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2章~時の契約~
8.~新人の美人闇魔術教師~
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真紀がなにやら慌てた様子で教室に入ってくるなり、結衣の下へきた。
「どうしたの?」
「な、なんか・・・すごい綺麗な先生が居た!」
「すごい綺麗な先生?」
結衣は不思議そうに真紀を見据えた。
「なんか・・・不思議な感じで・・・よく分からないんだけど・・・」
「・・・?」
意見を聞こうとジンの方に視線を投げかけると、ジンは廊下のほうをジッと見据えていた。
「何か居るの?」
小声な結衣の声に反応するように、ジンは視線を結衣に戻して静かに答えた。
「何か、気配がした・・・」
「何の?」
「分からない・・・”良くないもの”だとは感じるが・・・他には何も・・・」
複雑そうな表情のジンに結衣はそれ以上追求はしなかった。
暫くすると、真紀が言っていた人物だろうとても綺麗な先生が教室に入ってきた。
金色の長い髪に紫色の瞳、一瞬で男の生徒たちを虜に出来そうなスタイルのいい女性だった。
「すごい・・・綺麗・・・」
結衣が小さく呟いた。
「・・・・・・」
ジンは黙ったままその女性を見ているだけだった。
人間ではないものの気配・・・、それにあの紫の瞳・・・人間ではけしてあり得ない色だ。
他の人には見えていないだろうジンのいる方を見てきたということは・・・。強い力の持ち主だ。
「今日から、闇魔術を教えることになりました・・・神月ユリメといいます、よろしくお願いします」
授業の内容はいたって普通だ・・・おかしいところはどこにも無い・・・。
「日阪さん・・」
授業が終わった休み時間に神月が結衣を呼び出した。
「はい?」
「・・・・・・」
ジンは警戒するように神月を見据える。
「・・・確かに私は・・・力が少し強くてあなたが見えるけど・・・」
唐突に神月は結衣の後ろに居たジンに言った。
「!」
ジンは結衣を庇う様に前に出て右手を伸ばし結衣と神月とを遮った。
「そこまで警戒すること無いんじゃないかしら?」
「え・・・っと・・・」
「・・・何者だ?人間ではないだろう?」
人間ではない別の世界の住人ならば、力の有無にかかわらずにジンの姿は見えるだろう。
「え・・先生人間ではないの?!」
拍子抜けしそうな結衣の台詞に、呆れたようにジンは一瞬だけ眉を顰めて結衣に視線を向けてからすぐに神月に視線を戻した。
「流石ね、理事長に話は聞いてたけど・・・ほんとに・・・」
言いかけて神月は口元に笑みを浮かべた。
「・・・・?」
「安心していいわ、今は何もする気はないから・・・」
「・・・”今は”?」
ジンが睨む様に神月を見据えた。
「ええ、まだ時期ではないから・・・」
いちいち台詞に意図があるような引っ掛かりを残すような言い方がどうも気に食わない。
「・・・・結衣に危害を与えるようなら容赦しない・・・」
「随分、”契約”って”捕縛”と違って従順になれるのね?」
そういう神月は相変わらず口元には笑みがこぼれている。
「・・・・」
気にいらない・・・。
今此処で力の限り切り裂いてやりたい衝動に駆られるほど・・・無性に・・・狂わされる・・・。自分でも気がつかないうちに冷たい刃のような気が出ていたのだろう・・後ろで始めて感じるジンの殺気に結衣は足がすくんで動けずに居た。
「・・・・・」
明らかにいつもの冷静なジンとは違う雰囲気・・・恐いとさえ感じた。結衣は震える体で必死に手を伸ばしジンの右手に縋り付いた。
驚いたようにジンは自分の腕に俯いたまま縋り付く結衣に視線を向けた。結衣の手が小刻みに震えている・・・。
その目はもうさっきまでとは別で、いつもの穏やかで澄んだ翠色だった。
「すまない・・・」
ジンは静かに結衣に囁き、もう片方の手で結衣の頭を撫でた。怖がらせるつもりなんてなかった・・・。
結衣は俯いてた顔を上げジンを見据えた。
「・・・・・・・次の授業があるから私はこれで・・・」
何事も無かったように神月が2人の前から去っていた。
「どうしたの?」
「な、なんか・・・すごい綺麗な先生が居た!」
「すごい綺麗な先生?」
結衣は不思議そうに真紀を見据えた。
「なんか・・・不思議な感じで・・・よく分からないんだけど・・・」
「・・・?」
意見を聞こうとジンの方に視線を投げかけると、ジンは廊下のほうをジッと見据えていた。
「何か居るの?」
小声な結衣の声に反応するように、ジンは視線を結衣に戻して静かに答えた。
「何か、気配がした・・・」
「何の?」
「分からない・・・”良くないもの”だとは感じるが・・・他には何も・・・」
複雑そうな表情のジンに結衣はそれ以上追求はしなかった。
暫くすると、真紀が言っていた人物だろうとても綺麗な先生が教室に入ってきた。
金色の長い髪に紫色の瞳、一瞬で男の生徒たちを虜に出来そうなスタイルのいい女性だった。
「すごい・・・綺麗・・・」
結衣が小さく呟いた。
「・・・・・・」
ジンは黙ったままその女性を見ているだけだった。
人間ではないものの気配・・・、それにあの紫の瞳・・・人間ではけしてあり得ない色だ。
他の人には見えていないだろうジンのいる方を見てきたということは・・・。強い力の持ち主だ。
「今日から、闇魔術を教えることになりました・・・神月ユリメといいます、よろしくお願いします」
授業の内容はいたって普通だ・・・おかしいところはどこにも無い・・・。
「日阪さん・・」
授業が終わった休み時間に神月が結衣を呼び出した。
「はい?」
「・・・・・・」
ジンは警戒するように神月を見据える。
「・・・確かに私は・・・力が少し強くてあなたが見えるけど・・・」
唐突に神月は結衣の後ろに居たジンに言った。
「!」
ジンは結衣を庇う様に前に出て右手を伸ばし結衣と神月とを遮った。
「そこまで警戒すること無いんじゃないかしら?」
「え・・・っと・・・」
「・・・何者だ?人間ではないだろう?」
人間ではない別の世界の住人ならば、力の有無にかかわらずにジンの姿は見えるだろう。
「え・・先生人間ではないの?!」
拍子抜けしそうな結衣の台詞に、呆れたようにジンは一瞬だけ眉を顰めて結衣に視線を向けてからすぐに神月に視線を戻した。
「流石ね、理事長に話は聞いてたけど・・・ほんとに・・・」
言いかけて神月は口元に笑みを浮かべた。
「・・・・?」
「安心していいわ、今は何もする気はないから・・・」
「・・・”今は”?」
ジンが睨む様に神月を見据えた。
「ええ、まだ時期ではないから・・・」
いちいち台詞に意図があるような引っ掛かりを残すような言い方がどうも気に食わない。
「・・・・結衣に危害を与えるようなら容赦しない・・・」
「随分、”契約”って”捕縛”と違って従順になれるのね?」
そういう神月は相変わらず口元には笑みがこぼれている。
「・・・・」
気にいらない・・・。
今此処で力の限り切り裂いてやりたい衝動に駆られるほど・・・無性に・・・狂わされる・・・。自分でも気がつかないうちに冷たい刃のような気が出ていたのだろう・・後ろで始めて感じるジンの殺気に結衣は足がすくんで動けずに居た。
「・・・・・」
明らかにいつもの冷静なジンとは違う雰囲気・・・恐いとさえ感じた。結衣は震える体で必死に手を伸ばしジンの右手に縋り付いた。
驚いたようにジンは自分の腕に俯いたまま縋り付く結衣に視線を向けた。結衣の手が小刻みに震えている・・・。
その目はもうさっきまでとは別で、いつもの穏やかで澄んだ翠色だった。
「すまない・・・」
ジンは静かに結衣に囁き、もう片方の手で結衣の頭を撫でた。怖がらせるつもりなんてなかった・・・。
結衣は俯いてた顔を上げジンを見据えた。
「・・・・・・・次の授業があるから私はこれで・・・」
何事も無かったように神月が2人の前から去っていた。
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