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39.【番外編】2012年の話

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2012年6月

「良いですか、お兄様。はぐれないでくださいね。これから浅草寺に行きますよ」
「はい」
 妹に連れられて、ヒナキは浅草を歩いていた。岐阜から、もとい吸血鬼の屋敷を出てから1週間。都会の様子には未だ慣れない。つい最近、漸く活動範囲が、アリスの済む地域からかつての東京市の広さまで広がったところだ。それでも、ヒナキは外へ出る度に、相変わらず街のあちこちを見回すばかりだった。
 この地域は、首が痛くなりそうな程高い建造物が延々と連なっていた東京駅付近に比べれば、随分嘗ての東京を残している。けれど、向こうに見える「スカイツリー」と呼ばれる巨大な塔が、その景観を現代のものへと変えていた。この塔は先月できたばかりらしいが、知らない間に東京の象徴が東京タワーでなくなっていた事は、ヒナキにとって大きなショックの一つだった。
「ほら、雛兄様ヒナにいさま見て。外国人がたくさんお参りに来ていますよ。今の日本はなのです」
「ぐろうばる……外来語だね?」
「ええ、世界と繋がっているということです。最早、この国に住まうのは日本人だけではありませんからね」
「ううん。私の幼い頃に入ってきた西洋文化とはまた随分異なっているようだね。是れもまた、文明の発展か。相変わらず、洋装には慣れないけれど……。おお、あすこにいるご婦人も西洋人かな」
「いいえ、彼女は日本人です。昨今は、日本人でも髪の色が黒ではない方が多いんですよ」
「はて、面妖な。異国の血が入って来ているのか?」
「必ずしもそうではありません。あとでゆっくりお話ししましょうね。さあ、他の方にぶつからないよう気をつけて」
「はいはい」
 アリスはヒナキの手を引いて、するすると人並みを抜けて行く。歩き慣れているのだろう。ヒナキは生まれてこの方、このように人で溢れた場所で暮らしたことはなかったから(東京生まれではあるが、その当時のことは記憶にない)、すれ違う人々の情報に目が眩み、今にも気分が悪くなりそうだった。この国にこんなに人が暮らしていることすら知らなかったのだから。
 なんとかアリスの後に続いて、参拝を済ませる。人ではないのに、仏に手を合わせるのは不思議な心地であったが、「これからこの街で暮らすのだから挨拶をしましょう」とアリスが言うので、仕方なく従ったまでだ。
「私は不死の怪物ですので、浄土などと云う物に縁は無いでしょう。然し、これから私はこの街で暮す事になりました。いつか世話になるかも知れない。宜しく頼みます」
 胸裡でそう述べて、深々と頭を下げた。考えてみれば、誰かに向かって頭を下げる事自体久しぶりだった。
 ヒナキとアリスは、仲見世を通り、様々な匂いを感じながら、再び雷門へと向かった。見たこともないような色取り取りの菓子や、何か果物を固めたもの(砂糖だろうか?)、ハイカラなお面や衣服、小さなおもちゃのようなもの、何もかもヒナキにとっては未知の世界だ。楽しさよりも、不思議な気持ちの方が大きい。
「私は本当に東京に生まれたんだろうか。全く見憶えがない」
「当然ですわ、お兄様。もう100年経っていますもの」
「ううむ、そうは言っても、昭和以降の日本がこんなに変わるとは思わなんだ。いやはや、もとより、話には聞いていたんだけどもね」
「戦後の日本は凄まじい進歩を遂げましたのよ」
「そのようだね」
 本当に、未だに現実とは思えないほどだ。長年ただぼんやりと生きて、何の進化も退化も遂げなかったヒナキにとって、こんなふうに時間の経過を感じられる時が来ようとは、夢にも思わなかったのだから。全く、妹には感謝してもしきれない。
「さて、今日はどちらに向かいましょうか。行きたいところはありますか?」
「スカイツリというものを近くで見てみたい。それで、あすこの天辺へは上れるのかい?」
「勿論です。展望台がありますよ。参りましょうか、お兄様」
「ええ」
 2人はまた人混みを縫うように進み、一般的な人間よりは随分早くスカイツリーの近くまで辿り着いた。
「本当は、あまりらしい移動はお勧めできないんですよ」
「そうは云っても、時間が惜しいじゃないか。早く天辺の景色を見てみたかったのだ」
「他の方たちに怪しまれぬようお気をつけくださいな。さあ、上へ参りましょう」
「どうやって?」
「先日お教えしたでしょう。エレベーターという乗り物があるのですよ」
「ああ」
 ヒナキが珍しいものに目を奪われている間に、アリスは受付の者に駄賃を払って、何やら紙切れを持って戻って来た。チケットというらしい。それからは、あっという間だった。人の流れに沿って箱型の乗り物に押し込められ、閉じ込められたかと思うと、不思議な浮遊感に見舞われ、気がついた時には「展望台」に到着していたのだ。どんな仕組みで箱が上って行ったのか、ヒナキにはさっぱり分らなかった。
「着きましたよ」
 アリスにそう言われるまで、ヒナキはただの一言も発することができないでいた。エレベイタ、恐ろしい乗り物だ。吸血鬼でも怪しからんと思う速さで、この巨大な塔の天辺まで移動してしまうのだから。
「ここから現在の東京が一望できますわ」
「わぁ」
 ヒナキはガラス張りのに近づくと、視界いっぱいに広がる街を見下ろした。人の住む街が、こんなに小さく見えるなんて。エレベイタのせいで耳が痛くなったことも、もう忘れていた。
「先月できたばかりのタワーですからね。本当は、チケットを手に入れるのも大変だったのですけれど……アラ、お兄様聞いてらっしゃらないわね」
「アリスや、お前の家はどの辺りだい?」
「ここからずっと西南の方ですわ。ええと、こちらかしら」
「おお、小さくて見えないな。私でも見えぬのだから、人の子達にはきっと何も見えまいて」
「お兄様、探すのではなく景色を楽しむのですよ。小さなところばかり見ていてはもったいないです。ほら、見てください。青空の下に広がる東京。とっても美しいですわ」
 確にその通りだ。ヒナキはガラス窓に張付くようにして、眼下の景色を見渡した。射し込む陽光が眩しく暑かったけれど、それよりも、手の平よりも小さな、米粒程になってしまった無数の建物、列車、様々な物たちが、まるで宝箱の中に無秩序にひっくり返されたおもちゃのように見えて、面白い。
「私たちはこんな世界に生きていたのだな」
 地下にいた頃には、分からなかった。知らない間に国は繁栄し、ヒナキに見えないところで、こんなにも面白くも摩訶不思議になっていたのだ。
「どうですか、好きになれそうですか? 人間の世界は」
 アリスが穏やかな声で問いかける。ヒナキは大きく首肯うなずき、知らぬ間に目元に浮かんでいた涙を拭った。



 しばらく展望デッキからの景色を楽しんで、太陽が最も高くなった頃、ヒナキ達はようやく地上へと降りて来た。アリスが、ヒナキのための家財道具を揃えましょうと云うので、どこかで買い物でもしようかと、一先ず駅へ向かって歩き始めたところだった。
 ヒナキは、通りかかった建物の前で、1人の少年が立っていることに気がついた。彼は、きっちりとした洋装(おそらくタキシイドと云う物だ)に身を包んで、不思議な形をした箱を肩に担いでいた。
れは何だろうか」
「あの男の子ですか? きっと、ヴァイオリンケースでしょうね。彼も西洋音楽をやるのです。お兄様と同じですね」
「ほう。あんな小さな子供が」
 ヒナキはすっかり感心して、その子供をじっと観察した。彼はどこか緊張した面持ちで、誰かを待っている様子だった。見たところ、近くに親はいない。きっとどこかへ用事をしに行って、彼はそれを待たされているのだろう。
「なるほど。この会場でチャリティコンサートがあるんですね」
「ん?」
 アリスの言葉に、ヒナキははっと顔を上げた。少年が立っていたのは、何か大きな、先ほどまで見て来た物とは異質な雰囲気を持つ建物だった。どうも、劇場のようなものらしい。
「ちゃりてぃこんさーと……ちゃりてぃとは?」
「ああ……事前活動のことですわ。一年前に東北で大きな震災がありましたでしょう。その復興支援で、このコンサートで上がった収益を寄付するんだそうです。見たところ、倉科元というピアニストが行うようですね」
「ピアニスト、か」
 高永の屋敷の地下牢で暮らした思い出は、面白いことは何もない。けれど、ヒナキの記憶の中に「ピアノ」だけは確かに存在していた。
 数十年前、共に暮らしていた弟が、ヒナキをピアノの前に座らせて「何か弾いてくれ」とせがんだのが切欠だった。何故か彼は、ヒナキが「ピアノを弾くことができる」と知っていたようだった。また、ヒナキ自身、生前の記憶は持たないのに、なぜか「その事」だけは分っていた。
 思えば不思議な話であるが、おかげで退屈せずに数十年を過ごすことができたので、ヒナキにとっては良い思い出だ。
「聴いてみるのは、どうかね?」
「チケットを持っておりませんわ。まだ買えるのかしら」
「あの少年に聞いてみてはどうだろう。あのまま独りで放っておくのも可哀想だ」
「まあ」
 ヒナキはそう思い立って、少年のいる方へ向かって歩き出した。と、その瞬間だ。
 何やらあかしまな男が突然割り込んできて、少年の目の前に立った。明らかに、彼の親ではなさそうだ。
「おいガキ、その楽器よこせや」
 男は汚い声でそう言った。こんなに耳心地の悪い人間の声は初めてだ、とヒナキは思った。
「まあ、卑しいですね」
 アリスが顔を顰める。ヒナキはどうしたら良いか分らず、しばらく様子を見ることにした。助けなければならない、だろうけれど、こんな時の人との接し方など知らない
「おーいボク、聞いてる? オニーサン金に困ってるの~。助けてくれたっていいでしょ?」
「……え、と」
「聞こえてないのかなぁ? 耳聞こえないんなら楽器なんて要らないよねェ」
 男は今にも、子供から力尽ちからづくで楽器を奪い取ろうとしていた。周囲の人間は、誰もその様子に気づいていない。いや、気付かぬふりをしているのだ。
「詰まらぬ事で悩んでいる場合ではないな」
 ヒナキは一度長い息を吐いて、気を引き締めた。それから、その男の真後まうしろに移動し、腕を掴んで止めた。
「御免ください、旦那さん」
「は……?」
 男は突然動かなくなった右手を不審に思い、ヒナキを振り向いた。大層驚いているようだが、無理も無い。高永カレンの血を受け継ぐヒナキは、日本に棲む吸血種の中でも特に体力に優れている。人の力で敵う筈は無い。
「私ども、ちょいと……道に迷っておりまして。良ったらお助け下さいませんか?」
「あ? おい、離せよガキ」
「はて、餓鬼とは、何方どなたの事でしょう。私には判りかねますがね。妹が待っているので、早く案内しに行ってやって頂けませんか。ほら、駄賃なら此処に」
 そう言って、懐にしまっていた紙幣を適当に掴んで、男の手に握らせた。この醜男は、金に困っていたのだろう。ならば、これで黙って手を引く筈だ。そう思ったのだが、男は余りにも奇妙な目つきでヒナキを見ると、渡した金をヒナキに投げ付けて、態と肩をぶつけながら去って行ってしまった。
「あら」
 ヒナキは地面に散らばった紙幣を一瞥してから、少年の方に向き直った。思った以上に、取るに足らない男であった。
「無事かね?」
 怯え切って、目を丸く瞠いたままの子供の頭に手を置くと、なるべく優しく撫でてやった。しゃがんだら、ちょうど目が合う高さだ。まだ、10歳にも満たないのだろう。昔、弟達にもこうして接してやったという事を、ヒナキは不意に思い出した。
「あ……あの、ぼく」
「うん。何だい」
 子供の目が水面のようにゆらりと光る。涙だ、とヒナキが気がついた時には、その一粒が滴となって、滑らかな頬を伝って落ちた。
「よしよし、怖かったね」
 ヒナキは子供を抱き寄せ、背中をさすってやった。子供は黙ったまま涙を流し続け、ヒナキの肩を濡らした。
 その後、少年の母親が彼を迎えにきて、無事に演奏会の会場へ向かって行くまで、ヒナキはどうやって彼の涙を止めれば良いのか、考えあぐねていた。





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