転移英雄は異世界の中で

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転移英雄は導く希望の中で

自己紹介

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 「「雄一が教官に!?」」

 広場に聴こえる勇者2人分の声。蓮兎と弓奈は、ヘレンから聞かされた決まり事に対し喜びの良い笑顔を浮かべる。

 「同郷の人が教官になるとか、楽しそう!」

 「そうね!日本でしか分からない話とかも出来るわね!」

 どうやら教官としてではなく同郷の話し相手として喜ばれているみたいだ。

 「エクレス。お前に相談せずに決めた事、謝ろう」

 「いやいいですよ!聞く限りだとそれが最善でしたし、メリットの方が大きいですからね!」

 「そうか。そう言ってくれるならありがたい。いかんせん初の事例だったから、勝手が分からなかった」

 「あはは!も勝手が分からない時があるのですね!」

 「む……。それやめてくれないか?私は最強なんかじゃない」

 「またまた御冗談を!」

 こっちはこっちで楽しそうだ。てか、何かヘレンが大陸界最強の騎士って聞こえたんだが、それは本当か?一度戦ってみたいものだ……。

 「ねぇ雄一」

 「?なんだ?」

 ルナに担がれているバルムンクが声を掛けてくる。

 「これで良かったんでしょ?」

 「これで良かったって?」

 「教育係についてよ!……話を聞く限りあの雑魚勇者の力が今後必要なんでしょ?」

 「あ、あぁそうだが」

 「そう……。ま、どれだけ重要だとしても勇者が強くならないとあの雑魚勇者の所に行かないからね!」

 「はいはい」

 この聖剣様も、かなり譲歩してくれたんだな……。これはしっかりと勇者を強くしなくては!!
 すっかり騒がしくなった広場。そこで幾許かの時が経った。
 時が経ち雑談も収まったところで勇者2人を整列させる。

 「よし、雑談も済んだ所で改めて俺らの紹介をしよう!」

 「待ってました!」

 「貴様らが別世界から来た勇者なのは知っている。さて、君らについて事細かに教えてくれ」

 「その強さの秘訣も分かるのでは……」

 お、ヘレン達はそこも理解しているらしい!なら、もしとこうか!

 「よし!俺らの名前と経歴を言っていく!」

 「いいよー!」

 蓮兎、良い返事だ!

 「俺は『東雲 雄一』!世界最大規模の戦争、『終末文明大戦』に置いて少数人で戦争を止め、世界を救うに至った集団のリーダー!」

 俺の説明にルナが続く。

 「私は『ルナ』!『携帯型人造神器』のAIにして雄一のパートナー!あ、今は『』って言うんだっけか。まぁいいや!私は神器として雄一と共に前線に立った仲間!そうゆう事さ理解出来た?」

 「「「「「???????」」」」」

 目の前で佇む四人(バルムンクも)は明らかに疑問符を頭に浮かべている。
 ……うん。そんな気はしてた。
 ヘレンとエクレスは置いといて、蓮兎と弓奈は理解出来ると思ってたが、ちゃんと高校生してる所から地球は地球でも別の世界線の地球らしい。

 「えっと……。リアル話?」

 静かな空気の中、やっと動き出した弓奈が信じられなさそうな顔をしながら問う。

 「イエス。リアルリアル」

 「オールノンフィクション」

 「まっさかぁ……」

 「ねぇ……?」

 「自己紹介に嘘付いたらいかんだろ」

 「そうだぞ!」

 皆信じられない様子。その中、ヘレンが場を離れ直ぐに帰ってくる。その帰ってきたヘレンの手元を見ると、何やら鈴が握られていた。

 「何だそれ?」

 「すまないが本当に思えなかった。だから嘘発見器を使わせてくれ」

 「別に良いぞ」

 ヘレンに渡された鈴型の嘘発見器を握る。

 「このままさっき言った事をもう一回言えば良いのか?」

 「あぁ。大丈夫だ」

 「分かったじゃあ言うぞ?」

 そして俺達は先程の紹介文をもう一度言い直す。一言一句変えずに。
 そして現れた結果、音は鳴らなかった。

 「……鳴らない。て事は本当だ」

 「ね?言ったでしょ?」

 「……て事は、雄一達って……」

  「世界を救った……?」

 「所謂英雄ってやつだ。まぁ、俺達の話はこのぐらいにしといて……」

 「このぐらいにしといて……」

 「「「「「いやいやいやいや待て待て待て待て!!!!」」」」」

 ここに居る俺とルナ以外の声が被る。
 と、驚く間も無く質問が飛び交ってきた。

 「英雄?!何でここに英雄が?!」

 「普通に死にそうだった所をアステラに救われた」

 「「アステラ様??!!」」

 今度はヘレンとエクレスが驚く。

 「え、直接アステラ様に連れて来られたのか?!」

 「そうだが……。お前ら落ち着いたらどうだ?」

 「ほらほら!深呼吸深呼吸!」

 「「「「ちょっとそれどころじゃない!!」」」」

 「応答を止めないで!こっちは聞きたい事が沢山あるのよ!!」  

 「「あ、はい……」」

 そして始まる質疑応答。そこでは、どうゆう世界だったのかとか、こちらに来た理由とか、事細かに質問された。
 そんな広場で始まった質疑応答は、いつの間にか数時間が経った頃にようやく終了した。

 「……もう質問は終わったか?」

 質疑応答後、皆は疲弊した様に頭を抱えている。情報量が多過ぎた様だ。

 「……正直言ってまだ理解出来てないよ……。何かこう、俺達の世界とは全く違い過ぎて、ラノベの世界みたい……」

 「俺だって蓮兎達の世界が科学全然進んでなくて驚いたさ!まさかAIの技術がそこまでとは……」

 「もう、呼び捨て出来ないわよ……」

 「あ、それは引き続きお願いする。所詮過去に功績を残しただけなんだ。この世界では俺とお前らはただの異世界人!対等な立場として今後ともよろしくな!」

 「そうそう!もし敬語なんて使ったら許さないからね!」

 「「……!分かった!!」」

 「良い返事だ!」

 「そこの2人もだよ!」

 呼ばれてビクつく2人だったが、すぐに体勢を立て直し、返事をする。

 「分かってるさ」

 「これから共にする仲、日々切磋琢磨していきましょう!」

 「そこの聖剣さんも理解した?」

 「流石に舐めすぎよ!」

 そう。これで俺とルナ、蓮兎と弓奈は対等の立場となった。ヘレンとエクレスも、現地人と異世界人の差はあるが、それもすぐに埋まるだろう。バルムンクは……。よく分からないが。
 そして俺達は、この場にいる皆に向かい、ルナと共に声を上げる。

 「じゃあ改めて!これからも宜しく!」

 「宜しくだよ!!」

 「「「「宜しく!!」」」」

 勇者を強くするという利害の一致から始まった協力関係。
 アステラから任された黒幕の討伐は、より確実に目的へと進んでいた。
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