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第二章 僕が彼女を『護』る理由

第39話 シスターと遭遇⁉ 『波乱』の予感⁉

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 ふとアルナと目が合った。

 駄目だっ! やっぱり恥ずかしすぎて直視できない!

「あぁそれとミナト。一応忠告しておくけど」

「は、はいっ!」

「もしアルナに手を出したら……分かっているわね?」

「……はい」

 う、わぁ……ぉ。


 鍛錬初日を終了したその日。

 僕等は修行についていけるのかというモヤモヤ。

 それと一緒に暮らすというもんもんとした気持ちを抱えて帰ることになった。

 だけど、まさかグディーラさんが話していたことが、現実になるなんて……。

 それは必要なものをアルナの部屋へと運びを終え、食材を買いに市場へ一緒に出かけた時のこと。

 最初こそ身悶えそうだったし不安もあったよ。

 けど少しの時間だけどアルナとの共同生活に、自分は正直浮かれていたんだ。

 アルナも「食べたいものある?」なんて聴いてきたりして、手を繋いだりなんかして……。

 は、鼻の下なんて伸ばしてないって。

 も、もちろんこれも修練だって分かっているよ!?

 だけど至福の一時は文字通り束の間。教会の傍を通り過ぎようとすると突如終わりを告げた。

「あっ! ミナトさん。こんばん――はぁ!?」

 僕達はばったりと門扉を占めるセイネさんと鉢合わせた。

「あ、セイネさん。こんばんはっぅ!!」

 アルナは不意に折れるんじゃないかってぐらい握ってくる。なに? どうしたの? イタタ……。

「あら? そちらの方はもしかして?」

「え、ええ、しょ、紹介します。この子が以前話していたアルナ。アルナ、この人がセイネさん。一度話したことがあったよね? ほら、教会の」

「……うん」

 いつもの人見知りかな。すごい警戒している。

アルナさん。ミナトさんのの修道女セイネと言います。よろしくお願いしますね」

 多分セイネさんは穏やかに? 微笑んで握手を求めているんだけど、アルナはなぜかもの凄く不機嫌そう。

 本能的な衝動というか。もうなんだか僕は一刻も早く逃げ出したい気持ちでいっぱいだ。

 でもアルナは腕にしがみついて離そうとしてくれない――というか痛い。

 それに何だか締め付ける力が強くなる度に空気が重くなっていくような。

 とりあえずアルナも笑顔で応えてくれた。でも二人とも顔引きつっていない?

「こちらこそよろしく、ミナトののアルナです。かねがね、ミナトと仲良くしてくださってありがとう」

「そうですね、させて頂いていますよ。ミナトさんがどういう話をしているのかは聴かないでおきますけど?」

「私もどういう風にしているのかは聞かないでおくね?」

 彼女達の背後にまるで羽蛇神ケェツァルコアトル大鵬鳥ロックちょうにらみ合う姿が見える。

 ってどんな光景だ? それ?

 でもとにかく今は怪獣大戦争の如き雰囲気に押しつぶされそう……帰りたい。

 アルナとセイネさんの初対面を終え帰宅。

 それからお互い無言のまま食事を作り、美味しそうな料理を円卓に並べ、さぁ食べよう――としたんだけど。

「ねぇ、アルナ、何で怒っているの?」

「……怒ってなんかいない」

 声を荒らげて、口を結んで、そっぽを向いて、いやもう絶対怒っているでしょ?

 泣いているよりかはよっぽど良いけど……どうしてかな?

 修行の後で疲れているせいかな? 少し息が詰まりそう。

「ミナトって女の人の知り合い多かったんだね」

「え? う~ん、そんなこと無いと思うけど……」

 アルナからしたらそんな風に見えるのかな?

 例を挙げるわけじゃないけど、ハウアさんなんて年中遊び回っている。

 もちろん大人の、夜の悪い遊びの方。

「グディーラさんとか、さっきのセイネさんとか。あと故郷に師匠っていう人がいるんだよね? それとヴィンダさんとかいう先輩も……」

「うん、そうだけど……?」

「それにククルっていうハーフ猫人種バーストの、幼馴染の子がいるんでしょ?」

「え? どうして知っているの?」

「ハウアさんから聞いた」

 余計なことを……っていうわけじゃないけど、他にどんなことを吹き込んだのかは気になる。

 けど、まぁ、別にククルは妹みたいなもの。

 グディーラさんもヴィンダさんも姉さんって感じだし、師匠はある意味母親のような人で、皆同じようなものだ。

 セイネさんだっていい友人。

「特にセイネとかいう。本当に修道女? ミナトを見る目がいやらしかった」

 友人への悪態に、流石にというか、いい加減ちょっとカチンときた。

「アルナ。そう人を疑うもんじゃないよ。君の悪い癖だと――」

「……ッ!!!」

 あ……しまった。猜疑心の塊になったのは家庭環境のせいなのに、それを!

「ご、ごめん。さっきのは言葉が過ぎ――」

 気付いたときには既に遅く、案の定――アルナを怒らせてしまった。

「私だってこんな風になりたくなかったよっ!!」

 激昂したアルナは床を蹴るように立ち上がり、円卓に乗っていた夕食が危うくぶちまけそうになる。

 更に蒸籠ジィンロォンを2つ3つ投げつけられ、甘んじて受けるしかなかった。
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