無いことを思っていた頃だったら、感謝の言葉なんて出なかっただろう。
勿論、今でも思っているけど、でも今はそんなことは些細なことだと思っている。
ふと、愛花が僕は顔をじっと見つめることに気付く。
「ねぇ、ソラトは本当に野球をするつもりは無いの?」
「そうだね」
「私は宙人に、野球に関わってほしいって思っている。それで宙人はきっと元気を取り戻してくれるって」
「そうだったんだ」
スペクリムでの一件から本当はそうじゃないかって思い始めていたけど、もし愛花も怒っているんだとしたらと考えたら、怖くて聞けなかった。
「宙人は本当に大丈夫なの? 野球できなくなって、野球に関わらなくていいの?」
「未練はないと言われたらまだ分からないけど。けど今はやってみたいって思えることが出来たんだ」
「そっか」
気まずい様な、寂しい様な、憂に満ちた沈黙が流れる。
不意に僕のスマホが鳴って、僕らの沈黙の空気を破る。相手はアリス。地球に戻ってきたみたいだ。
『あっ! ソラトっ! 決まったよっ!』
大音量の声が鼓膜を突き抜け、反射的に僕は耳元からスマホを放す。
「決まったって企画が?」
『そう、白い砂漠と情熱の太陽の町ヴィスル。明後日下見に行こうっ! 大丈夫許可を取ってあるよっ!』
「明後日下見? そんな急に、ちょ――」
突然、愛花は何を思ったのか、僕のスマホを奪い取った。
「アリスさんっ! その下見っ! 私も連れて行ってっ!」
「はぁっ!? 何言ってるんだっ!」
スマホに向かって愛花はとんでもないことを口走る。
本当に何を考えているのか訳が分からない。
『その声、もしかして愛花ちゃん?』
いつの間にかスピーカーがオンになっているし、僕は慌てたように愛花からスマホを奪い返そうとする。
「そんなの駄目に決まっているだろっ! 何考えてんのさっ! いいからスマホを返してくれ」
『う~ん、別に良いんじゃないかな、ほら、絢さんに許可取れば』
「な……」
アリスから返ってきた言葉に僕は耳を疑った。
絢さんに頼まれて、スペクリムの事を隠そうと気苦労を抱えていた僕は、アリスの一言で一気に脱力感が襲う。
もう、好きにしてくれ……
「なにすんだっ!」
突然、僕の頭をぐしゃぐしゃに掻き乱す愛花。
感情のキャパが越えると愛花は堪らず人の頭を掻き乱しにかかってくる。
癖というより最早、愛花の習性だ。
自分から湿っぽい話をしておきながら、と言うのは通用しない。
勘弁してほしい。
「宙人達こそ資料整理って言っていたけど? どんなことしてるの? 観光地のパンフレットのようなものがあったよう見見えたけど、どんなところがあるの?」
「守秘義務」
「えーっ! 教えなさいよっ! ケチ」
ケチって問題かぁ?
そもそも『スペクリム』の件は秘密にも拘らず、アリスは楽しそうに僕らの様子を眺めている。
少しは気にしてほしい。
「仲がいいんだね? もしかして二人とも付き合っていたりして?」
「やめてくれ、違うよ。愛花は只の幼馴染。アリスのクラスにいる隅田省吾っているだろ? あいつの彼女」
「私、隣りのクラスの川原愛花。よろしくねアリスさん」
「うん。こちらこそ、ソラトにはお世話になってます。確かに隅田君と一緒によくいるよね」
「お世話になってるね……」
僕に不敵な笑みを向けてくる愛花は何か言いたげだった。
「いやらしい」
「……愛花、もしかして物凄い勘違いしてない?」
いやらしい呼ばわりされる意味が分からない。
「あぁ、やだやだ。お邪魔みたいだし、これで私は帰ってあげますよ~」
「やっぱり勘違いしている。アリスは別に――」
バシンっと軽快な音が店内に響き渡る。
盛大に勘違いした愛花は、僕の背中を思いっきり叩いてきた。
「痛ったっ! 何すんだっ!?」
「頑張んなさいよっ!」
訳の分からない捨て台詞を残して、愛花は去っていた。
一体何を頑張れと?
「何だったんだ」
「多分、嬉しかったんじゃないかな? ソラトが元気になってくれて」
本当にアリスのポジティブ思考にはつくづく尊敬する。
打ち合わせは滞りなく進んで、最終的に『白い砂漠と情熱の太陽の町ヴィスル』にしようという話になった。
ヴィスルには再来月にスリュナンナ・ハウストという8日間昼夜ぶっ通しで行われるお祭りがあるので、それを企画に取り入れることになったのだけど……
今更大丈夫かって話だ。
アリスが言うには、『大丈夫みんな大型連休の1週間前に決めるなんて珍しくもないから』なんだとか。
信用していない訳じゃないけど、不安で仕方がない。
意気揚々にファイユさんへ報告してくると言って飛び出していったのは良いけど、連絡はない。
まだ『スペクリム』から戻ってきていないんだろう。
「お帰りなさい。随分遅かったのね」
アリスの心配をしながら家路についた僕を、玄関前で愛花が待っていた。
今日は厄日か何かかな……
「ただいま。どうしたの? 家の前で待っていたりなんかして」
「はい、これ、お母さんが持って行けって」
愛花から突き出された買い物袋の中にはパックに小分けされた、おかずが数点。実質一人暮らしの僕には非常に助かる。
「助かるよ。ありがとう。愛花」
素直に感謝の言葉が出るのなんて、いつぶりだろうか。
打算なく人は人に優しくしない、という身も蓋も無いことを思っていた頃だったら、感謝の言葉なんて出なかっただろう。
勿論、今でも思っているけど、でも今はそんなことは些細なことだと思っている。
ふと、愛花が僕は顔をじっと見つめることに気付く。
「ねぇ、ソラトは本当に野球をするつもりは無いの?」
「そうだね」
「私は宙人に、野球に関わってほしいって思っている。それで宙人はきっと元気を取り戻してくれるって」
「そうだったんだ」
スペクリムでの一件から本当はそうじゃないかって思い始めていたけど、もし愛花も怒っているんだとしたらと考えたら、怖くて聞けなかった。
「宙人は本当に大丈夫なの? 野球できなくなって、野球に関わらなくていいの?」
「未練はないと言われたらまだ分からないけど。けど今はやってみたいって思えることが出来たんだ」
「そっか」
気まずい様な、寂しい様な、憂に満ちた沈黙が流れる。
不意に僕のスマホが鳴って、僕らの沈黙の空気を破る。相手はアリス。地球に戻ってきたみたいだ。
『あっ! ソラトっ! 決まったよっ!』
大音量の声が鼓膜を突き抜け、反射的に僕は耳元からスマホを放す。
「決まったって企画が?」
『そう、白い砂漠と情熱の太陽の町ヴィスル。明後日下見に行こうっ! 大丈夫許可を取ってあるよっ!』
「明後日下見? そんな急に、ちょ――」
突然、愛花は何を思ったのか、僕のスマホを奪い取った。
「アリスさんっ! その下見っ! 私も連れて行ってっ!」
「はぁっ!? 何言ってるんだっ!」
スマホに向かって愛花はとんでもないことを口走る。
本当に何を考えているのか訳が分からない。
『その声、もしかして愛花ちゃん?』
いつの間にかスピーカーがオンになっているし、僕は慌てたように愛花からスマホを奪い返そうとする。
「そんなの駄目に決まっているだろっ! 何考えてんのさっ! いいからスマホを返してくれ」
『う~ん、別に良いんじゃないかな、ほら、絢さんに許可取れば』
「な……」
アリスから返ってきた言葉に僕は耳を疑った。
絢さんに頼まれて、スペクリムの事を隠そうと気苦労を抱えていた僕は、アリスの一言で一気に脱力感が襲う。
もう、好きにしてくれ……
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