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第二章 僕が彼女を『護』る理由
第40話 雨降って地固まる!? 二人は心交わる『関係』へ
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あぁ! 何やってんだろう。最低だ。自分がほんとに嫌になる。
「もうやだよぉっ! どうして……劉家で育ってしまったから……どうしてこんなにも苦しいのぉ!?」
泣き崩れたアルナをすぐに抱きしめる。他にはなにも思いつかなかったんだ。
「どうして!? 私が有角種だから!?」
「そんなことない! 僕はアルナの白くてきれいな角も尻尾も好きだ」
「嫌い……みんな大っ嫌い……ミナトなんか……」
「すごく無神経だった。ごめんアルナ」
アルナから胸を叩き続けられるのを耐えながら、彼女の涙が枯れるまで抱きしめる。
そんなことで口に出したものが消せるわけでも、償えるわけでもないけど。
しばらくして少し落ち着いたのか。アルナの口から切実な想いが漏れる。
「……でも、本当に嫌いなのは……誰にも嫌われたくないって思っている私自身。ほんとはミナトにだって嫌われたくない」
「僕は君を嫌いなったりしないよ。絶対に」
グディーラさんの言っていた通りになっちゃったな。
そういえば師匠がこんなことも話していたっけ。
謝るときは、己がしたことを相手がどう感じたのか。
ちゃんと聞いて、理解してやるんだって。
もしかしてやきもちを妬いてくれたのかな? もしそうだったら、なんかちょっと嬉しいかも。
「もう! 何が可笑しいの!」
「えっ!? ゴメン! もしかして笑ってた?」
心底不満そうな顔で頷くアルナ。
「アルナ。僕が他の女の人と仲良くしているの、もしかして嫌だったかな?」
「そんなことっ!? ないと……思う」
照れているような、困惑しているような顔。多分アルナ自身もよく分かっていないのかも。
「と、とにかく! 夕食にしよ! でも折角の料理が……」
「そんなの全然気にしないよ。アルナの作ってくれたものなら、なんだって美味しいから」
「うぅ~……なんか、調子のいいことを言われている気がするぅ~」
「そ、そんなことないよ?」
それから少しムスッとしたアルナと会話を弾ませながら夕食に舌鼓を打った。
その後荷物の整理を終え、カーテンで即席のパーテーションを引いた。
床に就いたのは深夜近くになって。
その頃になるとようやく一緒に暮らすって実感も沸いて。
だけど、ただ一緒に生活するだけで【共震】なんて会得出来るのかなぁ……?
「ねぇミナト。起きてる?」
「うん」
眠れるわけがなかった。身体はかなり疲れているのに、頭は妙に冴えている。
カーテン越しとはいえ、アルナが隣で横になっているって思ったら――こう、なんというか身悶えする。
だけど夜中二人っきりだっていうのに、カーテンに手を掛ける勇気はない。
以前ハウアさんが「お前には意気地がない」と言われたのが、骨身に染みてよく分かった。
「今日はごめんね。私どうかしていた」
「謝るのは僕の方だよ。ごめん」
「……ミナトが女の人と話しているとね。なんだか胸がとてもモヤモヤするんだ」
アルナの周りに男が言い寄ってきたら、僕だってその人達に腹が立つ。
「僕だってアルナが他の男性と話していたらするかな」
「……そうなの?」
「うん、そうだよ」
「そうなんだぁ……何でだろう?」
彼女の抱えるものの正体がなんとなく分かるけど、僕が口にしていいものなのかなぁ?
だって今まで彼女は暗殺の世界で過ごしてきて、考えてみれば笑顔でいられたこと自体多分奇跡なんだ。
ならここで焦っても仕方がないよね。
「なんだかミナトが何処か遠くに行ってしまうような気がしたんだ。家には帰れないし、もうミナトしかいないって思ったら、凄く不安になって、それで……」
「僕はどこにもいかないよ。ずっと君の友達だ。それに僕だけじゃない、レオンボさんやハウアさん、それにグディーラさんだっている。君は一人じゃない」
アルナから返事は返ってこなかった。多分寝てしまったのかな。
明日も修行だし自分も寝よう――って眠れるわけないじゃん!
一度些細な喧嘩をしてから僕達はちょっとずつだけど心に抱いていることを話し合うようになった。
そして地下道再潜入を控えた前日。いつものように象気を練る訓練をしていた時だった。
静寂の訓練場で互いの呼吸と心臓の鼓動だけが聴こえるようになった途端、鈴の音が鳴り響く。
二人の象気がお互いの身体を巡り始め、稲妻と太陽光が交わる感覚。
そして一つになり、僕等は熱い朱金の光に包まれる。
「なに? 急にミナトの陽だまりみたいな温かい象気が、私の中に感じる――」
僕にはアルナの痺れるような活力の象気が流れ込んできた。
「うん、分かる。これが!」
「「共震っ!」」
凄まじい象気の奔流。自分たちの力が何倍も大きくなっているのが理解できる。
「今なら、僕等二人ならなんでもできそうな気がするよ」
「うん。私もミナトと同じ気持ち」
僕達は手を握り合った。まるでアルナがいつもよりもっと身近にいるような、そんな錯覚を覚える。
「お、ようやくか」
さっきまで相も変わらず転寝をしていたハウアさんが身を起こした。
「じゃあ、お前等その状態で、俺をあの《黒蠍獅》だと思って戦って見ろ」
「もうやだよぉっ! どうして……劉家で育ってしまったから……どうしてこんなにも苦しいのぉ!?」
泣き崩れたアルナをすぐに抱きしめる。他にはなにも思いつかなかったんだ。
「どうして!? 私が有角種だから!?」
「そんなことない! 僕はアルナの白くてきれいな角も尻尾も好きだ」
「嫌い……みんな大っ嫌い……ミナトなんか……」
「すごく無神経だった。ごめんアルナ」
アルナから胸を叩き続けられるのを耐えながら、彼女の涙が枯れるまで抱きしめる。
そんなことで口に出したものが消せるわけでも、償えるわけでもないけど。
しばらくして少し落ち着いたのか。アルナの口から切実な想いが漏れる。
「……でも、本当に嫌いなのは……誰にも嫌われたくないって思っている私自身。ほんとはミナトにだって嫌われたくない」
「僕は君を嫌いなったりしないよ。絶対に」
グディーラさんの言っていた通りになっちゃったな。
そういえば師匠がこんなことも話していたっけ。
謝るときは、己がしたことを相手がどう感じたのか。
ちゃんと聞いて、理解してやるんだって。
もしかしてやきもちを妬いてくれたのかな? もしそうだったら、なんかちょっと嬉しいかも。
「もう! 何が可笑しいの!」
「えっ!? ゴメン! もしかして笑ってた?」
心底不満そうな顔で頷くアルナ。
「アルナ。僕が他の女の人と仲良くしているの、もしかして嫌だったかな?」
「そんなことっ!? ないと……思う」
照れているような、困惑しているような顔。多分アルナ自身もよく分かっていないのかも。
「と、とにかく! 夕食にしよ! でも折角の料理が……」
「そんなの全然気にしないよ。アルナの作ってくれたものなら、なんだって美味しいから」
「うぅ~……なんか、調子のいいことを言われている気がするぅ~」
「そ、そんなことないよ?」
それから少しムスッとしたアルナと会話を弾ませながら夕食に舌鼓を打った。
その後荷物の整理を終え、カーテンで即席のパーテーションを引いた。
床に就いたのは深夜近くになって。
その頃になるとようやく一緒に暮らすって実感も沸いて。
だけど、ただ一緒に生活するだけで【共震】なんて会得出来るのかなぁ……?
「ねぇミナト。起きてる?」
「うん」
眠れるわけがなかった。身体はかなり疲れているのに、頭は妙に冴えている。
カーテン越しとはいえ、アルナが隣で横になっているって思ったら――こう、なんというか身悶えする。
だけど夜中二人っきりだっていうのに、カーテンに手を掛ける勇気はない。
以前ハウアさんが「お前には意気地がない」と言われたのが、骨身に染みてよく分かった。
「今日はごめんね。私どうかしていた」
「謝るのは僕の方だよ。ごめん」
「……ミナトが女の人と話しているとね。なんだか胸がとてもモヤモヤするんだ」
アルナの周りに男が言い寄ってきたら、僕だってその人達に腹が立つ。
「僕だってアルナが他の男性と話していたらするかな」
「……そうなの?」
「うん、そうだよ」
「そうなんだぁ……何でだろう?」
彼女の抱えるものの正体がなんとなく分かるけど、僕が口にしていいものなのかなぁ?
だって今まで彼女は暗殺の世界で過ごしてきて、考えてみれば笑顔でいられたこと自体多分奇跡なんだ。
ならここで焦っても仕方がないよね。
「なんだかミナトが何処か遠くに行ってしまうような気がしたんだ。家には帰れないし、もうミナトしかいないって思ったら、凄く不安になって、それで……」
「僕はどこにもいかないよ。ずっと君の友達だ。それに僕だけじゃない、レオンボさんやハウアさん、それにグディーラさんだっている。君は一人じゃない」
アルナから返事は返ってこなかった。多分寝てしまったのかな。
明日も修行だし自分も寝よう――って眠れるわけないじゃん!
一度些細な喧嘩をしてから僕達はちょっとずつだけど心に抱いていることを話し合うようになった。
そして地下道再潜入を控えた前日。いつものように象気を練る訓練をしていた時だった。
静寂の訓練場で互いの呼吸と心臓の鼓動だけが聴こえるようになった途端、鈴の音が鳴り響く。
二人の象気がお互いの身体を巡り始め、稲妻と太陽光が交わる感覚。
そして一つになり、僕等は熱い朱金の光に包まれる。
「なに? 急にミナトの陽だまりみたいな温かい象気が、私の中に感じる――」
僕にはアルナの痺れるような活力の象気が流れ込んできた。
「うん、分かる。これが!」
「「共震っ!」」
凄まじい象気の奔流。自分たちの力が何倍も大きくなっているのが理解できる。
「今なら、僕等二人ならなんでもできそうな気がするよ」
「うん。私もミナトと同じ気持ち」
僕達は手を握り合った。まるでアルナがいつもよりもっと身近にいるような、そんな錯覚を覚える。
「お、ようやくか」
さっきまで相も変わらず転寝をしていたハウアさんが身を起こした。
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