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カノジョより、セフレのお前がいい

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『……これで何度目? 玲央れお、わたしと遊びたくないの?』
「だから、わりぃって言ってるだろ。また余裕がある日を見つけてデートしようぜ」
『その余裕ある日っていつ? いつも忙しいって言ってるだけじゃない!』
「しょーがねぇだろ。バイトも入れないと生活できねぇしよ」
『べつにお金かかるところに行かなくたっていい。玲央の家でもいいんだよ? なのに──』
「オレんところのアパート、狭いし壁薄いし女連れ込むのもできねーんだって」
『そうやって、言い訳ばっかり……』
「わかった、悪かった。オレが悪い。あとで次のデートのこと話し合おうぜ?」
『…………』
「じゃ、オレもうバイト入らないといけねーから。切るぞ」
『あっ、ちょっと、待っ──』


 ──スマホを、ベッドに放り投げる。


「……はー」

 盛大なため息をつきながら、玲央はベッドに仰向けになった。
 気だるげに、ぼーっと天井を眺めている彼に対して──

「……よく、あんな大嘘つけるね」

 居間の戸口付近から、呆れたような声が響いた。
 玲央は頭を動かして、その人物のほうへ視線を向ける。

 ──どことなく幼い感じの、大人しそうな青年が立っていた。

 体は小柄で、さらに童顔な容姿なことも相まって、あるいは少年のようにも見える。玲央と並んで立ったら、とても同い年とは思えないことだろう。

「何が大嘘だって?」
「バイトなんてないくせに」
「ああ、そりゃ小さな嘘だから大嘘じゃねーな」
「この部屋、広くはないけど壁は薄くないでしょ? お隣さんの声が聞こえたこともないし」
「そりゃ隣人の行儀がいいだけだ。ギャンギャン騒がれると普通に響くからな?」
「……そんな叫ぶことなんてある?」
「あるだろ。セックスしてる時はうるせーのなんのって」

 玲央はゆっくりと体を起こすと、テーブルの上に置いてあったタバコの箱を手に取った。
 口に咥え、ライターで火をつけていると、どこかおずおずと質問の声が来る。

「……カノジョさん、その……そんなに、声でるの?」
「まあな。喘ぎなんて人によりけりなんだろうが……もっと上品にできないもんかねぇ」
「……そういうのって、言われても直せるものじゃなくない?」
「だから、アイツとヤるのがイヤなんだって話だ」

 タバコをふかしながら、玲央は部屋に連れ込んでいる“友達”の顔を見上げる。
 彼はいまだに、所在なさげに突っ立っているままだった。
 家に呼びつけられて来たものの、どうすればいいか分からない──というような表情だ。

「──奏多かなた

 玲央はタバコを灰皿に押し付けると、立ち上がりながら言葉を発した。
 びくりと、名前を呼ばれた彼──奏多はどこか緊張したような反応を見せる。

「いつまでボケっとそこにいるんだよ」
「……だって…………」
「相変わらず自分からは動かねぇヤツだな、お前」

 呆れたように言いながら、玲央はゆっくりと彼のそばに近づく。
 間近で向かい合った二人の身長は、かなり離れていた。
 玲央の背も高めではあるが──
 それ以上に、奏多の身長が男性平均よりも低いことが身長差を際立たせていた。

「──やることなんて、わかってんだろ?」

 さらに体を近づけた玲央は──
 奏多の腰のほうに手を回した。

「ぁ…………」

 体に触れられ、小さく声を漏らした彼の顔は、わずかに赤くなっている。
 玲央はそのまま手の位置を下にずらすと──
 臀部の肉を、手のひらで包んで圧を加えた。

「うぅ……」

 普通の男友達同士では、けっしてやらないような行為。
 だが、玲央と奏多は──“そういうこと”をする間柄を築いていた。

 初めは本当に、ただの友達──
 いや、大学の同級生に過ぎなかった。
 消極的で受け身気質の奏多は、どちらかというと玲央と気が合うようなタイプではない。
 ただ、ある時の大学内で。たまたま一人で昼飯を取ることになった玲央は、学食内で静かに食事をしている奏多の隣席に座ったのだ。
 そして玲央のほうから奏多に話しかけて──友達付き合いが始まった。

 おそらく、奏多のほうは友達が少なかったからだろう。
 玲央に懐くような形で、ときおり学食で一緒に昼食を取った。
 そしてある日。二人が大学のクラス飲み会に参加した時に、はじめて踏み込んだ話題を交わした。

『──お前、どういう女が好みなの?』
『……ぼくは、べつに……そういうの、とくになくて……』
『はン? 女なら誰でもいいってことか?』
『そ……そうじゃなくて……女の人に、とくに興味がないから……』
『はぁ? もしかして、お前──ホモかよ?』
『…………』

 顔を赤くしながら沈黙していたのは、酒のせいだけではなかったのだろう。
 その飲み会が終わってから、二人は帰路についたのだが──
 アルコールに弱く、酔いつぶれた奏多は自分ひとりで帰宅することもままならない状態だった。

 だから、玲央は彼を自分のアパートに連れ帰った。
 そして──思ったのだ。

 ──顔はそれなりに可愛いし、ヤれなくはないな。

 ……と。



『お前さ、やっぱ男とヤリたいとか思ったりするの?』
『…………』
『女のまんこに突っ込むより、男のケツに突っ込むほうが興奮する感じ?』
『ぃ……いや……ぼくは、その……どっちかというと、逆で……』
『逆?』
『…………ネコ、だから……』
『ネコ? あー……アレか? 掘られて興奮するマゾ野郎なのか?』
『うっ……ま、マゾって言うほど……じゃないけど……!』







『だったらさ──』








「ぅ……」

 ──右手で尻を掴んだまま、もう片方の手を伸ばす。

 玲央は左手で、奏多の局部に触れた。
 ズボン越しにまさぐると、すぐに硬さを帯びた男性器が見つけられる。
 玲央自身は、とくに男のそれに興味があるわけではないが──
 体格相応に小さい奏多の性器に関しては、そこまで拒否感というものはなかった。

「あ……ぅ…………♡」

 上擦うわずった、喘ぎのような声が耳に入る。
 奏多の声はもともと高めで澄んでいて、耳障りも良かった。
 おそらく、男性ホルモンが強くない体質なのだろう。性的指向が男なのも、そのへんに起因しているのかもしれない。

「……ん……っ……♡」

 男に体をまさぐられながら、顔を赤くして目を伏せ、艶っぽい声を漏らす姿。

 それは、玲央にとっては──
 否定しようもなく、“メス”として目に映っていた。

「──ケツとチンコ揉まれて発情してんじゃねぇよ」
「ぅ……っ……♡」

 無造作に、無遠慮に、強く力を入れて掴む。
 優しさに欠けた行為だったが──
 それを向けられた奏多は、どこか熱っぽい吐息をこぼしていた。

 そういう荒っぽい接し方をされることが、彼の好みだと玲央はすでに知っている。
 自分とは正反対だ、と玲央はあらためて思った。
 だからこそ──
 性的な行為における相性は、とても良かった。

「──服、脱げよ」
「……うん…………」

 命じられて、奏多はゆっくりと衣服を一枚ずつ脱いでいく。
 さっさと裸になる玲央に対して、奏多はどこか躊躇ためらいがちに肌をさらしていった。

 ──男同士で裸になること。
 そんなことは、どの男子にも経験はあるものだった。プールの更衣室なり、修学旅行の浴場なり、知り合いの同性に裸体を見せる機会は少なくない。
 だが──

 お互いに男性器を勃起させて向かい合うのは、“特別な間柄”でしか起こりえない行為だった。

「まずは、そうだな──」
「…………」
「──しゃぶれよ」

 ベッドのふちに腰掛け、かすかに口元を吊り上げながら、玲央はそう言った。
 性的な奉仕の命令。
 それを受けた奏多は、やや緊張したような表情のまま──

「うん……」

 ──どこか喜色を含んだような声で、うなずいてみせた。

 そう命令されることを、本心では嬉しがっているように。
 奏多は熱っぽい瞳で──そそり立つ玲央の股間に顔を近づけた。

「ん……♡」

 色っぽい声とともに──ちゅっ、と奏多は亀頭に口づけをした。
 唇で柔らかく包み込んだそれを、飴のように舌で撫でる。
 子供が、美味しい棒アイスを味わうかのように。
 玲央の陰茎を──愛おしくしゃぶりはじめた。

「お前さ」
「……んー?♡」
「よく男のチンコ、そんな嬉しそうに咥えられるよな」

 そう言うと、奏多は一瞬だけ口を離して答える。

「えっ、だって……相手を気持ちよくしてたら、楽しくならない……? んっ……♡」
「……そんなもんかねぇ」
「ぅ……んっ♡ んぐっ……♡♡」
「まっ、イヤイヤやるよりかは遥かにいいけどな」
「んー……♡」
「オレのカノジョなんて、あんまフェラやりたがらないし」

 ──その点は、玲央が奏多を気に入っている部分でもあった。

 恋人と比較した玲央の言葉に、何か感じ入るところでもあったのか。
 奏多は口の動きを早めて、男性器の裏筋を舌で重点的に刺激する。

「んっ♡ ん……♡♡」
「……やっぱ、男だから気持ちいいところ分かってんな。お前のが上手いわ」
「んふっ……♡」

 嬉しそうに顔を緩ませながら、奏多はそれを口で奉仕しつづける。
 だが、やがて──
 同じことが続くのにも、少し飽きが訪れてくる。

「──奏多」
「んん……♡」
「お前、どれくらいまで口の中に入れられる?」

 ふいに発した質問は、実質的には命令を表していた。

 ──もっと深くまでしゃぶってみせろ。

 その意図を理解した奏多は、ほんの少しの恐怖と、そして多大なる興味に衝き動かされて──

「ん、ぐっ……♡」

 陰茎を深く、呑み込むように口に収める。
 細長いそれが──喉のところまで接触していた。

「そうやって必死にチンコ、口に入れてるお前の顔──最高だな」
「ぅ……ぐぅ……♡♡」

 湧き上がる征服感に、玲央は小気味いい気分を抱く。
 こんなプレイは、自分のカノジョとは絶対にできないような内容だった。
 次第に大きくなる興奮に、おもわず両腕が動いて──

「なぁ、奏多──」

 その頭を手で抱えるように掴む。

「そんなに、男のチンコが大好きならよ──」

 そして、力を籠めて──

「──もっと奥まで咥えろよッ」
「ん゙ぅっ──!?」

 自分の陰茎の、根本のほうへ向けて──奏多の頭を無理やり押さえつける。

「ぉ……♡ ぐぉぉ……♡♡」

 濁った声を漏らしながら──奏多の唇が、男性器の付け根近くまでを覆っていた。
 勃起したそれが、完全に……口の中に呑まれている。
 亀頭は喉奥にぶつかり、快い圧を玲央に与えていた。

「ぅ゙……♡ ん゙ぉ……♡♡♡」
「お前の大好きなチンコで喉まで犯されて──嬉しいだろ?」
「っ────♡♡♡」

 奏多の瞳は、涙を浮かべていた。
 それは異物を押し込まれたことによる本能的な反応であると同時に──

 男性器で口内をめちゃくちゃに犯されていることに対する、嬉し泣きでもあった。

「ぁ゙……っ……♡♡」

 その目から、一筋の涙がこぼれ落ちた瞬間──
 玲央はようやく奏多の頭から手を離し、強制イラマチオから解放させてやった。

「ゔっ──♡ ぐぁっ……げほっ……ぅ゙……」

 咳とともに息を整える奏多。
 その唇からは、唾液がだらしなく糸を引いて落ちていた。

「うぅ……苦しかった……」
「なんだよ、こういうの好きなんだろ?」
「いや……き……嫌いじゃないけど……。やりすぎだと……ちょっと、ってだけで……」

 ──嫌いではない。
 そんな言葉は、けっきょく奏多の性質をはっきりと表していた。

「──ベッド、来いよ」

 硬くなり、奏多の唾液で濡れきった陰茎。
 その挿入先を求めるように、玲央はそう言った。

「ぅ……うん……♡」

 上擦った声で──奏多はベッドに上がり、仰向けの体勢になる。
 枕に頭を置いて、足を開いて、相手からの挿入を待つ姿──

 玲央にとっては、見慣れた光景だ。
 女とヤる時の──至って普通のシチュエーション。
 ただ違いがあるとすれば──

「勃起させてんじゃねぇよ、この変態マゾホモ野郎」
「あっ──♡」

 局部にある、女性には絶対に存在しないモノ。
 それを玲央は──無造作に、乱暴に平手打ちした。

 叩かれた奏多の、勃起した陰茎は……どこか喜ぶようにビクっと動いていた。

「なぁ、奏多──」
「ぅ……ん……♡」
「ケツの穴、ちゃんと洗ってから来たんだろうな?」
「うん……だいじょう、ぶ……だから……♡」

 ピクピクと陰茎を揺らしながら、奏多は挿入を待ちわびるように答える。
 男同士の性交。
 それをするためには直腸洗浄が必要だが──こうして奏多とする時は、事前に外出前に“穴”を綺麗にしておくよう命じていた。

 本来は、排泄をするための器官。
 だが、きちんと洗浄されているのであれば──

 そこは……女性器と変わりはしないモノだった。

「──挿れるぞ」

 玲央はそう言うと、自分の男性器を奏多の肛門へと向けた。
 亀頭が──その入り口と触れ合う。
 そこから、ぐっと力を込めると……勃起した陰茎は、たやすく中へと沈みはじめた。

「んっ──♡」

 女のような喘ぎ声が、奏多の口から漏れた。
 外からモノを押し入れられた肛門は──それを受け入れて、本人に痛みとは正反対の感覚をもたらしているようだ。

「あっ♡ あぁ……♡」

 男からケツを掘られて──彼はとろけたような表情を浮かべていた。
 肛門を刺激されて、いったい何がそんなに気持ちいいのか。
 玲央にとっては理解しがたく、そして理解しようとも思わなかった。
 ただ、確かに言えることは──

「んっ──♡ うぅ……♡ ぁ……♡」
「────っ」
「あっ♡ あっ──♡ だめっ……♡ そんなっ♡ つよくぅ……♡♡」

 男性器を包み込む、その穴を使えば──
 玲央にも快感がもたらされるのは間違いなかった

「あっあっあぁぁぁ──♡♡」

 腰に力を入れて、大きく性交の動きを繰り返せば──
 玲央の陰茎と、奏多の肛門に、強く摩擦が発生する。
 刺激を大きくすればするほど、奏多の口からは甘い喘ぎ声がこぼれ落ちた。

「んぅぅっ──♡♡ あっ♡ あぅぅっ……♡♡」
「──喘ぎすぎだろ」
「だってぇっ♡ んっ♡ れお、くんのぉ……♡♡ きもちよすぎてぇ──♡♡」
「……なにが、気持ちいいって?」
「それ……はぁ……♡ ぅ……♡」

 うめいたまま、回答がない奏多の様子を見て──

 玲央は、彼の勃起した男性器を乱雑に引っ叩いた。

「ひぅっ──♡♡」
「──俺の質問には、答えろよ」
「あっあっあっ♡ ごめんなさいぃっ♡ おちんちんっ♡ きもちぃですぅ──♡♡♡」
「──このマゾホモ野郎が」
「ごめんなさいっ♡ もっとぉ──♡♡ おちんちんでぇっ♡♡ 犯して、くださぃ♡♡♡」

 ──だんだんと、化けの皮が剥がれてくる。
 男から犯されて、淫らな言葉を口にしながら、喘ぎよろこぶ姿。
 それが──奏多の本性だった。

 ここまでスイッチが入ったら……もはや、手加減も必要ない。
 玲央はいちど、力を溜めるように腰を引き下げると──

 そこから勢いをつけて、激しく奏多の腸内なかにソレを突きつけた。

「あ゙ぅ゙ぅぅぅぅっ────♡♡♡」

 悲鳴のような声とともに、奏多の体がビクリと動いた。
 乱暴な肛門の使い方──
 しかし、それでも……奏多の表情は、歓喜に支配されていた。

「あ゙っ♡ あ゙ぁぁっ♡♡ だめぇっ♡♡ ひぃぃ……♡♡♡」

 力任せに、奏多の尻穴を犯しながら──
 玲央は、静かな声で話しかけた。

「なぁ、奏多──」
「ん゙ぁぁっ♡ あ゙っあ゙っあ゙ぁ──♡♡」
「──最初に、言ったよな」
「あ゙っ…………♡」

 玲央は挿入したまま、奏多の体に覆いかぶさるように上半身を傾けると、腕を伸ばして──



「──喘ぎ声がうるせぇヤツは、嫌いだって」



 その手を奏多の首にあてがい──力を籠めた。

「ぁ゙っ……♡」

 物理的に発声を押しとどめられた奏多は、うめくような声だけを漏らす。
 その首を絞めたまま──玲央は、腰を動かして彼の肛門を犯す。

「ぅ゙……♡ ぁ゙……ぁ……♡ ん゙……ぅ゙……♡」

 ベッドに首を押さえつけられ、息苦しさがあるはずなのに。
 奏多の、表情は──

「ぁ゙……♡♡ ん゙っ……♡♡♡」

 悦びと、幸せに、満ちあふれていた。

「……首絞めされながら、笑うなよ」
「ぅ゙ぅ…………♡♡♡」
「──この、バカが」

 罵りながら──玲央は、ようやく彼の首から手を離した。

「ゔっ♡ ぁ……♡ はぁ……はぁ……♡」
「──休むなよ」
「あ゙っ──♡♡ ぁ゙んっ……♡♡」

 息を整える暇も与えず──ふたたび奏多の中を、硬い男性器で掻き乱す。
 首を圧迫された影響だろうか、彼の瞳には涙がにじんでいた。

「あ゙ぅぅ……♡♡ うっ……♡ んぅっ──♡♡♡」

 泣きながら喘いでいる姿に──玲央は興奮が喚起されるのを感じた。
 自分のカノジョを相手には、決してできないようなプレイ。
 それを奏多相手には──躊躇なく、自由に、思う存分、好きにヤれる。

 だから……好きだった。
 あの女より、この男とセックスするほうが。

「あ゙っあ゙っあ゙っ──♡♡♡ ゔぅぅぅ……♡♡」

 尻穴を、めちゃくちゃに犯されながら──奏多は幸せそうな顔をしている。
 そんな彼に、玲央はなんとなく尋ねた。

「……なぁ」
「ゔぅ……♡ な……に゙ぃ……♡♡」
「そんなに──チンコ挿れられるのが好きなのかよ」

 その言葉に、奏多は弛緩した笑顔で答える。

「う……♡ んっ──♡♡ す、きっ……♡♡」
「…………」
「あっあっ……♡♡ すきぃ……♡ れお、くぅん……♡♡」
「──気色悪いこと言うなよ」

 責めるように激しい衝撃を与えると──奏多は嬉しがるような悲鳴を上げた。

「ひぃんっ♡♡ ごめんなさぃぃ♡♡♡ うぅぅ……♡♡ ごめんなさい……ごめんなさい……♡ あぁんっ……♡♡」

 謝りながら、淫らな声をこぼす奏多。
 その顔を、見下ろしていると──

 ……もっと虐めてやりたいという気持ちが、玲央の心に湧き上がる。

「ん゙ぅっ──♡」
「…………」

 喘ぐ奏多の──その局部に、手を伸ばす。
 自分と同じように付いている、男性器。
 男と、女の……明確な違いの器官。
 奏多の、それを──玲央は乱雑に掴んだ。

「ひぁっ──♡♡ あっ……♡ ゃ……だぁ……♡♡」
「やだ、じゃねぇよ。ぶらぶらと勃起したチンコ揺らして、目障りなんだよ」
「ひぃぃ……♡♡♡ そんなっ♡ つよ、く……♡」

 強く──玲央は、奏多の陰茎を握った。
 勃起した、同性の性器。
 そんなものを、この手に触れようとは──少し前の玲央からすれば、思いもしないことだった。

「あ゙っあ゙っ……♡♡ ゔぅ゙ぅぅ……♡♡」
「どんだけ我慢汁、出してんだよ。変態が」
「ん゙ぁっ──♡♡♡」

 尿道口からしたたった、粘性の体液。
 それが陰茎を握った、玲央の手もよごしてゆく。

「ゔっ……♡ ぁ゙……♡♡♡」

 歪んで、乱れた、奏多の顔。
 それを眺めていると──もっと、狂わせてみたくなる。
 その気持ちに衝き動かされて──玲央は、手にした男性器に刺激を加えはじめた。

「ゔぁ゙ぁぁっ♡♡♡ ん゙ぁ゙っ──♡♡♡」

 男性器に、手で快感を与えるということ。
 そんなものは、すべての男がやり方を心得ていた。
 自分がオナニーをする時のように──奏多の性器をしごきはじめる。

「ひぃっ──♡♡ あ゙ぁっ……♡♡♡」

 びくりと腰を震わせながら、奏多はだらしなく開いた口から嬌声を漏らす。
 その表情からは──限界が近づいているのが見てとれた。

「……奏多」
「ん゙っ♡♡ あ゙っ♡ あ゙っ♡ あ゙ぁ──♡♡♡」
「我慢しろよ、おい」
「あ゙ぅ゙ぅぅぅ……♡♡♡ む……り゙ぃぃ……♡♡♡」

 引き攣った顔で、そう答える奏多に対して──

 肛門への律動を大きくし、男性器をしごくスピードを速める。

「ん゙ひぃぃぃ──♡♡♡ だめだめだめぇぇぇぇ──♡♡♡」
「うるせぇ、叫ぶんじゃねぇよ」
「ひぐぅっ──♡♡♡ ゔ……♡ ぁ゙……♡ だ、め゙……♡♡ もぅ──♡♡♡」

 責めるように、奏多の肛門へ強い一突きを与えると──

 ……彼の陰茎が、びくりと特徴的な動きをした。

「あ゙っ────♡♡♡」

 ──精巣から、尿道を通って、それが射出される現象。
 経験的にその瞬間を悟っていた玲央は、彼の尿道口の向きをとっさに変えた。

「ゔぅっ────♡♡♡」

 うめき声とともに──奏多の男性器の先から、白い体液が解き放たれる。
 勢いよく、宙を駆けた精液は──

「……自分に顔射してんじゃねぇよ」
「ゔぅぅ……♡♡♡」

 奏多の鼻筋から、あごにかけて──白濁した粘液がかかっていた。
 自分で自分を汚した、無様ぶざまな姿。
 それをあざ笑うかのように──
 玲央は手を伸ばし、彼の顔面に付着した精液をすくい取って。
 そのねばついた白濁液を……奏多の唇のもとへ持っていった。

「自分で出したもんは……自分で処理しろよ」
「ぁ゙……♡」

 奏多の精液の付いた指を──その口の中に、ねじ込む。
 すぐに生温かい感触が、伝わってきた。
 彼の舌が──まるで犬のように、玲央の指を舐めまわしていた。

「ん゙ぅ゙……♡♡」

 自分の精液すらいとわず、きれいに舐め取る奏多。
 玲央が指を引き抜くと──えへへ、とあどけない笑みが向けられた。

「ぃ……♡ ぃっちゃ、ったぁ……♡♡♡」
「…………」
「き……♡ きもち、よすぎてぇ……♡♡ うぅ……♡」
「──誰が、イっていいって言った?」
「…………え?」
「──勝手に、イってんじゃねぇよッ」

 怒りを抱いているかのような態度で──
 乱暴に、激しく──奏多の尻を勢いよく突き上げた。

「ん゙ひぃぃっ──♡♡♡ ごめんなさいごめんなさい゙ぃ゙ぃぃ♡♡♡」
「俺はまだ全然イケねぇのによォ──!」
「あ゙あ゙ぁ゙ぁぁぁっ──♡♡♡ 勝手にイってごめ゙ん゙なさぁい゙っ──♡♡♡ ん゙ぁ゙っ♡♡♡」
「ケツも緩すぎなんだよ、この早漏野郎がぁ! もっと締めやがれッ!」
「あ゙っあ゙っあ゙ぁ゙ぁっ──♡♡♡ お尻がばがばでぇぇっ♡♡ ごめんなざぃ゙ぃ──♡♡♡ ゔぅぅっ♡♡♡」

 奏多は激しく突かれるたびに──足腰と、そして陰茎をびくびくと震わせる。
 いちど射精をしているというのに……またすぐに絶頂を迎えそうなほど、その顔は快感に支配されていた。

「ん゙ぉ゙……♡♡ おちんちんっ♡ つよすぎてぇぇ──♡♡ お゙っ──♡♡」
「──なに喜んでるんだよ、このマゾ野郎がッ!」
「ごめ゙んなさい゙ぃ゙っ♡♡♡ あ゙っ♡ あ゙っあ゙っあ゙ぁ゙っ──♡♡♡」

 腰を打ち付け、陰茎を根元まで送り込むたびに──奏多の乱れた喘ぎ声が響く。
 激しく、力強く、そして暴力的な動きでその穴を犯すたびに……よろこびが返ってくる。
 その反応が──玲央にとっては、快かった。

「…………ッ!」
「ん゙ぅ゙っ──♡♡♡ ぅ゙……♡♡ も゙っ♡ も゙っとぉっ──♡♡♡ 犯してぇ゙……♡♡♡」

 精神的な快感は、肉体的な感覚にも影響を及ぼしはじめる。
 男性器を受け入れすぎて、締まりも忘れている奏多の肛門──
 その穴を使った、緩い刺激でも……徐々に高みに近づけていることを玲央は感じた。

「あ゙っあ゙っ──♡♡♡ あ゙────」
「────うるせぇよ」

 腰を振りながら──玲央は、奏多の口を手のひらで押さえつけた。

「────っ♡♡♡ ……ん゙……っ……♡♡♡」

 口を塞いでも──そのとろけた瞳からは、淫乱に喜ぶ感情が露骨に見てとれた。

「なあ、奏多──」
「ぅ゙……っ♡♡♡ ん゙──♡♡♡ っ♡♡♡」
「そろそろよぉ……。お前の、ケツの中に──」
「ッ────♡♡♡♡」

 ──精子を、注いでやるから。

 そう伝えた時の、彼の表情は。
 とても……幸せそうだった。

「……ちゃんと締めろよ、ケツ」
「……っ♡♡♡♡ ……ん゙っ──♡♡♡♡」

 自分の体内に、玲央の精子が送り込まれるのが待ちきれないと言うかのように。
 奏多はその肛門を──精一杯に、引き締めた。
 がばがばで、ゆるゆるだった穴が……心地よい締まりと摩擦を取り戻す。

「────ッ」
「…………っ♡♡♡♡」

 性感をもたらす、奏多の穴。
 それを使って──刺激を加速させて、興奮を最大限まで高めてゆく。

「……ぉ゙……♡♡♡♡ っ────♡♡♡」

 腰を打ち付けるたびに、響く音。
 奏多の塞いだ口から漏れる、喘ぎ声。
 それが合わさって──絶頂のラインにまでいざなう。

「──いく、ぞ……!」
「ぅ゙────♡♡♡♡」

 その穴を──壊してしまうくらいに激しく。
 血の巡った陰茎で、あらんかぎりの摩擦を引き起こし──

 玲央の奥底で、どくりと脈動が沸き上がった。

「────っ!」
「ん゙ぁ゙っ────♡♡♡♡♡♡♡」

 根元まで、奏多の腸内なかに男性器をすべて収めながら──
 どくり、どくりと──玲央は射精をする。

 それと同時に、奏多の陰茎も──
 色の薄くなった精液を、搾り出すかのようにどぴゅりと噴き出していた。

「ん゙……ぉ゙……♡♡♡♡」

 奏多の口から手をどかすと──そこには、快感でバカになったような表情が浮かんでいた。
 二度目の射精に至るほど、気持ちよかったのだろうか。
 淫乱な笑みを浮かべて放心する奏多の顔を見下ろしながら──玲央は彼の直腸内に、精子をすべて注ぎきった。

「──奏多」
「ん゙……ぅ……♡♡」
「いつまでアヘ顔さらしてるんだよ、このアホが」
「うぅぅ……♡ だってぇ……♡ 気持ちよかった、から……♡」

 えへへ、と奏多はだらしのない笑みを向けてくる。

「……そんなに、気持ちいいか?」
「うん……♡ 玲央くんのぉ……♡ おちんちん、最高だよ……♡」
「……そりゃ、どうも」

 その褒め言葉が嘘ではないことは──セックス中の反応がすべて証明していた。
 複雑な気分になりながら、玲央は奏多の肛門から陰茎を引き抜く。

「ぅ……♡ んぅっ──♡」

 色っぽい喘ぎ声を最後に漏らす、奏多。

「いっぱい出されちゃった……♡」
「ベッドに垂れ流したら殺すからな?」
「うぅぅ……わかってるって……」

 玲央がティッシュ箱を渡すと、奏多はそれを使って精液などの汚れを拭き取っていく。
 そんな彼の姿を眺めながら──
 玲央はベッドから離れ、テーブルでタバコを拾って、火を点けた。

 ふぅ、と煙をふかして、玲央はぼんやりと考える。
 結局、奏多とヤるというのは──女とヤるのと変わらなかった。
 ただ使う穴が、膣ではなく肛門というだけで。
 喘ぎ声がうるさくなったら──その口を塞ぐなり、首を絞めるなりすればいい。
 そう……都合が良くて、使いやすい、セフレだった。

 少なくとも、日常でご機嫌を取ったり、セックスで丁重に扱わなくてもいい点は──今の玲央のカノジョよりは優れている。
 そんなことを思いながら……彼は、灰皿に吸いおえたタバコを押し付けた。

「──奏多」
「……うん」
「お前、さっさとシャワー浴びてこいよ」
「ぁ……ぼく、先に使ってもいいの……?」
「お前のほうが精液くせぇんだよ」
「ぅ……わ、わかったから……」

 もぞもぞと、ようやくベッドから這い出てくる奏多。
 尻のほうを気にしているのは──まだ中出しされた精子が腸内に残っているからだろうか。

「ああ、なんなら──」

 玲央は声をかけた。

 ──一緒に、シャワー浴びたほうが早いんじゃないか。

 そう思って──すんでのところで、口をとめた。
 狭いバスルームで、男二人が、体を洗いあう。
 その状況がなんとなく──絵面的に嫌だった。

 セックスするだけなら……まだ、いい。
 ただ、一緒にシャワーを浴びる仲までは……なんとなく、嫌だ。

 奇妙な心情にさいなまれていると──

「……どうしたの?」

 不安そうな表情で、奏多が問いかけてくる。
 口を開いた以上は、何かを言わなければならない。

 玲央は、とっさに──

「……あとで」
「うん」
「──メシでも食いにいくか」
「……え?」
「──ラーメン屋、この近くにそこそこうまいのがある」

 男二人が、ラーメン屋にメシを食いにいく。
 それは、至って──普通で自然の行為だった。

 玲央の提案に、奏多は──

「……うん! いいよっ」

 そう笑顔で、答えた。





『なあ──ここ、席、空いてるか?』
『……え?』
『席、空いてるかって。同じクラスだろ? 顔、覚えてねぇか?』
『あ……ぉ、覚えてるよ、うん……』
『──メシ、一人で食ってんの?』
『……そうだけど…………』
『じゃあ──隣、座って一緒に食っていいか?』



『……うん! いいよっ』





 ──いつまで、こうした関係を続けることになるのだろうか。
 玲央には、まるで予想もつかなかった。
 ただ──

 ……嫌に思うことがないうちは。

「このラーメン……量多くない……!?」
「そうか? 少食すぎだろ、お前」
「うぅぅ……。食べきれないから……チャーシュー1枚もらってくれない……?」
「……しゃーねぇな」

 ──こうして、奏多と関係を続けるのも悪くない。
 そんなことを思いながら、玲央は奏多と時間を過ごすのだった。


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