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新しい世界の始まり

魔物の巣窟で強化訓練2

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「剣も想像で造れるんじゃないか?」


ジンが何気なく発した言葉にゼノンは驚きを隠せなかった。


「?!」


(格好良くて、強度があって、切れ味もあって・・・そんな夢のような自分だけの武器・・・魔法なら何度だって出せる・・・)


堅い外郭の魔物はゆっくりと武器を失ったゼノンの方に近付いてきていた。


(どんなのが良いだろう・・・?ゲームとかで良くある、聖剣や魔剣みたいな?)


「・・・ゼノン、敵を前に何を考えている?」


ジンに声をかけられゼノンはハッとして画面に視線を戻した。

敵がもう目と鼻の先まで迫っていたのだ。


(と、とりあえず属性をもった強そうな・・・剣!!)


魔術書に直接書き込む。絵を描くのはちょっとだけ得意だ。

書き終えると光を放った“それ”はゼノンの手に握られていた。

両刃の剣で剣の身に魔法を宿した赤い模様が刻まれた黒銀色の剣で柄の隅には鎖が繋がっていた。

自分が創ったこの世に一つだけの自分の武器。

これは男として興奮せずには居られない。



この時僕はまだこの違和感に気付いてなかった、新しい武器や魔法に興奮して気持ちが剃れていたから。

思えば精霊王にあったときから、いや、ジンに最初に出会ったあの時から少しづつおかしかったのかもしれない。



新しい剣は、堅い外郭の魔物を真っ二つに切り裂いた、すさまじい切れ味で、刃こぼれ一つしていなかった。


「凄い・・・」

「良い業物が出来たな、名をつけてやらないとな・・・」

「名前・・・」


ゼノンは再び自分が持つ剣に視線を向けた。

視線を引き込むような魔法を宿した赤い模様と白い光を仄かに纏っている黒銀色の剣身と鎖。


「・・・・夜鎖神・・・」


ポツリと勝手に口が言葉を発した気がした、無意識だったのだ。


「・・・やさがみ?」


今自分が発した言葉を再度確認するようにゼノンはその名を口にした。


「良い名だ・・・」


剣は名付けられるとゼノンの手からスッと消えた。


「?!」

「呼べば出てくるだろう・・・」

「夜鎖神」


名を呼んだら本当に剣が目の前に現れ浮いていた。出番を持ちきれないと言わんばかりに赤い模様が輝いている。


(凄い・・・便利だ・・・)


「新しい武器に慣れるためにも、もう少し倒してみるか?」

「はい」


古びた廃墟となった城を根城にしていた魔物達を片っ端から切り伏せていく。

普通に斬りかかっただけでも切れ味抜群の夜鎖神は敵を真っ二つにしていた。


(ちょっと、間違ったりしたらヤバい大惨事とかになったりするんじゃ?)


「・・・大丈夫かな?」


それだけで“何が”大丈夫なのか察したのかジンが口を開いた。


「魔法の剣だ、倒す意思がなければその威力も落ちるだろう」


(ジンさんはエスパーかもしれない・・・)


段々と廃城の奥深くに進んでいく2人。


「そういえば、どうして、僕にそんなに力を貸してくれるんですか?」


ふと気になっていたことを聞いてみた。


「・・・・君は何処か彼女に似ているから、かな」

「彼女?」

「俺の連れで大切な人でもある。・・・・俺に何かあったら代わりに彼女の力になってやって欲しい」

「やめて下さいよ、縁起でもない・・・ですが僕で良ければ力になります」

「ありがとう」


優しく微笑みジンはそう口にした。


「どんな人なんです?」


敵も殆ど殲滅しきって現れる気配もないので2人はテーブルに腰掛けながら話を進めた。

ゼノンの質問にジンは少し考える素振りをしてから急に笑い出した。


「え?!ジンさん?!」

「す、すまない・・・色々思い出してしまった、・・・そうだな・・・一緒に居て飽きないな」


そう言いながらまたクスクス笑いを耐えていた。

その様子から見ると面白い人なのだろうか、きっとそうに違いない。
いつか会えたら良いな。

そんなことを語っていたら城の奥の扉がゆっくりと開いた。

2人は立ち上がり扉の方に視線を向けた、その先は玉座の間で、此処を根城にしていた言わばボスが待ち構えている。

姿は黒いシルエットしか見えないけれど、騎士のような姿だった。


「さぁ、ゼノン用意は良いか?」

「はい」

「俺は手を出さないから、1人で倒してみせろ」

「・・・やってみます」

そう息巻いて黒騎士を見据えると、夜鎖神の赤い模様が脈を打つように呼応して煌めいた。






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